学生座談会│学生にとっての「良いインターンシップ」とは? 志望度向上につながるインターンシップの作り方
学生のキャリア観醸成のために企業が学びの場を提供することが第一の目的ですが、実際の学生の視点においては、インターンシップによってその企業の印象が大きく上下 したり、場合によってはもともと高かった志望度が下がってしまうことがあったりと、企業にとっては一つの大きな山場でもあります。
そこで、今回は2024年卒の学生3名に集まってもらい、自分自身のインターンシップ経験から「良かったインターンシップ」と「悪かったインターンシップ」について聞いてみました。
今後のインターンシッププログラム設計の参考になれば幸いです。
― 皆さん、よろしくお願いします。今日は率直なお話を伺えればと思います。
まず、皆さんの「参加して良かったインターンシップ」がどんなものだったかを教えてください。
Aさん:私は、損害保険会社のインターンシップが印象に残っています。
夏、秋、冬と3段階に分かれたインターンシップで、夏が業界理解や企業理解、秋が現場での業務体験、冬が新規事業立案という内容でした。
だんだんと内容が深まっていく構成だったので、私の理解も深まっていったのが良かったですね。
そして何より、それぞれのインターンシップに参加するには選考に通過する必要があったので集まる学生の熱意が高く、一緒に意欲を持って課題に取り組める環境だったのが良かったですね。
Cさん:逆に、熱量や経験にむらのある学生が集まると、インターンシップ全体の印象が悪くなるということもあります。
私が参加したインターンシップの中で、選考なしで受けられるものがあったのですが、参加者全員がなんとなく惰性で受けている感じがあって……。
それはインターンシップの中で、社員さんからのフィードバックが薄かったからというのもあるのですが、やっぱり同じだけの熱量を持ってインターンシップに臨める学生が集まると、体験としてとても充実したいいものになると感じます。
Bさん:私は、Cさんがおっしゃったのとは逆で、「学生の経験値にむらがあるけれど、手厚いケアとフィードバックのおかげでいいインターンシップになった」という経験がありました。
― ぜひ聞かせてください。
Bさん:秋開催だったので私にとっては10社目のインターンシップだったのですが、同じ班にこれが初めてのインターンシップ参加という学生が2名いたんです。
でも、3日間の期間中、各班に1名の社員さんが付きっきりでいてくれたおかげで、とてもいい成長機会になりました。
行き詰まったときに適切なアドバイスをくださったり、方向修正のアイデアを提供してくださったりと、学生の熱量や経験に差があっても体験が損なわれないように配慮してくださったおかげだと思います。
フィードバックという面では、最後に「全員へのフィードバック」があったのがとても良かったですね。3日間付いてくださった社員さんから、一人ひとりに対して良いところ、改善した方がいいところを話してくださって、本当に見てくださっていたんだなと思いました。
― ケアされている、大切にされているという体験は企業への好印象につながりますよね。特にBさんのおっしゃっていた「フィードバック」は学術的にも学習効果への有効性があるとされています。フィードバックについて、印象的だったことを聞かせてください。
Cさん:Bさんのお話に近いのですが、やはり「個別のフィードバック」をいただけると自分自身の成長にもつながりますし、企業に対する印象も良くなりますね。
私が参加した3日間のインターンシップでは、1日ごとにフィードバックをいただくことができたので、1日目よりも2日目、2日目よりも3日目と自分が成長しているのを実感できました。
Aさん:逆に、個人を見ずに「それなり」の当たり障りのないフィードバックしかないインターンシップは、そこから自分自身への成長機会につなげにくいので、イマイチだなと思ってしまいます。
