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人材獲得のための「採用広報」とは?必要性や手法を分かりやすく解説

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リーマンショック以降、売り手市場が長らく続いている日本の人材採用現場では、応募者の母集団を大きくすることよりも「互いのニーズにマッチした採用活動」が中心になりつつあります。さらに、採用活動のゴールとは新卒者を採用することではなく、採用後の定着まで図ることです。自社にとって優秀な人材を確保し、定着させるためにも「採用広報」が広く注目されています。本記事ではその概要や手法についても解説していますので、ぜひ皆さんの採用活動へ役立ててみてください。

採用広報とは

採用広報は「採用ブランディング」として説明することもできます。ブランディング本来の意味は、自社製品やサービス、あるいはブランドの価値向上を目指す取り組み。採用活動におけるブランディングとは、自社の事業やビジネスモデル、職場環境などに関する情報を発信しながら、企業というブランドの価値を高めつつ、自社が理想とする人材像を伝えて適切なマッチングを図るための活動だと言えます。

そのために欠かせないのが「丁寧な情報発信」であり、これが採用広報へと繋がっていきます。検索エンジンやソーシャルメディアの台頭により情報過多が続く時代で、製品やサービスの特徴だけで差別化を図ることは難しくなっています。また、中小零細企業などニッチ市場を相手にしているビジネスでは人材獲得戦争において劣勢を強いられるのは必然ともいえます。

しかしそうした状況下でも、企業が描くビジョンは仕事のやりがい、具体的なキャリアアップなどの情報を発信することで、それらに同調した新卒や中途採用者を獲得できる可能性が高まります。つまりは自社の、企業としての魅力を再発見し、情報発信することが採用広報だと定義できます。

広報力を決める要素

  • 企画(計画)力
  • コミュニケーション能力
  • 情報収集力
  • 文章力
  • プレゼンテーション能力

採用における広報力の強い企業とそうではない企業で違いはどこにあるのか。その決定要素についてみていきましょう。

1.企画(計画)力

採用広報を通して目指すゴール(目標)を設定し、どういったプロセスをふんでいくのかを明確にする力が企画力・計画力。情報発信する以前に採用広報の担当者として磨くべき重要なスキルのひとつです。

2.コミュニケーション能力

広報力が強い企業は、情報発信だけではなく求職者との双方向による円滑なコミュニケーションが図れています。信頼関係を構築したうえで企業理念や事業のミッションなどを伝えることができれば、採用時のミスマッチ防止にも繋がるでしょう。

3.情報収集力

採用市場はさまざまな影響を受けながら日々変化しているため、社会全体の動きやトレンドをキャッチアップする能力も広報力の強さに影響します。また、さまざまな情報に翻弄されずに必要なものや信ぴょう性のあるものを見極めるスキルも必要不可欠といえるでしょう。

4.文章力

広報の役割は「伝える」こと。その手段は、ネット媒体や紙媒体などさまざまです。そのうえで共通する重要なスキルが文章力です。自社の強みや魅力をいかに言語化できるかで広報力に差が出るといっても過言ではありません。

5.プレゼンテーション能力

採用広報は、説明会や動画などを通じて情報を開示するシーンもあります。そこで重要となるのがプレゼンテーション能力。求職者に対して、事業への想いや採用にかける情熱を訴求しつつ、相手の求めていることや疑問に受け答えできるかも大切です。

採用広報がなぜ必要なのか

厚生労働省が公表した有効求人倍率の数値をみると、前年と比べて大きく低下した2020年も1.0倍を割ることなく再び上昇傾向にあり、依然として売り手市場の継続が予想されます。こうした状況では、退職者が出るたびに新たな人材を採用する従来のサイクルを保つのは非常に難しくなりました。そのため、穴の開いたバケツに水を注ぎ続けるような採用活動ではなく、採用のゴールは定着にあるという視点を持って取り組む必要があります。

こうした状況を打破するために、採用広報が重要視されています。社外への情報発信だけでなく、自社に誇りと愛着を持って働けるブランディングを実現できれば、定着率の向上へと繋がります。採用広報を、単なる採用コストの削減と捉えていては、激化する人材獲得競争のなかで満足する結果は得られないでしょう。より効果的な採用広報を行うためには、情報発信を行う以前に、市場だけでなく求職者や従業員に向き合った企業理念をつくることが求められています。

採用広報の主な手法

採用広報の基本は各種メディアを活用した情報発信です。メディアといっても多種多様に存在するので、自社の採用活動において何が最適かを見極める必要があります。まずは、採用広報の手法となるメディアを整理していきましょう。

  • オウンドメディア
  • ペイドメディア
  • アーンドメディア

採用サイト、ブログサイト(オウンドメディア)

企業ホームページに掲載している採用サイトや、採用活動を目的としたブログサイト等、自社独自に保有するメディア(オウンドメディア)では自由な情報発信が大きな強みです。採用への想いが伝わる代表メッセージや先輩インタビュー、求める人物像などを記載することで、「この人たちと一緒に働きたい」「自分の経験が活かせそう」など、応募意欲を高める効果が期待できます。

テレビ、雑誌、ラジオ、新聞(ペイドメディア)

広告費用を支払って紙面やサイトに求人情報を掲載するメディア(ペイドメディア)では、幅広い層のターゲットに訴求できる強みがあります。インターネット上に掲載するリスティング広告もこの一種で、他にはプレスリリースのように企業の情報発信を中心としたサービスを利用する手段もあります。

