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プレゼン成功における5つのポイント│澤円さんの管理職向け社内プレゼン術【後編】

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採用、評価、育成、労務など、多岐にわたる人事領域の業務。近年は人材の流動化や人材不足も相まって、多くの課題やタスクを抱えている担当者、特に中間管理職の方が少なくありません。

こうした状況の打開策として、例えば評価であればタレントマネジメントシステム、採用であればリクルーター制度など、業務効率化や最適化のために、さまざまな新システムや制度を導入したいと考えている方は多いのではないでしょうか。

そんなときに避けて通れないのが、意思決定層へのプレゼンです。彼らが真に求めていることを理解した上で、説得力のあるプレゼンを行い、スムーズに決済の承認を得るためにはどうすれば良いのでしょうか。

日本マイクロソフト時代にエバンジェリストとして、年間200〜300回ものプレゼン・講演をこなし、「プレゼンのプロ」の異名を持つ澤円さんに、前編・後編にわたってその極意をインタビュー。前編では、プレゼンに臨む前の「意思決定層が真に求めていることの捉え方」について解説しました。後編では、提案本番を成功させるための「今日から使えるプレゼン術」について聞いていきます。

プレゼンを成功させるためのTips5選

— 前編ではプレゼンそのものの前にまず、「経営と現場の両方を理解した上で、それぞれをつなぐ仕組みをつくる」という、マネージャーが会社で果たす本質的な役割について解説していただきました。その上で「自分が提案するシステムではそれがうまくできますよ」ということを、意思決定者に現場の情報をエビデンスとして示しながらプレゼンすれば良い、ということでしたね。

レポートや聞き取り、日々の数値進捗(しんちょく)のチェックなどを通して、現場を理解する

と並行して意思決定者を観察し、その人が何を欲しているのかを自分自身で編み出す

欲していることが分かったら、自分の提案がそれを満たすものであることが伝わるよう、現場の情報をエビデンスとして示した上でプレゼンする

— では実際にプレゼンをする上で、話し方やスライドの作り方など、具体的にどんなポイントに気を付ければ良いのでしょうか?

澤さん: ぜひ押さえていただきたいのは、以下の5点です。

  • 数値化する
  • 「1次体験」を伝える
  • 5W1Hを明確に
  • スライドは極力シンプルに
  • 時間のパラメータを示す

それぞれ解説していきましょう。

・数値化する

澤さん: 数値化できるものは徹底的に数値化しましょう。先ほど、現場を理解し、その情報をエビデンスとして示すことが大切だというお話をしました。エビデンスとして最も説得力があるのが、数字です。

例えば「最近の若い人は比較的すぐに辞めます」と言ったところで、具体的な情報はまったく伝わりません。しかし、これがもし「わが社では22~27歳の社員が入社して3年以内に45%辞めます」であればどうでしょう。情報の精度が上がり、説得力がぐっと増しますよね。エビデンスをエビデンスとして機能させるためにも、大ざっぱな表現は排除し、数値化にこだわってください。

・「1次体験」を伝える

澤さん: 例えば、あなたが箱根旅行の宿を検討しているとします。それを知った友人から「A旅館、口コミサイトで1位らしいよ」と言われるのと、「この間B旅館に泊まったんだけれど、温泉がすごく気持ち良くて食事がおいしくて、接客もすごく丁寧で、部屋からのお庭の眺めも最高だったよ」と言われるのでは、どちらに泊まってみたくなりますか?

— 私は後者です。

澤さん: そうですね。情報としては前者の方がお墨付きなのですが、それはその友人自身が実際に体験したわけではありません。

相手に自分の提案を魅力的に感じてもらい、行動を起こさせるためには、それが自分自身が体験した「1次体験」の情報であるかどうかが肝となります。提案をする際は、なるべく自分自身が状況を体験して感じたことを言い切れる状態にしておき、断定表現を使ってプレゼンしましょう。

