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「入社前研修」その最新トレンドと、押さえるべきZ世代の就業観とは

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内定者と企業の目線は、いつも同じ方向を向いているとは限りません。
ご存じのように売り手市場傾向が強い現在の採用市場では、学生が複数の内定を持って最終的に入社する企業の選択をぎりぎりまで引き延ばすという現象も起こっています。

学生側の視点に立てば、それはある意味で当然のこととも言えるかもしれません。しかしながら、経営計画から導き出した採用目標人数に合わせて内定を出している企業側からすると、できれば内定辞退を1人も出したくないというのが本音でしょう。

そこで重要なのが、内定者と企業とのリレーションを深める「入社前研修」です。社会人としての基礎的な知識を学ぶ場を提供し、同時に自社と学生とのリレーションを強化することで、内定辞退防止と早期の戦力化を同時にかなえることができます。

今回は、500名以上の企業の採用担当者から得た調査結果をもとに、企業が行っている「入社前研修」の実態、そしてその効果を検証しながら、入社前研修の「あるべき姿」を探っていきます。

【調査概要】

  • 調査名:入社前研修実態調査
  • 調査期間:2022年7月29日(金)~2022年8月1日(月)
  • 調査方法:WEB調査
  • 調査対象:GMOリサーチ保有調査モニターより「現在も新卒採用をしている企業」かつ「新卒学生の入社前研修を行っている担当者」をスクリーニング調査にて抽出。
  • 有効回答数:542件
  • 調査委託先:GMOリサーチ株式会社

※本調査で指す入社前研修は、内定者に対して行う研修のことをいいます

― 樋口さん、今日はよろしくお願いいたします。まず、入社前研修の持つ意義、その目的とすべきことを教えてください。


樋口: はい。入社前研修の意義は大きく分けて2つあります。1つは内定辞退の防止です。
内定から入社までは長いと1年近く期間が空きますから、その間に継続的にコミュニケーションを取りながら、自社のことをよりよく知ってもらい、入社意欲を醸成するために研修プログラムを動かすということですね。

例えば、入社後の研修システム、キャリアプランなどをしっかりと時間を取って説明し、内定者自身が入社後にどのような社会人生活を送ることになるのかをリアルに想像してもらうことで、入社に際しての不安を取り除き、安心して入社してもらえるように研修を行います。

また、選考のほとんどをオンラインで行っているという企業も多く、最終面接までの間に内定者同士の「横のつながり」を形成するということができていないことが多くあります。待合室で横にいる同じ就活生にちょっと声を掛けたり……ということが行いにくい環境だからです。
そのため、入社前研修ではその一部、または全部を対面式として、自社の社員はもちろん、内定者とも直接会う機会を設けることも、その後の社会人生活をサポートするという意味で、非常に重要な意義があります。

― なるほど、ありがとうございます。もう1つは何でしょうか?


樋口: 2つ目は、基礎スキルの育成です。学生から社会人へと、まったく違うステージに人生が移るわけですから、これまでの学生生活では身に付けることの難しかったスキルや知識を入社前にある程度、習得してもらうという意義があります。これも、社会人生活をサポートするという目的が根底にありますね。

例えば「ビジネスマナー」は分かりやすいポイントです。名刺の渡し方、電話の取り方、メールの書き方といった一般的な知識、作法の習得を手助けしていきます。
一方、ここ数年では社会人としての「働き方」や「就業意識」の醸成ということも重要なテーマです。

― ここ数年ということですが、世代的な特徴から必要になってきた……と見られるのでしょうか。


樋口: そうですね。Z世代といわれる今の若者は、それ以前の世代とは就業に対する意識に異なる点が見られます。
特に、これまでの世代には「新卒で入った会社にできるだけ長く在籍する」という意識が大まかにあったと思うのですが、そういった意識は全く持っていないという学生も多く見受けられます。

