多くの学生がインターンシップ・仕事体験などを通じてキャリア形成活動を行うようになっている昨今において、学生の企業選択に変化がみられています。今回のコラムでは学生の企業選択の変化を明らかにし、その対策について考えていきます。

これまでの学生の企業選択について、マイナビが行った学生の企業選択に関する調査では、2016年卒から2019年卒までは「自分のやりたい仕事ができる会社」という回答が最も多く、仕事内容が重要視されていました。
しかし、2020年卒では「安定している会社」が多くあげられるようになりました。ちょうど新型コロナウイルスの流行が新卒採用に影響を及ぼし始めたタイミングです。ここから「安定している会社」が徐々に数字を伸ばし、2025年卒では半数近い学生が「安定している会社」と回答するようになっています。【図1】

では、学生は何をもって「安定している」会社であると判断するのでしょうか。
2025年卒の学生を対象にした調査で安定性を感じるポイントを聞いたところ、「福利厚生が充実している」、「安心して働ける環境」といった回答が多く、学生にとっての「安定」とは企業の存続に関するものではなく働く環境としての安定を示すものだと言えます。【図2】

学生の企業志向については現行の就職活動スケジュールに変更された2017年卒以降 、大手志向（※1）が中小志向（※2） より高い形となっています。最も高かったのは、新型コロナウイルスの流行が始まった時期に就職活動を行った2021年卒で、55.1％となりました。その後、流行の落ち着きと共に差は縮まりますが、2025年卒では3年ぶりに大手志向が50％を超えました。【図3】

※1　「絶対に大手企業がよい」「自分のやりたい仕事ができるのであれば大手企業がよい」の合計
※2　「やりがいのある仕事であれば中堅・中小企業でもよい」「中堅・中小企業がよい」の合計

現在の学生はどんな点から大手企業を希望するのでしょうか。 マイナビが行った2025年卒大学生活動実態調査（4月）で大手企業のイメージと選考に参加した決め手について学生に聞いたところ、イメージとして最もよく挙げられていたのは「従業員が多い」（69.5％）、次いで「福利厚生が手厚い」（68.8％）でした。そして選考に参加した決め手では「福利厚生が手厚い」 （51.5％）が最も多くあげられ、ここでも企業存続に関する安定性よりも働き方としての安定性を求めていることが示されています。【図4】

今までの学生の企業選択基準で重要とされてきたのは「やりたい仕事ができるかどうか」ということでした。しかし、新型コロナウイルスの流行を経て、現在の学生は安定している会社を求めるようになりました。学生視点からの安定性とは働き方の安定であり、その「安定」を図る指標の１つとして福利厚生の充実を重視するようになりました。

以上より、ただ単に自社にどのような福利厚生があるかを伝えるのではなく、安定した働き方ができるということを伝えるために福利厚生の話をすることが必要だと考えられます。
以下はあくまでも例ではありますが具体的な伝え方をあげてみました。

• 育休取得予定の男性社員が育休中の仕事を引き継ぐまでの業務過程を座談会で本人に説明してもらう
• 育休から復帰した女性社員の1日をInstagramで紹介

• フレックスタイム制を利用して仕事とプライベートのどちらも充実させている社員のインタビューを企業HPで紹介
• 副業を行っている社員による効率よく仕事を進める講座を学生に対しても開く

• 企業独自の○○手当を使って定時後にチームメンバーと交流会をする様子を動画で撮影して紹介
• 説明会で新卒1年目のモデル月収や家賃補助、交通費などの手当てを紹介する

就職前の学生は働いて生活をするということを明確にイメージすることが難しくもあります。大切なのは実際に福利厚生の制度を使った場合にどのような働き方や生活になるのかということです。これらを具体的に示すことが学生の理解につながるでしょう。