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現場にも会社にもメリット大! 採用活動における現場社員協力の始め方

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インターンシップ、説明会、選考、内定者研修、内定式、そしてまたインターンシップ……と、今や採用担当者は「年中繁忙期」の状態です。一方で学生の数は微減傾向の半面、人材不足により新卒採用実施企業は増加にあり、採用そのものの難しさも年々増しています。

少しでも多くの学生に自社に興味を持ってほしい、実際に働く社員からフラットに意見が欲しい……そんな思いから現場社員を採用に巻き込みたいと思っている担当者の方も多いのではないでしょうか。
とはいえ、実際には忙しい現場からの協力をうまく取り付けられないなど、苦労されている方も多いのではないかと思います。

しかし、今回お話を伺った河本英之さんは「採用活動への参加は、現場にも好影響を与える」と言います。
現場にも採用にもメリットのある、社員の活用法について詳しくお話を伺いました。


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採用活動への参加で「会社が元気になる」

— 多くの採用担当者の方が、現場社員を採用活動に巻き込みたいと思いつつ、なかなか協力を取り付けるのが難しいというお悩みをお持ちですね。


河本さん: そうですね。難しく感じる気持ちの根底には、「協力“してもらっている”」という現場への配慮、申し訳なさみたいなものがあることが多いようにも思います。

でも、本当はそんなことはありません。
採用活動に参加してもらうことで現場に好影響があること、ひいては会社全体が元気になることをしっかり説明できれば、現場を統括する上役は必ず納得してくれると思います。

— 採用活動に参加してもらうことで「現場に好影響がある、会社が元気になる」という点について、ぜひ詳しく聞かせてください。


河本さん: 人事以外の部署、ひいては配属先部署の社員と学生が関わりを持つことで、評価過程では知り得ない直感的な“この学生は向いていそう”をキャッチアップできるのは大きなメリットでしょう。それ以外にも、大きく2つの理由があります。1つが「リテンション効果」、そしてもう1つが「エース社員の発掘」です。
まず「リテンション効果」についてお話しします。
採用活動の中で現場社員に協力してもらう場面というのは、多くが学生のグリップですよね。かつては就活生であり、その会社に入社を決めた一人としてその経験談を語ることで、学生にも納得感を持ってもらいながら入社意向を高めてもらうことができます。

そのとき、現場社員は改めて「自分がこの会社を選んだ理由」を思い出すことになります。日々の仕事の中で忘れかけていた、就活生だった頃の気持ち、会社に何を期待して、何を魅力に感じて入社をしたのかをもう一度、思い出してもらうことができるでしょう。

すると、改めてその会社にいる「理由」を認識できますので、その後に仕事のパフォーマンスが上がったり、会社に対するロイヤリティが上がったりといった効果が見込めます。

— なるほど。学生に語るために準備をすることで、自分自身が入社した理由を思い出す、と。


河本さん: はい。普通、日々の業務の中ではそんなことを考える余裕はありません。採用活動に参加してもらうからこそ、得られる効果です。
また、リテンションされた結果、離職率が下がるというのも期待される効果の一つになります。

— では、もう一つの効果「エース社員の発掘」についてはどうでしょうか。


河本さん: これから入社するかもしれない学生を相手に入社意向を高めるためのトークをし、質問に答えていくためには、自分自身の入社動機などを振り返るだけでなく、「会社の代表」として学生と接する高い視点も求められます。

お気付きかもしれませんが、これはマネジメントを学ぶ上で非常に有用なレッスンにもなるんです。

— なるほど。自分の体験・経験を棚卸しした上で目的を持って対話をしていく、という行為はまさにマネジメントの重要な一部ですね。


河本さん: はい。ですから、それらの能力を求められる採用活動で活躍する現場社員は、いずれエースになることが多いんです。
これは、私自身の体験に基づく理論でもあります。前職で採用業務に携わるようになってからすぐに全社MVPを獲得するなど、明らかなパフォーマンス向上を実感しました。

— そこまでの効果があり、それを現場に対して語ることができれば協力を得ることもできそうです。


河本さん: 社員のパフォーマンスとロイヤリティが上がる、離職率が下がる、学生と向き合える人が採用活動に参加するので優秀な学生を採用しやすくなる。採用活動における現場社員活用は非常に効果的な施策なんです。

会社の未来を見る必要のある上役の人ほど、この効果をきちんと説明できればOKを出してくれるはずですよ。

採用活動に参加してもらう現場社員はどんな人がいい?

