副業・フリーランス人材に向けた募集要項の書き方(テンプレートあり)
昨今、企業で活用が増加している副業・フリーランスなど個人への業務委託。社員にはない知見、人脈、ノウハウをもつ人材を即戦力として活用できることが注目されていますが、初めて副業・フリーランス人材を募集する際には、「どのように書けば求める人材が集まるのか」「募集項目は正社員とどう違うのか」と迷っている担当者は多いのではないでしょうか。
募集時に業務条件が定義しきれていないと、求めるスキルとのミスマッチが起こり、業務委託としての十分な成果をあげられないこともあります。しかし、丁寧に準備をすれば、期待値以上のプロ人材と出会い、社内だけでは補いきれなかったノウハウやリソースを活用できるチャンスにもなりえます。
今回は、企業フェーズに合った魅力的な副業・フリーランス人材と出会うための、募集要項の書き方を紹介します。項目テンプレートや文例を確認しながら、人材募集の参考にしてみてください。
副業・フリーランスが応募したくなる求人とは
副業・フリーランスの人材が応募したくなる求人(業務委託)には、以下のような特徴があります。
- 依頼側が、業務委託に関する最低限の知識をもっている
- 依頼~業務完了までのフローがイメージしやすい
- 応募者の不安を取り除いた明瞭な業務内容
業務委託の基礎知識と事前準備
最初に、業務委託とはどういうものかを理解し、社内で業務委託が可能かどうか、経理や事務担当に確認することが重要です。
業務委託契約を結べる人材のタイプ
業務委託ができる社外の人材には、主に以下の2通りが挙げられます。
副業ワーカー | 他企業に雇用されながら、その他の仕事にも従事している人 |
フリーランス | 企業に雇用されず、複数の業務に従事している人 |
フリーランスの方が、副業ワーカーよりも時間の融通がききやすいため、リソースを提供してもらいやすい傾向にあります。
業務委託は派遣や外注(法人)とは異なる
業務委託は、派遣社員や法人への外注とは異なり、個人事業主との契約を示します。
派遣社員(間接雇用)には決められた業務の中で指揮命令が可能ですが、個人事業主(業務委託契約)の場合は、委託者と対等な関係であり指揮命令ができません。
しかし、個人事業主との業務委託契約は、専門性が高い人材とつながる確率が高くなります。また、法人への外注よりも比較的コストをおさえやすいというメリットがあります。
業務委託には「請負契約」と「準委任契約」がある
業務委託の契約方法には、主に以下の2種類があります。
請負契約 | 委託者が「ある業務の完成」を委託し、受託者は業務完成を約束する契約。報酬は納品成果物に対して支払う。 |
準委任契約 | 委託者が「法律行為以外の業務遂行」を委託する契約。受託者は業務完成や納品義務がない。報酬は納品成果物に対してではなく、委託した業務遂行にかかった時間や工数に対して支払う。 *「委任契約」とは、「法律行為の遂行」を委託すること |
依頼時に成果や納品物を求めるのか、業務遂行過程を求めるのかを明らかにしておきましょう。
副業・フリーランス向け募集要項の書き方【記入前の整理】
副業・フリーランス向け募集要項を効果的に書くには、事前準備が必要不可欠です。社内課題を抽出し、業務委託の成功ゴールをイメージすることで、わかりやすい募集要項を書くことができます。
STEP1. 事業・プロジェクトの課題を見極める
まずは、事業やプロジェクトの流れを分解して、社内業務のどのような課題を解決したいのかを見定めていきます。たとえば、以下の質問を参考にしてみてください。
- ボトルネックの要因となっているのは、人員の不足なのか、ノウハウの不足なのか?
- 社員の業務量や負担を削減したいのか、社外の経験値を活用してイノベーションを起こしたいのか?
- 営業プロセスにおいて、プロモーションとインサイドセールスの、どちらの目標が達成していないのか?
