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テレワークで456人の雇用を創出。誰もが生き生きと活躍できる組織づくりのポイントとは

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テレワークに特化することで、通勤困難な重度身体障がい者の雇用を創出する株式会社スタッフサービス・クラウドワーク。一般的な身体障がい者雇用の現場では、入社1年後の定着率が60.8%(※)であるのに対して、97.3%という高定着率を実現しています(2023年6月1日現在)。
今回は、審査でも評価の高かった、人材確保、コスト削減、従業員エンゲージメント向上といった「テレワークの活用による経営効果の発揮」の取組と「テレワーク時のコミュニケーション・マネジメント面の課題解決」の取組等についてお話を伺いました。

※独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター「一般企業の障害別職場定着状況」より(17年4月)

【総務省主催】「テレワークトップランナー2023 総務大臣賞」とは

総務省では、ICTを利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方であるテレワークの普及促進のため、先行事例の収集・表彰を行っています。
2023年度は、テレワークの十分な活用実績に加え、「テレワークの活用による経営効果の発揮」、「テレワーク時のコミュニケーション・マネジメント面の課題解決」、「地域産業の活性化や地域情報化の推進等の地域課題解決への寄与につながる取組」という3つの観点も重視し、審査が行われました。

通勤時間や働く環境、時間。障がい者就労における最大のハードルをテレワークが解消

——100%テレワークを実施した理由とは?

一番は、通勤の必要がないことです。弊社では456人のスタッフを雇用しており(2023年6月1日現在)、全員が重度の身体障がい者です。彼らにとって通勤は大変な労力がかかるものです。特に地方や雪国にお住まいの場合、通勤は就労を諦める大きな要因といえるでしょう。通勤をなくせば、誰もが本来持っている力のすべてを仕事に集中させることができます。

また、テレワークは自分が過ごしやすい環境で仕事ができることもメリットです。社員の皆さんは、自分が動きやすいよう自室の机位置や動線を工夫しているので、そこで働けるのは作業の質や効率の向上につながります。

——就労者の内訳はどのようなものでしょう。

脊椎損傷、脳血管・脳挫傷、脳性まひ・脳神経など、障がいの特性はさまざまです。年代は10代から60代と幅広く、シニア世代も多く在籍しています。病気や事故等が原因で後天的に障がい者となった方は、一般企業での就労経験をお持ちの方が多い一方で、就労したのは弊社が初めてという方も少なくありません。

障がい特性によってできることは一人ひとり異なりますが、弊社の採用ポイントは「能力」ではありません。就労意欲があるか、在宅就労の必要性があるかを重視しています。

——そのほかに、働きやすさ向上の施策はありますか?

弊社では、テレワークの利点を最大限生かせる柔軟なシフト勤務制を導入しています。これにより、生活介助や通院など生活に必要な時間を確保しながら働くことができます。就労時間は、9時〜19時の間で1日6時間。この時間の中で、通院や介助など一人ひとり異なる事情に合わせて自由にカスタマイズできます。今では221パターンのシフトが存在しています。

就業前からの生活のリズムを変えずに働けることも、定着率アップにつながっていることは間違いないでしょう。

テレワークの“孤独感”をなくし、仲間と協力し合える仕組みを構築

——テレワーク時でも社員の皆さんが生き生きと働けるのには何か秘訣があるのでしょうか?

テレワークのデメリットの一つに、“孤独感”が強くなることが挙げられます。働いている場所が違う、情報が取りづらい、困った時に誰もそばにいない、といったテレワークならではの孤独感を解決することは、設立当初からの課題でした。

その解決策として採用したのがチーム制です。業務に個人ノルマはなく、目標は5〜15人のチームごとに設定しています。チーム制により、仲間意識を醸成し、孤独感を和らげることができています。

また、チーム内で協力して働くためには、オンラインでも気軽に話しかけやすよう仲間との信頼関係を築くことが大切です。これには、日々の業務の中で行える施策を考えました。
例えば、オンラインで行う定時ミーティングです。全員がカメラをオンにした状態で1回20分のミーティングを、1日3回実施しています。体調の確認、業務進捗の確認、業務上の問題点の解消の3つを基本テーマとしていますが、もっとも重視しているのは「雑談」です。何気ない会話を安心して行える環境は、心理的安全性や信頼関係の醸成に役立ち、チームで協力して業務目標を達成する力となります。これは非常に重要な施策と考えているため、雑談は自由参加ではなく業務の一環としています。

——コミュニケーション課題に対する改善施策の効果はいかがでしょう。

入社前は人と話す機会があまりなかった、という方も多いので、定時ミーティングで仲間と毎日会話できることは嬉しいことです。初めは緊張してあまり話せなかった人が、次第に笑顔になり「ミーティングが楽しみです」と言ってくれるのは、雑談の効果だと思います。また、メンバーは順番で司会を務めることになっていて、その役割はミーティングを盛り上げること。自分が話すのではなく、皆が均等に参加できるよう話を振る、話題を提供するなどの配慮が必要なので、コミュニケーション能力の向上だけでなく、主体性を持って取り組むことにつながると考えています。

それ以外の施策として、オンライン上でお互いに感謝の気持ちを伝える「サンクスカード」を導入しています。また年に1度、集合研修としてリアルで会う場を設けています。在宅社員からは「やはりリアルで会うのはいいね」というポジティブな声が上がっているので、コミュニケーションを深める良いきっかけになっているようです。

活躍の場を広げて、自走できる組織へ

——「リーダー制度」とは? また、どのようにリーダーを育成していますか?

