Uターン学生の獲得に「王道なし」 意欲の高い学生の期待に応えよう
地元を離れ、大都市圏での大学生活を経てセンスと経験を身に付けた学生を採用したいと考える地方企業は少なくありません。
また、学生の方も同様で2022年卒学生を対象としたマイナビのアンケートでは6割近くの学生が「Uターン・地元就職」について「希望している / どちらかというと希望する」と回答しています。
首都圏学生の獲得を考えている企業にとっては追い風の状況のように見えますが、実際の採用活動では大手企業との待遇差や情報提供の難しさから、苦戦することが多いようです。
そこで今回は、過去の記事でも最新の学生・大学の動向について詳しく語ってもらったマイナビのキャリアサポートチームから大塚祐宜に協力を得て、首都圏の学生獲得において注意すべき学生の志向や動向を聞いてみました。
大塚:
はい、よろしくお願いします。最初にぶつかる壁は、何より「知ってもらう」というところに尽きますね。学生からすると、社名を知らない企業の情報を取得するのは難しいでしょう。学生が受動的に受け取れる情報は、マイナビに登録している帰省先情報などから配信される情報くらいしかないんです。
なので、Uターン就職を希望する学生には、私たちとしても「自分で頑張ってアンテナを張らないと情報は得られないよ」と話すことになります。実際、地元の企業の探し方が分からないという相談をよく受けます。
なので、Uターン就職を希望する学生には、私たちとしても「自分で頑張ってアンテナを張らないと情報は得られないよ」と話すことになります。実際、地元の企業の探し方が分からないという相談をよく受けます。
― なるほど。リアルでの合同企業説明会が開催されていた頃は地域別のイベントやブースがあって、「偶然の出合い」で地元企業を知るということもあったと思いますが、今はそれも難しいですよね。
大塚:
そうですね。オンラインの地域別合同企業説明会はいくつか開催されていますが、対面でやっていたときのように「頑張ってチラシを配って呼び込みをする」というような努力ができず、知名度の低い企業にとっては厳しい状況が続いていると思います。
大塚: はい。学生も知名度以外の判断基準が少ないケースが多いですからね。一方で、感染防止対策のノウハウもたまって、小規模ながら対面で合同企業説明会も開催できるようになってきましたので、それがチャンスにつながっているという状況もあります。
大企業が自社のコンプライアンスによって出展に慎重な中で、小回りの効く中小企業の出展比率が上がると、同条件の企業が増えるので地元志向の強い学生と出会いやすくなると言えます。ただ、参加する学生にも新型コロナへの恐怖心を持つ人が当然いますので、参加スタイルを選べるハイブリッド型が人気ですね。
― オンラインセミナーが一覧で並んでいると、やっぱり名前を知っている企業に参加したくなる、という心理も働きますね。
大塚: はい。学生も知名度以外の判断基準が少ないケースが多いですからね。一方で、感染防止対策のノウハウもたまって、小規模ながら対面で合同企業説明会も開催できるようになってきましたので、それがチャンスにつながっているという状況もあります。
大企業が自社のコンプライアンスによって出展に慎重な中で、小回りの効く中小企業の出展比率が上がると、同条件の企業が増えるので地元志向の強い学生と出会いやすくなると言えます。ただ、参加する学生にも新型コロナへの恐怖心を持つ人が当然いますので、参加スタイルを選べるハイブリッド型が人気ですね。
― ハイブリッド型というと、どのような内容なのでしょうか。
大塚: 22年卒の採用シーズンでは学生と対面で話すことのできるブースと、オンライン配信用のブースが分かれていて、各企業は割り振られた時間になると配信ブースでオンラインセミナーを開くことができる、というものでした。23年卒からは、事前に録画しておいた説明会映像を配信する形式になり、採用担当者はより効率的・効果的に学生と接触できるようになっています。対面で企業の担当者と会いたいという学生からの要望は相変わらず強いので、自分に合わせた参加スタイルを選べる形式は学生からも人気があります。
また、1日の中で対面にもオンラインにも出展できることから、企業にとってもメリットのあるスタイルですね。
― 情報取得が難しい中、いま話題に上がったようなイベントに出向いたり、オンラインで参加などして何とか志望企業を見つけようという学生の姿勢は、企業にとってもうれしいものですね。
大塚: そうですね。東京の大学で学んでいると、当然ですが多くの同級生が東京の企業を志望しています。その中で、地元での就職を自分の意思で「選んでいる」わけですから、意識の高い学生と言えるでしょう。
― 学生によってさまざまだろうとは思うのですが、地元就職を希望する学生が持つ、その理由ってどういうものが多いのでしょうか?
