パワハラ対策義務化!企業に求められる4つの対応ポイントを紹介
2020年6月5日、「女性の職業生活における活躍の推進等に関する法律等」の一部を改正する法律が公布され、これに伴って「労働施策総合推進法」、「男女雇用機会均等法」及び「育児・介護休業法」が改正されました。
これらの一連の改正の柱は、「女性活躍の推進」と、「ハラスメント対策強化」です。そして、ハラスメント対策強化のなかに「パワハラ対策の義務化」が含まれています。具体的には、「労働施策総合推進法」に規定されています。
多様な労働者が活躍できる就業環境を作ることが目的
パワハラ対策義務化の最大の目的は、女性をはじめとする多様な労働者が活躍できる就業環境を作ることです。労働施策総合推進法では、事業主の義務としてハラスメント対策の強化が明記されており、それに伴うパワハラの防止対策の法制度が整備されました。
パワハラ防止対策の法制度のなかにパワハラ対策の義務化を規定
労働施策総合推進法に規定されたパワハラ防止対策の中身としては、まずパワハラとは何かを規定し、次に事業主の義務、さらにパワハラを行政ADR(裁判外紛争解決手続き)の対象とすることなどが盛り込まれています。
事業主の義務の一つに、雇用管理上の措置が設定されています。具体的には、パワハラに関する相談窓口を設けることです。詳しくは後ほど解説します。
大企業はすでに義務化 中小企業は 2022年3月31日まで努力義務
パワハラ対策の義務化は、2020年6月1日に施行されましたが、中小企業は2022年3月31日まで努力義務とされています。大企業の場合は、すでに義務化されていますが、中小企業にとっては現時点でパワハラ対策をしていなくても義務に反しているわけではありません。
しかし、残りの期間が少ないため、早急に義務化に対応する必要があります。
罰則はないが、指導や企業名公表のリスクも
企業が行うべきパワハラ対策とは、具体的に何を指すのでしょうか。労働施策総合推進法では以下のように、規定があります。
その雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。(労働施策総合推進法第30条の2)
企業がすべきことは、「必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置」を講じることです。具体的に言えば、パワハラについて相談できる窓口をまず整備する必要があります。
1.相談窓口の整備をすること
相談窓口を整備するために、企業は相談体制や相談担当者を置く必要があります。
相談窓口をすぐに設置するのが難しい場合は、外注しても構いません。
窓口の担当者と他部署連携 教育することも必要
さらに、相談窓口を作るだけではなく、相談担当者がその相談に対して適切に対応できるような仕組みを作らなければなりません。具体的には、相談担当者と人事担当部署が連携できるようにしたり、相談を受けた場合の対応についての研修を行ったりすることなどが挙げられます。相談窓口を作って終わりではなく、相談が職場環境の向上に生かせる仕組みを整備することが必要です。
2.パワハラについて明確な基準を策定して周知する
企業として、パワハラに対する明確な基準と方針を明確化する必要があります。具体的には、そもそもパワハラとは何なのか明らかにし、企業としてパワハラについて厳正に対処すること、従業員に対してパワハラを行ってはならない旨とパワハラを行った場合のペナルティについて周知することです。
社内研修や講習などで周知することも1つですし、企業によってはCSRの一環としてホームページ上でパワハラについての方針を公表していることもあります。このような方針の大まかな内容としては、企業としてパワハラについては厳正に対処することや、厚生労働省の指針に従うことなどが盛り込まれています。
基準策定のポイント
「そもそもパワハラとは何なのか」という点について共通認識を持っておく必要があります。パワハラの基準として参考にできるのが、厚生労働省の作成した資料「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました︕~ ~ セクシュアルハラスメント対策や妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策とともに対応をお願いします ~ ~」です。非常に細かく判断基準が書かれています。社内でパワハラの基準を策定する際に参考にしましょう。
3.パワハラ対応のマニュアル化と研修による予行演習をすること
パワハラが起こる前に、普段から対応のマニュアル化と研修などによる予行演習をしておくことが必要です。
また、パワハラが起こってしまった場合、企業には以下の対応が求められます。
- 事実関係を迅速に判断すること
- 被害を受けた労働者について配慮のための措置を行うこと
- パワハラをした側の人について措置を適切に行うこと
- パワハラに対する対応を周知し、再発防止に向けた措置をすること
事前準備のポイント
パワハラが起こってしまってからでは、、適切に対応できないかもしれません。そこで、普段からパワハラが起きたときの社内対応について決めておき、予行演習として研修を行う必要があります。
マニュアルについては、厚生労働省の「職場におけるハラスメント対策マニュアル~予防から事後対応までのサポートガイド~」をもとに、自社で扱いやすいように変えるとよいでしょう。
パワハラ対応のポイント
パワハラの被害者の心身の状態について配慮することも求められています。また、被害者と加害者の言い分が対立してしまったとき、第三者から聞き取りを行うといった措置も行う必要があります。それでもなお解決が難しい場合は、ADR(裁判外紛争解決手続)など第三者機関に紛争解決を委ねることになります。ADRは裁判とは違った、紛争を解決するための制度です。専門機関から情報提供を得ながら、専門家を間に挟み、話し合いで解決しようというものです。
4.プライバシーの保護・不利益な扱いの禁止を定めること
パワハラの防止対策の他に、合わせて行うべき措置として定められていることは大きく2点あります。
- 相談者やパワハラをした側の個人情報やプライバシーの保護
相談を担当する社員向けの研修をしたり、社内報などでプライバシー保護についての取り組みを掲載し、配布したりといったことが必要な措置として示されています。 - 相談者や調査に協力した社員等を不利益に扱わない
さらに、都道府県労働局に調停などの相談をしたことを理由とした不利益な扱いもないということも啓発しましょう。
パワハラの相談をしたことによって個人情報が漏れたり、社内での扱いが悪くなったりするのであれば、相談窓口が機能しているとはいえません。 パワハラ対策として相談窓口を設け、万が一パワハラが起こった場合は厳正に対処する体制を作ってください。さらに、きちんと体制を整備した旨を周知し、安心して相談できる環境作りを行うことが重要です。
まとめ
今回は、パワハラ対策義務化についてまとめてご紹介しました。パワハラ対策は義務であり、現在努力義務の期間中である中小企業も、まもなく義務化されます。対策を講じない場合は、行政から指導や勧告を受け、従わない場合は社名が公表されてしまうリスクもあります。まだパワハラ対策ができていない企業は早急に対応を検討しましょう。
- 労務・制度 更新日:2022/12/22
-
いま注目のテーマ
-
-
タグ
-