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企業がとるべきメンタルヘルス対策は?20代に多い頭痛とストレスの関係を医師が解説

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20代の若い方の健康問題として、頭痛は重要なものです。
そして、頭痛の中にはストレスが原因と考えられているものがあります。
ストレスに関連する頭痛についての理解を深めることは、メンタルヘルス対策の一環として会社にとっても重要と考えられます。
今回の記事では、頭痛の多くを占める片頭痛や緊張型頭痛について解説し、さらに会社・人事担当者がどのように対策をとっていくのが良いかについても述べていきます。

若手社員は頭痛に悩まされている?

おそらく多くの人が、今まで頭痛に悩まされた経験があるのではないでしょうか。
実際に、世界では人口の約4〜5%が日々頭痛に悩まされており、その0.5%は毎日重い頭痛に悩まされている、という報告があります。*1

では、働く人がどのような健康障害に悩んでいるかという研究をご紹介しましょう。
2020年に労働政策研究・研修機構が調査したデータによると、労働者の身体的な不調として、とくに20代の若い世代では頭痛を訴える人が多くみられました。*2

また、同調査では、メンタルヘルスについて高ストレス者の割合も調査しています。*2

この調査では、若い人、特に20代の方には高ストレス状態の方が多いということがわかります。 頭痛とストレスには明確な関係があり、ストレスが関連しない慢性頭痛はないともいわれています。*1

企業としても、若い人がストレスを感じることが多く、ストレスなどが原因で頭痛に悩む人が多いということであれば、こうした頭痛についての知識を深め、メンタルヘルス対策を講じていくことが大切となるでしょう。

ストレスと関係する頭痛とは

ストレスに関連する頭痛の代表的なものには片頭痛と緊張性頭痛があります。
以下に、この2つの頭痛についてご説明します。

片頭痛

片頭痛は、30代の女性に多くみられ、においによって頭痛や気持ち悪さが誘発されるという特徴があります。*3
片頭痛という名前ですが、実際には4割くらいの方は両方の頭が痛むという症状を経験しています。

片頭痛発作は、通常は4〜72時間程度続き、片側の拍動性頭痛(はくどうせいずつう:ドクンドクンと心臓の脈に合わせたような痛み)が特徴となっています。頭痛の程度は比較的重く、日常生活に支障がでてしまうことも多くあります。*4

片頭痛には、症状の誘因となるような因子がいくつかありますが、対人関係や職場環境からのストレスや、日常生活のリズムの乱れが片頭痛を悪化・慢性化させていると考えられています。*1

片頭痛は年齢とともに自然に改善していく傾向があります。

一方で、年間約3%の片頭痛の方では慢性化、つまり頭痛がない日が少ない状態になってしまいます。
ストレスの多い生活を避けるなど、慢性化に関連する要因を取り除くことで、慢性化を防ぐことが期待できます。*5

企業の人事が検討できる対策としては、以下のようなものがあります。

  • ストレス管理: ストレス軽減のためのワークショップなどを提供する。
  • ワークライフバランス: 柔軟な勤務時間や在宅勤務のオプションを提供して、仕事と私生活のバランスを取りやすくする。
  • 適切な休憩: 定期的な休憩を推奨し、リフレッシュするための休憩スペースを提供する。
  • 健康的な職場環境: 適切な照明、人間工学に基づいた椅子やデスクを導入し、目の疲れや姿勢の問題を軽減する。
  • 健康支援プログラム: 健康診断や頭痛の予防と対策に関する情報提供など、従業員の健康をサポートするプログラムを提供する。

これらの対策は、従業員の頭痛を予防し、仕事の生産性と満足度を向上させるために役立つ可能性があります。

緊張性頭痛

緊張性頭痛は一次性頭痛の中で最も頻度が高いとされています。*6
症状としては、頭全体が重苦しい感じや、両側のこめかみのしめつけ感が続くというもので、とらえどころのないものです。*6

緊張性頭痛に悩まされている人は、加齢とともに減っていきます。
しかし、片頭痛ほどはその減り方ははっきりとしておらず、50歳以降に発症する人もいるのです。*7

緊張性頭痛の原因として確立されたものはないものの、肩こりや精神的なストレスが関係する、ということが実際の医療の現場では知られています。*6
緊張型頭痛は、その84.8%で心理的なストレス要因や精神的な疾患を合併しているといわれています。*8

片頭痛と心理的なストレスとの関係

さて、片頭痛と緊張性頭痛について解説しました。
このうち、特に片頭痛は心理的なストレスを含めた心理的な要因と大きく関連しているといわれています。
そのいくつかをご紹介しましょう。

