顛末書とは? 具体的な書き方や注意点と文例 【テンプレートあり】
ビジネス文書の一つである、顛末書(てんまつしょ)。仕事上でのミスやトラブルなどの問題が生じた際、会社に報告する書類です。ビジネス文章の目的は、仕事上必要な事実や事柄などの情報を正確・的確・明瞭に伝達することであり、ほとんどが形式に則って作成します。
この記事では、顛末書と始末書の違い、どのような場合に顛末書を作成するのか、顛末書に記載する内容と注意点について、実際に文例を参考にしながら説明します。
顛末書と始末書の意味と違い
顛末書とは
物事の初めから終わりまでの事情(一部始終)のことを「顛末(てんまつ)」といいます。顛末書は、仕事上でのトラブルやミス・不始末・不祥事などが発生した場合に、発生日時、経緯などの一部始終を説明し、問題が起きた原因、現在の対処状況や再発防止策なども合わせて報告するための書類です。
ちなみに人事・採用担当者が直接顛末書を作成するケースは、あくまでもその部署内で起こった問題に対する案件の場合です。例えば従業員を採用する場合のトラブルなどが考えられます。(面接時にハラスメントがあったなど)
始末書とは
始末書は、仕事上でトラブルやミスなどを起こした際に謝罪・反省を表すために提出する書類です。またトラブルやミスなどに限らず、無断欠勤や遅刻などの服務規律違反をした場合にも提出することがあります。
顛末書と始末書の違い
企業によっては顛末書と始末書を混同している場合がありますが、それぞれの意味や提出が必要な場面は異なっています。両者の違いを比較してみましょう。
●提出目的
顛末書はトラブルやミスなどが起きた経過、原因、再発防止策を客観的に報告するために作成します。報告を受けた側は問題の状況を把握した上で再発防止策の徹底した取り組みや、改善を行い企業経営の向上を図ります。
問題に対して客観的で公平な立場から見た内容での報告が重要なため、作成者は現場担当者とは限らず、報告するのに最も適任である立場の人間(例えば直属の上司など)が作成し、提出する場合もあります。
始末書も問題があった経過や原因などの説明をしますが、問題行為に対して反省し謝罪をすることが主な目的なので、行為を起こした本人が作成します。
●具体的な提出用途例
顛末書
・事務処理や手続き上でのミスがあった場合
・商品やサービスに不備・不具合があった場合、事故や不祥事が発生した場合など
・懲戒処分扱いにする前段階として、顛末書を取る場合。
・本人の行為について職場内からクレームがあった場合。会社として事態の把握と収拾を図るために顛末書を取ることもあります。
始末書
・顛末書の提出理由の他に、下記の理由でも会社から提出を求められることがあります。
・業務命令違反、服務規程違反など就業規則等に違反した場合
・法律違反や社会規律を乱すような行為をした場合
・会社の信用を著しく傷つけたり、金銭的に損失を負わせてしまったりした場合など
問題の内容によっては顛末書、始末書を両方提出する場合もあり得ます。(同時に提出するとは限りません)どちらの書類を提出するか、2つとも必要かは状況によって会社が判断して作成を命じることになります。
●提出する時期
顛末書
顛末書は原則、問題の収束後に提出します。ただし事態の収束に長時間を要す場合や、問題発生後迅速な報告が必要な場合、問題の経緯や現状の対処状況などを記した経緯報告書を作成し、1回もしくは複数回提出するケースもあります。
顛末書の作成は起こった問題に対して、会社がその内容を把握する必要があるため、会社から提出を求められる場合がほとんどです。しかし、当事者のミスが原因の場合、謝罪の意味を含め自らの意思で作成することもあります。
始末書
トラブル等がわかった段階でまず上司に申告し、謝罪をすることが大切です。その後は上司の指示に従って対処したのちに、会社から書類の提出を求められることになります。
●書式
顛末書
ビジネス文書の書式にならい、基本的にはパソコンで作成します。
始末書
謝罪・反省文の内容で書くため、便箋などに手書きで作成しますが、会社によっては書式が用意されていたり、パソコンで作成したりする場合もありますので、事前に上司に確認するといいでしょう。
●書類の提出先
顛末書
社内の場合、提出先は原則社長になります。社長は顛末書によって報告を受けた問題の詳細を把握することで、業務の改善やより良い企業経営につなげていきます。ただし、会社によっては問題が軽度な場合提出先が工場長、支店長などケースによって異なるので、前もって会社に確認をします。社外に提出するケースでは取引先、顧客などの他、子会社の社員が親会社に提出する、グループ会社のうちの1社が起こした重大な事柄に対してグループ内の他社でも情報共有する目的で提出するなどがあります。
始末書
社内の他、取引先や顧客に対してお詫びする目的で提出します。始末書の提出先は、社内あての場合もありますし、取引先や顧客に対して提出することもあります。どちらのケースになるかは会社で判断して作成者本人に指示をします。(始末書は問題を起こした本人が自発的に作成することはなく、会社の指示で作成します)
