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“会社見学”にはリスクも潜んでいる!? 実施のポイントとは

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新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ目的で行われていた行動制限がほぼ全面的に解除されたことで、採用施策の1つである「会社見学」を今年度は計画している方もいらっしゃるかもしれません。

そこで今回は、この伝統的な採用施策である会社見学を実施するに当たって気を付けるべきこと、実施の際のポイントについて、数々の企業に採用コンサルティングを提供している株式会社人材研究所の曽和利光さんにお話を伺いました。

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― 今回のテーマは「会社見学」です。伝統的な採用施策の1つですが、コロナ禍によってこの数年は実施していなかった企業も多いと思います。まず、どのような目的で行うべきなのか、という基礎から教えてください。


曽和さん:はい。まず会社見学の目的は「動機付け」に置きましょう。RJP(※ Realistic Job Preview:現実的な仕事の情報開示)のために行うというパターンもありますが、それは主に内定者向けの施策になります。採用のために行う場合の目的は動機付けということになりますね。

― 「動機付け」が目的であれば、他にもいろいろ施策はあると思います。「会社見学だからこそ実現できること」はあるのでしょうか?


曽和さん:たとえば、工場を持っているメーカー、現場のある建築系企業などは、それらを見せることでビジネスの規模感や内容をより明確なイメージとして伝えることができるので向いています。
普段はなかなか見ることのできない場所でもあるので、プレミアム感もあるでしょう。

また、オフィス環境に力を入れている企業や、窓からの景色がきれいな企業もいいでしょう。きれいで働きやすそうなオフィスを見ると、それだけで学生のテンションが上がって志望度も同じように上がるということは十分に考えられます。

逆に言えば、これら以外のパターンで会社見学が有効に働くことは少ないと思われます。

― 競合の多い業界で、学生に「社風」や「人柄」などを見てもらいたいという理由で会社見学を行う企業もあると思いますが、そういった場合はどうでしょうか?


曽和さん:会社見学にはリスクもあるので、先ほどお話ししたような特徴を持ち合わせていない企業は他の施策を検討してもいいのではないでしょうか。
例えばインターンシップや個別企業説明会でも社員と学生との交流機会を設けることができますので、社風や人柄を伝えることができます。

そして何より、それらの方法は企業側が用意したプログラムの中で完結するため、会社見学に特有の「リスク」を避けられることも、おすすめしたい理由です。

― 会社見学の「リスク」というと、どのようなものでしょうか。


曽和さん:いくかありますが、ひとつは「意図しないものを見られてしまう」というリスクです。

社員は毎日オフィスを見ていますので、いざ学生を迎えるに当たって準備のために見渡してみても、違和感を見つけることが難しかったりします。
ですが、学生の視点から見るといろいろ見つけてしまうものです。「厳しいスローガンが書かれたポスター」や「営業成績のグラフ」が社内に貼り出されていたら、それは「ブラック企業なのでは…?」と疑念を抱くのに十分な材料になり得ます。

他にも、雑然と資料が山積みになったデスクや、あふれているゴミ箱のようなものも、見られてしまうと動機付けのつもりが逆効果になってしまうパターンもありますね。

― なるほど。他には、会社見学の中で出会う社員との交流にも気を付けた方がよさそうですね。


曽和さん:そうです。それが2つめのリスクです。
場を和ませようと思ってか、伝える必要がないことを気軽に口にしてしまう社員というのが、少数ですがどんな企業にも存在してしまいます。

会社見学の中で出会ってしまったら学生の印象に大きく影響しかねないため、意外と無視のできないリスクです。

― いまお話いただいたようなリスクは、最初にご紹介いただいた「会社見学が有効に働く企業」にも存在するものだと思います。実際に会社見学を実施するに当たって、どのように気を付ければリスクを低減できるのでしょうか。


曽和さん:例えば、テーマパークの体験型アトラクションを思い浮かべてください。船に船長とお客さんが乗ってジャングルの川を下るというアトラクションがありますが、あれは視線誘導と言葉による説明が計算し尽くされています。

「あーっ!あんなところに大きな象が!」と視線を象に集中させている間に後からワニが迫ってきていて、いいタイミングでお客さんを振り向かせて驚いてもらう……というような仕掛けがずっと続いているんですよね。

会社見学にも同じようなテクニックが求められます。

例えば工場を見てもらうのであれば、その中で特に見てほしいポイントを事前に決めておき、視線を誘導し続けるのです。
「衛生管理」を見せたいのであれば、クリーンルームに入る前にエアシャワーを浴びているところを見てもらう。「品質管理」を見せたいのであれば、規格外品がはじかれているラインを見てもらう、などの方法です。

言葉で説明しながら視線を誘導し続け、見てほしいものを見てほしい順番で学生に示していくようにしましょう。
ただ漫然と「好きに見てください」と言ってしまえば、学生は企業にとって見られたくないものを必ず見つけてしまいます。

― なるほど。では、会社見学の中で出会ってしまう社員についてはどうコントロールすべきですか?


曽和さん:会社見学のルート上にいるであろう社員と、「学生と話す機会があった場合のシミュレーション」をしておくといいですね。

ただ、話す内容まできっちりと決めてしまうと社員も話しにくいと思いますので、事前に打ち合わせをして、社員本人が何を話したいのかを聞いておくのがいいでしょう。その中で、人事として打ち出したいメッセージに近い内容に絞って話せるように準備するくらいがちょうどいいと思います。

― 職場を見てもらったり社員の話を聞いてもらったりということをリスク覚悟でやるのであれば、そうやって持ち帰ってほしいイメージを明確にすることはとても大事ですね。


曽和さん:そのとおりです。インターンシップや会社説明会はきっちりとスクリプトを決めているのに、会社見学だけはなんとなく自由に見学してもらっている、みたいな企業もありますが、採用施策の1つなので当然ながら「狙い」が必要です。

そういう意味では、イメージギャップの解消を目的として会社見学をするのも有効かもしれません。

実際には労務管理がしっかりしているのに激務だと勘違いされている企業、業種全体のイメージからブラック企業だと勘違いされている企業など、イメージギャップに悩む企業は多くありますよね。
そういった企業が「実際には違うんですよ」と伝えるために会社見学をするというのは有効に働く場合があります。

会社見学に来る学生というのは、必ず何か強い目的意識があります。オンラインの説明会やインターンシップなど、他に参加したいイベントはいくらでもあるのに、時間と交通費を使って来てくれているわけですから。

そして、それは「自分の目で企業の実際の姿を確認したい」という欲求であることが多いのです。なので、イメージギャップに悩んでいる場合は、「実はそうではない」ということを「発見」してもらって誤解を解くためのいい手段かもしれません。

ただし、条件として「学生が見て魅力的に感じるものがある」ことが前提です。工場や現場などがなく、オフィスにも自信がないのであれば、インターンシップなど他の方法を使う方がベターです。

― 今日はありがとうございました!

最後に曽和さんからお話があったように、会社見学に来る学生には「企業の実際の様子を自分の目で確認したい」という欲求があります。

その欲求に応えられるだけの情報を提供するためには、ただオフィスを自由に見てもらうだけでは足りず、人事担当者や現場社員による解説、案内が必要です。

「これを見てもらえれば学生の志望度が上がるかも」「これを見てもらうことでイメージギャップの解消につながるかも」という要素を探してみて、もしあれば会社見学を計画してみてもいいかもしれません。

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  • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

    HUMAN CAPITALサポネット編集部

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  • 人材採用・育成 更新日:2023/12/05
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