逆に避けなくてはならないのは、「おそらく・きっと・~らしい」などの推量や伝聞表現です。「1次体験」の情報ではないことが相手に伝わってしまいます。

・5W1Hを明確に

澤さん: これは先ほどの2つのポイントにも関連します。実際に自分で体験していれば、5W1Hはおのずと分かるはずです。
5W1Hそれぞれの情報は、可能な限り具体的にしましょう。タレントマネジメントシステムにまつわる話を例として挙げるならば、「今のチームリーダーは適正を満たしていない人が多いです」ではなく、「営業部の鈴木さんと佐藤さんと渡辺さんは、新しいチームリーダーの山本さんに営業経験がないため、成績が伸び悩んだときにも指導してくれないことに不安を感じています。そしてマーケティング部の小林さんと斎藤さんは……」のような具合です。ぐっと解像度が上がりますね。

そうすることで相手と自分が同じ理解度で、同じ景色を見ながらそのテーマについて考え、議論することができるというわけです。

・スライドは極力シンプルに

澤さん: 1つのスライドには1つのトピックだけ。文字はなるべく少なく、情報はシンプルにしましょう。

文字が多すぎると、人は話を聞かずに文字を読むことに集中してしまいます。そうではなく、プレゼンは耳でしっかり聞いてもらうこと。スライドはその補助程度の役割だと思っておきましょう。

・時間のパラメータを示す

澤さん: 相手が次にとってほしい行動を、明確に示しましょう。

上手にプレゼンができたところで、聞き手が「で、私は何をすればいいの?」となるのが一番もったいない。聞き手が決済にOKを出しさえすれば問題なく進行できるのであれば、それが分かるような形で示しましょう。

何か必要なアクションがあるのであれば、具体的な行動の内容と、「来月までに何時間」「今期中に何回」といった時間のパラメータを併せて示しましょう。マイルストーンが置かれるため、聞き手は安心して提案を前向きに検討することができます。

質疑応答をどう乗り越える?

— すぐにでも取り入れられそうなプレゼン術をありがとうございます。プレゼンといえば、提案そのものよりも、質疑応答に苦戦するケースもあると思います。最後の質疑応答にはどのように臨めばよいでしょうか?

澤さん: 入念に準備していたとしても、想定外の質問が飛んできたり、見落としていた欠陥を突かれたり、といったことは付きものです。ただ、私は質問にその場でうまく答えられなくてもいいと思っているんです。

というのも、質問や突っ込みはその提案をブラッシュアップするためのヒントとも言えるからです。新たな情報やニーズを、あなた自身の提案によって引き出せた。であれば、持ち帰って改めて反映させれば、相手にとっても会社にとってもより良い提案になります。むしろプラスに捉えるくらいの気持ちでいいのではないでしょうか。

後編ではプレゼン術についてお話ししましたが、あくまでも大切なのは、前編でお話ししたような現場の理解や意思決定者の観察です。これができて初めて、今回お話ししたようなTipsが効果を発揮します。

プレゼンはその名のとおり「プレゼント」。今回のお話が、聞き手に「ちょうどこんなものが欲しいと思っていた!」と言ってもらえるような提案を行うための、参考になれば幸いです。

— プレゼンのみならず、仕事の仕方全体を見直すきっかけとなる貴重なお話でした。ありがとうございました!

自分自身の役割から捉え直そう

前編後編にわたって繰り広げられた澤さんの「プレゼン論」。本編では割愛しましたが、インタビューの中で「人はうまくいかないと、すぐにプレゼン術などの方法論だけで何とかしようとする。でも、そんな魔法のつえはないんですよ。自分自身でそれぞれのパターンの最適解を編み出すしかありません」とおっしゃっており、その核心を突いた言葉が印象に残りました。

読者の皆さんもぜひ、自身が会社から求められている役割を改めて捉え直すところから、ご自身が本当に行いたいと思っている提案=「プレゼント」とは何なのか、考えてみてはいかがでしょうか。

  • Person 澤 円
    澤 円

    澤 円 株式会社圓窓 代表取締役

    立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、日本マイクロソフト株式会社に転職。情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。2006年よりマネジメントに職掌を転換し、ピープルマネジメントを行うようになる。数多くのイベントに登壇し、プレゼンテーションに関して毎回高い評価を得る。
    19年10月10日より、副業として(株)圓窓 代表取締役就任後、20年に日本マイクロソフトを退職して独立。現在はさまざまな企業の顧問や社外取締役、エバンジェリストなどの役割を担う。テレビ・ラジオなどの出演多数。

  • 人材採用・育成 更新日:2025/02/19
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