リファレンスチェックとは?その重要性と実施方法
リファレンスチェックとは、採用活動のなかで、候補者の前職における勤務状況や人柄などについて候補者の知り合いに話を聞くことです。リファレンスチェックの方法は書面での問い合わせや電話など様々で、海外の中途採用では頻繁に実施されています。
『Reference Checking for Everyone: What You Need to Know to Protect Yourself, Your Business, and Your Family』では、著者でバックグラウンドチェックの代行サービスを提供するポール・ウィリアム・バラダ氏が、リファレンスチェックとは何か、そして情報の役立て方について解説しています。
リファレンスチェックとは何か
リファレンスチェックとは、過去5~7年以内に日常的に候補者と仕事をした人からのヒアリングに基づいて、候補者の過去の職務遂行の客観的評価をすることです。本書では「パーソナルリファレンス」と「バックグラウンドチェック」の2種類に定義されています。
パーソナルリファレンス
パーソナルリファレンスは、候補者と個人的な付き合いのある、隣人、友人、スポーツ仲間などです。採用試験でパーソナルリファレンスが必要なことは、ほとんどありません。
バックグラウンドチェック
バックグラウンドチェックは、求人応募や履歴書で候補者が提供する基本情報の正確性を確認することです。主に候補者が自分の履歴書や職務申請に嘘をついていないかどうかを確認するのに役立ちます。バックグラウンドチェックは従業員採用の重要なステップです。
リファレンス
リファレンスとは、候補者が実際に一緒に働いた人物です。現在、または元の上司、同僚、部下が含まれる場合があります。
リファレンスチェックの重要性
リファレンスチェックをしっかりと行うことには主に4つの利点があります。
- 候補者の過去にしていた仕事のパフォーマンスを深く見ることができる。
- 採用担当者は、候補者のスキル、経験、トレーニング、教育および全体的なパフォーマンスが職務の要件に適合するかどうかを評価することができる
- 将来、候補者の価値を高めるため、改善したり追加したりできる技能や経験が何か知ることができる。
- 候補者の採用プロセスが一貫して公正に行われたことの証明になる。
リファレンスチェックは全員にする
採用試験を受ける候補者全員がリファレンスチェックを受けるべきです。しかし企業は、次のような理由からリファレンスチェックができないと思い込んでしまっています。
- リファレンスチェックを徹底する方法について、よく分からない
- 一貫した採用活動の手順を開発するために時間をかけたり、リソースを投資したりすることに積極的ではない
- リファレンスチェックにコストがかかるという先入観
特に医療従事者、銀行員、教師など、人と関わったり、大金を扱ったりするような職務に就く人は、採用前の徹底したリファレンスチェックが必要であると著者は述べています。
リファレンスチェックの仕方
採用選考におけるリファレンスチェックで起こりがちな間違いは、候補者が履歴書を提出したり、求人応募に記入したりすることで、その仕事が完了したと思ってしまうところです。そうではなく、企業が必要なリファレンスを候補者に推薦してもらうことで候補者にもリファレンスチェックに関わってもらうといいでしょう。
候補者に自分のリファレンスを推薦してもらう
次の手順で、候補者に自分のリファレンスを推薦してもらいましょう。
- 過去5~7年の間に候補者が日常的に6か月以上一緒に働いた、リファレンス候補の8~10名のリストを作成します。(実際に必要なのは3~4名です)
- その人選にはバラエティがあること。少なくとも1人の元上司、1人の同僚、そして可能であれば1人の部下が含まれるようにします。
- 候補者がリストに誰を載せるか考えます。その人をどれだけよく知っているか、同僚というだけでなく友人であるかどうかを選択の基準にします。基本的にリファレンスは、親しい人に頼みます。
- リストアップした人を、自分に身近な順にランク付けします。
- 候補者にとって誰が一番よいリファレンスになるか分かったところで、採用担当者が誰と話したいか考えてみます。
- 候補者がリストの上位の人から連絡をして、リファレンスになってもらえるように依頼します。
- 賛成してもらったら、その人たちに求めていることを正確に理解しているか念を押します。正確に質問に答えること、誇張や過小評価をしないことなどを約束します。
- 断られたときには、そのまま受け入れましょう。不信感があるままリファレンスになってもらうのはよくありません。
- リファレンスになってもらう人には、できれば応募先を伝えます。そうしておくと関係者から連絡が来ても困惑しません。
- 候補者が職場に知らせずに就職活動をしていて秘密を守りたい場合、リファレンスに他言を控えてもらうよう頼んでもいいでしょう。
- リファレンスに、厳密に仕事に関係のある質問にだけ答えるように伝えます。
- リファレンスの詳細を雇用主に伝えます。そこには、リファレンスのフルネーム、役職、会社名と住所、オフィスと自宅の電話番号、候補者との関係性などの連絡情報を含めます。
リファレンスチェックの方法
郵送で書面を送りリファレンスに記入してもらうほか、電話やメールでの連絡、場合によっては対面でリファレンスに質問します。
質問内容
企業からリファレンスに質問する際には、仕事に関係のない個人的な質問は絶対に避けることが大切です。また、リファレンスにも仕事に関係ない情報を提供しないように頼んでおきます。以下は質問の例です。
一般情報
- 候補者とはどのように知り合いましたか?
