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国内最大規模のドラッグストアが取り組む 従業員視点のメンタルヘルスケア

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メンタル不調による休職者の増加は、業界・業種を問わず起きています。何らかの対策を施したいものの、ストレスチェックとその後の産業医面談しか思い浮かばないという企業も多いでしょう。そこでご紹介したいのがウエルシア薬局の事例です。まずは国内のメンタルヘルスの現状から解説し、同社の先手を打った対策をご紹介します。

あなたの職場は大丈夫? 働く人におけるメンタルヘルスの現状

誰もがメンタル不調のリスクを抱える時代


健康についてよく「日本人の2人に1人が一生のうちに何らかのがんになる」という話を聞きます。その対策として定期的にがん検診を受けている人は多いです。では「日本人の5人に1人が一生のうちにうつ病になる」というデータを聞いて、具体的な対策を取っている人はどれだけいるでしょうか?

メンタルヘルスに何らかの問題を抱えている人の数は増加しています。厚生労働省の発表では、仕事によってうつ病などの精神疾患を発症し、労災認定を受けたケースは2023年で883件。統計を開始した1983年以降、過去最多となっています【図1】。
【図1】精神疾患労災認定件数/厚労省のデータを参考にマイナビで図表作成
あくまでも上記は労災として認められた件数であり、実際にはかなり多くの人がメンタルヘルスに問題を抱えていると考えられます。この労災認定件数の中には、カスタマーハラスメントによる労災が52件含まれており、そのうち45件は女性が顧客からのハラスメント被害に遭っています。厚生労働省の労災補償状況のデータからは、精神障害の労災請求件数の多い業種が公表されています。上位には福祉・介護業界や医療関連の仕事が多く、人を助け健康のためのサービスを提供している人が、こころを病むリスクが高いという皮肉な結果となっています。

うつ病患者の増加には様々な要因が考えられます。社会が複雑になり先が見えにくいことへの不安や、経済不況による生活不安、人手不足による労働環境の悪化などが挙げられます。ここ数年はコロナ禍により、人と人との距離を置く時間が増えました。リモート生活によって孤独を感じた人もいれば、再び通勤の毎日が始まり対人的なストレスを感じる人もいます。前者と後者は正反対のように見えますが、どちらも安心して相談できる相手が近くにおらず、一人で悩んでいる姿が思い浮かびます。

本人から積極的に訴えにくいのがこころの不調


以下の【図2】はメンタルの不調を感じた従業員が、どのような対策を取っているかを調査した結果です。「医療機関を受診」と答えた人は24.2%、「身内への相談」は19.8%。最も多い回答は「何もしていない」で37.0%となっています。何も対策をしていないと回答した人は、男性よりも女性の方が顕著です。

【図2】メンタル不調の対策/マイナビ調べ
従業員が企業に求めるメンタルヘルス対策として、最も多い回答は「ストレスチェックの実施」57.5%。次いで「ストレスチェック後の対策」42.9%、「企業内産業医や保健師への相談」31.8%となっています(マイナビ調べ)。ストレスチェック制度が義務化されてから約10年近くになり、定着してきた表れとも読み取れます。一方で、この結果を深読みすると、自ら進んでメンタルの疲れを訴えるよりも、ストレスチェックを通じて企業側から従業員にメンタルヘルスのケアを働きかけてほしいという本音も含まれていると考えらます。こころの不調については、自ら訴えるよりも他者からの気付きやサポートが重要な要素になることがわかります。

【ウエルシア薬局の取り組み】

大規模な企業だからこそ、とりこぼしのないメンタルヘルスケアを


従業員のメンタルヘルスケアに対して、様々な対策を実施しているのが調剤併設ドラッグストアを運営するウエルシア薬局です。同社でもここ数年メンタル不調を訴える従業員が増えていました。個々への細かなアプローチが必要なメンタルヘルスケアを、50,000人を超える従業員に対してどのように実践しているのか? その実例を伺いました。

Q:現在、ウエルシア薬局ではメンタルヘルスに関するどのような制度や取り組みを実施していますか?


赤井さん: まず現状からお話しすると、メンタル不調になる従業員数はここ数年で増えてきています。従業員が不調になる前にストレスを軽減できないか、気軽に相談できる場を設けられないかという点を課題として捉えていました。当社で対応する安全衛生チームは8名。その内の2名と各支社にいる人事担当5名が連携してメンタルヘルスの相談や復職面談などの対応を行っています。当社は全国に店舗展開し、従業員数も50,000名を超えます。そのため発生している事象の対応だけでも業務過多となっており、社内相談窓口の開設を躊躇していました。また、相談内容も多岐にわたっており専門性という点からも開設は難しい状況でした。

Q:大規模な組織ならではの難しさといえますね。


赤井さん: はい。そこで導入したのが外部相談窓口(EAP)です。誰もが、自身の体調や仕事の問題、人間関係、プライベートに関することなど、誰かに聞いて欲しいと思うことはあると思います。時によっては、それが毎日顔を合わせる家族や同僚よりも、少し距離を置いた人の方が適切な場合もあります。また、窓口を外部に設けることで相談内容が周囲に漏れたり、相談者本人の処遇やキャリアに影響を及ぼすことが全くないということもメリットだと思います。もちろん通常の社内相談でも相談者が不利益になるようなことはありませんが、EAPを導入することで相談者が安心して相談できる場所を設けるという当初の課題の最初のハードルをクリアすることができました。認知度の向上が課題でしたが社内告知を繰り返し行うことで利用者は徐々に増えてきています。

Q:利用者が増えているということは、従業員への情報周知にも工夫があったのでは?