部署やチーム内で意見を出しあいながらまとめると、ブレの防止につながります。部内外や現場との共通認識をつくれば、円滑な社外人材活用への足がかりにすることが可能です。
STEP2. 求める人材の要件を言語化する
課題に合わせて、どんなノウハウ・スキルを持った人材を求めるのかを言語化していきましょう。人材要件は、おおまかに3タイプに分けられます。
社内の課題 | 求める人材 |
---|---|
ノウハウ自体が不足している | 戦略立案・コンサルが得意な人 |
ノウハウ+人員が不足している | 戦術~実行まで自走できる人 |
実務担当者のみ不足している | 実行稼働リソースが豊富な人 |
また、実際にどのような業務を任せられるのかまでイメージを進めていきます。
STEP3. 募集要件の基準をつくる
依頼したい業務と役割範囲を決定します。どのくらいの時間、どのくらいの業務量を求めているのかを具体的に考えると、募集要項について抜け漏れなくおさえることができます。5W1Hで条件決定をする考え方を整理してみましょう。
Why | ・なぜ社外の人材を活用したいのか?特に何を期待しているのか? ・人材を活用して解決したいことは何か? |
What | ・期待する役割や成果物(納品物)は? ・担当する業務は何か?その範囲は? |
Who | ・課題解決にあたって、どのような経験や能力が必要か? ・MUST条件とWANT条件を分ける |
When | ・いつまでに?納期やスケジュールの見通し ・稼働時間と稼働タイミング(平日日中or 夜、土日、週○回 など) |
Where | ・テレワークOK?出社型? ・クライアント訪問や出張などはあるか? |
How | ・コミュニケーションツールは?(電話、メール、チャット) ・業務の進め方はどのように?社内の担当は誰? |
副業・フリーランス向け募集要項の書き方【必要項目へ記入】
これまで考えてきた内容をまとめていくと、募集要項をスムーズに記入することが可能です。
募集の際に必要な項目は、以下の通りです。具体的に記入すると、要件にマッチした人材と出会いやすくなります。
- 募集理由
- 業務目的
- 業務内容・目的の達成方法 ※ポイント1
- 連絡系統
- 稼働条件
- 報酬条件
- 経験・スキル要件 ※ポイント2
- 人物要件 ※ポイント3
- 企業準備物
- 安定稼働までにやること(企業から人材への申し送り)
- 選考フロー
- 選考者
- 管理方法 ※ポイント4
【求める人材に出会うための4つのポイント】
※ポイント1:業務内容とセットで目的の達成基準(成果を測る指標)も設定しておく。社外人材の活用後の効果も確認しやすくなる。
※ポイント2:経験・スキル要件はMUSTとWANTを切り分けて考える。求めるスキルの優先順位をつけることができる。
※ポイント3:人物要件は具体的に記載して、その理由も添える。
※ポイント4:社員と同じ時間の稼働が必須か、あらかじめ決めておく。こまめにコミュニケーションが必要な場合や、日中のミーティングに出席必須な場合などは、事前に伝える。
副業・フリーランス向け募集要項の書き方【文章例】
書き方に迷ったときは、文例を参考にしてみてください。
募集要項サンプル「ドリップコーヒー新商品のInstagramアカウント運用責任者」
募集理由 | 社内でノウハウと運用リソースが不足しているため |
業務目的 | ・アカウントのフォロワーの増加ペースを上げたい ・Instagram経由の購入を増やしたい(自社ECサイトに飛ばす) |
業務内容・目的の達成方法 | 【基本業務】 商品のマーケティング戦略やブランド戦略(ターゲット属性や持たせたいイメージ/演出したい購入動機やシチュエーション)に基づくSNS施策として、Instagramアカウントの継続運用により消費者との接点を作り、認知向上および販売促進に繋げる。 メインターゲットである新社会人~30歳の女性に向けた運用方針と投稿スケジュールを決め、投稿内容を企画・作成。登校前には社内のチェックを通した上で更新。 【目的達成のために定期実施すること】 (1)進捗確認:目安としているフォロワー数やリアクションの数、自社ECへの遷移数・率などとの乖離を確認。 (2)企画提案:自社アカウントの現状に合わせた企画立案や、理想との乖離を埋めるための改善施策立案を行う。社内同意を得たらスケジューリングや投稿準備に移る。 |
連絡系統 | マーケティングチームリーダーと受託者とのやりとり。 ・連絡ツールはSlackおよびGoogle Meetを使用 ・チーム会議にも参加し他施策とのズレが起こらないよう配慮 |
稼働条件 | 60時間程度/月(フルリモート) |
報酬条件 | 240,000円程度(4,000円/時)※画像購入などは企業負担 |
経験・スキル要件 | 【MUST】 ・B to C事業のInstagram運用経験 ・投稿内容の企画・作成ができること 【WANT】 ・購入まで繋げた経験 ・女性向けもしくは食料品のアカウント運用経験 |
人物要件 | 女性歓迎/~40歳程度まで(商品のターゲットに近いか少し上の年齢が理想) |
企業準備物 | ・Slackアカウント ・受託者に送るコーヒーサンプル ・投稿前確認のフロー |
安定稼働までにやること | ・商品が生まれた背景の説明 ・マーケティング戦略の意図すり合わせ ・Instagramに期待することを言語化 |
選考フロー | ・1次面接:人物と過去の運用アカウントの確認と自社商材の説明 ・2次面接:スケジュールや条件確認 |
選考者 | 1次2次共通;マーケティングチームリーダー(CS同席) |
管理方法 | 投稿スケジュールベースで、稼働時間・場所はお任せ。投稿前々日までに投稿予定内容を共有いただければOK。 |
まとめ
副業・フリーランス人材へ業務委託をする際のコツは、企業側があらかじめ依頼内容をはっきりさせ、受注者にとって働くイメージができるように具体的に表記することです。
また、仕事を依頼して終わりではなく、コミュニケーション体制を整え、円滑な業務遂行のための道筋をつくっておくことも重要です。
社外のプロ人材をうまく活用すれば、コスト・ノウハウ・スピードの全てにおいて効果的なアプローチができます。ぜひ本記事の募集要項をご活用ください。
- 人材採用・育成 更新日:2024/04/03
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