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26年卒インターンシップ調査から見る、26年卒大学生が就職先に求めるもの

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毎年3月になると、学生たちの就職活動は本格的なスタートを迎える。この月は企業の採用広報解禁とともに、学生たちの動きが活発化する時期である。2026年卒業予定の学生たちも例外ではなく、インターンシップへの参加、OB・OG訪問を通じて、企業との接点を増やそうと精力的に活動している。今年の特徴的な動きとして、学生たちの早期選考による内定率の上昇が挙げられる。3月の時点での内定率は43.1%となっており、前年と比べて8.8%もの増加が見られた。これは近年の売り手市場の影響を受けて、より激しくなっている人材獲得競争において他社に先駆けて学生にアプローチし、自社にマッチする学生を採用しようとする企業側の旺盛な採用意欲を示している。
この就職活動の中で際立っているのは、学生たちの情報収集への意識の高さだ。学生は可能な限り事前に企業の詳細な情報を得ようとする姿勢を見せており、そうした活動スタイルは「ネタバレ消費」(購入する商品や視聴するコンテンツのレビューや内容をあらかじめ把握する、Z世代に特徴的とされる消費行動)にちなみ「ネタバレ就活」ともいえる。具体的な条件として「初任給」や「勤務地」、「福利厚生」、「初期配属」といった要素が重要視されており、これらが企業選びの重要な基準となっている。給与の額や生活環境の整備、入社後にどのような部署で働くことになるのか、これらの点が明確であることが、学生にとって魅力的な企業を探す際に重要な条件となっている。
このように、2026年卒の就活は、学生と企業双方にとって大きな変化を伴うものとなっている。学生は自らのキャリアプランを見据えた選択を行い、企業はそれに応えるための戦略を模索している。このコラムでは、今年の就活市場で見られるさまざまなトレンドを分析し、未来の採用市場を展望するヒントを探っていく。
一つ目の特徴として、初任給に関することが挙げられる。2026年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(8月)によると、「初任給」の額が応募に影響するかを聞いたところ、87.1%(「非常に影響する(32.3%)」+「やや影響する(54.8%)」)が影響すると回答した。この割合は24年卒(81.5%)から増加しており、学生が自身の仕事を選ぶ条件として「初任給」を重要視する割合が増えていることがわかる。【図1】
図1:「初任給」の額が応募するか否かに影響すると思うか / マイナビ2026年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(8月)
また、学生が求める初任給の水準も上がってきている。同調査にて、最低限ほしい初任給の金額を聞いたところ、「22万円以上」を希望する割合が63.0%と前年よりも13.8%増えている。しかし、これは決して学生が売り手市場によって高望みをしているわけではない。2025年卒大学生活動実態調査(6月)にて就職後の収入と生活について聞いたところ、「就職先の給与のみで最低限の生活はできると思う」と49.4%の学生が答えており、物価高や社会保障費の引き上げに伴い、「最低限」これぐらいは欲しいと考えている給与の額が上がっているといえる。【図2】【図3】
図2:最低限ほしい初任給の金額/2026年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(1月)
図3:就職後の収入と生活について今の考えについて/2025年卒大学生活動実態調査 (6月)
さらに、2026年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(1月)では、これから就職先を検討する際、「初任給」の金額にどの程度こだわるかについて、「平均的な金額であれば、他の条件が希望通りであることを優先する」が47.2%となっており、初任給だけでなく他の条件も重要視している学生が多いことがわかる。同調査で初任給が自分の希望に満たない場合でも魅力的に感じる企業の特徴について聞いたところ、最も多かった回答は「休暇制度(特別休暇、リフレッシュ休暇、介護・看護休暇など)が整っており、年間取得率が多い企業」が60.4%となっており、休暇制度について重要視する割合が多いことがわかる。【図4】【図5】
図4:あなたは「初任給」の金額にどの程度、こだわりますか。/2026年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(1月)
図5:初任給が自分の希望に満たない場合でも魅力的に感じる企業の特徴/2026年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(1月)
そのため、初任給だけでなく総合的な福利厚生や働きやすい環境を整えることも、学生にとって魅力的な就職先となる要素として重要であると考えられる。