●提出したことによる処遇への影響
顛末書
報告書類なので、提出したことのみを理由に懲戒処分や評価が下がるなどの不利益を被ることはありません。
顛末書と人事担当者との関係顛末書は社内で共有する書類なので、人事担当者もその内容を把握することになります。顛末書の報告内容によっては、担当者として関係した社員の人事異動や後の人事考課などに関わる場合もあります。
始末書
提出後、事態の内容によっては譴責(けんせき)、減給、出勤停止などの懲戒処分扱いになることがあります。(ただし懲戒処分扱いにするためには、就業規則への明記が必要です)また、懲戒処分にならなくても後のボーナスや人事査定の評価が下がる場合もあります。
顛末書の書き方と注意点
顛末書を作成する際の書き方と、記載内容の注意点を説明します。
顛末書に書く内容と作成時の注意点
顛末書は報告後社内で情報共有する文書なので、関係者以外の社員でも内容が理解できるように作成しましょう。次に書く時のポイントをあげます。
報告内容の順番を意識すること
顛末書には下記①から⑦の項目について報告することが必要です。またこの順番で記載すると読み手が内容を把握しやすくなります。
- 問題の発生日時、発生場所など
- 問題の内容(何が起きたのか)
- 問題の原因
- 被害や損害の規模
- 対応状況
- 再発防止対策
- 作成者の意見など
5W1Hを意識すること
上記の各項目について、報告内容を正確・的確に示すために「5W1H」を意識して文章を書きましょう。
- When:いつ
- Where:どこで
- What:何が
- Who:誰によって
- Why:なぜ
- How:どのように(再発防止のための対策方法になります)
文章はなるべく箇条書きにすること
①から⑦の項目ごとの文章を一文でまとめずにいくつかの箇条書きにしましょう。また、箇条書きにした一文もできるだけ短文でつなぐようにすることで、すっきりとしたまとまりのある文章になります。
感情を記載しないこと
顛末書は問題について客観的な視点で報告する書類なので「大変だった」「困った」など担当者や報告者がその時々に感じたこと、思ったことを書くのは避けましょう。
顛末書に資料や書類を添付する場合
顛末書の内容を補足するためにデータ・画像・見積書や請求書などは、文章に対応した番号や記号を振ることで添付書類との紐づけができます。(顛末書文例1の⑪参照)
顛末書の提出手順
顛末書の作成後から提出するまで(1)から(3)の手順で進めます。
(1)書類の記載内容について直属の上司に確認してもらう
問題の担当者が顛末書を作成した場合は、直属の上司も記載内容の責任を負うため、会社に提出する前に内容をチェックしてもらい承認を得るようにします。
その際、文章の内容がわかりづらい、説明のポイントがずれている、再発防止策の内容が不十分などの理由で上司から書き直しを指示された場合は修正し、再度確認してもらいましょう。
(2)添付書類の確認を行う
顛末書に添付書類などがある場合は、適切な添付物かどうか、添付物のデータや記載内容に漏れや間違いがないかなどをチェックします。直属の上司がいる場合はこの点も確認してもらいましょう。
(3)書類の提出方法
(1)(2)の手順を経たのち顛末書を提出します。顛末書はビジネス文書なので提出する際封筒の中に入れる必要はありません。
顛末書の文例1(社内へ提出する場合)
会社の発注ミスにより、取引先への納品数に違いが生じたケースを参考に、記入箇所と注意点を説明します。
① 令和〇年◯月◯日
〇〇〇〇 様 ②
③ 〇〇〇
〇〇〇〇印
④ 顛 末 書
この度発生しました冷凍食品〇〇ギョーザに関する発注個数ミスにつきまして、経緯と今後の対策を下記のとおりご報告申し上げます。⑤
⑥ 記
1. 問題の発生日時 ⑦
発生日 令和◯年◯月◯日
発生場所 〇〇〇〇
冷凍食品〇〇ギョーザ商品の発注個数を間違えるミスが発生
2. 問題が発覚した経緯 ⑧
・〇月〇日、発注先であるスーパー○○・担当者○○様より「到着商品の個数を確認したところ、注文数○○ケースに対して、〇〇ケースしか届いていない」との連絡があった。
・連絡を受けた〇〇が発注書の控えを確認したところ、個数の記入ミスが発覚
3. ミスが起きた原因 ⑨
・〇月〇日担当者○○がスーパー担当者〇〇様より〇月〇日発送分の追加について電話で受付済み。
・上記にも関わらず、変更個数の発注書作成を怠り通常の注文数で配送手配してしまった。
4. 問題の程度 ⑩
・冷凍食品〇〇ギョーザは、スーパー〇〇チェーン全店における〇月〇日の特売商品になっていたが、製造が間に合わず特売は中止。特売日は〇月〇日に変更
・本件により発生した費用は以下のとおり
・特売日変更チラシの作成費用など ◯円 (添付書類:チラシ作成請求書)⑪
