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新卒採用の正念場! 内定者面談で内定辞退を防ぐための「3つのポイント」

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インターンシップから始まり、会社説明会などの採用広報、母集団形成、選考、そして内定出しと、採用担当者は1年を通じて忙しい職種ですが、中でも「正念場」といえるのが内定者面談をはじめとした内定者フォローです。

多くの時間、費用、マンパワーを割いて内定を出したものの、辞退をされてしまうとすべて水の泡……。複数内定を持ち、ぎりぎりまで入社先を迷っている学生に対し、自社への入社を決めてもらえるように直接働きかけられる場が、内定者面談です。

この内定者面談、うまく学生の心をつかむことができなかった、という苦い経験をお持ちの方は少なくないのではないでしょうか?
採用担当者が内定者面談で必ず話すべき3つの話題について、株式会社人材研究所の代表・曽和利光さんにお話を伺いました。

― 曽和さん、今日はよろしくおねがいします。今日のテーマは「内定者面談」ですが、いつ頃に行うのがよいのでしょうか?


曽和さん: とにかく早い方がいいですね。内定を出してから1週間以内には必ず行ってください。対面が難しければ、オンラインミーティングや電話でもいいです。とにかく早く、が鉄則です。

― なぜ、早めの内定者面談が重要なのでしょうか?


曽和さん: 人は、大きな意思決定をした後に悩む傾向があります。結婚が決まってから深く悩んでしまうマリッジブルーがまさにそうですが、それになぞらえて「内定ブルー」という言葉もあるくらいです。

内定出しのタイミングではまだ他社の選考が進んでいたり、他社の内々定・内定を持っていて悩んでいたりします。または、他社に内定辞退の連絡をしたら強く説得され、改めて悩んでしまうということもありますね。

そんな悩みの多い時期に放置しておくと、気持ちが揺れ動いてしまって内定辞退を招くことになります。なので「とにかく早く」が鉄則なんです。

― 早いタイミングで内定者面談をしたとして、内定辞退を避けるためにはどうしたらいいのでしょうか?

曽和さん: その後に内定辞退をする可能性の高い学生というのは、見ると分かります。
内定を獲得したのだから就職活動は終わっているはずなのに、面談にスーツと黒髪で現れたり、A T S(採用管理システム)を見ると活動状態がアクティブになっていたり…… 「それってまだ就活してるよね?」というシグナルをいくつも発しているんです。

― 数百名も新卒採用をする企業ならともかく、数名から数十名ほどの採用規模の企業の場合は1名の内定辞退が大きく影響しますから、企業側としてもなんとか食い止めたいですよね。


曽和さん: そうですね。内定者のうち半数以上が内定辞退をするともいわれている時代です。かといって、10名採用するために歩留まりを計算して25名に内定出しをするわけにはいきませんよね。全員が内定を受諾したら、経営計画が大きく崩れかねません。

逆に、10名に内定を出して4名しか入社しなかったら、これはこれで人員配置計画が大きく崩れます。

だからこそ、内定を出した学生には確実に入社してほしいわけなので、早めにシグナルを見つけて内定辞退を未然に防ぐ手を打つために、内定者面談が重要なのです。

― まずは「就職活動の状況を確認する」ということですが、これは先ほどのお話とも重なる部分がありそうですね。


曽和さん: はい、そうですね。先ほど説明した「就職活動を続けていそうなシグナル」を感じた場合はもちろん、そうでなくても念のために確認した方がいいでしょう。

その上で、就職活動を続けているようなら、最初の内定者面談で「就職活動を終わらせてもらう」ように努めます。

― しかし、最近は「オワハラ(※)」という言葉もあるように、就職活動を終わらせたい採用側の圧力が問題になることも多いです。どのように伝えればいいのでしょうか?


曽和さん: おっしゃるとおりで「今、この場でマイナビを退会して他社に内定辞退の電話をしろ」なんてことは言うべきではありません。学生にとっては人生を決定づけるかもしれない決断ですから、あくまでも本人の意思に任せるべきです。

採用担当者ができるのは、「もし迷っているのなら仕方ないけど、あなたには絶対に入社してほしいと思っているので、ぜひ他社の内定を辞退して、完了したら連絡してほしい」と伝えることですね。
加えて、「弊社に入社することを親御さんにもぜひ伝えて、感想を聞かせてくださいね」と伝えるのも効果的でしょう。

学生としては、他社と迷っていたとしても内定は持っておきたいのが本音ですから、こう伝えることで「本当は迷っている」学生を見つけることができます。
発見できれば、メンターとの面談を入れたり自社の魅力を改めて伝えるような場を設けたりと手の打ちようがありますよね。

※オワハラ:「就職活動終われハラスメント」の略。就職活動において、企業側から就職活動を終わらせて自社に入社するように強く求めたり、強要したりすることをいい、SNSや口コミサイトで話題化に上りやすい。

― つづいてが「不安要因の探り出し」ですね。これがまさに今お話しいただいた「打ち手」を考えるために重要な情報だと思います。


曽和さん: そうですね。内定が出た会社への入社に不安があって就職活動がやめられないのであれば、何がその原因なのか知る必要があります。
学生にとっては話しにくい内容ですから、聞き出し方にはコツが必要です。

― どのようなコツがあるのでしょうか?


曽和さん: 面接担当者や役員ではなく、学生と年齢の近いリクルーターなどのフォロー担当者が、「実は俺も入社前は迷ってたんだけどさ……」というように自己開示をし、「ここでは悩みを正直に話してもいいんだ」と実感してもらうことが大切です。

そうして学生自身が持っている不安要因を特定できれば、あとはそれを打ち消せるように情報を提供するという打ち手を出すことができます。

― 学生自身が不安を抱えているのではなく、親からの反対というパターンもありますが、その場合はどうすればいいでしょうか?


