中途採用の最適な時期は?統計データから見る繁忙期と閑散期
中途採用には、求職者が増加する時期と減少する時期があり、企業側でも求人広告の出稿が活発になる時期とそうでない時期があります。このサイクルを理解し、効果的に活用することで、より効率的な人材採用が可能になります。
本記事では、統計データを基に繁忙期と閑散期を特定し、それぞれの時期における採用活動のポイントを解説します。
中途採用の市場動向
新規求人数と新規求職者数は、季節や経済状況に大きく影響されます。例えば、4月には新規求職者数が増加する傾向があり、12月にはその数が減少します。
新型コロナウイルスの影響により、採用市場には大きな変化が生じました。リモートワークの普及に伴い、地域に依存しない採用活動が増加し、求人数は特定の地域に集中しなくなりました。この結果、リモートワークが可能な職種では、都市部と地方の両方で求人が増加し、企業はより広範囲から優秀な人材を確保する機会が増えています。
また、経済回復に伴い、一部の業界では採用活動が活発化しています。特にIT業界などでは求人市場が賑わっており、多くの企業が積極的に新規採用を行っています。一方で、観光や飲食業などの一部のサービス業界では、依然として厳しい状況が続いています。
企業の採用担当者は、これらの市場動向を把握し、採用戦略を見直すことが求められます。リモートワークに適応できるスキルや自立性を重視する傾向が強まっているため、求職者のニーズに応じた柔軟な採用・育成方針を検討することが重要です。また、業界ごとの動向を分析し、自社の採用活動に反映させることで、より効果的な人材確保が可能になります。
新規求人数と新規求職者とは
ニュースなどで耳にする「有効求人倍率」や「新規求人倍率」といった用語は、厚生労働省の所管するハローワークが集計した統計データに基づいています。これらの数値は毎月公表されており、企業の採用活動において重要な指標となります。ここでは、これらの統計資料の意味を解説します。
新規求職者数と有効求職者数
- 新規求職者数:その月にハローワークで新たに申請された求職者の数を指します。
- 有効求職者数:現在ハローワークに申請されている有効な求職者の総数です。
新規求人数と有効求人数
- 新規求人数:その月にハローワークで新たに申請された求人(仕事)の数を示します。
- 有効求人数:現在ハローワークに申請されている有効な求人数の総数です。
有効の期間に関して
ここでの「有効」とは、ハローワークが定める有効期限を意味します。新規求人数と新規求職者数は、共に2カ月間(申込み月の翌々月末日まで)有効とされています。
有効求人倍率
有効求人倍率は、有効求人数を有効求職者数で割った倍率であり、景気動向の判断に用いられます。なお、この指標は労働市場の需給バランスを示す重要なデータです。
新規求人倍率
新規求人倍率は、新規求人数を新規求職者数で割った倍率で、直近の景気動向を判断するために利用されます。この指標は、採用活動の活発さを示すものとして注目されています。
なお、これらの統計はハローワークに申請された数値に基づいており、ハローワーク以外の求人媒体や転職サービスへの登録や求人掲載数は含まれていません。また、新卒採用の動向もこのデータには含まれません。
新規求人数や新規求職者数の増減は、年間を通じて一定の傾向が見られます。次章以降では、新規求職者、新規求人、新規有効求人倍率の年間の動向について紹介していきます。
新規求職者の年間動向
新卒採用とは異なり、求職希望者(新規求職者)は通年で発生します。新規求職者の人数は、求職希望者の都合に応じて時期による増減の傾向が見られます。以下は、厚生労働省が発表した新規求職者数(パートを除く)のデータです。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2018年 | 305,705 | 291,929 | 311,333 | 338,330 | 284,347 | 252,530 | 253,342 | 258,974 | 230,982 | 277,486 | 240,255 | 213,943 |
2019年 | 297,218 | 277,951 | 283,016 | 322,842 | 262,954 | 243,064 | 263,795 | 233,967 | 244,013 | 253,981 | 223,893 | 219,170 |
2020年 | 290,383 | 257,475 | 276,086 | 305,577 | 235,595 | 280,462 | 257,522 | 225,852 | 237,286 | 256,601 | 212,287 | 209,285 |
2021年 | 262,946 | 257,350 | 293,484 | 318,087 | 219,265 | 238,828 | 232,725 | 230,718 | 235,279 | 246,637 | 228,263 | 209,749 |
このデータから、1月に求職者が増加し始め、4月にピークを迎えた後、5月に大きく減少し、10月に再び増加、12月には最も低い数値となることがわかります。
4月に新規求職者がピークを迎える理由
日本の多くの企業は3月に期末を迎え、4月から新年度がスタートします。この時期は部署の異動や転勤、昇給、昇格などの変化が多く、環境の変化に伴い転職を志す労働者が増えることが予想されます。また、定年退職者の退職時期でもあり、これが新規求職者数の増加に寄与しています。
