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「OJT」とは何か?概要・制度・導入・メリットなどを分かりやすく解説

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”新人育成は「OJT」による研修を実施しています”といった文言で、教育制度の充実度をアピールする企業がさまざまな求人サイトで多くみられます。事実、厚生労働省が実施した令和3年度「能力開発基本調査」 によると、正社員に対して計画的なOJTを実施した事業所は59.1%。また、正社員以外に実施した事業所は25.2%でした。
この記事では、OJTに関する具体的な制度の内容やメリットについて具体的に解説していきます。

OJT(現任訓練)とは

OJTとは、日常の職務と同時進行で実施される教育制度のこと。On The Job Training(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)の略称で、日本語では、現任訓練や職場内訓練などと訳されます。起源は、第一次世界大戦中の米国で生まれた軍人育成の「4段階職業指導法」。具体的には、「やってみせる(Show)」「説明する(Tell)」「やらせてみる(Do)」「確認、追加指導(Check)」この4つをベースにした育成プロセスで、日本の企業への導入も進んでいます。
OJTでは、新入社員が職務を遂行するに当たり、早い段階で身に付けるべき知識やスキルに関する教育が実施されます。一般的に教育担当は上司や先輩社員らが担いますが、中には、「OJTトレーナー」や「OJTリーダー」など、教育専門の担当者が存在する企業もみられます。

しかし、日々の業務をの補佐を単純にOJTとしてしまい、十分に効果を発揮しないケースもあります。OJTで効果を上げるにはマニュアルや評価基準を明確に設定しつつ、突発的ではない計画的な内容で実施していく必要があります。

OJTが日本で普及した背景

OJT普及の背景には日本の特徴的な採用制度があります。
海外の企業は、一般的にスキルを持った人材を採用するジョブ型雇用を採用しています。つまり、前提として、その知識やスキルのある人しか採用しないので、そもそもOJTを必要としていません。
一方で、日本企業は新卒一括採用制度を採用しています。知識やスキルを持たない新卒社員を教育する必要があります。その新卒社員を集団育成する方法として、日本企業では、OJTが広く採用されています。

OFF-JT、エルダー制度、メンター制度の違い

OJTと類似した教育制度として、OFF-JT、エルダー制度、メンター制度があります。ここでは、その違いを解説します。

OFF-JT

OJTは、実務の中で同時進行により実施される教育制度であり、日々の業務に必要なスキルや知識を、上司や先輩社員が教育担当となって指導するというのが一般的です。
一方、OFF-JTは、「Off The Job Training(オフ・ザ・ジョブ・トレーニング)」の略称で、特別に時間や場所を設け、社内講習や外部セミナーなどを実施して教育する方法です。一般的には、人事部が主体となって計画し、講師や場所の手配などを実施するケースが多くみられます。

OJTとOFF-JTの比較

エルダー制度

エルダー制度とは、直属の上司ではなく、先輩社員を教育担当者に割りあてて、社員を教育する制度です。エルダー制度は、実務の中で教育を実施するOJTの一種になります。

メンター制度

メンター制度とは、先輩社員が、若手社員の仕事の悩みなどの精神的なケアを行う制度です。モチベーションの向上や環境への適応促進、離職率の低下を目的として実施されます。
OJTと異なり実務の内容ではなく、メンタル面のケアを行うことが特徴です。また、実務を伴わないため他部署の先輩社員も教育担当者として起用できます。

OJTの目的

年功序列や終身雇用が当たり前だった時代は終焉を迎え、社員研修で企業が重視するポイントは、年々変化しています。OJTを実施する目的は企業や組織の状況などによって異なるため、もちろん一つではありません。以下、OJTの一般的な実施目的について例を挙げ、それぞれ解説していきます。

早期の戦力化

OJTの目的で最もポピュラーであるのが、新入社員や、部署異動した社員の即戦力化。これは、各社員に適した実務ベースの指導をリアルタイムで実施し、会社に貢献できる社員を一早く生み出すといった狙いがあります。
こうしたOJTでは、計画的かつ意図的に育成プログラムを組み、指導内容を画一化。研修項目などに対する先輩社員や上長の認識齟齬をなくし、フィードバックもタイムリーに行うことが重要です。

優秀な社員の行動特性を学ばせ人材を育成する

OJTの目的は、社員一人ひとりの能力の向上をさせて、生産性を高める狙いがあります。会社が考える優秀な社員を指導役に据えることにより、優秀な社員の行動特性(コンピテンシー)を実務の中で、新入社員に学ばせて、理想的な社員に育つように促すことができます。

