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内々定フォローと「配属ガチャ」への不安。企業は学生とどのように向き合うべきか

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今年2022年6月末時点での就活生の内々定率は79.9%(前年より6.4pt増加)となり、実に8割近くの学生が企業からすでに内々定を得ている状況となります(「マイナビ 2023年卒大学生活動実態調査(6月)」より)。採用活動を行う多くの企業でも、すでに学生への内々定連絡を行っているというケースが多いのではないでしょうか。
内定式が行われる10月まで残り2カ月ほどとなりましたが、採用担当者の多くが気にするポイントの1つが「内々定学生の心をいかに自社に繋ぎとめておくか」ということかと思います。中途採用と異なり、新卒採用は内々定通知の連絡から入社まで半年以上かかるケースが多く、学生からすると長期間の待ち時間が発生してしまい、その間に内々定先企業や入社後の仕事や生活などに不安を感じる学生も少なくありません。
そこで重要となってくるのが、内々定学生に向けたフォロー(「内々定フォロー」)です。すでに各種内々定フォローを企画・実施されている採用担当者の方も多いとは思いますが、このコラムでは、学生がどのような内々定フォローを受けているのか、そして、メディア等で「配属ガチャ」として取りざたされることもある「入社後の配属決定」について学生がどのように感じているのかを、調査データをもとにご紹介したいと思います。
上記で触れた「マイナビ 2023年卒大学生活動実態調査(6月)」に、内々定フォローを受けた学生に関する調査結果があります。内々定を得た学生に「入社意思の高い企業から内々定後に受けたフォロー」を複数選択してもらったところ、最も多かったものは「人事との面談(WEB)」(30.0%)でした。【図1】前年調査でも最多回答(30.6%)であり、オンラインならではの気軽さや感染症対策という観点から、内々定フォローの方法の1つとして定着しているようです。
【図1】内々定後、入社意思の高い企業から受けたフォロー/「マイナビ 2023年卒大学生活動実態調査(6月)」
また、受けた内々定フォローのうち「最も不安が軽減されたもの」を1つ選んでもらったところ、こちらも「人事との面談(WEB)」が最も多い結果(21.3%)となりました。【図2】そして、この質問で「面談」と回答した学生に対して、「何を話したことで不安が経験されたか」を聞くと、「具体的な業務内容(入社1年目の業務内容など)」と答えた学生が最も多くなりました。【図3】
このことから、面談等を通じて「入社後に自分がどのような業務に携わるのか」という疑問が解消されることが、学生の抱く不安を軽減するうえで効果的であることがわかります。その他、「待遇(給与・福利厚生等)について」、「適性について(内定に至った理由や選考のFBなど)」、「勤務地について」なども上位にあがり、こうした情報を学生に提供していくことも学生の不安軽減につながります。
【図2】内々定後、入社意思の高い企業から受けたフォローで、最も不安が軽減されたもの/「マイナビ 2023年卒大学生活動実態調査(6月)」
【図3】(不安が軽減されたフォローで「面談」を選択した学生)何を話したことで不安が軽減されたか/「マイナビ 2023年卒大学生活動実態調査(6月)」
一般に「配属ガチャ」とは、入社後に自身が希望する部署に配属されるかどうかわからない状況や、そのことに対する不安を表す言葉として、就活生の間で使われているようです。路面や店頭で見かけるカプセルトイや、スマホゲームやソーシャルゲーム等で見られる、アイテムをゲットするためにレバーを回し、どんなアイテムが出てくるかは運任せ…、という様子になぞらえ、どのような部署や勤務地に配属になるか、入社してみるまで(あるいは入社直前まで)わからないことへの不安を表しています。
ですが、そもそも社員の配属は「配属ガチャ」という言葉が示すような「運任せ」のものではありません。採用担当者を含めて企業全体に関わる経営戦略的な観点から、誰をどの部署に配属するということを決めていくわけですが、社会人経験のない学生は人材配置がどのように決まるのかも知りませんし、配属決定のプロセスがある意味「ブラックボックス」のように見えているのかもしれません。そうした情報不足が学生の不安や不信感へとつながったことが、配属ガチャという言葉が生まれた背景なのではないかと思います。
今回の調査では、勤務地や職種といった入社後の配属先の決定に関して、自分で決めたいか、あるいは会社に判断してもらいたいか、ということも聞いてみました。すると、半数以上(54.9%)の学生が「勤務地・職種ともに自分で判断して、選びたい」と回答しました。【図4】
多くの学生が、勤務地も職種もできれば自分で選びたいと考えていることから、上述のように内々定フォローの一環として、入社後の業務や職種、勤務地といった情報を提供することは多くの学生のニーズとも合致していると言えるでしょう。