2022年4月から「リーダー制」をスタートさせました。それ以前は特に「リーダー」は置かず、メンバーは横並びの状態でした。しかし、組織の更なる自立化の推進と、クルーの中にはリーダーシップを発揮する適性がある者も多数いたので、職域を広げるためにもリーダー制度を導入しました。新たに活躍の場を広げることで「就労の質」を上げることも目的の一つです。

リーダーは、適性のありそうな人に声をかけたり、やる気を見て選定しています。リーダーの育成には、通常業務とは別に時間をつくり、全国のリーダーを集めた研修を実施しています。もちろん、待遇面も見直して努めてもらっています。

——活躍の場を広げるための具体的なフローは?

まずは、受託業務対応からスタートし、慣れてきたら新人研修の交流会への参加、入社式での先輩社員挨拶、ミーティングの司会なども行います。これらの既存の職域である程度の経験を積んだ先で、受託業務以外にもチャレンジできるような機会を設けています。

最近では、労働安全衛生委員会や社内報作成、研修講師など、これまで本部の管理スタッフがやってきた業務も在宅スタッフが担うようになってきました。

——社員の皆さんが主体的に働ける環境づくりのポイントは?

研修期間を長めに設け、社員全員が自信を持って働けるようにしています。特に、新人研修は2カ月間しっかり行っています。
入社の第一歩は、不安や緊張を和らげ、仲間意識を醸成するためのチームビルディング研修を入社式でおこないます。入社式の翌日からは自宅からオンラインで繋がり、1か月間の導入研修を行い、カリキュラムを通じてオンライン上のコミュニケーション方法を学びます。その後、先輩社員たちと合流し、業務上のコミュニケーションの取り方や仕事の手順などを学ぶ業務研修を行い、3カ月後に各チームに配属。先輩社員によるOJTとアサーションを実施し、チームとの一体感を感じてもらいます。さらに配属後も定期的にフォローアップミーティングを行うなど、社員の働くことに対する不安やストレスをなくし、自分らしく主体的に働いていただくための施策を行っています。

また、仕事の成果を共有することも主体性を育む良い方法です。最近は、実際に納品したものがどのように使われて社会に貢献しているかを見える化し、貢献実感が生まれるような工夫をしています。

テレワークを広めて多様な人材の就労機会拡大を願う

——多様な人材活用を検討している方へ向けて、成功のためのアドバイスがあればお願いします。

テレワークが定着していない環境も、まだまだ多いと思います。そして実際にこういった働き方を求めている人に、届いていないという現状があります。
私たちは、さまざまな理由で働くことを諦めてしまった人に、働ける場所があることを知ってもらうために活動しています。その中で、オンライン上でも仲間とつながり、社会とつながれるということを、もっと多くの方に知っていただきたいと思っています。

こうして発信していくことで、一人でも多くの方が活躍できる社会になると信じているので、まずは働ける場があるのだと知ってもらうことが重要ではないでしょうか。

——テレワークは多様な人材が働くために欠かせない手段なのですね。

私たちは障がい者雇用でテレワークの可能性を追求していますが、介護や育児に携わっている方も、テレワークを活用すれば社会との接点が広がります。

障がい者雇用は広がってきていますが、まだチャンスが少ないのが現状です。テレワークではないことで働くことを諦めてしまっている人も多いと思うので、こういった働き方があることをもっと広めて、多様な人々に活躍の場が生まれることを願っています。

  • $タイトル$
  • 株式会社スタッフサービス・クラウドワーク
    エリア統括部 ゼネラルマネージャー
    酒本 速男さん

    2004年に株式会社スタッフサービスに入社、医療・介護領域のメディカル事業本部(スタッフサービス・メディカル)に配属。10年4月から埼玉オフィス 統括マネージャー、16年4月から柏オフィス 統括マネージャー、18年4月から越谷オフィス・川越オフィスの統括マネージャー。20年4月から株式会社スタッフサービス・クラウドワークに異動、エリア統括部 関東エリア マネージャー。担当エリアの障がい者雇用を推進し、就労者数を約3年で44人から82人に拡大。
    23年9月から株式会社スタッフサービス・クラウドワーク エリア統括部 ゼネラルマネージャー。趣味はテニス。

  • 労務・制度 更新日:2024/02/16
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