曽和さん: 激務だったり、親世代になじみのない業態だったりする企業の場合、親御さんからの反対が理由で内定辞退ということもありますね。

これはもう、親御さん向けにパンフレットを作成するとか、手紙を出すとか、社内ツアーを行うとか、真摯な対応をする以外にないでしょう。
内定者の実家に一軒一軒お伺いして自社の環境やキャリアプランを説明しているという企業もありますよ。

― 不安要因がないという場合もあるのでしょうか?


曽和さん: もちろんあります。その会社への入社を心から希望していて、それがかなってうれしくてしようがないという場合ですね。
しかし、これはこれで危険です。理想郷はどこにもないわけですから、リアリティショックから入社後の早期離職につながりやすい傾向があります。

現場の社員から現実を早めに伝えておくとか、社内を見て回る機会をつくるとか、そういった方法で早めにリアルを知ってもらうように心がけましょう。

― 最後が「リレーション強化」ですね。先ほどお話にあったフォロー担当者の自己開示もこの一環だと思いますが、他には何をするべきなのでしょうか?


曽和さん: 採用担当者やフォロー担当者がアレンジして、内定者のパーソナリティーと合いそうな社員や同期の内定者と面談する機会を設けるといいですね。
内定者同士や社員との間にリレーションが生まれれば、仲間意識が醸成されて内定辞退を防ぐ効果があります。

― 内定者懇談会で全員を集めるような機会を設けることも多いですね。


曽和さん: 懇談会を開く会社はたしかに多いのですが、正直言うとお勧めできません。「事故」が発生してしまうことがありますので……。

― 内定者懇談会で「事故」ですか? どういうことでしょうか。


曽和さん: 実際にあった話なのですが、内定者を一堂に集めて立食形式の懇親会を開催した企業がありました。これ自体よくある話だと思います。
特にグルーピングなどはせずに、自由にみんなで話してくださいね、という会でしたが、採用担当者の知らないところで内定者同士のちょっとしたイザコザがあったそうです。

その報告を受けて、担当者から内定者へ後日連絡をしてみても返事がない。メールも返ってこないし、電話も出てくれないと言うんです。
すると数日後に「社風が合わない」という理由で内定辞退の連絡が来てしまった。

― 内定者懇談会で感じた雰囲気が、そのまま社風として受け止められてしまったんですね。


曽和さん: そうですね。しかし、仕事の経験がなく会社がどういうものか理解していない学生側からすると仕方のないことだと思います。
それまで何の関係性もなかった人同士をいきなり集めると、こういうことが起こりやすいんです。

なので、フォロー担当者がアレンジした数人程度の小さなグループをまずはつくって、その中でリレーションを築いていくことをお勧めしています。

― 内定者が数人しかいないという場合はどうしたらいいでしょうか?


曽和さん: 新入社員にメンターをつける制度を持っている企業は多いと思いますが、それを内定者時代からやっておくというのがいいでしょう。
数人の内定者同士が仲良くなれるとは限りませんから、社員と内定者の一対一の関係をつくり、それを維持したまま入社の日を迎えてもらうわけです。

― 具体的ですぐに使えそうなポイントばかりですね。しかし、これらを全てやろうと思うと内定者を呼び出す機会が多くなり過ぎませんか?


曽和さん: 多くていいんです。内定式で書類の提出から社員証の写真撮影、社内ツアーまでいっぺんに終わらせて、半年後の入社式までほったらかしという企業も少なくないと思いますが、その半年間で内定辞退される可能性が高いですね。

内定者と会う用事は細かく分けて、何度も接触を重ねることで「単純接触効果(※)」が生まれ、好意度が上がっていきます。
学生にとっては出勤のシミュレーションにもなって「自分がこの会社で働くこと」をリアリティをもって想像できるいい機会にもなるでしょう。

その細かく分けた機会の中で、就職活動の状況を確認し、不安要素を探り出し、リレーションを深めながら入社まで関係を継続することが、内定辞退を防ぐためには非常に効果的なんです。

※単純接触効果:「ザイアンス効果」「ザイアンスの法則」とも呼ばれる。どんなに小さな接触であってもその回数を重ねることで好意度や印象が深まるという効果を表す心理学用語。対人関係については「熟知性の法則」とも呼ばれる。

内定さえ出せば入社してもらえた「就職氷河期」時代を知っていて、学生からの内定辞退をリアルに想像できないという方もいるかもしれません。
けれども、現在は売り手市場で学生に優位な状況が続いているだけでなく、情報が豊富で内定後にも他社に心移りすることは珍しくありません。

それを防ぐには、まず「すぐに会う」こと、そして「何度も会う」ことで、内定者一人ひとりに向き合い悩みを解決してあげるなど、きめ細かい対応が求められます。

そういった対応によって、会社と内定者の双方が入社前にお互いをよく知ることで入社後のポテンシャル発揮にも一役買ってくれることでしょう。
  • Person 曽和 利光
    曽和 利光

    曽和 利光 株式会社人材研究所 代表取締役社長

    1971年、愛知県豊田市出身。1995年、京都大学教育学部教育心理学科を卒業。株式会社リクルートで人事採用部門を担当、ゼネラルマネージャーとして活動したのち、株式会社オープンハウス、ライフネット生命保険株式会社など多種の業界で人事を担当。「組織」や「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法を確立し、2011年に株式会社 人材研究所を設立、代表取締役社長に就任。企業の人事部へ指南すると同時に、これまで2万人を越える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開する。

  • 人材採用・育成 更新日:2022/07/08
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