年間600人採用している人事に聞く、求職者の心をつかむ中途採用テクニック
あらゆる応募に対して1日以内の返信と聞くと、とても忙しい印象を受けますが、なぜそこまで早いレスポンスを心がけているのでしょうか?
中村:実は、他の企業もそれくらいのスピード感で動いている事が要因の一つです。私は営業から人事へキャリアチェンジしていますが、自分自身が人事になって一番驚いたことは、他の企業様の対応が思っていた以上に早かったことです。
転職者の方にとっても、なかには退職交渉を既になされた中で転職活動を行っている方もいらっしゃいますので、そういった方にとっては1日も早いレスポンスをすることが大事であると心がけて日々の業務を行っています。
自社だけではなく他社を意識した応募者対応が必要になってくるんですね。その一方で、面接の打診をしたものの、応募者から返信が来ない場合など、面接数を増やすための試みたことはありますか?
中村:基本的に求職者へ連絡するメールは提携のテンプレートを基に作成していますが、どうしても面接に来て欲しいと思った人材については、個別にメールを作成して送るようにしています。
体裁も、はじめから「面接」としてしまうとどうしても構えられてしまいますので、まずは気軽に「面談でも」という姿勢で案内し、自社の業務や雰囲気を知ってもらうことだけを目的としています。その際には履歴書や職務経歴書も持参不要でご案内し、少しでも来社していただけやすくなるよう心がけています。
また過去には、書類選考は通過しているが面接の日程が決まっていない応募者に対して電話で直接アポイントを試みたことありますが、想定以上に電話がつながらなかったり、電話に出てくれても怖がられてしまったりと苦心しました。
採用担当から直接連絡がいくと流石に抵抗感があるのではと感じ、電話の代行会社に委託する方法に切り替え「マイナビの採用代行会社の者です」と連絡してもらう施策に変更しました。すると着電率も向上し、一次面接の受験者数が電話代行の導入前に比べて多い時には2倍まで増加しています。
企業様の手間を省くだけではなく、求職者側にとっても電話に出る敷居が下がり、結果的に双方向にメリットのある施策ですね。
●売それでは、つづいて一次選考後の工程を教えてください。
二次面接は他の方が見られるのでしょうか?意識されている引継ぎ方法などあれば教えてください。
またできれば、人事としての評価基準もお教えいただけますでしょうか?
中村:弊社は、面接毎の担当制になっており、私は一次面接を主に担当しています。
評価基準は、一次面接を担当した人事の場合、「自分が担当した応募者が二次面接に通過する」ことで評価となるため、誰でも彼でも一次面接を通過させない仕組みとなっています。
自身の関与できない二次面接の通過が評価につながるとは、人事ならではの評価軸ですね。
●応募者の合否判断に迷った場合は、面接の中でどのように対応されていますか?
中村:懸念点があったとしても、良い部分があるのであれば、更なる良い部分を探る面接を心がけます。一方懸念点については、二次面接・三次面接の担当者へ申し送り事項として必ず共有するようにします。どちらの場合も応募者の「良い部分」については直接応募者本人にお伝えするようにしています。
応募者本人へフィードバックされているとのことですが、実際はどのようにされているのでしょうか?面接とは別の機会を設けられているのでしょうか?
●同時に応募している企業の選考状況はヒアリングしますか?
中村:必ず聞くようにしています。どこの企業が何次面接まで進んでおり、返答期限日がいつなのか詳細にヒアリングしています。
一次面接から最終面接まで1ヶ月かかる企業もあれば、1回限りの面接で内定を出される企業もあるなかで弊社の面接も行っていますので、スケジュールの不一致によって選考辞退とならないように細心の注意を払うようにしています。
このような状況の中で、弊社だけがタイトなスケジュールを組んでしまいますと、他者と比較検討できないことで内定辞退につながることもありますので、足並みが揃うようなスケジュールを心がけています。
●逆に自社が他社の選考よりも遅れている場合はどのような対応策を取られますか?
中村:当然、時と場合によるのですが・・・その場ですぐに現場の担当部長に直談判をしに走ったこともあります。応募者の良いところをお伝えし1秒でも早く面接してもらうようにお願いしました。
その場合、採用フローも変更するのでしょうか?
