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採用基準はどう決める?決め方や見直しのポイント

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人材募集を行う際に必要になる「採用基準」。しかし、きちんと決めて採用活動を行っている企業はそれほど多くありません。そこで今回は、大手企業で人事として採用活動に従事し、採用のプロフェッショナルとして、組織人事コンサルタントとして活動されている株式会社人材研究所代表の曽和利光さんに、採用基準を設ける必要性、やめたほうがよい採用基準の設定の仕方、採用基準の優先順位の付け方、採用基準を見直すために注意すべきポイントについてお伺いしました。これからの採用活動にお役立てください。

採用基準の必要性

採用活動を進めていく上で、採用基準を設ける必要性について教えてください。

採用基準を設ける理由は2つあります。1つ目は、「仕事内容」や「企業文化」によって活躍できる人は変わるということ。“仕事”と“文化”のどちらか、もしくはどちらにも適した人が活躍できる人になるため、採用基準をきちんと設けてターゲッティングし、採用をすることが入社後の活躍につながります。

採用基準を設ける理由の2つ目は、低い面接精度を改善するためです。よく行われている面接は、その精度が低いことがさまざまな研究でわかっています。面接の精度を高めるためには本来、「◯◯を聞きたいから、◯◯の質問をする」と明確にして、面接をシステマチックに行う必要があります。これを“構造化面接”と言いますが、実際に行われている面接では“非構造化面接”になっているのです。

非構造化面接がどういうことかというと、面接の中で出てきた内容をベースにして場当たり的に話していると、知りたいことを知れずに面接を終えてしまう行き当たりばったりの面接になります。「たまたま良い話が聞けたからOK」「聞けなかったからダメ」というサイコロを振るような面接では適切な判断をくだせないのです。そうならないために、面接を構造化する必要があります。精度高く面接を行うためには、どんなことを知りたいのか。つまり「採用基準」を決めておくことで、面接自体を設計しやすくなり、活躍できる人材の採用成功につながっていくのです。

対面面接とオンライン面接では、採用基準を設けているケースと設けていないケースでどのような差が出てくるのでしょうか?

オンライン面接のほうが採用基準をきちんと決めて、構造化面接の度合いを高めていかないと難しいと思います。なぜなら、良くも悪くも対面面接は非言語コミュニケーションが多いので、言語以外のところからもある程度の手がかりを得られます。例えば、「対人能力は低そう」とか「人に対する緊張感が高そう」とか「手が震えている」といった具合ですね。目線とか声の高低とか非言語コミュニケーションみたいなところが、実際問題良きにつけ悪きにつけ対面面接では手がかりになっていました。

しかし、オンライン面接ではそういった手がかりが激減します。ということは、極端にいうと言語を通しての情報のみで評価をしなければいけないため、今まで以上に面接者から情報を引き出す必要があるのです。構造化とは簡単に言うと明確化ですね。どういう人を採りたくて、そのためにどんな質問をして、回答がこうだったらどれくらいの評価をするか。しっかりと基準を決めて構造化しない限り、オンライン面接になればなるほど面接の精度は落ちてしまいます。

また、単純に会話がしにくいというのもあります。なぜ話しにくいのかというと、話者交換って「目線」と「呼吸」で行っているらしいんです。なので、オンライン面接でもWebミーティングでもそうですが、画面を通して会話をすると目が合わず、タイミングが掴みづらくて会話がしにくいと感じるそうです。

言葉のキャッチボールがしにくいと会話のストロークが短くなるため、面接はさらにやりづらくなります。そうならないためには、最初に聞きたいことを伝えてから、相手に話してもらうことが大切です。私はよく「キャッチボール型」から「プレゼン型」へシフトしないといけないと言っていますが、やり方を変えないと相手から情報を引き出せないので、オンライン化というのは面接における構造化をさらに進めなければならない理由だと思います。

なお、オンライン面接について、詳しくはこちらの記事でも紹介しています。
関連記事:採用面接はオンライン面接化! Web面接ツールの種類や面接のポイントを解説!
関連記事:今さら聞けない!WEB面接(オンライン面接)の基本ノウハウ

やめたほうがよい採用基準の決め方

採用基準を設定するとき、今すぐやめたほうがよい決め方はあるのでしょうか?