片頭痛はストレスの発症に関わっている

先ほど解説したように、ストレスは片頭痛の発症因子や、片頭痛が増悪・持続するにあたっての重要な要因であると考えられています。
一方、ストレスが片頭痛と関連していると理解している人も多いのですが、実際にストレスに対する対処を行っている人は少ないとされています。*9

片頭痛はうつや不安を引き起こしてしまう可能性がある

片頭痛の症状は、多くは日常生活にも支障が出るほどのものであると述べました。
そのために、「また強い痛みが出るのではないか」という不安や痛みのために、うつ状態になってしまうことがあるのです。

こうした反応は当然のものではありますが、片頭痛によって二次的に生じた不安やうつ状態が、また頭痛自体に悪影響を及ぼすこともあるとされています。*10

さらに、現在片頭痛を持つ人は、頭痛を持たない人よりも2年後にうつ病を発症する確率が5.8倍高いということもわかっています。片頭痛にうつ病が伴いやすい理由としては、セロトニンという神経伝達物質の関与が考えられています。*10

ストレスによる頭痛に対するメンタルヘルス対策は?

ここまで片頭痛や緊張性頭痛の発症とストレスが関係している、ということについて述べてきました。
そこで、次に企業としてはどのように頭痛に対して取り組むかについてのヒントをご提案しましょう。

以下の図のように、職場ストレスと身体反応、つまり体の症状の反応にはプロセスがあります。*11

この図から読み取れるように、業務による心理的な負荷や、もともとの個人の性格や遺伝的な素因、年齢といった個人的な要因に加え、業務以外のプライベートな部分での負担、生活習慣などがメンタルヘルスに悪影響を与える要因となります。

そして、ストレス反応の一つとして、今回取り上げている頭痛などの症状が生じてきます。
これが悪化すると、病気としてさらに重い体の症状や、精神疾患、問題行動、最悪の場合自殺や自殺未遂を起こしてしまうことにつながるおそれもあります。

それでは会社としてはどのように対策をとっていくべきなのでしょうか。
この図には、会社側がこうした職場ストレスを緩和させる要因も記載されています。その中には、例えば、上司や同僚のサポートなどがあります。もちろん、業務による過剰な心理的負担は避けることも必要です。

会社では定期的なストレスチェックを社員に対して行い、そうしたチェックを活かし、高ストレス状態の社員に対しては早めにケアすることも大切でしょう。
医学的な観点からは、若手社員のメンタルヘルス対策については、以下のようなものが考えられます。

  • 心理的サポートの提供: 社内にカウンセリングサービスを設置するか、専門のメンタルヘルスサポートを外部から提供することで、従業員が抱える問題を相談しやすい環境を作る。
  • ワークライフバランスの促進: 過度な残業を避け、有給休暇の取得を奨励することで、仕事とプライベートのバランスを保ち、ストレスを軽減する。
  • 職場環境の改善: 人間関係の良好な職場環境を作り、いじめやハラスメントのない安全な職場を確保する。
  • 健康促進活動: 運動や健康的な食生活を促進する活動を通じて、身体的な健康をサポートし、メンタルヘルスを向上させる。
  • 教育と啓発: メンタルヘルスに関する知識を広め、従業員が自身や同僚のメンタルヘルスの問題に気付き、適切な対応をとれるようにする。

また、こちらも頭痛に限ったことではありませんが、専門的援助の要請行動といったものも挙げられます。

援助要請行動とは、気分が落ち込んだり強い不安に苛まれたりした際に、カウンセラーや他者に相談したり病院を受診したりする行動と定義されています。*12

例えば、頭痛で欠勤や早退など、勤務に支障が出ているものの、医療機関には受診していない社員がいたとします。

そうした社員を見つけた際に、社内にカウンセラーや保健師などがいれば相談につなげ、場合によっては頭痛外来などの専門医療機関への受診を促すことも良いでしょう。

実際に、片頭痛をはじめとした慢性頭痛を持つ方は多い一方で、片頭痛患者の約70%は医療機関を受診したことがなく、約50%は市販薬のみを服用しているというデータもあります。*13

メンタルヘルス対策の一環としては、頭痛に対して適切な治療が受けられるよう促すということも、会社に求められることといえるでしょう。

まとめ

今回の記事では、ストレスに関連した頭痛や、会社としてのメンタルヘルス対策について述べました。
20代をはじめとする若手社員の場合、頭痛が主な健康問題になります。
放置している人も多いですが、頭痛がストレス反応の一つとして現れている場合もあります。
頭痛に対する理解を深めつつ、メンタルヘルス対策として適切なケアやストレス管理の技術を取り入れていきましょう。

  • Person nishicherry2480

    nishicherry2480 放射線治療専門医・日本医師会認定産業医

    行政機関である保健センターで、感染症対策等主査として勤務した経験があり新型コロナウイルス感染症にも対応した。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

  • 労務・制度 更新日:2024/06/26
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