ソーシャルネットワーキング(アーンドメディア)

FacebookやTwitterなどのSNSは、今や立派な採用活動ツールです。単純に採用活動目的の情報発信をするだけでなく、新卒・中途採用者の動向を探るための情報収集ツールにもなります。コンテンツ運用によって同時にブランディング効果も高められます。

採用広報の進め方

上記で整理したように、採用広報の手法は大まかに3つあります。どの手法を採用するかによって進め方が異なるので、ここでは手法別に解説していきます。

オウンドメディアを使った採用広報の進め方

自社の採用サイトやブログといったオウンドメディアを活用した採用広報は、「未経験者歓迎」や「アットホームな社風」などの求人広告でよく見られる常套句ではなく、よりメッセージ性に富んだ内容にすることが重要です。なぜなら、競合他社との差別化を図るうえで、オリジナリティが重要になるためです。

もちろん、サイト自体のデザイン性やトレンドも大事ですが、求める人材を明確にしたうえで、そのターゲットの応募意欲を掻き立てるようなコンテンツ作成と情報発信に取り組んで、サイトの “内容”を充実させましょう。具体的には、入社の動機や現在の仕事を紹介する「社員インタビュー」や、社風や働く仲間の様子が伝わるイベント写真やオフィス動画などを発信することで、オリジナリティ溢れるオウンドメディアとして注目度も高まります。

ペイドメディアを使った採用広報の進め方

各種広告(紙・WEBなど)を使ったペイドディアによる採用広報では、まず理想の人材像からターゲットを明確にする必要があります。そのうえで、どの広告を利用するかを選ぶとよいでしょう。知名度のある求人媒体には、あらゆる業界・職種の経歴をもつ登録者が多いため、即戦力となる人材に出会える確率も高い。また、登録者のデータベースを活用し、DMを送る機能などを備えたペイドメディアも多いため、求める人物像に近いスペックをもつ求職者にアプローチできます。リスティング広告やSNS広告の場合は、ターゲティング機能によって精度の高い広告配信が可能なので、コスト削減の意味でも「誰にどんな情報を発信したいか?」を事前に決めておくのが良いでしょう。

広告の内容は、メリットだけを並べるのではなく、仕事の大変な部分なども包み隠さず伝えることがポイントになります。これは、求職者が抽象的な情報よりもリアリティのある情報を求めているためです。採用後の定着率を高めるうえでも、包み隠さず真摯に企業側の情報を記載することがペイドメディアにおける採用成功のポイントになるでしょう。

アーンドメディアを使った採用広報の進め方

主にSNSを活用した採用広報では「ターゲットとの対話」を重視してください。SNS上で情報収集を行いながら「求職者は企業に何を求めているのか?」を知り、それに合わせた情報発信を行なっていきます。特にZ世代(1990年代後半~2000年代前半に生まれた世代)は、ソーシャルネイティブ世代とも言われており、ほとんどがSNSユーザーであるため、上手く運べば非常に強力な採用広報ツールとして機能します。例えば、Twitterを活用して企業の代表や広報・人事担当者などが求職者と直接やりとりをするなど、双方向のコミュニケーションを積極的に行うことで、採用のミスマッチ防止や企業の口コミ・評判の向上にも効果を発揮するでしょう。

採用広報の事例

コーポレートスローガンとして「よろこびがつなぐ世界へ」を掲げているキリンホールディングスでは、採用広報のメッセージにもこの言葉を採用しています。同社では2つの採用サイトを運営しており、採用ポータルでは多種多様なコンテンツによって情報発信を行なっています。

例えば、単に採用情報を発信するのではなく、キリンホールディングス全体として取り組んでいるサスティナビリティ活動を包含した「CSV(Creating Shared Value)経営」に関するコンテンツを多く掲載しています。CSVは「社会的価値の創造」と「経済的価値の創造」を両立することであり、健康・地域社会とコミュニティ・環境・適正飲酒の4つのカテゴリから成り、それぞれの取り組みを紹介することで同社が社会的に果たしている責任についても言及していることでブランディング効果を高めています。

この他には社員インタビューコンテンツなどにより、各部署の立場から仕事へのやりがいと、生産者・消費者との繋がりについて説明されており、新卒者が入社してからの職場環境を具体的にイメージする仕組みが凝らされています。

ここまで大々的な採用広報は「大企業だからこそできるもの」と考える方も多いかもしれません。しかし、今やオウンドメディアを持ち、運営することへのハードルは低くなっており、ペイドメディアを活用した広告出稿も多くの中小企業が取り組んでいます。

大切なのは、自社にとって必要な採用広報とは何か?を十分に考えた上で、先進事例を参考にしながら採用活動をデザインしていくことです。

採用活動を改めて見つめ直す機会に

いくら優秀な人材を確保できても、自社のビジネスや風土にマッチしない人材ならば意味はありません。従来は新卒者の母集団を大きくすることで優秀な人材を確保しようとする動きが活発でしたが、大きく変化しようとしています。

採用広報には今まで以上にコストがかかるケースが多いでしょう。しかし、これまで無駄にしていた採用コストと人件費を考えれば、より効率的に、より低コストに、自社のビジネスや風土にマッチした人材が獲得できるようになります。この機会にぜひ、自社にとって必要な採用活動とは何かを改めて熟考してみてください。

  • 人材採用・育成 更新日:2022/06/21
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