採用基準を設定する際に多くの会社で行われているのが、偉い人や仕事ができる人の意見を聞いて、その情報を整理することで採用基準を設定しています。人事だけで勝手に決めたり、データだけで決めたりということはないんですね。なので、偉い人や仕事ができる人にどんな人材が欲しいか聞いて回るというのが当たり前になっているのですが、実はそこに大きな落とし穴があります。

偉い人や仕事ができる人がどういう理屈で成果に結びついてきたのかを、必ずしも自覚しているとは限りません。例えば自転車が乗れるとか、英語が話せるといったことでも言えるのですが、なぜそれができるのかを理論的かつ具体的に話せるか、というのは別の話なのです。というのと同じで、偉い人や仕事ができる人が言っていることと、実際にこれまでやってきたことが間違っている可能性は異様に高い。そういうことが人事コンサルをしていると実はよくあるのです。

採用基準が間違っていることがわかる具体例があれば教えてください。

人事コンサルとして関わらせていただく企業に対して最初に聞くのが、仕事ができる人の特徴です。その特徴をヒアリングした情報をもとに、採用基準や育成目標などを決めていきます。しかし、ヒアリングしてわかった仕事ができる人の特徴とパーソナリティテストの分析結果を合わせてみると、ズレが生じていることが多い。特徴すべてがズレているとは言いませんが、半分合っていて半分ちがう。

例えば、素直な人が良いと言っているのに、実際は批判性の高い人のほうがハイパフォーマーであるとか。そういうことはいくらでもあります。もう一度言うと、「やれている」ことと「わかっている(説明できる)」ことはちがいます。やっていることと言っていることはちがう可能性があるので、言っていることだけを整理して採用基準としてまとめるということは危ないのです。

特に長くいろんな人を見てきた人であればあるほど、自分の中で「優秀な人は◯◯な人である」というステレオタイプが固まることがあります。時代が変わっても、昔から言っているような「挫折経験がある人を採れ」というのもそうですね。挫折経験ある人はコンプレックスをバネにして負けん気で勝とうという気持ちがある人なので、承認欲求が高く勝ちパターンが決まっていて、あとは頑張り競争だというときには強い。しかし、クリエイティブな面で強いかというと、負けん気だけで面白いものを作れるかといったら難しかったりする。

そういう考え方が昔のままで「◯◯な人が成果を出してきた」というのが自分の中に染み付いてしまって、日々いろんな人と接しているはずなのに、かしこまって「どんな人が良いですか?」と聞くと、自分のなかで固まった優秀な人像を言ってしまうというのはよくあるのです。そういう考え方で採用基準を決めていることが、問題だと考えています。これからは、ハイパフォーマーの行動観察やパーソナリティテストの分析結果をもとに議論し、採用基準を作っていくといいでしょう。


採用基準の優先順位の付け方

採用基準は、どのような優先順位で決めていくといいのでしょうか?

はじめに「求める人物像」と「採用基準」のちがいを理解しておきましょう。「求める人物像」とは“最終的に◯◯になってほしい人”です。「採用基準」とは“入り口で◯◯をもっていてほしい人”のこと。ですから、最終的な重要な要素と入り口の重要な要素というのは必ずしもリンクしません。偉い人や仕事ができる人の行動観察から出てきた要素や、パーソナリティテストで見えてきたハイパフォーマーの要素のうち、入り口でもっていないといけない要素はどれなのか。育てられない資質の部分はどこなのか。「求める人物像」と「採用基準」を切り分けて考えることが大切です。

また、採用基準は基準を絞れば絞るほど対象範囲が広がってポテンシャル採用に近づくので、知名度のある採用力の強い企業との競争が減り、結果的に良い人を採用できることにつながります。採用基準を絞り込む努力を大切にしていきましょう。

その上で採用基準の優先順位を決めていく話になりますが、実は何個かある条件の内どれを高い優先順位にもってくるかというのはなかなか難しい問題です。どんな職種でも、どんな事業部でも共通するというのが優先順位として1番だと思いますが、特に最近だと組織のダイバーシティ、想像性を要求するような仕事が増えているし、それがいらないという会社はあまりないと思います。そうなってくると、多様性と求めないといけないので、1つの採用基準に絞り込むというよりは、人材ポートフォリオをもつことが大切です。