【図4】入社後の配属先(勤務地・職種)に関する考えとして、一番近いもの/「マイナビ 2023年卒大学生活動実態調査(6月)」
では、配属先情報の提供・告知について、企業はどのように取り組んでいるのでしょうか。これについては、「マイナビ 2022年卒企業新卒内定状況調査」から読みとることができます。
【図5】配属先をどのように告知するか/「マイナビ 2022年卒企業新卒内定状況調査」
配属先を学生にどのように告知するかについては、職務内容・勤務地ともに最も回答が多かったのは「入社後(実際の配属時)に伝える」(職務内容:34.1%、勤務地:32.1%)でした。【図5】新入社員の配属が、全社的な人員配置の一環として総合的な判断のもとで行われることがある都合上、告知が入社後になる事情も大いに理解できます。一方で「内定通知前の面談・面接などで伝える」、「内定通知と同時に伝える」、「内定式で伝える」、「内定通知後、入社前に伝える(内定通知時、内定式除く)」を合計すると5割程度となり、程度の違いはありつつも半数の企業が入社前に告知しており、多くの企業が配属先に関してなるべく早く学生に伝えようとしている様子もわかります。
ここまで、多くの学生が入社後の配属先について知りたい・自分で決めたいという希望を持っており、多くの企業も入社前に配属先告知をするように動いていることを示してきました。しかし、先ほども触れたように、新入社員の配属にはときに経営戦略的な判断が必要になるため「まだ入社前の学生の、すべての配属希望を叶えるのは難しい」という事情も当然あるかと思います。ともすると「学生のため」だけと思われがちな配属先告知ですが、企業としてのメリットはどのようなものがあるのでしょうか。
上掲の企業調査によれば、配属先告知による企業側のメリットとしては「内定者の『わからないこと』への不安を払拭することができる」が最も多いですが、「入社後の具体的なイメージができるので入社意欲を高めることができる」や「内定者フォローの内容や担当者を明確にしやすい(職種や勤務地が同じ先輩社員)」などをあげる声も多くあります。【図6】いずれも、学生の心を自社に繋ぎとめ、内定辞退を回避するために重要なポイントです。
【図6】配属先を入社前に告知することでどのようなメリットがあると思うか/「マイナビ 2022年卒企業新卒内定状況調査」
また、学生の配属希望を100%叶えることが難しくても、配属先告知の目的の多くは「学生の不安の軽減・払拭」であり、配属ガチャという言葉が生まれる原因が自身の入社後の状況がはっきりしないことへの学生の不安であることを考えれば、企業として対応できることは十分にあります。配属決定が「運次第」なブラックボックスなどではなく、企業としての合理的な判断のもとで行われるものであることを学生に理解してもらうためにも、内々定フォローの中で学生との対話の場を設けその希望に耳を傾けつつ、たとえ希望通りの配属でなくても、その学生の適性などを踏まえたうえで「なぜこういう配属になったのか」や「この配属先であなたに期待すること」などを合理的かつ丁寧に説明していくことで、学生に納得感を与えることが重要です。そうした丁寧なコミュニケーションによって、たとえ希望していなかった配属先であったとしても、そこに対して新たにモチベーションを感じてもらうきっかけをつくることも可能です。このように対話と丁寧なコミュニケーションが、ミスマッチや早期離職といった事態を防ぐカギとなるのではないでしょうか。
本コラムでは、学生がどのような内々定フォローを受けているか、学生の不安が軽減されるフォローはどのようなものか、入社後の配属先の決定に関してどのような希望を持っているのか、そして、配属先の希望に対して企業としてどのようなことができるのか、という点について、調査データをもとにご紹介しました。
特に配属先の決定については、人事・採用部門の裁量を超えた全社的な判断が求められるシーンもあると思います。学生の配属希望を100%叶えることは難しいと思いますが、「配属ガチャ」という言葉の背景にある「人材配置がどのようなプロセスで決められているか不透明だ」という学生の不安に対し、丁寧な対話・コミュニケーションを通じてその不透明感を少しでもなくしていくことが求められており、それに応えていく必要があります。こうした観点を、自社で企画・実施する内々定フォローに活かしてみてはいかがでしょうか。日ごろから就職活動に関する情報を発信しているわたしたちとしても、今後は学生に対して、人材配置は決して運任せで決まるものではなく、学生本人の適性や社員との相性、事業の状況といった企業の経営判断など、さまざまな観点から考慮したうえで、慎重に、そして丁寧に決定されるものである、ということを伝えていきたいと思っています。
  • 人材採用・育成 更新日:2022/08/01
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