また、個別のフィードバックであっても抽象的すぎて次に生かしにくいものだったり、グループワークの過程を見ずに結果だけでフィードバックをされたりするのも、やはりあまり印象が良くありませんでした。
自分のやってきたことをどう総括し、どう次に生かすか。そのためのフィードバックをいただいて成長につなげたいというのがインターンシップに参加する最も大きな目的でもあったので。
Bさん:抽象的なフィードバックが好印象につながらないのは私も同感です。一方「褒めるだけ」のフィードバックもうれしくないですね。
良い点、改善点の両方を指摘していただけると、私たち(学生)のことを本当によく見て、よく考えてくださっているんだなと実感できます。
Cさん:分かります。「無理して褒めているな」みたいなフィードバックって、ありますよね(笑) 。こちらは本気で取り組んでいるので、フィードバックも本気で返していただきたいですね。
フィードバックの中で自分に意見を求めてくださって、その中で成長を感じるということもありました。
「あのときは、どういう気持ちだった?」「自分では、あの発言についてどう考えている?」と、内省だけではたどり着けないところまで伴走してくれるようなフィードバックは、本当にありがたいなと思いました。
あと私がとても印象に残っているインターンシップは、マーケティング会社のもので、内容も実践的でとても良かったのですが、インターンシップ後にも自分の進路のことについて相談に乗っていただいたりと、フィードバックの範疇を超えた対応をしていただき、とてもうれしかったですね。最終的にその会社の内定を受諾しました。
― お話を伺っていると、皆さんインターンシップには成長機会を求めていらっしゃるように思いました。成長につながるインターンシップはどうやって探しているのでしょうか?プログラムを見比べていたりするのでしょうか。
Bさん:先輩からの口コミです。私は業界研究を兼ねて幅広い企業のインターンシップに参加したかったので、「あのインターンシップが成長につながったよ」とか「すごくいいプログラムのインターンシップだったよ」とか、そうして薦めてもらったものを中心に受けました。
高評価な口コミの内容としては、やはりフィードバックが充実しているものが多かったですね。
結果、私が参加したインターンシップは企業の方が時間と人手を割いて、しっかりと成長機会を提供してくださるものが多かったですね。
― 企業側の「本気度」は、企業が思っているよりも学生さんに見抜かれているのかもしれませんね。Cさん、Aさんも口コミはインターンシップ探しの参考にされましたか?
Cさん:私は、選考期間に向けた自己成長もインターンシップに期待していましたので、結構手当たり次第にたくさん受けましたね。夏休みはインターンシップで埋まっている、という状態でした。
ただ、キャリアセンターや就職課よりも、先輩の口コミを重視したという人は私の周りにも多かったですね。
Aさん:私も口コミは参考にしましたが、インターンシップを通じて自分の進む業界を探そうという思いがあったので、就活の軸でもあった「人々に幸せを与えられるか」「インパクトのある仕事ができるか」という基準でまずは企業を選び、インターンシップがあれば参加するということが多かったですね。
― 皆さん、口コミを中心としつつも自分自身の「就活の軸」だったりインターンシップに求める意義だったりを大切にしながら選んでいるんですね。
中には早期選考に進めるインターンシップもありますが、そういうものを選ばれた方はいますか?
Cさん:私は早期選考もインターンシップに求めていたので、積極的に参加しました。できるだけ早めに内定を獲得できれば、後々気持ちの面でも楽かなと思ったからです。
実際、先ほどお話しした内定先の企業は早期選考で入社を決めました。
― ここから、少し内容を変えて「中小企業がインターンシップに学生を集めるには」というテーマでアイデアを聞きたいと思います。皆さん、有名大学に在籍されていますが、中小企業のインターンシップには参加されましたか?