企業理解の促進

業務の理解やスキルの習得だけではなく、そこで働く社員の人となりや仕事の進め方、社内カルチャーなどを新入社員らに感じさせ、今後の企業で働くイメージを具体的にさせるというものです。これらは、外部研修や共同研修などでは培うことは困難。また、縦横含めた社内コミュニケーションの活性化にもつながります。

OJTの導入の効果、メリット

社内の人間関係を構築する

新入社員は、社内で新たに人間関係を構築しなければなりません。OJTを通して、組織内の縦横の様々な社員とコミュニケーションをとることで、社内人脈の構築に貢献します。

指導者の育成

新入社員の指導を行うことで、中堅社員の指導者としてのスキルやマネジメント能力を高めることができます。また、彼らが自社の理念や事業の強み、業務の面白さなどを再確認する契機にもなるでしょう。

OJTのデメリット

同時に、OJTには教える側・教わる側それぞれに関して、以下のデメリットが存在します。

教える側(トレーナー)へのデメリット

人材育成には計画的な教育プログラムが必要ですが、OJTで指導に就く上長や先輩は教育のプロではありません。日々の業務を行いつつ指導に当たるため、その分生産性が低下してしまう可能性があります。したがってOJTを開始する前に、教育プログラムの作成やヒアリングなどに関して、人事担当者らが指導者の負担を軽減するサポート体制を用意しておくと良いでしょう。

教わる側(トレーニー)へのデメリット

指導を受ける上長や先輩社員によって新入社員らの成長スピードに差が生じ、スキルの標準化が困難になるケースがみられます。これは、教える側のキャリアやスキル、経験、指導力などが異なることが主な原因です。指導や成果を画一的なものにするには、これらの内容や進捗に関して定期的にミーティングを実施し、教える側の目線などを合わせながら改善を繰り返すことが重要です。

OJT制度の導入方法や進め方

ここからは、OJTのフローなどについて解説。これからOJTの導入・改善を予定している企業を対象に、OJTを進める上での基本的なフロー、また導入ノウハウを説明していきます。

1.OJTの目標を設定する

OJTを導入するに当たっての目標を設定します。新入社員の早期戦力化などを実現するためには、育成期間が終了した時点で、”スキルや能力がどのくらいのレベルに到達しているのか“を明確にする必要があります。定性かつ定量的に測れるように設定し、理想の人材像をしっかりと描いた上で行うのがポイント。一部の企業では、OJTの修了を決めるためのテストを実施し、合格基準などを設けるケースもみられます。

2.OJTの計画書を作成する

目標設定を終えると、次はOJTに関する実施計画書の作成を始めます。ここでは、目標で掲げた人物に育成するためのスケジュール(期間や指導ペースなど)や、指導マニュアルなどを作成します。業務の種類が多岐に渡っていたり、業務フローが細分化されていたりする企業では、OJT期間が長期化する傾向があるため、マイルストーンを設けるなどして進捗管理を行いましょう。

OJTの適切な 実施期間は?

OJTの期間は、OJTの目標に応じて変化します。短い場合は数日間、高度に専門的な業務の場合は、1~2年間と設定している業務もあります。事例としては、配属決定の5月から、半期の9月までや翌年の3月までなど期末にあわせて設定している場合もあります。また、前述のように「試験の合格まで」と設定される場合もあります。

3.教える側(トレーナー)を選ぶ

作成した計画書に基づきトレーナーを選出します。一般的には、入社から3~5年程度経過した社員がトレーナーとして選出されるケースが多くみられますが、企業によっては、指導に長けた社歴の浅い社員が担う場合もみられます。

4.OJTの目標を摺り合わせる

OJTの目標などを関係者間で摺り合わせます。特に計画書の作成を人事部門が担う場合、実施前に必ず人事側と現場側(上長や選ばれたトレーナーなど)は指導内容などを共有し、認識を摺り合わせましょう。OJTの質や結果は、このタイミングで(トレーナーが)OJTの本質を理解できるかに掛かっています。また、トレーナーはこれらと同時並行でOJT実施計画をブレイクダウン。習得スキルや知識などを鑑みて、より具体的な指導内容・スケジュールに落とし込むと良いかもしれません。

5.OJTを実施する

計画書に沿って、OJTを実行していきます。ここからは1on1(トレーナーとトレーニー)のコミュニケーションが基本ですが、中間目標の達成やスケジュールなどを目安に、トレーナーの上長らと新入社員の間で進捗状況を共有させると、よりOJTがスムーズに進むかもしれません。人事担当者が新入社員らの面談を設けて丁寧にヒアリングすることで、日々の指導がルーティン化することなく、OJTをより良い時間に改善しながら進められるでしょう。