— 現場社員の採用活動への参加がいかに会社にとって効果的か、よく分かりました。一方、肝心な採用への効果を考えると、採用活動に参加してもらう社員は誰でもいい、というわけにもいかないように思います。マイナビが学生に行った調査では、社員の印象が志望度に大きく影響すると出ています。


河本さん: よく聞かれるお悩みです。会社に不満を持っている社員を採用活動に参加させた結果、むしろ学生の入社意向を落としてしまうのではないか……という懸念です。

まずは目的を意識することです。
多くの企業では、採用活動に協力してもらう現場社員として、ロイヤリティが高い「ハイパフォーマー社員」を選びがちです。
確かに学生からの反応はいいので、「採用」だけを目的とするなら悪い手ではありません。
一方でハイパフォーマーは忙しく、協力の取り付けが難しいという面もあります。それが、現場社員を採用活動にうまく巻き込めない理由になっている方も多いのではないでしょうか。

では、ここまでお話ししてきたように、目的を「リテンション」や「離職防止」にまで広げて考えるとどうでしょうか。できるだけ幅広く、多くの社員に協力してもらうことが重要になってきます。

3年目の現場社員全員を巻き込むなどの方法もいいでしょう。パフォーマンスが必ずしも高いわけではない社員も、学生を前にすると目を輝かせて会社のことを語る、ということはよくあることです。

現場社員に「どう語ってもらうか」が大切

— とはいえ、不平・不満を持った社員を採用活動に巻き込んで学生の志望度を落としてしまわないか……という不安もあります。


河本さん: そうですね。その場合は立候補制にしたり、現場からの推薦をもらうといったスクリーニングの方法もありますが、より幅広い社員に協力してもらいたいなら、「語り方」を知ってもらうのもいいと思います。

会社に100%満足している社員というのは、基本的には存在していません。みんな何かしらの不満を持っています。
その上で、学生に対してどう語るかということを考えてもらった方が効果的なんです。
私はよく、リクルーターのキックオフで自社の弱みについて話すときの方法もレクチャーしています。

— ぜひ具体的に教えてください。


河本さん: はい。大きく3つの方法があります。
繁忙期には残業も多くなる企業において、学生から「残業はありますか?」と質問を受けたパターンを想定して、具体的な語り方を例に挙げてご説明しましょう。
まず1つ目が「未来訴求」です。弱みや課題を認めた上で、未来に向かってその解決のために動いていることを示す方法です。
「いまは残業の多い月もあるんだけれど、全社で取り組んでいる働き方改革の効果が出始めていて、だんだん減っているよ」というような語り方になります。

2つ目が「両面訴求」です。弱みや課題のポジティブ面を併せて伝える方法ですね。
「確かに残業が多い月もあるけれど、それだけ会社に求められているということでもあるし、自分に任されている実感にもつながるよ」というような語り方になります。

そして3つ目が「比較訴求」です。他社も同じ、業界全体の傾向であると伝える方法です。業界研究中の学生にとって有益な情報にもなります。
「○月は残業が多くなりがちだけれど、業界全体が繁忙期だから、みんなそうなんだよ」というような語り方になります。

学生の問いに対して、「残業が多い月も確かにある」と答えているのはどれも同じですが、印象が異なりますよね。

— 本当ですね。正直に語っている印象も受けます。


河本さん: ここでうそをついたり、弱みや課題を過小に伝えたりしても、後々早期離職などにつながりかねません。正直に伝えることは大前提として必要です。その上で、話し方によって伝わり方が変わってきます。

今の時代、SNSに「○○社の社員からこんな話を聞いた」などと書き込まれ、炎上してしまうリスクもあります。
言い方次第で学生の受け止め方は変えられますし、危機も回避することができますので、採用活動に現場社員を巻き込む場合にはぜひ意識してください。

フェーズ別・現場社員の活用方法:母集団形成・前期

— ここから、採用活動のフェーズ別に現場社員にどう活躍してもらうかを伺っていきます。まずはインターンシップや合同会社説明会などを行う「母集団形成期」の前期ではどうでしょうか?