その理由の一つとして、さまざまなキャリアの積み方やキャリアチェンジの在り方が、多様な情報源から得られることが挙げられます。
画一的でなく、一方通行でもないさまざまなキャリア観に触れ、考える機会に恵まれてきたことから、自分のスキルを最も活かせるフィールドを求めてどんどん会社や働き方を変えていくことに抵抗がないんですね。
学生からの声を聞いていると、企業を選ぶ時点でも「一生、働いていける会社を探そう」という意識ではなく、「自分のキャリアの第一歩として、最もいい環境のある場所を選ぼう」という意識があるように思います。

上の世代の方にとっては、抵抗感を覚える考え方かもしれませんが、特異な価値観の表出というよりは、社会の変化に敏感に対応して意識がアップデートされている、と捉えた方が良いでしょう。善悪の問題ではないと思います。

― 今回、採用・研修担当者の皆さまから得た調査でも、お悩みとして「どのくらいの期間、働いてくれるかが分からない」や「3年以内に辞めてしまう新入社員が多い」という声が多く聞かれました。


樋口: はい。そういった「長く働いてほしい・長く働きたい」という、これまでごく一般的だった採用の考え方、雇用のあり方を共有していない世代だということです。
SNSを通じて、私たちの世代には見えていなかった働き方、キャリアの積み方を知っていますので、採用する側も意識をアップデートしていく必要がありますね。

― なるほど。「社内でのキャリア」だけでなく、「一生を通じたキャリア形成における、自社のメリットや強み」をきちんとインプットすることが内定辞退を防ぐためには有効になりそうですね。しかし、調査によると「キャリアデザイン」を内定者研修の目的として据えている企業はわずか2%でした。


樋口: 内定辞退を防ぐという観点だけでなく、学生側もキャリアについて学びたいという気持ちは強いのですが、企業側は「キャリアについて教えることで離職が早まったり、内定辞退をされたりするのではないか」と危惧して積極的にキャリア教育をすることには及び腰になるという側面は確かにあります。

実際、伝え方が難しいポイントです。例えば「5年後には課長になっていたいんです」という内定者に対して、「OK、5年後には課長にしてあげるね」とは言い切れません。
仕事の積み上げ方、配属先の人員構成など関わるファクターが多すぎて明言できないことが多いはずです。

また、近年の働き方改革の風潮の中で、「会社として、今まさにキャリアプランを再検討中」ということもあると思います。その場合も「今後、こうなっていく予定です」としか言えず、それで学生が本当に満足するのか……という悩みも企業から聞かれることがありますね。

とはいえ、入社後にミスマッチが発覚して早期離職されるよりは早めに自社内でのキャリアプランを示して自社の人材育成方針、キャリアプランに賛同してくれる社員を1人でも増やした方が長い目で見るとメリットが大きいはずです。

― 今回の調査で得られた結果から、企業の内定者数に対する入社者数の割合として「入社率」を求めました。結果、入社率に大きく影響するファクターのひとつに「配属先通知の時期」があるようです。結論から言うと早ければ早いほど入社率が高いのですが、この理由について考えを聞かせてください。



■ 配属決定の時期と内定者入社率の相関
樋口: 就活生の間では「配属ガチャ」という言葉が使われています。総合職で内定して、入社後に希望する配属先に行けるかどうかは「運次第」であるという意味です。

先ほどから申し上げているように、今の学生は「入社した会社でゆっくりとキャリアを積み上げよう」という思考ではなく、「場合によってはフィールドを変えて自分のキャリアを実現していこう」という思考ですので、早めに配属先が分かり、なおかつそれが自分の希望したものである場合、他の企業を断って入社を決めるという行動を起こすのは自然なことだと思います。それが数字に表れていますね。

― 多くの企業が「内定通知後、入社前」に配属通知をしているという結果もあります。その段階で内定辞退・入社辞退をされると、人員計画への影響も大きいですよね。


樋口: そうですね。根本原因として、選考段階で配属先が決定できるほど学生を見極め切れていないという現状もあるかと思います。そのため、研修を通じて配属決定を見極めているのです。
まずは自社の各事業部で求められる能力を棚卸しし、その能力を見極められる選考フロー、選考ロジックを組み立てる必要がありますね。