赤井さん: 導入は地域を限定して行いました。会社の福利厚生として導入していますので社内イントラや、社内報など複数媒体をつかったり、説明会を開催したりもしました。悩みが発生しそうな私傷病や産休・育休で休職している方、新入社員に特化して告知を行いました。

Q:とても具体的な取り組みを実施していると感じますが、これらの取り組みを導きだすためのヒントやアイデアはどこから?


赤井さん: 昨年より、健康経営の情報収集の一環で全社規模の従業員サーベイを実施しています。それによりプレゼンティーズムの数値を可視化することができました。プレゼンティーズムは「疾病出勤」という意味を持つ言葉ですが、具体的には「出社しているけれど、気持ちが落ち込んで仕事をつらく感じる」など、心身の健康不良によって生産性が低下している状態を指します。当社の場合は休職者の半数がメンタル不調によるものですが、サーベイからの情報では、休職者の予備軍はさらにおり、表面化して休職しているのはその一部だとわかり、対応が急務であることも実感しました。

Q:休職者が復職しやすい制度も整備されていると聞きました。


赤井さん: せっかく戻ってきてくれた復職者ですが、再び休職となってしまう従業員が一定数おります。それを少しでも減らしたいと考え、復職支援プランを整えました。復職前に休職者本人が適度な運動や生活リズムを整えることを意識して生活してもらい、復職後体力的にはスムーズに仕事に戻れるように心掛けています。主治医には情報提供依頼書の記入に協力してもらい、会社が得たい情報を的確に収集し、産業医と連携することで、適切な配慮ができるようにしております。

Q:様々な取り組みによって、社内での変化はありましたか?


赤井さん: 外部相談窓口については、導入してよかったと感じています。以前のままの組織なら従業員の相談を全て受け止めることは不可能だったでしょう。また、休職者や新入社員に特化して告知をしたことで相談件数も増えております。今後全社での導入を検討する上での問題点も把握できました。メンタル不調による休職者の減少などが、実際の数字に表れてくるのはもう少し先になると思いますが、自社で全てを完結するだけでなく、外部のサービスやツールなどを積極的に利用する方法も一つの選択肢ではないでしょうか。

ちょうどいい相談できる場所の必要性

ウエルシア薬局の事例から見えた、外部サービスの導入メリット


先ほどの事例の中で登場した「プレゼンティーズム」については、以下のようなプレゼンティーズムによる損失額のデータがあります。
【図3】プレゼンティーズムの損失要因と一人当たりの損失額/Nagata T,et al.J Occup Environ Med.2018を参考に作成。
従業員は職場に出勤してきているため、会社側としては問題ないと考えがちですが、実際にはメンタル不調が進行している場合もあります。【図3】の損失要因を見てみると、身体の痛み以外に、メンタル、睡眠、体調不良、女性特有の健康問題などがあります。いずれも相談相手を選びたくなる内容であり、「こんなことを上司や同僚に相談したら、甘えだと思われないか?」など一人で抱え込み、その結果、メンタル不調へとつながってしまいます。

しかし、ウエルシア薬局のように、外部の相談窓口を設けることで、従業員は気軽に相談でき、こころを軽くすることができます。同じ部署・チーム内の中で対人的なトラブルを抱えている従業員には、むしろ外部相談窓口の方が有効です。

~ウエルシア薬局が実施しているメンタルヘルスケア対策まとめ~

  • 立場や年次を超えて相談できる外部相談窓口の導入
  • メンタル不調による休職者のための復職支援プラン
  • 24時間対応の人事専用チャットbot
  • メンタルヘルスケア情報の徹底した従業員への告知
  • 休職者の健康状況を把握し復職プランを立てやすい診断書
  • 現状を把握しプレゼンティーズムを可視化するためのアンケート実施

ウエルシア薬局は日本でもっとも店舗数の多い調剤併設ドラッグストアですが、外部のサービスをうまく利用することで、従業員のメンタルヘルスに尽力していました。

【マイナビでサポートできるメンタルヘルスケア-welltowa-】

<welltowa -健康相談サービス-とは?>

セルフケアを自走できる従業員を増やし、未病予防に繋げ、定着率向上をサポートします。

【いつでもだれでも、気軽に専門家に悩みを相談できる健康相談サービス】
従業員は心や身体の悩みを専門家にLINEで相談ができ、HR担当者は定期レポートから企業全体の状況を把握可能。

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  • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

    HUMAN CAPITALサポネット編集部

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  • 労務・制度 更新日:2024/10/02
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