中村:本当に欲しい人材であれば一次面接を終えてすぐに、部長や役員の予定を確認し、もし空いているようであればその日のうちに次の面接まで終わらせるよう手配します。
社内的な調整の難しさはありますが、こうすることで「あなたにぜひ入社していただきたい」という熱意をお伝えしたいという思いもあります。
中村:そうですね。現場での臨機応変な調整力こそ私たち人事の腕の見せ所であると考えています。
事前に決められたルールの中で、採用業務を遂行するのではなく、良い人であればルールを変えてでも取りに行く姿勢が大事なんですね。
中村:そうですね。現場での臨機応変な調整力こそ私たち人事の腕の見せ所であると考えています。
●調整業務に関してもう少し聞かせてください。現場の担当の方に面接への協力をお願いする場合、業務上の都合で対応できなくなるケースも出てくるかと思いますが、どのように対処されていますか?
中村:確かにそうしたケースはよくあります。ギリギリまでスケジュール調整は行うという前提の上で、どうしても折り合いがつかない場合は、同等職の他の方のジャッジ対応など、代替案での進行承認を取りつけ進めるようにしています。
●話は少し変わりますが、面接評価基準にバラつきがでないような工夫はされていますか?
中村:さきほど、二次選考通過者の数が私たち人事の評価となるお話をさせていただきましたが、こうしたルールがある以上、要件定義とずれた人材を何人通しても一切評価として還元されないため、決裁者とズレが生じないように時間をかけてすり合わせを行っています。
それでは、人事にとってのやりがいとは何でしょうか?
中村:採用の厳しさは日々感じていますが、それでもがんばり続けられるのは「売上を上げるため」「組織を活性化させるため」に少しでも優秀な方に来ていただきたいという現場還元への思いがあるためです。
業務として、評価基準も明確ですし、月次の具体的な採用数まで落とし込まれた年間での採用数目標を持って日々動いているという緊張感はありますが、それよりも大きな原動力は採用目標の達成スピードが遅れてしまうことによって「現場に迷惑をかけたくない」という強い思いです。
●入社を決めていただくために何か工夫をされていることなどありますか?
中村:クロージングの期間は、応募者の状況によって変えています。どうしても決められないという方の場合、長い場合は1ヶ月お待ちすることもあります。逆に積極的に声をかけないと入社していただけそうな方の場合は、明日中にとお伝えすることもあります。
明日とは、かなり急ですね。
中村:そうですね。ただし、入社を決断するために「納得させる対象」は「誰なのか」という点にも注意が必要です。転職者自身が納得している場合でも、例えば社会人経験が浅い方の場合は、後々ご両親から止められてしまうこともあります。
その場合は、両親と話す時間的な猶予も設ければ決められるかなど、こちら側から条件も設けて返答日を決めたりもしています。
他社と迷っている場合はどうされますか?
中村:内定前からの取り組みにはなりますが、入社後に取り組む仕事内容をできる限り詳しく説明するようにしています。
採用成功例を振り返ってみますと、転職者が入社後の業務イメージがつくか否かという点が大きく影響しているように感じています。
具体的な業務内容や、やりがい、具体的な残業時間をはじめ、どのようなお客様がいらっしゃるかという所まで、できる限り働くイメージを具現化してもらえるようお話をします。
また内定後を出した後にどうしても悩まれている場合は、現場担当数名と会ってもらうようにしています。多くの場合は1回ですが、悩まれている方によっては不安が解消されるまでに何回でも現場の方に協力してもらっています。
最後に採用成功の秘訣を改めて教えてください。
中村:配属先となる現場の方としっかりコミュニケーションを取ることです。
どのような担当者であってもイチから話ができるように努め、同じ熱量を持って採用業務を行っていることを共有できるよう信頼関係が築けるように心がけています。
その為に、日々少しでもコミュニケーションをとるようにしています。
また、求職者に対しては仕事の内容をしっかりとお伝えすることを大事にしています。
本日はありがとうございました。
- 人材採用・育成 更新日:2017/06/19
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