- 一緒に働いたとき、候補者が責任を持っていたのは何でしたか?
パフォーマンスに関すること
- 候補者のパフォーマンスをどう評価しますか?
- 候補者の生産性についてどう思いますか?
同僚や部下との関係
- 候補者は、ほかの人たちとどのように一緒に働いていましたか?
- 候補者は、ほかの人たちからどのように思われていましたか?
改善する点
- 候補者の仕事ぶりは、どのようなことを改善できると思いますか?
- どんな点を向上させたら、候補者の仕事がもっとよくなったと思いますか?
クロージングの質問
- 候補者と再度一緒に働きたい(再度雇用したい)ですか?
- 候補者について、ほかに何か話していただけることはありますか?(仕事に接関係のないことは聞かない)
リファレンスチェックで得た情報を最大限に生かす
リファレンスチェックによって得た情報を、その後に生かします。例えば、次のように役立ちます。
- 過去に候補者がどれだけ良いパフォーマンスをしていたか評価できます。
- 過去のパフォーマンスと、これから配属する予定の仕事を比較して、候補者のパフォーマンスが仕事にどれだけあっているかが分かります。
- パフォーマンスをベースにしたリファレンスチェックの結果から、従業員の価値を高めるためにどのようなキャリアパスが組み立てられるか考えることができます。短期計画にも長期計画にも役立ちます。
リファレンスチェックの精度を上げるためにできること
採用活動で正確なリファレンスチェックを行うために、以下のことを行いましょう。
- 候補者には、履歴書に書いてある学歴、職歴などを常に細かく提出してもらい、入社日などの日付を確認します。
- 候補者が提出した学歴、職歴などの報告書に出てくる人の名前を提供してもらいます。教会の議長、学校の校長、生産ラインの監督者など、関わってきた人を確認します。
- 候補者全員が同じ情報を求められる正式な求人応募用紙に記入するようにすること。それが履歴書でも、求人応募でも、最初の面接で尋ねることでも、形式を統一してあれば、各ポジションで候補者が今まで担当した業務内容を正確に知ることができます。
リファレンスチェックにおける誤解を解く
リファレンスチェックでは常識的なアプローチを心掛けます。特に、候補者が最も恐れるのは、「リファレンスが自分について何を言うか」ということでしょう。その恐れは、次のような誤解から生まれています。
- 将来の雇用主が、自分と仲の良くなかった元上司に話を聞くと思っている。
- 元上司は復讐のために、意図的に候補者の仕事のチャンスを妨害すると思っている。
- リファレンスチェックでは、全体的なパフォーマンスに関する限られた知識しか持ってない人が質問を受けるため、候補者が本当にどれだけうまくいったかを説明できないと思っている。
このようなリファレンスチェックにまつわる誤解を解くためには、前に述べたように、候補者がリファレンスを選べることや、候補者とポジティブな関係の人しかリファレンスにならないことを事前に説明しておくことが大切です。
リファレンスチェックプログラムの導入
リファレンスチェックプログラムを自社で取り入れる場合、個々の企業によって手順は変わりますが、すべての中小企業が従うべき基本は次のとおりです。リファレンスチェックを始める前に確認しましょう。
- リファレンスチェックが全て完了するまで内定は出さないようにします。
- すべての候補者は、採用試験を行っている企業、またはその代理人に、リファレンスに連絡する許可を与える必要があります。誓約書を書くなどルールの明確化が必要です。
- 候補者に自分のリファレンスを推薦するよう依頼します。
- リファレンスチェックに頼りすぎて内定を出してはいけないという方針を立てます。
社内の紹介制度や知り合いからの紹介で、採用試験を受ける候補者がいる場合、雇用主側は推薦者の言葉を信じてしまいがちです。そのようなときほど、第三者の意見が聞けるリファレンスチェックが必要です。
リファレンスチェックを応用する
組織内で昇進を決めたり、企業内転勤をしたりするときのスクリーニングツールとしてリファレンスチェックを応用することができます。対象となる従業員の上司、先輩、同僚などにリファレンスになってもらいます。
手順は採用試験で行うリファレンスチェックと同じです。質問をする相手が社員であることから、リファレンスとなってもらうための許可をもらう必要はありません。
リファレンスチェックによって入社後のトラブルを回避
外資系企業では、多くの企業が取り入れているリファレンスチェック。経歴詐称や入社後の法的トラブルなどを防ぐ役割もあります。候補者の過去のパフォーマンスを知り、採用や入社後のキャリアパス構築に役立てられるリファレンスチェックを取り入れてみてはいかがでしょうか。
タイトル Reference Checking for Everyone: What You Need to Know to Protect Yourself, Your Business, and Your Family
著者 Paul W. Barada, J. Michael McLaughlin
出版社 McGraw-Hill Education; 第1版 (2004/2/21)
ISBN-10 : 0071423672
ISBN-13 : 978-0071423670
マイナビではオンラインリファレンスチェックサービスである「TRUST POCKET(トラストポケット)」を提供しています。
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- 人材採用・育成 更新日:2022/11/08
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