10月に新規求職者が微増する理由
10月の微増は、半期のスタートにあたるため、組織改編や異動などの環境変化が影響しています。
12月に新規求職者が減少する理由
12月には新規転職者が減少し、1月に急増する傾向があります。
12月は師走の名の通り、業務が多忙であり、忘年会などの行事も増え、年末年始の休日によって稼働日数が減少します。また、ボーナス支給後に転職を考える求職者が多く、年末年始の休暇を利用して転職活動を整理し、1月以降に活動を開始する意向が見受けられます。
新規求人数の年間動向
新規求人(中途採用募集)は、企業のニーズに応じて通年で実施されます。以下は、厚生労働省が発表した新規求人数(パートを除く)のデータです。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2018年 | 615,272 | 599,996 | 592,856 | 576,562 | 579,273 | 583,829 | 578,433 | 591,706 | 566,799 | 633,767 | 579,818 | 532,727 |
2019年 | 633,270 | 611,793 | 562,093 | 574,600 | 559,008 | 556,428 | 590,218 | 554,712 | 553,841 | 603,599 | 537,988 | 532,926 |
2020年 | 520,836 | 519,480 | 495,921 | 404,859 | 391,604 | 458,923 | 423,292 | 403,875 | 467,728 | 477,621 | 424,178 | 450,162 |
2021年 | 478,968 | 456,112 | 497,844 | 466,065 | 424,232 | 498,735 | 474,767 | 451,498 | 508,773 | 526,173 | 482,435 | 507,659 |
このデータから、10月と1月に求人数が増加し、12月と5月に減少する傾向が見られます。また、年単位の変化では、新型コロナウイルス感染症の影響が出始めた2020年1月以降、新規求人数の減少が顕著です。
10月に新規求人数が増加する理由
日本では多くの企業が4月から新年度を迎えるため、10月は下期の始まりとなります。この時期は組織改編が行われることが多く、4月から実行していた計画を見直し、不足している人材を新たに確保するための求人が増加します。
1月に新規求人数が増加する理由
12月決算の企業にとって、1月は期末にあたり、新たな予算を組んで計画をスタートする時期です。また、3月決算の企業では次年度の計画を立案し、必要な人材の手配を行う時期となります。さらに、4月には新卒社員の入社が控えているため、この時期から中途採用社員を採用し、4月に合わせて研修や事務作業を行うことで効率を高める企業もあります。
5月に新規求人数が減少する理由
3月決算の企業では、組織改編が完了し、5月は新体制がスタートしたばかりの時期です。このため、組織を変更する理由がなく、求職者数も低調な時期となります。
中途採用活動における求人広告の活用法
中途採用活動において、求人広告は企業が優秀な人材を確保するための重要な手段です。市場動向や求職者のニーズを理解した上で、効果的に求人広告を活用することが求められます。ここでは、求人広告を最大限に活用するためのポイントを解説します。
まず、ターゲットの明確化が重要です。具体的なスキルや経験を基に求める人材像を設定し、求職者に刺さる具体的な内容を掲載することで、より効果的なアプローチが可能になります。次に、見出しや冒頭文の工夫が求められます。求職者が最初に目にする部分であり、興味を引く内容にすることで応募率を高めることができます。ポジティブな文言や具体的なメリットを強調することが、応募者の心をつかむ鍵となります。
また、業務内容や待遇の詳細記載も欠かせません。具体的な業務内容や待遇、会社情報を詳細に記載することで、求職者に安心感を与え、曖昧な表現を避けることが重要です。納得できる情報を提供することで、信頼を得ることができます。
さらに、媒体の選定も大切です。総合型や業界特化型の求人サイト、SNSを活用し、ターゲットに最もリーチしやすい媒体を選ぶことで、効果的な求人活動が実現します。最後に、タイミングの見計らいも重要です。求職者の動向を把握し、求人数が増える時期や求職者の動きが活発になる時期を選んで掲載することで、より効果的な採用活動が可能になります。
求人広告の種類と特徴
企業が効果的な中途採用活動を行うためには、様々な種類の求人広告を理解し、適切に利用することが重要です。総合型の求人サイトは、独自のデータベースにそれぞれ会員を抱えており、幅広い求職者にアクセスできるため、効率的に求人情報を配信することが可能です。
一方、業界特化型の求人サイトは、特定の業界に特化したサイトであり、業界での経験やスキルを持った求職者に絞ってアプローチできます。例えば、IT業界特化型のサイトでは、ITスキルを持つ求職者に確実にリーチできます。
SNS広告やスカウト採用も効果的です。LinkedIn、Twitter、FacebookなどのSNSやスカウト採用を行う媒体、エージェントを活用することで、特定のターゲット層に直接アプローチできます。特に専門職や上級管理職など、よりハイレベルな人材を求める場合に効果的です。