Bさん:大学3年の5月から6月にかけては、名前を知らない企業のインターンシップにもたくさん参加しました。
理由は面接の場数を踏みたいということだったのですが、中にはハッとするほどすごい企業もありましたね。
共通しているのは、担当される社員の方が「キレ者」だということかもしれません。わずかな内容のワークで的確に鋭いフィードバックをしてくださったり、面接の中ですら自分が成長できていると実感できたり。
早めの時期にインターンシップを開催することで、より多くの学生と接することができるのは間違いないですし、内容次第で志望度が上がるということも十分にあり得ると思いました。
Aさん:私は大手企業志向もあったので中小企業のインターンシップには参加しませんでした。
とはいえ、そもそも「知らない」というのが一番の問題のような気もします。もし先輩や同級生が参加して「すごくいいインターンシップだったよ」と聞かされたら、名前の知らない企業でもチャレンジしてみたと思うからです。
Cさん:そうですね。「知らない」が一番のハードルのような気がします。
それを乗り越えるのは、一つには利用ツールの選定があるかもしれません。私は自分が乗り遅れていないという感覚をつかむために多くのインターンシップに参加しましたが、その中には企業からのスカウトがきっかけで参加したものもありました。
特に初期のインターンシップでは学生が志望企業以外は知らないことが多いので、スカウト機能などを通じて、企業側から学生にアプローチするというのも一つの手かもしれません。
― では最後に、皆さんがインターンシップを通じて「変わったこと」と「変わらなかったこと」をお伺いしたいと思います。Aさん、いかがでしょうか?
Aさん:一番大きな変化は、自分が行きたいと思える業界、企業が見つかったことですね。そして、私の場合は「何をやるか」よりも、「誰と仕事をするか」の方が大切なんだとも気付きました。
これはインターンシップを通じてさまざまな企業で業務体験をして、多くの人と出会って分かったことです。
逆に変わらなかったのは、就活の軸ですね。人々を幸せにできるか、インパクトの大きい仕事ができるか、自分が成長できるかという視点はずっと持ったままでした。
― ありがとうございます。軸はブレずに、多くの人と接する中で企業選択のポイントが変わっていったということですね。ではBさん、いかがでしょうか。
Bさん:変わったのは「業界トップがいい企業」という価値観がひっくり返ったことです。
とある、IT業界でトップといえる企業に面談の機会をいただいたことがあるのですが、主体性のある社員さんが少ないと感じてしまったんです。そのことから「トップだからといって、必ずしも私にとっていい会社とは限らない」と実感しました。
逆に、業界トップではない企業の方が主体性のある社員さんが多いと感じることもありました。実際、それが決め手となって内定を受諾したという経緯もあります。
変わらなかったことは、Aさんと同じく就活の軸ですね。エンドユーザーに直接価値を届けたいという思いは、就活全体を通じて変わりませんでした。
それは、それまでの志向を変えてコンサル業界のインターンシップに参加したときに実感しました。やはり、インターンシップを通じて実際の業務を知ることで、多くのことが学べるし、自分のことも分かってくるなと思います。
― ありがとうございます。インターンシップでは、調べただけでは分からないことも多く知ることができるということですよね。それが企業選択のカギになっているんですね。では最後に、Cさんはいかがですか?
Cさん:志望する業界・規模感が180度変わりました。インターンシップ探しの序盤では「大手外資コンサルしか見ていない」という状態だったのですが、いろいろな人と話し、体験する中で価値観が変化していったと思います。結果としては100人規模のマーケティング会社で内定を受諾しました。
変わらなかったのは、「成長し続けたい」「必要とされたい」というような、自分の中の人生の価値観みたいなものです。
その価値観を持ったまま、インターンシップを通じてさまざまな体験をしたことが先ほどお話ししたような「180度の転換」を起こしたのだと思います。
― 今日は皆さん、ありがとうございました!
- フィードバックの内容、深さを通じて企業の「学生を大切にする」姿勢を見ていること
- 人との出会い、仕事体験によって会社選びの価値観が変わること
- 自分の中にある「芯」は変わらないこと
です。
このうち、あとの2つは学生の中での 変化や軸であり、企業が誘導するのは難しいかもしれません。そのため、企業としてできるのは「学生のことを親身になって考え、成長に寄与するインターンシップを設計すること」に尽きるのかもしれません。
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- 人材採用・育成 更新日:2023/06/19
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