それでも内定時点での配属決定が難しく、どうしても研修期間中または研修終了後になってしまうという場合、選考の早い段階、または選考前に学生にはっきりと伝えるべきです。その点をはぐらかすことで、学生からの印象・評価が低下してしまうことは避けられず、ひいては翌年以降の採用にも影響を及ぼしかねません。

― 選考中に見極め切れないというお話は、オンライン選考の影響もありそうですね。入社前研修についても、調査結果の中で「オンラインだと効果があるのかが分からない」といった声が多く聞かれました。


樋口: 選考、研修のオンライン化が進んでそろそろ3年ですが、対面と比較しての不満やお悩みというのはまだまだ尽きません。

まず、選考での解決方法としては適性テストの導入はお勧めです。これまで対面で話すことで感じ取っていたものが、オンラインだと感じ取れないという場合、適性テストでは数字で学生の性質、適性を知ることができますから、判断の助けになると思います。結果として選考による見極めが的確に行えれば、配属決定も早められるでしょう。

― オンラインでの入社前研修についてはいかがですか?


樋口: 2つの論点があると思います。1つは「本当に効いていない可能性がある」ということ、もう1つは「効いている実感が得られない」ということです。

この両者はともに「ハイテンポなアウトプット型のプログラム」が解決の助けになるでしょう。
対面であれば、「30分の講義後に1時間のワークやディスカッション」といった内容も一人ひとりに目が届きますので、社員のフォローもしやすく問題なく進行できますが、オンラインだと「実は分かっていない」とか、「実はディスカッションで全然発言していない」という学生を見つけるのが難しいんです。

この場合、「10分の講義と15分のワークやディスカッション」を繰り返すような、どんどん内容を変えながら個々の発言を促す「動きのあるプログラム」にするといいですね。
オンラインでは学生も家で受講していることが多く、長時間の集中を維持することが難しいことが多いのですが、短時間のプログラムを次から次へと行うことで、集中力もアウトプットの量も維持しやすいという効果があります。

― なるほど、ありがとうございます。では、後者の「実感が得られない」という悩みについてはどうでしょう。


樋口: 対面だと「今、ここでメモを取ったな」とか「目を輝かせて聞いてくれているな」とか、そういった反応をじかに受け取れますので「確かに研修の効果がありそうだ」と実感できるのですが、オンラインだとそういった非言語的な反応がほぼ受け取れません。私も社内で講師などをすることがあって実感しているところです。

これも「ハイテンポなアウトプット型のプログラム」にすることで、研修の成果としての「アウトプット」を受け取ることができます。

― なるほど。学生の考え方にせよ、選考や研修の開催方法にせよ、採用側は変化が激しい時代に適応していく必要がありますね。ありがとうございました!


就業観の変化、選考・研修の実施方法の変化と、ますます変化のスピードが速くなっていく社会情勢に従うように、採用を取り巻く環境もまた、激しく変化しています。

この点について樋口は「『方法を変える』のではなく、『考え方をアップデートする』と意識してほしい」と語っていました。
方法論だけに目を向けていると、その方法が通用しなくなったときに、また新たな変化に対応せざるを得なくなりますが、「考え方」自体を時代に合わせてアップデートしていくことができれば、自らも納得感を持って自然と変化に付いていくことができるようになるということです。

この記事からダウンロードできる資料には、今回の記事に収まり切らなかった調査データや、ワンポイントアドバイスなども盛り込まれています。
ぜひ、意識のアップデートをする手助けにご利用ください。
マイナビでは、内定者に対して「社会人になる」という感覚や上司・トレーナーなど目上の人との関係を構築する経験を、映像を通して疑似体験することができる、「ムビケーション」というビジネスシミュレーション研修を提供しています。
カスタマイズにより、半日間、1日間、2日間など柔軟にプログラムを設計することができますので、研修プログラム見直しの一環として、ぜひ一度ご検討をされてみてはいかがでしょうか。
  • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

    HUMAN CAPITALサポネット編集部

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  • 人材採用・育成 更新日:2022/11/01
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