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【適性テスト結果の読み方解説】面接がレベルアップ!SHLテストの活用法

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近年、コロナ禍の影響もありオンラインでの面接が主流になる中で、学生の「人となり」を見ることに困難を感じている方にぜひお薦めしたいのが、 日本エス・エイチ・エル(以下SHL)の適性テストです。

臨床心理学のモデルではなく、実際のビジネスパーソンの行動調査から作られているというユニークな特性から、現場での活躍までを見据えた見極めの一環として利用できるのがSHL適性テストの大きなメリットですが、実は一人ひとりの能力だけでなく、その「パーソナリティ」まで知ることができるという点も大きな特徴です。

今回は、SHLの数あるテストの中でも面接での参考資料として特に有用な「総合適性検査」について、その活用方法をお伝えしていきます。

知的能力やパーソナリティ・チャートをはじめ、さまざまな指標から受検者の人となりや能力を知ることができるテストですが、それだけに使い方が難しいと感じる方もいるでしょう。
そこで、日本エス・エイチ・エルのコンサルタント 岡松太郎さんにテスト結果の「読み方」も含めて「面接でのSHL活用」についてじっくりとお話を伺いました。

― 今日はよろしくお願いします。まず、SHLの「総合適性検査」でどのように受検者の資質を見極めればよいでしょうか?


岡松さん: はい、まず申し上げておきたいのが、このテストは受検者を「落とすための道具ではない」ということです。ここに大きな誤解をお持ちの方が多いように思います。というのも、SHLの総合適性検査は「結果だけで善しあしが決まる」という性質のものではないからです。

面接での使い方で言えば、あくまでも「補助資料」であって、SHLテストの結果だけをもって「この人材は活躍できる」とか「活躍できない」と断定するものではないんですね。
受検者のことをよく知るための、重要資料のひとつと捉えてください。

― その部分は、誤解されている読者の方も多いと思います。SHLテストの性質を含めて解説をお聞かせください。


岡松さん: はい。SHLテストはさまざまな職業に就いている人々を観察することから生まれたものです。どのような行動特性のある方が、どのような職種で活躍しているのかを分析して開発されたものなので、ビジネスの現場と相性が良いんです。

とはいえ、あくまでも把握できるのは「特性」であって、「優劣」ではありません。

例えば、総合適性検査の分析結果には「パーソナリティ・チャート」といって「人との関係」「考え方」「感情・エネルギー」の3カテゴリ、30因子で受検者の性格や人となりを知ることのできる項目がありますが、ここで「独自性」や「社会性」が低く出ているからといって、それをもってその人が「劣っている」ということにはなりません。

受検者がどのような人物なのかを深く知るためのデータとして使用し、あくまでマッチングの評価は、面接で行うべきだと考えています。

― なるほど。あくまでも受検者を知り、面接を実りのあるものにするための資料であるということは注意しておきたいですね。SHLテストをより活用するためには、どのような準備が必要なのでしょうか。


岡松さん: はい。いま「準備」という言葉が出ましたが、それが面接にとってなによりも大切です。面接の質は「事前準備」で決まるといっても過言ではありません。
学生のどのような点を、どう評価していくのかをきちんと決めておかないと、結局は「印象」や「好き嫌い」といった主観評価で結果を出してしまうことになりがちだからです。

その参考としてSHLのテスト結果を活用していただきたいのですが、きちんと準備がなされていれば、テスト結果に表示されている多くの項目のうち、実際に見るべき箇所はそれほど多くないんです。
その的を絞るために、まずは「採用基準」を決めること、そして受検者一人ひとりに対する「仮説づくり」から始めていただきたいと思います。

― 採用基準ですか。何となく共有されていても、言語化している企業はそれほど多くないのが現状ですね。


岡松さん: そうなんです。しかし、採用基準は、SHLテストの結果をどのように解釈するか、という軸にもなるため非常に重要です。
「人材要件」という言葉も近ごろは聞かれるようになりましたが、そこまで大げさに構えなくても、自社におけるハイパフォーマーの定義を話し合い、共有するというやり方でも効果があると思いますよ。
もちろん、社員にSHLテストを受検してもらい、ハイパフォーマーに共通する特徴を知ることでより科学的な検証が可能です。