大塚: よく聞かれるのは、大都市圏での暮らしが合わない、というものですね。この満員電車に定年まで乗り続けるなんて考えられない……という。
後は、最近の学生は企業に社会貢献性を求める傾向もあるため、地元に貢献したいという思いで地元就職を希望する学生もいるでしょう。(社会貢献は、『「就活の軸」として最も重要だったと思われるフレーズ』で、第3位=※出典:2021年卒マイナビ学生就職モニター調査(8月)=)
また、2011年の東日本大震災でもそうでしたが、社会不安が増大すると地元志向が高まるという傾向もあります。家族の近くにいたい、地元をもっと良くしたい、という志向は今、とても高まっているんじゃないでしょうか。
大塚: あえて挙げるなら、「実際に働く場所が明確である」ということですかね。先ほどもお伝えしたように、学生は地元就職を「選んでいる」わけなので、転勤があってはその意味が薄れてしまいます。
ただ、これ以外を考えてみても、学生ごとに就職を希望する地域もバラバラなら職種や希望する条件もバラバラなので…… 「これ」という刺さりやすい情報はないと思います。
大塚: そうですね。Uターン学生向けに特別な情報を用意するというのではなく、情報取得が難しい環境下で自社にたどり着いてくれた学生に対してきちんと充足した情報を渡すことが何より重要です。一般的な採用広報のセオリーをしっかり守っていくということですね。
また、2011年の東日本大震災でもそうでしたが、社会不安が増大すると地元志向が高まるという傾向もあります。家族の近くにいたい、地元をもっと良くしたい、という志向は今、とても高まっているんじゃないでしょうか。
― なるほど……。そんな地元就職を希望する学生に向けて発信するとき「刺さる」情報ってどのようなものでしょうか?
大塚: あえて挙げるなら、「実際に働く場所が明確である」ということですかね。先ほどもお伝えしたように、学生は地元就職を「選んでいる」わけなので、転勤があってはその意味が薄れてしまいます。
ただ、これ以外を考えてみても、学生ごとに就職を希望する地域もバラバラなら職種や希望する条件もバラバラなので…… 「これ」という刺さりやすい情報はないと思います。
― つまり、採用広報の基本を守ってしっかり情報発信しましょう、ということでしょうか。
大塚: そうですね。Uターン学生向けに特別な情報を用意するというのではなく、情報取得が難しい環境下で自社にたどり着いてくれた学生に対してきちんと充足した情報を渡すことが何より重要です。一般的な採用広報のセオリーをしっかり守っていくということですね。
― 先ほどの質問とは逆に、学生の志望度を下げてしまうような企業の行動ってあるのでしょうか。
大塚: これも地方企業に限ったことではないのですが、「ITの導入が遅れている」という印象を抱くと学生は不安を募らせることが多いようです。例えば、オンライン面接で企業側があたふたしてスムーズに進まなかったりとか、情報を求めてたどり着いた企業サイトが一昔前のままだったりなどですね。
― 地域にかかわらず、散見されますよね。
大塚: せめてオンライン面接ツールには本番前に試しておく、企業サイトが何年も放置されている場合はリニューアルをする…… などの対策は必要だと思います。
― Z世代の学生は企業から話を聞く前に、検索して得られた情報で意思決定を済ませている、という話を以前のマイナビイベント(※ 2021年4月21日開催の「市場動向報告会」)で聞きました。そういった学生にアプローチしている、ということを念頭に置く必要がありますね。
大塚:
おっしゃるとおりです。弊社の「マイナビ」をはじめとしたナビサイトは、写真と文章さえアップロードすれば統一のデザインに収まるので、比較がしやすいような設計にしているのですが、何度かお話ししているように地元就職を希望する学生は情報への意識が高いので、ナビサイトの情報収集だけにとどまらないことが多いようです。自社のウェブサイトにも訪れることがあるということは知っておいてほしいですね。
大塚: そうなんです。実際にはITへの依存率が低い業態だったとしても、イメージの問題で弾かれてしまうことはあるでしょう。
なので、これも先ほどと同様に、Uターン学生の獲得に向けた特別な対策ではありません。情報を取得しにきた学生に対して、きちんと情報を渡し、印象をつくれる場を整えておきましょう、ということです。