・対応人件費 ◯円
・配送費 〇円
合計 ◯円
6. 現状の対応 ⑫
・変更後の特売日に間に合わせるため〇月〇日の製造ラインを急きょ24時間稼働とし、深夜勤務従業員〇名を配置。
・トラック〇台を急きょ配送手配済み。
7. 再発防止策 ⑬
・取引先より通常注文数以外の追加、減少など注文数の変更を受けた場合、担当者が直ちに変更後の発注書を作成することを徹底する。
・発注書の控えは担当者ではなく上長が管理することとし、配送手配日前日に上長と担当者とで再度発注数の確認を行う。
この度は担当者の発注個数ミスにより、この様な問題を起こしてしまいました。
深く反省するとともに、再び同様の問題が起きないよう、担当者及び部署全体で体制を見直し再発防止に取り組んで参ります。 ⑭
⑮ 以上
- 日付 作成日または提出日
- 宛名 宛先は社長、支店長、工場長などケースによって違います
- 作成者の担当部署と姓名を書き、名前の横に捺印します。場合によっては関連部署の責任者名と報告者名を両方記載することもあります
- 書類のタイトル 「顛末書」とタイトル名を記入し、行の中央に置く
- 前文 報告内容を簡潔に書く
- 「記」と記入し、行の中央に置く(フォーマットによっては不要な場合もあります)
- 問題の発生日時、発生場所など
- 問題が発覚した経緯を時系列で詳細に書く
- 問題が起きた原因
- 問題の程度。社外への対応状況、損失額など
- 添付書類などがある場合
- 現状の対応。現在どのような対処を行っているかを書く
- 問題に対する再発防止策。「これから気をつけます」といった単なる注意喚起ではなく具体的な対策の記載が必要
- 報告者自身の意見やコメント、反省など
- 「以上」と記入し、行の右端に置く
顛末書の文例2(社外へ提出する場合)
文例2は、文例1の内容で社外(この場合は取引先)宛に顛末書を提出する場合の文例です。
社外向けの場合は、問題が起きた経緯、原因、再発防止策を説明し、文章の冒頭もしくは最後に謝罪文を入れます。
令和〇年〇月〇日
〇〇株式会社
(役職名を記入)〇〇〇〇様
〇〇株式会社
(部署名を記入)〇〇〇〇印
顛 末 書
令和〇年〇月〇日に発生しました冷凍食品〇〇ギョーザの納品数違いによるトラブルについて、多大なるご迷惑をおかけいたしましたことを深くお詫び申し上げます。 今回の件について原因が判明いたしましたのでご報告させていただきます。
記
1 令和〇年〇月〇日、貴社担当〇様より弊社担当〇宛てに「商品の到着個数を確認したところ、注文数○ケースに対して、〇ケースしか届いていない」とのご連絡を頂きました。
2 連絡を受けた〇が発注書の控えを確認したところ、個数の発注ミスが発覚いたしました。
3 ミスの原因は、令和〇年〇月〇日、〇が〇様より〇月〇日発送分の当該商品の追加注文を受けていたのにも関わらず、変更個数分の発注書を作成せず通常の注文数で配送手配したことによります。
今後は通常注文数以外の追加、減少など注文数の変更を受けた場合、担当者が直ちに変更後の発注書を作成すること、また配送手配日前日に上長立会いのもと、再度発注数の確認を行うことを徹底いたします。
以上
顛末書を受け取った後にすべきこと
経営上層部が顛末書を受け取った場合、まず問題が起きた経緯や原因を把握することは必要です。しかしもっとも大切なことは再犯防止策の内容確認です。再犯防止策が適切かどうかを吟味し、不適切な場合は再考・変更することを問題が発生した部署に指示します。ケースによっては顛末書の再提出を求めます。また再犯防止策がきちんと継続されているか(途中、勝手な判断で止めていないか)を随時確認することが重要です。
適切な再犯防止策を徹底することにより、同様の事故を防ぎ、万一同様の事故が起きた場合でも素早い対処により被害を最小限に食い止めることが可能になります。
まとめ
顛末書は問題の経緯や現状、再発防止策などを文章で説明をするため、記載内容が多くなりがちです。しかし定型の書式に沿って書き方のポイントや注意点を参考にすることで目的にかなった顛末書を作成することができます。顛末書の文面は作成者自身で考えますが、ネット等で複数事例のサンプルが出ているので参考にすると良いでしょう。
また顛末書は関係者だけではなく社内外の複数人が目を通し、保存する書類なので、書式や記載内容に不備がないようにする必要があります。そのため作成後は上司など他の人の目線で内容に記載漏れや不適切な表現などがないかチェックをしてもらうことが大切です。 人事担当者としては、共有した顛末書の内容を把握することが必要です。重大な事故など場合によっては当事者、関係者の配置転換や異動等に関わることもありますので、問題があった部署の上長から状況を聞いたり、上層部の意向を確認したりする必要が出てくるでしょう。
- 労務・制度 更新日:2022/08/31
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