6.OJTを振り返り、改善点を抽出する

目標達成状況を確認することはもちろんですが、終了時には、教える側(トレーナー)と教わる側(トレーニー)それぞれが、実施したOJTを振り返りフィードバック。特にトレーニーには詳細なアンケートを行うなどして、改善点を抽出するのがポイントです。PDCAサイクルを意識し、より効率的なOJTの進め方や指導方法などを模索していきましょう。

OJT導入の失敗要因

せっかくOJTを導入してもうまく機能しない場合があります。ここでは、失敗の要因と、その対策を紹介します。

人事評価制度がOJTを重視していない

OJTの教育担当者は通常の業務の中で、新人の教育を行います。本来のタスクである通常業務を優先し、新人への教育が放置されてしまう場合があります。
研修などで人材教育の重要性を説くと同時に、人事評価に「人材育成」の項目を加えて、人材育成への貢献が賞与や昇給に大きく影響するように評価制度を変更しましょう。

教育担当者の質

教育を担当する社員は、一般的には面倒見の良いタイプの人材が適していますが、新人教育のプロではありません。指導者に向いた人材もいれば、そうでない人材もいます。
つまり、教育担当者の素養によって、新入社員の成長は大きく変わる場合があります。
この質を担保するには、教育担当者の教育をする必要があります。OJTの目的や指導者としての基礎的な知識、運用ルールなどの研修を行い指導者としての質を高めましょう。
また、人事部は、定期的に新入社員の成長度合いを確認しながら、教育担当者へのフォローをしつつ、必要であれば指導を行いましょう。

OJTの導入事例

OJTの方法は、導入する企業の育成目標などによって大きく異なります。ここでは、OJT教育の方法や手法に関する企業の事例やノウハウなどをご紹介します。

事例1「OJTとOFF-JTを絡めた人材育成」

某大手小売り流通チェーンの物流システムを担う運送会社では、OJTと「OFF-JT」を組み合わせた教育を実践しています。
この企業では、新入社員に対し中堅ドライバーをトレーナーとして新入社員の車に同乗させ、OJT教育を実施。OJT修了後、定期的にOFF-JTを行います。このOFF-JTには、新入社員のみならず中堅社員も参加します。組織全体の知識やスキルのブラッシュアップを図り、競争意識を育むことにも成功しています。

事例2「理念浸透を重視したOJT」

某大手コーヒーショップチェーンでは、正社員、アルバイトに対して、企業の理念やミッションを教えながら80時間のOJTを行います。接客オペレーションのやり方だけを指導するのではなく、お客様に向かう姿勢や理念を浸透させることで、マニュアル通りではない、場面にあわせた接客ができるようになります。

事例3「会社全体で社員を育成」

大手製造業では、OJTプログラムを推進し教育を進めるリーダーを設置していますが、リーダーのみが教育するのではなく、リーダーが周囲をまきこむことで、会社全体で新人を育成する仕組みを作っています。また、制度の要であるOJTリーダーへの教育も積極的に行っています。

進むOJTのオンライン化

働き方改革や新型コロナウイルス感染症対策などにより、OJTのオンライン化が進みつつあります。これまでは、ひざを突き合わせた指導が一般的でしたが、昨今はオンラインで教育を進める企業が増加。これに伴い、さまざまなメリットやデメリットが浮き彫りになっています。
OJTに関わらず、業務のオンライン化は、設備や移動費、移動にかかる時間などを大幅に削減。また、新型コロナウイルス感染症の予防としても一定の効果を上げています。しかし、業務のオンライン化によってコミュニケーションの方法が対面からビジネスチャットやビデオ会議などに代わり、社内コミュニケーションに齟齬が生まれるケースもあります。

特にコミュニケーションの質・量が重視される教育フェーズでは、ノンバーバルコミュニケーションでOJTを進めると、後々の業務にもさまざまな支障が出るかもしれません。
これまで述べたように、OJTでは、マニュアルや評価基準を明確に設定しつつ、計画的な内容で実施する必要があります。この度、同感染症対策として付け焼き刃でOJTをオンライン化した企業、また無計画でOJTのオンライン化を行った企業は、今一度運営方法を見直し、OJTの改善に努めてはいかがでしょうか。

  • 人材採用・育成 更新日:2022/12/13
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