そして、その上で重要なのが「仮説づくり」です。
エントリーシートや履歴書などと併せてSHLテストの結果を見て、受検者がどのような人物なのかを想像しておくといいでしょう。

例えば、先ほどの例のように「社会性」が低いという受検者がいたとします。しかし、その人物が同時に「計画性(計画を練ることを好む)」や「変化志向(変化を好む)」も高く、またエントリーシートでは「映画研究会の会計として活躍していた」とあったら、どうですか?

― なんとなく、人となりが見えてくるような気がしますね。とっつきにくいけれど頼りになる、職人気質でバックオフィス系のスタッフという感じがします。


岡松さん: そうですよね。そうやって「どんな人物なのかな」「どうしてそういう志向の人になったのかな」と想像を巡らせて、どのような質問をすれば受検者をより知ることができるかを考えておくことが重要でしょう。

― 通常業務の間に何人もの学生を面接しなくてはいけない面接官の立場から見ると、その全員に仮説を立てていくのは大変そうです……。


岡松さん: 面接前の5分があれば十分です。
面接の5分前に、面接官同士でテスト結果を見ながら自社の誰に似ているか、という話をするだけでも仮説は立てられます。
例えば、「○○さんに似ていますね」「でも、ここは○○さんと違うね、どうしてかな」「どのような経験が、この人の志向に影響を与えたんだろう」と話しておくだけでもいいんです。たったそれだけのことでも、面接での質問がぐっと具体的になっていくはずですよ。

― 面接前の5分でなら、実現できそうですね。では、具体的にSHLテストの結果をどう見ていけばいいのか教えていただきたいと思います。

― ありがとうございます。では早速、一つひとつの項目を見ていきたいと思います。


●総合適性検査の帳票サンプル(画像はすべてクリックで表示拡大)
岡松さん: では左上から見ていきましょう。まず、「マネジメント資質」ですが、これは新卒採用面接においては必ずしも重視する必要はありません。主に中途採用や管理職昇格時の面接で使われる項目ですね。

そして知的能力の項目も気を付けて見ていただきたいと思います。
「計数」「言語」「英語」の3科目で受検者がどれだけの能力を持っているのかを知ることができるのですが、数字で判断しやすい項目なので「10点満点」を期待したくなりますよね。
でも実際には、研究職や高度な技術職など一部を除いては知的能力よりもコミュニケーション能力など他の項目の方がずっと重要です。社内のテスト結果と照らして平均よりも大きく下回っていなければ問題ないと思ってください。
この結果を重視しすぎて採用に失敗するという例はよく聞かれます。
岡松さん: 業務を遂行する上で必要となる能力を9の要素に分けて予測したものです。点数はSHLテストの日本国内の基準母集団データをもとにした偏差値で算出されます。
そのため、明らかな特徴があると見なせるのは、出現率が理論上16%以下となる「3点以下」と「8点以上」となります。

そして、面接で実際に見るべき項目はさらに絞ることができます。
先ほど重要だとお話した「採用基準」をもとに、自社に必要と思われる能力を3つほど決めておくことが、このパートを活用するためには必須です。
そこに「3点以下・8点以上」の項目があった場合、面接で深掘りするといいでしょう。全てを聞くには面接の時間は短すぎますから。

例えばサンプルの帳票では「ヴァイタリティ」が低く出ていますが、面接では「気力がない人物」なのか、もしくは「慎重な人物」なのかを見極める、というような使い方です。
そのどちらかによって、人物の印象は大きく異なりますよね。これも先ほど話しましたが「優劣を決めるものではない」とは、そういう意味です。

