若い世代のメンタルケアをどうすべき?上司が気をつけるべきポイントを医師が解説
「若い人との価値観の違いを感じ、なんとなく仕事のアドバイスがしづらい」
「パワハラと言われそうでいろいろと仕事ぶりに口を出しにくいが、メンタルヘルス対策はしっかり行っていきたい」
若い世代の社員に対し、このような悩みをお持ちの上司や人事担当の方もいるのではないでしょうか。 今回の記事では、そうした悩みに対するヒントを医師として経験した例もあげながらご紹介します。
Z世代の特徴とメンタルヘルス対策のポイント
Z世代という言葉は、アメリカをはじめとする英語圏の国々で使われ始めた言葉とされています。 どの年齢層を表すのかはその国によって違いがあるのですが、おおよそ1990年半ばから2010年代に生まれた世代とされることが多いようです。 つまり、2023年現在では10歳から26歳くらいの世代を指す言葉として用いられています。*1
ここからは、このZ世代の特徴とメンタルヘルスケアやコミュニケーションのポイントについて述べていきます。
デジタルネイティブである
Z世代にとっては、生まれた時からインターネット環境があたりまえのようにあります。*2
さらに、パソコンよりもスマートフォン(スマホ)を日常的に使いこなす人が多いという世代とも言えます。
このため、例えば上司の方がこうしたZ世代に対するメンタルヘルス対策を行い、その結果をもとに対策を講じる際には、アプリやオンラインツールを積極的に利用していくと良いでしょう。
例えば、ストレスチェックをアプリで行うといったことが挙げられます。
しかしながら、このデジタルネイティブということは、小さい頃から身近にスマホが近くにあることで、オンラインゲームへアクセスしやすくなるということにもなります。そういった点が悪い方向に働く場合にはネットやオンラインゲームに依存してしまうという問題に繋がることもあります。
例えば、筆者の知り合いの産業医から聞いた話をあげてみます。
- 22歳の新入社員。もともとオンラインゲームが好き。
- 慣れない仕事のストレスを発散するため、以前よりもオンラインゲームに熱中。
- 当然寝不足になり、日中の作業の質や効率が低下し、さらに上司に怒られる。
- ますます仕事を続けづらくなり、昼夜逆転生活になり、仕事も休みがちになる。
こうした場合には、まずは上司や人事担当の方が本人と就労意欲について話をすることになるのですが、上司の方としては「なぜゲームにそこまでのめり込むのだろう」ということが理解しにくいと思います。
そこで、Z世代にとっては、インターネット環境でのコミュニケーションが自然であり楽なのかもしれない、と考えてみることが大切です。
そういったZ世代の感情を理解した上で、あまりに度が過ぎた場合にはデジタルデトックスなど、ネットとの適切な距離を保つことが大切であることを伝えるようにするとよいでしょう。
使用や活用、体験を重視する
Z世代は、商品を持つことそのものよりも便利な使用方法や活用手段を重視する傾向があります。(*2) つまり、「モノより思い出」ということです。
上司の世代の中には、「マイホームは持って当たり前」「車は無理をしても買うべきだ」という考えを持ってる方もいるかもしれません。
しかし、Z世代にとっては、所有よりもその使用感やそこから得られる経験が大切なので、マイホームでなく賃貸物件、車はレンタルやリースなどで済ませるということも「アリ」なのです。
ここで、メンタルヘルス対策に繋がるようなポイントとして、こうしたZ世代の考え方に対して「若いのに情けないな」「私たちのころは、借金をしても車や家を買った」などと自分の考えを押し付けないようにすることが大切です。
こうした発言を、特に会社の人たちが大勢いる前でしてしまうと、「バカにされた」と思い萎縮し、最悪の場合は会社に出勤しづらくなる人もいるためです。
ゆとり世代(さとり世代)の特徴とメンタルヘルス対策のポイント
では次に、ゆとり世代、さとり世代の特徴とメンタルヘルス対策を考えていきましょう。 ゆとり世代は別名さとり世代とも呼ばれ、1988年から1997年生まれ、つまり、2023年の段階では26〜35歳の方です。*1
この年代についてもばらつきがあるのですが、Z世代よりも少し前の世代という捉え方がわかりやすいかと思います。
この世代は欲がなく、どこか悟ったようにも見えることもあり、「さとり世代」とも呼ばれます。 さて、この世代の特徴とメンタルヘルスケアのポイントを解説していきましょう。
会社よりも仕事の内容を重視する
ゆとり世代の人たちは平成不況を経験しています。 そのため、親などの姿を見て、大きな会社であっても倒産のリスクが0ではないことを痛感している場合もあります。
それゆえに、会社のネームバリューよりも「仕事の面白さ」を重視する傾向があります。 一方で、自分の思うような部署に配置されなかった場合に、「これは自分がすべき仕事ではない」という思いが募り、メンタル不調を訴えてしまうケースがあります。
こうした、自分のしたい仕事に就けないフラストレーションは、ゆとり世代、さとり世代のその上の世代の人たちよりも強く感じられるようです。
実際に、筆者の知人の産業医から聞いたケースをご紹介します。
- 30歳の男性、出版社に就職。この社員は、編集の部署への配属を希望していたが、人員配置の都合で営業に配属された。
- 営業の仕事を覚えようとするが、「これは自分には向いていないのだ」としてモチベーションを保つことができない。そうしているうちに、数年が経過した。
- 上司は一向に成績が伸びないこの社員に対し、「いくら希望と異なる部署でも、頑張らないといけないだろう。君のモチベーションは何か?」と聞いてしまった。
- 社員は、幾度となく他部署への転属を希望していたにもかかわらず、上司からデリケートな問題に触れられてしまい、ついに会社に対して絶望に近い感情を持つようになってしまった。
- 上層部としては、営業部門での経験が編集部門での仕事に生きてくるという意図もあったのであるが、この社員には全く伝わっていなかったし、話もされていなかった。
このケースにおいては、いくつかの問題があるのですが、大きなものとしては上司と社員とのコミュニケーションがうまくとれていなかったことが挙げられます。
上司世代の若いころ、つまりバブル崩壊前の社会では、職場は家族のような生活共同体でもありました。*3
そこで、おのずとコミュニケーションも取れていたようですが、現在ではそのような自然なコミュニケーション、つまり「1から10まで言わなくともわかる」というようなものではなくなっています。
そのため、「言わなくてもわかるだろう」ということではなく、「こういった理由でこういった措置をとっているのだ」ということを詳しく説明することが、円滑なコミュニケーションをとる上では大切になります。
このケースでも、上司が明確に「営業の仕事が編集の仕事をする上でも役に立つ」というようなことを社員に細かく説明していたら、結果は違っていたかもしれません。
【まとめ】
今回の記事では、若い世代であるゆとり世代(さとり世代)やZ世代の特徴やメンタルヘルス対策についてのヒントを解説しました。
ゆとり世代とZ世代は、年齢的にはやや重なる部分もあり、注意すべきポイントも少々重なるものもあります。
まとめとしては、上司の世代と比べると「個」を重んじ、物事を詳細に伝えてほしい、ということが多いように、筆者や筆者の知人の医師の経験からも感じられます。
こうしたことに気をつけて、せっかく入社してくれた若い世代のモチベーションを保てるようにしていきたいものですね。
- 労務・制度 更新日:2024/05/21
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