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地方企業には、まだまだ自分で気付いていない魅力がある! 再発見と適切なPRが採用成功のカギ

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「地方企業の首都圏学生獲得」をテーマとした特集の2本目では、マイナビで南九州エリアを担当している白水彰一に続き、中部エリア担当の小林和喜にもインタビューを行いました。

白水には地方企業が首都圏学生を獲得するための具体的なノウハウとして「首都圏の採用スピードについていくためのリクルーター活用」、そして首都圏企業に負けない企業の魅力を「理念」を中心に発信することの大切さについて聞きました。

今回の小林には、地方企業の魅力をいかにPRするかという点について聞いています。

ではどうぞ!

― 小林さん、今日はよろしくお願いします。小林さんは愛知県で生まれ育ち、現在も名古屋で勤めていらっしゃいますが、新卒入社された企業では東京での勤務もあったそうですね。まずはご自身の経験について伺わせてください。


小林: はい。そうなんです。愛知での配属になると聞いていたのですが、東京に配属になりました。当時は結構驚きましたね。

その後約3年間、東京で働いた後、マイナビに転職して在名の大手企業を担当するチームの立ち上げに携わりました。その後、愛知県の東側のエリアを担当する事業所の立ち上げをし、現在はまた名古屋にいます。

― 今日は、小林さんのご経験も踏まえながら地方企業の首都圏学生獲得についてお話を伺えればと思います。ご担当されている中部エリアで首都圏の学生を採りたいと考えている企業はどのくらいあるのでしょうか。


小林: 採りたいかどうかと聞けば、多くの企業が「採りたい」と答えるでしょう。しかし、明確な採用目標として掲げている企業がどのくらいあるかと問われれば、1割程度じゃないかと思います。

私大を中心に優秀な大学が集まっているとか、流行の最先端で洗練されたセンスを持つ学生がいるといった首都圏のアドバンテージは確かにありますが、だからといって絶対に欲しいという企業は、実はそこまで多くありません。

特に愛知県は地元志向が強く、他エリアと比較すると地元学生だけで採用目標を充足しやすいことも影響しているかもしれませんが。

― 今回の特集である「地方企業の首都圏学生獲得」というテーマを考えるにあたって重要な指摘に思えます。必ずしも必要ではないが、採用できればそうしたい、という存在なんですね。


小林: もちろん、絶対に首都圏の学生を採用したいと考えている企業もあるでしょう。しかし、そのためだけに何か特別な施策を実行するというのではなく、採用力全体を底上げする施策を通じて、結果として首都圏学生の獲得も叶える、という方が企業の利益になると思えます。

― では、今日は地方企業の魅力発信について、いろいろと伺いたいと思います。具体的にどのような手段があるのでしょうか。


小林: もちろん、知られていないだけで地方にもいい企業はたくさんあります。

となると、まずは認知を獲得しましょうという動きになるわけですが、それだけでなく、同時に企業自身が自社の魅力を認識することが大切です。

例えば、在名の中堅メーカー企業が集まって、まずは知名度を獲得する目的で足並みをそろえて一緒に大学回りをしていますが、目的は「知ってもらうこと」だけではありません。

学生の目線からは「知っている」と「興味がある」の間には大きな差がありますので、単に出向くだけでは興味を持つまでには至らないんです。だからこそ、自社の魅力を企業自身が認識し、何を伝えるべきかを整理しておくことが大切です。

― なるほど。


小林: また、名古屋に本社を置くあるメーカーでは、企業人気ランキングへのランクインを目指す活動を社長主導で行っています。名古屋なら知らない人はいない大企業ですが、BtoB企業ということもあり首都圏での知名度は高くはありません。そのため、ランキングに入ることによって興味を持ってもらうことを意識しています。