このあたりも、面接官同士で事前に気になるポイントを話し合っておき、どう深掘りするのか決めておくといいでしょう。
岡松さん: SHLが分類している多くの職種のうち、国内の代表的な7職種についての適性を数字で表しています。
中途採用であれば、採用予定ポジションに近いものを見て適性を知ることができますし、新卒採用であれば将来的なポテンシャルを知る指標として使うこともできます。
岡松さん: 最も大きなスペースを取っているのが、パーソナリティ・チャートです。帳票の中でも目立つ項目ですが、使い方はただひとつ「人となり」を想像するためです。
30のパーソナリティ因子について、「能力特性」と同じく偏差値に基づいた点数が付けられていますので、ここでも「3点以下・8点以上」を中心に見ていきましょう。

先ほども少しお話ししたとおり、ここで「3点以下・8点以上」の項目をつなぎ合わせていくと、人物像がなんとなく見えてきます。その人物像を面接官同士で事前に共有しておくと、非常にスムーズに面接が進みます。

注意していただきたいのは、時折「こういう特徴のある人はダメだ」と決め付けてしまう方もいますが、これはあくまでも「傾向」であるということです。
「行動力」が低いと出ていても、その実は「慎重派」なだけだったり、逆に「計画性」が高く出ていても、実際には「突発的な対応が苦手な」タイプだったりと、人によって千差万別なので、特に知っておきたいポイントを絞り、面接の場で確認しましょう。

この結果をもって優劣を判断するのではなく、あくまでも人物像を把握するための参考として受け止めてください。

― 詳しく解説していただき、ありがとうございました!最後に、面接官にとっては悩ましい「テスト結果とエントリーシートで言っていることが違う」という問題について伺わせてください。そういった場合、テスト結果はどのように評価したらいいのでしょうか。

岡松さん: 確かに「あるある」ですね。
「サークルのリーダーをやっていました」という学生は非常に多く、それを根拠に自分の持っている能力をアピールしていますが、その内容とテスト結果が乖離(かいり)している場合、その矛盾をクリアにするための深掘りを面接で行うといいでしょう。

具体的には、5W1Hで実際に起こった出来事を説明してもらうのがお勧めの方法です。学生側の気持ちとしてはエントリーシートを少し「盛って」しまうのは仕方がないと思うんです。
なので、5W1H の質問で実際には「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「どうして」「どのように」やってきたのかを細かく聞いていきましょう。事実を細かく聞いていくと、なかなか「盛る」ことは難しく、本来のポテンシャルを知るヒントになりますね。

とはいえ、全ての項目にわたって確認しようとすると時間が足りなくなると思いますので、何度も申し上げていることではありますが、採用基準に従ってポイントを絞り、時間内に確認しきれないようなら次の面接に申し送りをするなど、工夫は必要になるでしょう。

さらに細かい工夫ではありますが、面接官が複数いる場合は、質問役と書記役の役割分担をしておくと良い面接ができると思いますよ。質問をしながらメモを取るというのは意外と難しいことですし、同時に行おうとするとどうしてもメモには「良い」とか「悪い」みたいな結果しか残らず、あとから参考にできる情報が不足することが多いんです。前半と後半で役割をスイッチしても良いと思います。
ぜひ検討してみていただきたいですね。
ここまでお話を伺ってきて分かるように、SHLの適性テストは深層心理から受検者の特性を分析できるため、本人の口から語られるものよりも信ぴょう性があるという見方もできます。

一方で、岡松さんが何度もおっしゃったように「優劣」を決めるものではなく「人となりを知るためのもの」であるという点は、ぜひ覚えておいていただきたいポイントです。

そういう意味では「人となり重視の採用なのでテストは不要」と考えている方にこそ、実は有効であるとも言えます。
マイナビでは、SHLテストをより上手に活かすための採用基準設定や面接官へのレクチャーなどもお手伝いすることができます。

SHLテストを使ってみたいけれど分からない、もしくは使っているけれど活かし切れていないかもしれない、という方はぜひお気軽にお問い合わせくださいね。
  • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

    HUMAN CAPITALサポネット編集部

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  • 人材採用・育成 更新日:2022/03/11
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