フルリモート勤務でも社員が同じ方向を向いて働くために。テレワークの強み・弱みを見極め、柔軟に改善を続ける。
——「フルリモート×フルフレックス」勤務を採用した背景を教えてください。
大きく3つあります。
まず、システム開発とフルリモート勤務は相性が良いこと。システム開発は対面で作業を進める必要がないことは肌感覚として分かっていたので、移動時間がなくなることで生産性アップにつながると考えました。
次に、IT業界の人材不足に対応し、採用力を強化する必要に迫られたこと。身体や家庭の事情にとらわれない多様な働き方を許容することで、優秀なエンジニアを獲得することが可能になります。
3つ目には、新型コロナウイルス感染拡大防止を目的として、国や都道府県がテレワークを後押ししていた、という社会的背景があります。
——テレワーク時のコミュニケーションにおいて重要なこととは?
大前提となるのは、我々はプロフェッショナルなのだから、評価基準は時間ではなく目に見える成果である、という価値観です。
もちろん、コミュニケーションの課題がないわけではありません。たとえば、リモート勤務では相手が置かれている状況やテンションが分からないため、仕事を頼みにくい場合があります。この課題を解決するために掲げているのが「前向き、感謝、受容」というバリューです。具体的には「ハイか、イエスか、喜んで」を合い言葉に、振られた仕事はすべて受けるスタンスを取り、そのうえで収まらない仕事の優先度や進め方を相談しています。オンサイトなら場の雰囲気でニュアンスが伝わるかも知れませんが、リモートでは、一度断られると仕事を頼みにくくなってしまいます。だから、まず受け取ったうえで、自分のタスクが溢れてしまうようなら別途対応を検討することを基本としています。
前向きに受け取り、受け取ってもらったことを感謝する。相手を萎縮させないために、話を途中で遮らず受容することが重要です。
このように、フルリモート×フルフレックスだからこそ大切にしたい心構えや、各種ツールの使い方を「コミュニケーションガイド」にまとめています。
——会社としてコミュニケーションガイドを作成した意図は何ですか?
コミュニケーションは仕事の一部であり、フルリモートだからこそホットコミュニケーションを心掛けましょう、というメッセージです。
顔が見えないとテンションが下がりがちだというのなら、チャットで盛り上げる。フルリモートだからこそ、常に即時レスができる準備をしておく。家庭の事情などでオフラインになる場合は、その予定をカレンダーに記載しておけば、返信がなくても「どうなっているんだ」とモヤモヤせずに済むでしょう。また、短時間でいいから、毎日メンバー全員で課題や情報を共有することも重要です。コミュニケーションガイドではその心構えやリモートワークでのコミュニケーションのコツなどを示しています。
オンラインコミュニケーションの弱みを補う取組
——テレワーク時のマネジメントについては、どのような課題に取り組んでいますか?
多くの課題を感じるのが、メンバーのフォローです。その解決策としては、定期的に1on1を実施して社員の働きやすさの醸成、心理的な安全性を担保するよう努めています。
オフラインであれば自然に「雑談」が生まれ、食事に行ったり、飲みに行ったりできますが、テレワークではあり得ません。これを補うために、上長だけでなく、同僚や他部署のマネジャー、役員、人事担当者などと多角的に話せる1on1を推奨しています。CEOも年に1回、社員全員と1on1を実施するなど、意識的にコミュニケーションを図る文化の醸成に取り組んでいます。
また、毎月サーベイを実施し、スコアが大きく下がった社員にリーダーが個別にフォローを行うなど、社員の変化にいち早く対応できる仕組みを構築しています。
ちなみに、上長との1on1ではお悩み相談やキャリアカウンセリングに応じることが大切なので、弊社のマネジャーは全員コーチングのトレーニングを受講。今後はプロのコーチを招き、マネジャー層の育成にも力を入れる予定です。
——業務もコミュニケーションも、すべてオンラインですか?