あえて言うなら、地元の学生を数名単位で採用していた地元密着型企業だと、これまでオンライン面接やウェブサイトを重視する必要がなかった、という場合があると思うんです。これからUターン学生を獲得するぞ、と考えているのであれば、ぜひ見直していただきたいポイントですね。
― そこで、訪れたときにサイトが古いという印象を抱くと「ITは遅れているかも」という不安に変わってしまう……というわけですね。
大塚: そうなんです。実際にはITへの依存率が低い業態だったとしても、イメージの問題で弾かれてしまうことはあるでしょう。
なので、これも先ほどと同様に、Uターン学生の獲得に向けた特別な対策ではありません。情報を取得しにきた学生に対して、きちんと情報を渡し、印象をつくれる場を整えておきましょう、ということです。
あえて言うなら、地元の学生を数名単位で採用していた地元密着型企業だと、これまでオンライン面接やウェブサイトを重視する必要がなかった、という場合があると思うんです。これからUターン学生を獲得するぞ、と考えているのであれば、ぜひ見直していただきたいポイントですね。
大塚:
最初の方でも話しましたが、東京の大学に通う学生の周りには、東京の企業を志望して内定をもらった学生がたくさんいます。
仕事の規模感や給与などの待遇面では、地方企業が首都圏の大企業に対抗することは現実的に難しいでしょう。
当然、学生自身もそれを承知の上で内定承諾しているはずですが、4月や5月に内定を得た学生にとって、就職するまでの1年間という期間は、自分自身の決断に迷いを感じるには十分な長さですよね。
大塚: 今、採用市場は売り手(学生)優位とも捉えられる状況なので、なおさらです。
この1年間で「本当に自分は、この首都圏の企業を蹴って地方企業に就職していいのだろうか」「地元には帰りたいけれど、この待遇を断って後から後悔しないだろうか」と迷い、逡巡します。結果として内定を辞退する学生もいるでしょう。
仕事の規模感や給与などの待遇面では、地方企業が首都圏の大企業に対抗することは現実的に難しいでしょう。
当然、学生自身もそれを承知の上で内定承諾しているはずですが、4月や5月に内定を得た学生にとって、就職するまでの1年間という期間は、自分自身の決断に迷いを感じるには十分な長さですよね。
― なるほど。中にはもちろん、首都圏の企業からの内定や内々定も同時に持っているというパターンもありますしね。
大塚: 今、採用市場は売り手(学生)優位とも捉えられる状況なので、なおさらです。
この1年間で「本当に自分は、この首都圏の企業を蹴って地方企業に就職していいのだろうか」「地元には帰りたいけれど、この待遇を断って後から後悔しないだろうか」と迷い、逡巡します。結果として内定を辞退する学生もいるでしょう。
― それを防ぐには、企業はどのようなことをすべきでしょうか。
大塚:
そういった迷いのある学生は、つまり「決め切れていない」わけです。実際には、どこかで決断しないといけないし、それは学生自身にしかできないのですが、そのための「決め手」に欠けているんですね。
地元就職を望んでいる学生が地元企業に期待しているもの、例えば地元貢献や地域とのつながり、住環境の良さ、会社の雰囲気などをきちんと伝えることが大切です。
また、学生の持っている悩みに気付き、それを受け止めて相談に乗ってあげるようなケアも重要になります。最終面接や内定通知のタイミングはもちろん、日頃からコミュニケーションをとるように心掛けると良いと思います。首都圏に現地リクルーターがいるなら、その活用もいいですね。
地元就職を望んでいる学生が地元企業に期待しているもの、例えば地元貢献や地域とのつながり、住環境の良さ、会社の雰囲気などをきちんと伝えることが大切です。
また、学生の持っている悩みに気付き、それを受け止めて相談に乗ってあげるようなケアも重要になります。最終面接や内定通知のタイミングはもちろん、日頃からコミュニケーションをとるように心掛けると良いと思います。首都圏に現地リクルーターがいるなら、その活用もいいですね。
― なるほど。今日はありがとうございました!
- 人材採用・育成 更新日:2021/10/05
-
いま注目のテーマ
-
-
タグ
-