河本さん: この時期の学生は、まだ業界研究も進んでいないので、仕事内容などを語って、もその理解に必要な前提知識に乏しく、あまり響きません。
それよりは、「なぜ自分がこの企業に入ったのか」を語ってもらうのがいいでしょう。就活を始めたばかりで志望先も見えていないこの時期の学生が聞きたい内容とも合致します。

ただし、NGパターンが3つあります。

1つ目が「最初から第1志望だったから入った」のパターン。
仮に真実だったとしても、ストーリー性に欠けるのであまり学生に響きません。また、「第1志望じゃないと、この企業には入れないんだ」という印象を学生に植え付ける結果になることもあります。

2つ目が「何となく、ノリで」というパターン。
自分の入社動機を改めて語るのが恥ずかしいという理由でこの語り方をしてしまう方は多いのですが、学生が共感すべきエピソードがなく、がっかりされてしまいます。

3つ目は「第1志望に落ちたから」のパターン。
実際の入社動機として最も多いパターンではあるのですが、これが一番良くないですね。第1志望に落ちたことをあえて言う必要もないですよね。

しかし、

「最初はこんな軸で就活をしていて、こういう会社を受けていたけれど何か違うなと思ったことと、面接で落ちたことが重なって軸が変わっていく中で、今の会社に出合って入社を決めた」
というようなストーリー性がある語り口に変えて伝えれば、むしろ学生は「そういう話が聞きたかった!」となってくれる可能性も秘めています。

フェーズ別・現場社員の活用方法:母集団形成・後期

— では続いて、母集団形成期の後期、個別会社説明会や座談会などを開催することの多い時期ではどうでしょうか。


河本さん: 母集団形成の前期と違い、学生の業界理解・事業理解も進んでくるタイミングなので、「どんな仕事をしているか」「どんな流れで仕事をしているか」「やりがいは何か」の3点をきっちりと押さえて語ってもらうのがいいでしょう。

加えて、社風の伝達も重要な時期に入ってきます。
どの企業でも言える「オープンな社風」のような言葉ではなく、例えば
「私は2年目で事業計画を出して、3年目にはその責任者に任命してもらえました。誰にでもチャンスのあるオープンな社風です」

というように、具体的なエピソードを交えて差別化を図れる内容を考えておいてもらいましょう。

フェーズ別・現場社員の活用方法:選考から内定期間

— 最後が、選考から内定出しまでの期間です。リクルーター面談や内定者フォローなど学生に対する個別対応が発生しますので、学生の志望度を高められる社員に対応してもらいたいものです。


河本さん: そうですね。母集団形成期はどうしても相対する学生の数が多く、企業対マスの関係性しか築けないので、現場社員が活躍する場も座談会や説明会での登壇者という形になりますが、ここからは個別対応になっていきます。

— 具体的に、どのようなことをするといいのでしょうか?


河本さん: この時期に採用担当者が知りたい情報は、「自社の志望度がどのくらいか」「他にどのような企業を受けているのか」「どんな軸で就活をしているのか」のような、学生にとってあまり話したくない、センシティブな内容になっていきます。
ましてや、「人事」としての立場で学生から聞き出すのはかなり難しいことです。

— 学生側も警戒してあまり話してくれなさそうですね。


河本さん: はい。そこで活躍するのが面接官でもなく、人事でもない「現場社員」です。
個別対応だと「対話」が可能なので、いかに学生の本音を引き出すか、ということが大切になってきます。

そのためにはまず「自己開示」をすることと、「選考ではない相互理解の場」という前提をきちんと話すことです。

「僕も最初はうちの会社が第1志望ってわけじゃなかったんだ。A社B社を見ていたんだけれど、〇〇さんは他はどんな企業を見てる? どんな軸で就活をしているかを聞かせてくれたらアドバイスできると思うんだ」

といった聞き方です。その上で、共感を示しながら、時にはアドバイスを交えて関係性を構築していくのが定石になります。

— フェーズによっても求められる伝え方や聞き方のノウハウが異なりますね。それぞれに適した社員のコミュニケーションを意識できれば、より有意義な現場社員活用ができそうです。本日はありがとうございました!

「現場社員の採用活動」で会社をより良く、納得度の高い採用を

記事の前半で河本さんがお話ししてくださったように、現場社員に「協力“してもらう”」のではなく、「会社のためにも、現場社員には採用活動に参加してもらいたい」とメリットをしっかり伝えることで現場の協力は得やすくなります。

まずは自社にとって採用活動への現場社員活用にどのようなメリットがあるのか、そしてどのように採用活動で活躍してもらうことができるのかを棚卸しするところから始めてみましょう!


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  • Person 河本 英之
    河本 英之

    河本 英之 シーズアンドグロース株式会社 代表

    2005年、株式会社リンクアンドモチベーション入社。その後、同社の人事を担当し、08年に全社MVPを獲得。10年に採用コンサルティング・育成コンサルティングを専門とするシーズアンドグロース株式会社を創業し、現職。

  • 人材採用・育成 更新日:2024/01/25
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