これにも、ランキングに入るために自社の魅力を隅々まで棚卸しすることで、自社のことをより深く理解できるという副産物がありますよね。

こうして、まずは「知ってもらう」活動を積極的に行いながら、同時に「記憶に残る」ブランディングを行うことで、自社のことを知る機会とすることが必要でしょう。

― 先ほどのお話の中で、知名度以外に「ブランディング」という軸もありました。この点について、地方企業ならではの伝え方というのは何でしょうか。


小林: まず普遍的な話として、自社の持っている強みをいかに魅力的に伝えるかということは重要です。

例えば、愛知の大手メーカーの事例があります。クルマのシートと部品製造が主力で、企業規模、実績ともに全国クラスの大企業です。
しかし、先ほどお話ししたメーカーと同様、BtoB企業のため学生にとってはイメージしにくい側面もありました。

そこで、学生の心をつかむキャッチコピーを作成しました。「先進的なことをしている企業である」ことを印象付けられる内容にすることでブランディングを行い、それをきっかけに知ってもらえれば、安定した企業体質や福利厚生に目が向き、検討のそじょうに乗せてもらうことができるという狙いです。

― なるほど。事業内容の切り取り方を変えて、強い魅力として伝えるわけですね。方法論としては普遍的ですが、知名度に悩む企業には大きな武器になりそうです。


小林: そうですね。また、地方企業の魅力発信という軸に絞るならば、「地方での暮らし」は強い訴求につながる可能性はあると思います。

2019マイナビ新入社員意識調査によると、学生の意識が2014年を機に「仕事>暮らし」から「仕事<暮らし」と逆転しています。仕事を最優先するのではなく、まず暮らし・私生活を大切にしたいという学生が過半数になっているんです。

そこに乗ずる形で、首都圏学生に地方での快適な暮らしをアピールすることは有効ではないでしょうか。

― 「暮らしを大切にしたいから、首都圏を出たくない」という学生も多いようですが、その点についてはどうお考えでしょうか。


小林: それこそ、まさに「知らない」からだと思いますよ。実際、東京で仕事をしていた方が、より良い暮らしを求めて地方企業に転職するというパターンも近年はどんどん増えています。

私が担当していた企業で、名古屋から1時間以上離れた、いわゆる“田舎”に位置する自動車部品メーカーがありました。立地だけで見れば、首都圏学生だけでなく、在名の学生にも場所の抵抗感を抱かれてしまうかもしれません。

ですが、そこには1万円で入れる社員寮があり、電気・ガス・水道といったライフラインも会社が負担していたんです。つまり、月1万円で暮らしに必要なものは「食」以外全てそろうということです。

これは強力な事実ですよね。ただ、ストレートに伝えても「安い社員寮がある」という以上の訴求はできません。しかし、その浮いたお金を考えると、在名の企業に勤めて名古屋で暮らすよりも可処分所得は多いはずなんです。

普段は自然が豊かな環境に住み、週末は名古屋に出て楽しむ。そんな暮らしができます。学生にとっては、もしかしたら名古屋に住むよりも良い暮らしが送れると思うかもしれません。

しかし、その企業自身が、この魅力に気付いていませんでした。そこで、こうして深堀りすれば多くの学生を引き付けることができると説得し、結果、実際に効果を上げることができたんです。

企業が自社のPRをするとき、大きく分けて「会社・仕事・社員・暮らし」という4点を挙げますが、そのうち「暮らし」については待遇や福利厚生など数値的な話に終始しがちですよね。

それではもったいないと思うんです。そこには周辺環境を含めて強い魅力が隠れている可能性があります。

― そういった「豊かな住環境」をPRしている企業はあるのでしょうか。


小林: 多くはありませんね。ただ、プライベートを大事にしている人が増えているのは確かなので、例えば観光地の近くだったり、自治体がPRに協力してくれるようなエリアなら大きな強みになるはずです。

とにかく、自社の持ち得る強みを周辺環境も含めて棚卸ししていくことが大切でしょう。

― 自社を知り、魅力を棚卸しすることの重要性は読者に伝わっていると思います。とはいえ、棚卸しした魅力が本当に有効なのか、という点は確認しにくいと思いますが、どうするべきですか?