また、ハローワークは公的機関として多くの求職者に利用されており、公的なサポートを受けながら採用活動を行いたい場合に適しています。
求人広告には多様な種類があり、それぞれに特徴があります。企業のニーズとターゲットに応じて、最適な求人広告の種類を選び、効果的に活用することが求められます。
効果的な求人広告の作成方法
効果的な求人広告を作成するためには、まず、求人広告の目的を明確にすることが大切です。具体的な職務内容、求めるスキル、経験、待遇条件を明確に記載することで、ターゲットに正確に伝わります。この情報が明確であればあるほど、求職者からの信頼を得やすくなります。
次に、見出しと冒頭文の重要性を忘れてはいけません。求職者が求人広告を見る時間は限られているため、最初に目にする部分でいかに興味を引くかが求められます。具体的なメリットやチャレンジングな要素を強調した見出しを作成し、ポジティブな表現を用いることで求職者の関心を引きやすくなります。
視覚的要素の活用も効果的です。会社の写真や業務風景の画像を掲載することで、職場の雰囲気を伝えることができ、求職者が企業文化をイメージしやすくなります。これにより、応募への動機付けとなります。
最後に、ターゲットの選定と媒体の選び方を考慮することが重要です。ターゲット層に直結する求人サイトやSNSを活用することで、より効果的に求職者にアプローチできます。これらのポイントを押さえて、効果的な求人広告を作成し、優秀な人材を引きつけましょう。
新規求人倍率の年間動向
新規求人数(中途採用募集)を新規求職者の数で割った数字が、新規有効求人倍率です。
この倍率が2.0の場合、1人の求職者に対して2つの仕事が用意されている状態を示します。数字が大きいほど、求職者にとって選択肢が増える一方で、企業にとっては人材の獲得が難しくなることを意味します。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2018年 | 2.01 | 2.06 | 1.90 | 1.70 | 2.04 | 2.31 | 2.28 | 2.28 | 2.45 | 2.28 | 2.41 | 2.49 |
2019年 | 2.13 | 2.20 | 1.99 | 1.78 | 2.13 | 2.29 | 2.24 | 2.37 | 2.27 | 2.38 | 2.40 | 2.43 |
2020年 | 1.79 | 2.02 | 1.8 | 1.32 | 1.66 | 1.64 | 1.64 | 1.79 | 1.97 | 1.86 | 2.00 | 2.15 |
2021年 | 1.82 | 1.77 | 1.7 | 1.47 | 1.93 | 2.09 | 2.04 | 1.96 | 2.16 | 2.13 | 2.11 | 2.42 |
新規有効求人倍率は4月に大きく低下し、その後上昇を続けて12月にピークを迎えますが、再び4月まで下降する傾向が見られます。また、年単位の動向では、新型コロナウイルス感染症の影響が出始めた2020年1月以降、有効求人倍率は低い数値となっていますが、2021年12月には回復傾向が見られます。
4月に有効求人倍率が減少する理由
4月は求職者数が大幅に増加する時期です。一方で、求人数は新体制がスタートし、新卒社員も入社するため、追加で求人の行う需要が少ない傾向にあります。このため、求人側(企業)にとって獲得競争がゆるく、有利な時期となります。
12月に有効求人倍率が増加する理由
12月は求職者数が大幅に減少する時期です。しかし、求人数はそれほど減少しないため、求人側(企業)にとって獲得競争が厳しく、不利な時期と言えます。このため、倍率が増加する傾向が見られます。
閑散期に中途採用を行うためのポイント
4月と5月は新規求人数が少なく、ライバルが少ないため、求人側(企業側)にとって有利な時期と言えます。また、4月は有効求人倍率が最も低い時期でもあります。しかし、新体制がスタートしたばかりで組織改編をしにくい時期であり、新入社員への対応も求められるため、採用活動が難しいこともあります。
この時期に人材を選抜しておくことは、ライバルが少なく、ネームバリューのある大手企業の採用活動が鈍い状況を利用する効果的な手段です。必要なときにすぐに適切な人材を確保するために、事前に計画を立てておくことが重要です。
繁忙期に中途採用を行うためのポイント
10月と1月は、新規求人数が増える傾向にあり、これはライバルが多いことを意味します。激しい獲得競争が予想されるため、書類選考や面談のスピードを早め、短期決戦で他社よりも早く人材を確保することが重要です。時間をかけると、見込んでいた人材が他社に流れてしまう可能性があります。
少子高齢化による労働人口減少に伴い、人材獲得競争は激化しています。優秀な人材を確保するためには、新規求人の閑散期、繁忙期に関わらず、ポイントを押さえた採用施策を実行することが求められます。
中途採用の展望と採用成功に向け企業が取るべき戦略
企業はこれらの戦略を効果的に実行することで、変わりゆく採用市場に対応し、成功するための中途採用活動を展開していくことができます。ターゲットの明確化、適切な媒体の選定、タイミングの計画を通じて、優秀な人材を確保し、企業の成長を支える人材戦略を構築していきましょう。
- 人材採用・育成 更新日:2022/10/18
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