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新卒採用でも「専門性や能力」を重視する傾向に?

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2022年もすでに1か月が過ぎ、2か月後の3月からはいよいよ2023年卒の新卒採用の広報活動が開始されます。2019年の冬から始まったコロナ禍での生活も3年目に入り、コロナ禍での新卒採用としても3シーズン目を迎えます。
(インターンシップ期間からすべてコロナ禍であるのは2シーズン目です。)
オンラインを活用した面談や面接、また、感染予防対策をしての対面の機会創出など、さまざまな工夫がなされ、新卒採用の手法も大きく変わりました。また同時に、コロナ禍は私たちの働き方も大きく変化させました。リモートワークが推進され、仕事内容や成果の可視化が注目を浴びるようになり、社員と会社の向き合い方が変わるなかで、ジョブ型雇用の導入など、より個人のスキル・能力への注目度が高まっているように感じます。

本コラムではマイナビで実施した調査の結果をもとに、こうした意識の変化について検証してみたいと思います。
新卒採用においては、就労経験のない方を採用する「育成を前提としたポテンシャル採用」が主流となるため、どちらかというと、「(求職者の)個人の能力」より「人柄」や「組織とマッチするか」が重視される傾向にありました。

しかし、少しずつではありますが、この考え方に変化が起こっているように感じます。

マイナビでは毎年年末に「人材ニーズ調査」を実施し、その中で、雇用形態別に「採用の理由」を聞いています。これまでの調査では、新卒採用は「事前の計画による定期的な採用」が最多、中途採用では「専門能力や技術を持つ人材の獲得」が最多、という状況が続いていましたが、2021年12月実施の調査では、新卒採用においても「専門能力や技術を持つ人材の獲得」が最も高い割合になりました。【図1】【図2】
マイナビ人材ニーズ調査
これまで、中途採用は、退職などで人手が足りなくなったポストや、新規事業で人手が必要になったポストを埋めるために実施されることもあり、「専門能力や技術を持つ人材の獲得」という理由が最多になりますが、新卒採用では年齢構成の適正化や、組織の強化など「適正な組織を作る」という点に焦点が当てられており、「事前の計画による定期的な採用」として実施されている、という説明をしてきました。

しかし昨年から、新卒採用においても「専門能力や技術を持つ人材の獲得」と「事前の計画による定期的な採用」が拮抗するようになり、わずかではありますが、2021年調査で「専門能力や技術を持つ人材の獲得」が逆転したのです。もちろん、このことだけで、すぐさま新卒採用の在り方が変わったと結論づけることはできませんが、ジョブ型雇用導入の文脈で語られるような個人のスキル・能力への注目度が高まっている可能性はあります。
ただし、「採用選考の段階で、個人のスキル・能力だけで判断されるようになった」いうわけではありません。同じ調査で「採用(契約)のスタンス」も聞いているのですが、新卒採用では「ポテンシャル(将来の活躍可能性・潜在能力)重視」が最多、中途採用では「即戦力人材を重視」が最多となっています。【図3】
マイナビ人材ニーズ調査
つまり、新卒採用ではあくまでポテンシャル採用であり、将来的に「専門能力や技術を持つ人材」になりえる方を採用し、そういう人材に育成したいという考えが見てとれます。入社後すぐに専門能力や技術を持つ人材として活躍されることを望まれる中途採用とはその点が異なります。

ただ、採用選考の段階で「潜在的な能力・スキル」を見極めるということは非常に困難なことだと思われます。人柄を理解するための面接だけでなく、基礎となる能力や実技のレベルが把握できるようなアセスメントを利用するなどして、多面的に評価していく必要があると思われます。
ここからは、学生側の考え方についてみていきます。
就職モニター学生に対して、「入社予定先企業を選択したポイント」としてあてはまるものを3つ選択してもらいました。いずれも、選考開始月である6月の結果で、現行のスケジュールと同じ17年卒(2016年実施)から22年卒(2021年実施)までの6年間の推移をグラフにしました。

17年卒~18年卒は「企業経営が安定している」が最多となっていたのですが、19年卒以降は「自分が成長できる環境がある」が最多となり、「企業経営が安定している」は上位ではあるものの順位を落としました。18年卒と19年卒の調査実施期間の間にどうしてこれほどに価値観が変化したのか、本調査からだけでは明確にわかりません。しかし、それぞれの調査時期(18年卒は2017年、19年卒は2018年)から考えると、ちょうどこのころ、アンドリュー・スコット、リンダ・グラットンが著書「LIFE SHIFT(ライフシフト)」の中で語った「人生100年時代」という言葉が政府の政策やニュース等で聞かれるようになった時期と重なります。

超長寿社会のなかで1つの会社だけで仕事人生を終えることが難しくなってくることが指摘されており、「教育⇒仕事⇒引退」という1パターンな人生だけでなく、様々なシナリオを用意し、“生涯現役”でいられるような準備を必要であること、またそのためにも、「キャリア開発は組織任せではなく、個人で取り組むもの」という考え方を持ちましょう、といったことが流布されるようになりました。就職活動を行う学生に、どの程度、こうした考えが浸透していたかはわかりませんが、社会全体の価値観の変化が、学生の企業選択の際に影響を及ぼしていたと推測されます。
マイナビ就職モニター調査
学生のいう「自分が成長できる環境がある」の“成長”には様々な意味があると思います。「人として」といった広い視点のものから、「技術的な面で」といったより具体的なものまで、どれか一つというわけでもなく、総合的な成長という意味で使われているかもしれません。いずれにしても、入社予定先の「企業」の状況よりも、そのなかで「自分」がどのように成長できるのか、に視点が向いている点は大変興味深いです。

先ほど企業が新卒採用を行う際の理由として挙げた「専門能力や技術を持つ人材の獲得」とあわせて考えると、企業側も学生側もより「働く人(個人)」に意識が向いているのを感じます。だからといって組織への意識がおろそかになるというわけではなく、あくまで「個人が集まることで組織が形成されている」というふうに個人と組織の関係性を示す矢印の向きが変化しているように思います。

「新卒一括採用」をはじめとした日本型雇用に関しては、見直しを求める声もあがり、様々な意見があると思います。私自身は「新卒一括採用」がイチ・ゼロで良い・悪いと言えるものではなく、その捉え方を時代の流れに合わせて変化させ、その時々で、より良い手法を取っていくことが望まれているのではないかと考えています。

コロナ禍で働き方が大きく見直され、日本社会全体が変化していく様を肌で感じる今日この頃ですが、今後も様々な調査を通じて、変化していく様を捉えていきたいです。
  • 人材採用・育成 更新日:2022/01/31
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