2026年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(11月)において「最初の勤務地」が限定されていると応募意欲が高まるかを聞いたところ、80.8%(「応募意欲がとても高まると思う(34.6%)」+「他の条件によるが、多少は応募意欲が高まると思う(46.2%)」)の学生が「高まる」と回答した。また、入社後の転勤については「転勤はしたくない」と回答した割合が最も多く30.4%で前年より3.7ポイント増加しており、自分が入社した際にどこで働くのかが明確になっていると応募意欲が高まることがわかり、転勤に関して否定的な考えを持っていることがわかる。【図6】【図7】
図6:「最初の勤務地」が限定されていると応募意欲が高まるか/2026年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(11月)
図7:入社後の転勤について/2026年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(11月)
こうした意識の背景の1つとして考えられるのが、近年の学生の共働き志向の高さだ。2026年卒大学生のライフスタイル調査によると、共働きを希望する割合は72.1%(前年比2.1ポイント増)で、調査開始(16年卒)以来過去最高となった。夫婦のどちらかが予期せぬ転勤をしなければならない場合、ライフプランを大きく変更せざるを得ない状況になるため、転勤が多いことに対して抵抗感があることがわかる。【図8】
図8:結婚後の仕事に関してどのように考えているか/2026年卒大学生のライフスタイル調査~ Z世代の就活生の“日常”と“将来”を徹底研究! ~
また、2026年卒大学生就職意識調査によると、行きたくない会社について聞いたところ、「転勤の多い会社」が31.0%(前年比0.7ポイント増)となっており、18年卒の18.1%から増加傾向にある。【図9】
図9:行きたくない会社があるとしたら、どのような会社か/2026年卒大学生就職意識調査
勤務地は仕事だけでなく、生活や将来にも大きな影響を与える重要な要素である。そのため、勤務地に関する合意形成や応募時、選考の段階で勤務地や転勤についてのすり合わせを十分に行うことが、学生の不安を取り除き、ミスマッチの防止につながると考えられる。
2026年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(11月)によると、応募時に「最初に配属される職種(仕事内容)」が限定されていると応募意欲が高まるかを聞いたところ、77.0%(「応募意欲がとても高まると思う(33.7%)」+「他の条件によるが、多少は応募意欲が高まると思う(43.3%)」)が「高まる」と回答した。【図10】
図10:応募時に「最初に配属される職種(仕事内容)」が限定されていると応募意欲が高まるか/2026年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(11月)
企業側の職種別コースの設定状況を見てみると、2025年卒企業新卒採用活動調査によると、入社予定の方の募集・選考時のコース設定については39.1%が「職種別コースを設定している」と回答があった。【図11】
図11:企業側の職種別コースの設定状況について/2025年卒企業新卒採用活動調査
学生が初期配属部署が決まっていることに対して肯定的な考えを持つ背景には、キャリアパスの明確化を求める意識の高まりがある。特に、具体的な職種や仕事内容が明確にされていると応募意欲が高まる傾向がみられる。企業は、募集・選考時に職種別コースを設定し、内定通知前に職務内容を告知することで、学生にとって魅力的な就職先となることができる。
本コラムでは、主に3つの観点で学生のニーズを集約してみた。初任給の競争力を高めるだけでなく、総合的な福利厚生や働きやすい環境を提供することが重要である。また、勤務地の明確化や転勤の少ない環境を整えることで、学生の応募意欲を高めることができる。さらに、初期配属職種の明確化や職務内容の早期告知を行うことで、学生が安心してキャリアパスを描けるようにすることが求められる。
昨今、入社してすぐに辞めてしまう新卒入社者のニュースをよく見るが、決してすぐやめることを前提に新卒で入社する企業を選んでいるわけではない。2026年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(11月)において新卒で入社する会社で何年ぐらい働きたいかを聞いたところ、「特に決めていない・わからない」が30.5%で最多となったが、「定年まで」が22.4%(前年比2.3pt増)、「10年以上」が19.5%という結果となっている。
厚生労働省が令和6年10月に発表した新規学卒者の離職状況によると、大卒の3年離職率は34.9%となっており、以前として3年3割の離職率は横ばいとなっている。離職する理由は様々あることが考えられるが、選考や内定後の段階でいかに学生の不安や将来の仕事内容に対してのポジティブなイメージを持ってもらうかが大事になってくるのではないだろうか。学生としても、そういった企業とのミスマッチが起こらないように、自分が就職先に求めることをはっきりとさせたうえで就職活動に臨むことをおすすめしたい。
  • Organization 株式会社マイナビ 社長室 キャリアリサーチ統括部

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  • 人材採用・育成 更新日:2025/04/30
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