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「転職活動」をしてみてわかった、転職者の本音

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筆者は現在フリーランスですが、少し前に「企業に就職したほうがよいのではないか?」と思い、転職活動に踏み切ったことがあります。

フリーランスの仕事は安定しないものである、ということは間違いありません。

不安に駆られた時期のことでした。

そこで転職活動をしてみたのですが、求人企業と求職者の間に、もったいないすれ違いが起きているかもしれない、と思うポイントがいくつかありました。

転職希望者の大前提

まず、転職希望者についての大前提を振り返っておきましょう。

マイナビが2023年に転職した人を対象に実施したアンケート調査では、転職理由と転職先の決定理由は下のようになっています。


*1 出所:「転職動向調査2024年版(2023年実績)」|株式会社マイナビ

いつもそうですが、転職を決める人の最大の理由は「給与」です。
業務内容と給与、この2つしかないと言ってもいいでしょう。

「自分がすぐにやれることで、今より給料が上がる」
といった転職希望者が圧倒的に多いと考えてください。

応募先の社名を全部覚えているわけではない

さて、筆者は40代で、取材とライティングには確たる経験値があり、会社員時代にはチームリーダーを多く経験している、という人物です。
転職希望者が取る方法は、知り合いからの紹介がない限りは2つです。
転職エージェントに登録する方法と、企業のホームページから直接アクセスする方法です。

そして求人票というのは山ほどあります。
よって転職希望者は「条件が合いそう」なところにはとりあえず応募します。

正直、深く考えずにとりあえず応募ボタンをクリックし続けるのです。中には「やったことのない業務だけど、この給料なら」というものも含め、常に数十社に応募中という状態にあります。

よほど希望する企業でない限り、正直なところ全部の社名を覚えているわけではなく、よって書類選考を通過したという連絡があっても「どの会社だったっけ?」となるくらいです。
この状態を「応募してきておいて、覚えてないとは失礼じゃないか」と思うかもしれませんが、現実なのです。

そもそも「実は前からこの会社に入りたかった」という企業を具体的に描いている転職者は、企業のホームページから直接アクセスしてきます。
しかし「とにかく現状を変えたい」という転職希望者は、特定の企業にそうこだわりがない状態で応募しているケースが多いということは押さえておいてください。
かなりの量の求人情報の渦の中にいるのです。

開示情報が少ないのに「なぜうちを?」と聞かれても

もちろん応募にあたって、企業のWebサイトはチェックします。
よほどの有名企業でない限り、転職希望者が事前に手に入れられる情報はそれしかありません。
事業内容もそうですが、取引先や実績についてここでチェックします。

さて、筆者が一度困ったのは、Webページに掲載されている情報が極端に少ない企業の面接です。
そのうえで、まず逆質問を受けます、ということだったのですが、情報がありませんのでこちらも何を聞けば良いかすらわからない、といった状態です。

かといってゼロではありませんでしたので、Webサイトの記載から、これは具体的にはどのような業務なのか、といったことを聞いていきましたが、いまいち具体的な話は聞けませんでした。

そのまま今度は筆者が転職活動をしている理由やこれまでの経験などについて聞かれ、あとはそこから派生する雑談のような形で時間は終わりましたが、その段階で志望度がガタ落ちしたのは事実です。

これも正直な話ですが、冒頭にもご紹介した通り、転職の動機の最も大きなものは「給与」です。
しかし転職希望者は、いきなり最初の面接でそれを言うことを避ける傾向にあります。金のことしか考えてないと思われたくはない、誰もがそうです。

本音はそうではありません。最初に知りたいのは待遇や勤務時間といった具体的な話です。
それがわからないままだと、面接の場では本音を押し隠したまま、どこか綺麗事の話だけでここを乗り切ろう、というマインドになります。

事前に事業内容や年齢別の平均給与などがわかっていれば話は別です。
そのうえで転職者に「何をお願いする」のか。
リモートワークは週何日実施しているか、フレックスタイムを取っている場合コアタイムは何時ごろか。

それがわかっていれば、そもそも条件に合致する企業にしか応募しませんから、採用側としても書類を見て声をかけまくる、といったことをせずに済みますし、いまいち本音がわからない無駄な面接時間を費やすこともありません。

情報の渦に巻き込まれているのは転職希望者も求人企業側も同じではないかと思います。
業務ごとに求人票を分けている企業も少なくありません。これならば応募しやすくなります。
その中で、「希望年収には応えられないがなんとか説得できないか」と考えるためには、事業内容や働き方の環境についてかなり具体的に示す必要があるでしょう。事前にチェックしておいて欲しいWebサイトなどは、面接の前にエージェントを通じて伝えておくのが良いでしょう。

フィードバックは迅速に端的に

また、とても話を進めやすかった面接もいくつかありました。
書類である程度の条件を満たしているという前提で面接に進むというのが一般的な形かと思いますが、面接の冒頭が事業内容の詳しい紹介、なぜ求人しているかの説明から始まる形は求職者を安心させます。
単純に「人が足りない」という理由では、「人が辞めがちな企業なのかな」と感じてしまいます。

よって「事業拡大」の話があると、魅力を感じるものです。事業を広げるための即戦力の募集である、あるいは組織強化のため、という、求人側にも「ポジティブな理由」が求められます。

転職希望者の年齢にもよりますが、「経験不問」は筆者の場合、逆にあまり良い印象は受けませんでした。
そして、面接直後にその人物の何を評価し、何に懸念を感じているのか。
これはすばやくフィードバックした方が良いでしょう。
すると、転職希望者もどの部分のアピールをしきれていなかったのか、何を話しきれずにいたかが明確になります。

転職希望者も、特に一次面接で人と話しながら自分の頭を整理していくものです。
「もっとこんなことを次回は聞かせてください」というフィードバックは、互いに余計な時間を奪われずに済みます。

なお、「腹の探り合い」に時間を割くことほどもったいないものはないと筆者は感じます。
「転職する人は収入や人間関係を理由にする人が多いようですが、動機はそれでもかまいません、ただ具体的に聞かせてもらえますか」
という質問もありなのではないかと思います。

そこで転職希望者の本音や性質を一気に引き出すというのも逆転の発想です。

名刺交換をして「繋がり」を保つことも重要

なお、多くの候補者を見ていくうちに、「あの人を確保しておけばよかったなあ」と感じることは多かれ少なかれ発生することかと思います。
実は、これは転職希望者も感じることの一つです。

「あの会社の話をもっと聞いて、しっかりアピールすればよかったなあ」
ということです。
大魚を逃す可能性はどちらにもあります。
企業も転職希望者も、比較対象は多ければ多いほど良いものです。

そこで、選考で落とした相手でも、いつか必要になった時のために名刺交換をしておくのは重要なことです。
転職希望者もある時「急に疲れてモチベーションが下がる」時期もあります。あるいは、初めての面接でうまく話せなかっただけ、という可能性もあります。
これは互いにあることではないでしょうか。

「もう一度話を聞いてみたい」となった時、もう遅いとなってしまっては取り返しがつきません。
あるいはどこかのタイミングで副業人材として関わる可能性もあります。

ただ、「逃した魚は大きい」と、バイアスをかけて相手を見てしまわないよう、その点には注意が必要です。
転職希望者、求人企業、ともに「合理的」な方法を模索することを心がけてみてください。

  • Person 清水 沙矢香

    清水 沙矢香 -

    2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。
    取材経験や各種統計の分析を元に多数メディアに寄稿中。

  • 人材採用・育成 更新日:2024/07/23
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