小林: 魅力の棚卸しということでは、もちろん私たちも協力させていただきますが、それが刺さるかどうかは学生に当ててみないと分かりません。

確認手段としてお勧めしているのが「志望動機」と「辞退理由」をよく確認するということですね。

学生が語る志望動機には、企業側が発信した情報のうち、学生の心に残ったことがまとめられています。つまり、志望動機が「御社の事業内容や将来性に引かれ……」のような、他社と差別化されていない内容だった場合、自社の発信が刺さりきっていない可能性があります。

逆に言えば、志望動機で語られる内容に、自社のオリジナリティを込めて発信した情報が含まれていれば、それが「刺さった」ということになります。このトライ・アンド・エラーを繰り返すことが、結局は近道でしょう。

― なるほど。同じように「辞退理由」にも有用な情報が含まれているのでしょうか。


小林: もちろんです。辞退理由は志望動機以上に重要な情報だと思っています。

学生に直接聞いても「第一希望の企業から内定を頂いたため」としか返ってこないことも多いと思いますが、ぜひもっと踏み込んでほしいですね。無理に引き留めようとする意志はないこと、次年度の採用活動のために意見を聞きたいということを伝えれば、きっと半数程度の学生は答えてくれるはずです。

企業側はつい、「知名度に差があるから仕方がない」と片付けてしまいがちなのですが、本当の理由は学生の中にしかありません。その理由は、情報不足かもしれませんし、面接や説明会などで悪いイメージを持つ場面があったからかもしれませんよね。

そしてこれはそのまま、次年度の改善ポイントにもなります。辞退理由のヒアリングを外部委託する企業もあるくらいです。

― 自社が発信する魅力や情報を整理し、改善を繰り返すことが大切ということですね。


小林: もちろん、自社の魅力や情報を発信するばかりでなく、学生に「あなたが必要だ」と伝えることも併せて重要ですね。
学生のアンケートによると、志望度が最も上がるのは面接の場です。そこで、その学生を必要としている理由をきちんと伝えましょう。採用担当者が考える、その「理由」を面接官にもきちんと理解してもらい、面接の場でしっかりグリップするんです。

そうすれば、それまで発信してきた自社の魅力と相まって、学生の入社動機を形成することができるでしょう。

― では最後に。ここまでの話をまとめると「まずは知ってもらい、自社の持つ魅力をしっかりと伝え、その学生が自社に必要な理由も伝える」ことで採用力を底上げし、結果として採用難易度の高い首都圏学生の獲得も可能にするという流れです。その後の定着についてはどうでしょうか。


小林: 地方企業において早期退職の原因になりやすいのは、「思っていたのと違う」というミスマッチです。

地方企業は、学生に知られていないだけに、ゼロからイメージをつくっていくことができるのが重要な強みの一つですが、裏を返すと、正しく伝えないと定着を困難にする原因にもなってしまうんですね。

東京で日常生活を送ってきた学生にとって、地方での暮らしは大きく変化します。企業からの強いメッセージを信じて、夢を見て入社しても、結局は現実とのギャップを感じてしまうと思います。

強いメッセージには、それに見合うだけの「現実」を伝える責任も伴うということです。また、地方企業に勤め、地方で暮らすことの良さを啓発することを同時に行うことも大切です。

ただ採用するだけではなく、企業と学生のマッチングという意味では、ここは絶対に押さえるべきポイントですね。

― 今日はありがとうございました!

プライベートを大切にしたいという考え方の学生と地方企業の相性は、私が想像していた以上に良いのかもしれないと考えさせられた取材でした。

東京で学び、東京に暮らした学生にとって、地方に出ていくことは大きな変化を伴う挑戦です。一方で、その魅力をうまく伝えることができれば、その挑戦を学生にとって価値あるものへと転換できるわけです。

とはいえ、最後は「こんなはずじゃなかった」というミスマッチを防ぐために現実もきちんと伝えることが大切と、先の取材の白水も小林も語っています。

生活環境の変化は素直に伝えながらも、それ自体が魅力の一つだと思ってもらえるような啓発活動、コミュニケーションが何よりも重要なのかもしれません。
  • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

    HUMAN CAPITALサポネット編集部

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