99%以上オンラインですが、オンラインで完結することを是としているわけではありません。むしろ現場で顔を合わせることを推奨しており、適切にオフラインを使う仕組みも考えています。
コミュニケーション面の取組としては、年1回オフラインによる全社会議を実施しています。また、プロジェクトごとに1度はメンバー全員が対面で集まる機会を持つことを奨めています。集まる場所は全国どこでもOK。その際に発生する交通費はもちろん、食事を含めた会議にまつわる費用も経費として認めています。
——業務以外でのコミュニケーションについて、工夫していることはありますか?
オンライン飲み会やランチ会、勉強会など、社員のアイデアは積極的に取り入れるようにしています。有志メンバー主体による社内活動としては、eスポーツイベント、oViceを使ったコーヒーチャットなどをオンラインで実施。社内ルールを設けながら、全社員が公平に利用できる仕組みをつくっています。
そのほか、リモート疲れやコミュニケーション・ストレスを解消するために「プログレッシブワーク」を採用しています。業務上必要ではない出張を年3回まで認める制度で、ワーケーションに近いイメージです。個人でも活用できますが、チームメンバーや有志メンバーで顔を合わせて話をすることで、コミュニケーションの活性化に役立てて欲しいと考えています。
取組浸透には“インフルエンサー”を育てよ
——社内で取組を浸透させるには、何が必要だと思いますか?
先ほどご紹介した「コミュニケーションガイド」を作成し、全社に周知することは取組を浸透させる意味でも大きな役割を担っています。そしてさらに重要なのが、「コミュニケーションガイド」を使いこなして、会話の先陣を切ってくれる社員の存在です。
つまり、取組浸透のポイントはそれを活用して盛り上げる“インフルエンサー”を育て、評価することです。
実は弊社でも、プログレッシブワークなどの取組を活用している人はまだ少数派です。そんななかでも「プログレッシブワークに行ってきました!」と社内SNSに投稿したり、オフラインで集まったメンバーによる飲み会の様子を共有してくれる人がいる。実際に取組を活用し、楽しんでいる人の姿を見ると「それ、いいね!」となりますよね。こちらから強制することではありませんが、盛り上げて、情報を積極的に発信してくれる人材を育てることは大事です。そして、そうしたインフルエンサーをしっかり評価する制度も用意しています。
テレワークでは、すべての社員が“平等”であるべき
——「フルリモート×フルフレックス」勤務のメリットとは?
弊社は創業当初からフルリモート×フルフレックスなので数値比較はできませんが、オフィスの賃料が抑えられるのは間違いありません。また、フルリモート×フルフレックスに魅力を感じる人が多いので、採用コストが抑えられるし、退職率も低いですね。復職しやすいのもメリットで、例えば育休からの復職率は、現在のところ100%を達成しています。
——テレワークにおいて、社員のモチベーションを維持するために大切なこととは?
「あなたがやっていることは、ちゃんと評価します」と伝えるために、評価制度には力を入れています。日常的な進捗管理は現場で対応していますが、プロジェクトが完了した段階で具体例を挙げて擦り合わせを行い、納得感のある評価を出す。リモートワークに限ったことではありませんが、評価制度はすべての土台だと考えています。
我々は日本一のリモート開発会社になることを目指しています。そしてテレワークは、みんなが同じレベルで情報にアクセスできる“平等感”なくして成り立ちません。何か施策を作ればクリアできることではないので、課題を細かく拾い上げ、積み重ねて、臨機応変に手を打ち続けることが重要だと思っています。
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株式会社プログレス
取締役副社長
中山宗典さん2010年にアクセンチュアに新卒で入社しITコンサルタントとして複数のシステム導入プロジェクトに従事。2020年に代表の室伏と共にフルリモート会社である株式会社プログレスを創業し取締役副社長に就任。現在は取締役として経営を行う傍ら、認定スクラムマスターとして複数のプロジェクトにおいてプロジェクト管理や推進を行う。
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- 労務・制度 更新日:2024/01/23
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