人材ポートフォリオの一部が採用ポートフォリオなのですが、「こういう人を何割くらいほしい」というのがあれば、それを実現するために「◯◯な人を何割くらい採る必要がある」というように、採用基準に挙げた要素を1番、2番、3番と順位付けすることにより、「◯◯の要素が強い人を何割、こっちの◯◯の要素が強い人を何割」というふうにポートフォリオで採用を考えていくのが重要です。

人材ポートフォリオが会社に無い場合には、そこから作り始めるといいのですね。

そうですね。日本の多くの中小企業には人材ポートフォリオがありません。「◯◯な人が、この位いるといいな」ということを感覚ではやっていますが明文化はしてないんですよね。なので、理想の人材ポートフォリオを作ることをお勧めします。

その同じフレームで「現状はこう、理想はこう、この差ってどう埋めるのか」を次に考えていくのが人材フローの戦略。人材フローというのは、人をどのように入れて出して、どうやって昇進して、と人の流れをどう作るかということ。その中の一部が新卒だったり中途だったり、あるいは派遣だったりと、いろんなチャネルから人を入れることができる。あるいは人を育成して求める人物像に近づけるように育てるということもあるので、「どれを使って理想のポートフォリオにしていきますか」という設計があって、「中途採用では◯◯の人たちを採ろう」と決めて、中途採用のポートフォリオができあがっていきます。

“船頭多くして船山に上る”ということわざがあるように、4番バッターばかり集めても強いチームにはなりません。バントが得意な選手がいたり、守備が得意な選手がいたりしてチームは機能するので、どういう人を何割採用するのかを決めて、その上で採用基準を設けていくと、強い組織づくりにつながっていきます。

採用基準を見直すために注意すべきポイント

すでに採用基準が決まっている場合、どのような点に注意して見直せばいいでしょうか?

ポイントは2つあって、そもそもの採用基準が正しいのかを確認するのが1つ。確認するために採用基準をもう一度作り直して、今ある基準と照らし合わせて見極めることで正しかったのかどうかを判断できます。

もう1つが採用基準の社内浸透です。採用基準が社内に浸透していないケースが実は多く、採用基準の設定ばかり精緻にやっている会社はたくさんありますが、それを浸透させる努力をしている会社はとても少ないのが現実です。面接官に採用基準を1時間かけて説明したところで、その基準で選考するかと言ったらしません。採用基準に沿って選考してもらうには、面接官1人ひとりが持っている心理的バイアスを除去することを最初にしないと、どれだけ基準を精緻化したところで実際の採用には使われないのです。

そのために何をすべきかというと、例えば、1人ひとりの面接官が「合格させた人」と「不合格にさせた人」にどういう違いがあるのかをパーソナリティテストの結果を見てチェックしたり、面接官が二次面接にあげた人の特徴、落とした人の特徴、それがもともと決められている基準と比べてみたときにギャップがないかの確認。これすることによって、面接官1人ひとりがちゃんと基準通りに選考しているかどうかがわかります。このように、面接官の心理的バイアスを減らし、採用基準を浸透できる環境を整えた上で採用基準を見直すのが重要なポイントです。


適切な採用基準の設定で採り逃しをなくそう

多くの場合、会社で影響力のある人からの意見によって決まっている採用基準。しかし、実際にはハイパフォーマーの特徴とのズレが生じているのが現実です。労働人口が減少しつつある今、適切な採用基準の設定が会社の未来を大きく左右していきます。正しく採用基準を設定するために、ハイパフォーマーの行動観察やパーソナリティテストの分析結果を参考に、データに基づく採用基準を決めてみてはいかがでしょうか。


  • Person 曽和 利光
    曽和 利光

    曽和 利光 株式会社人材研究所 代表取締役社長

    1971年、愛知県豊田市出身。1995年、京都大学教育学部教育心理学科を卒業。株式会社リクルートで人事採用部門を担当、ゼネラルマネージャーとして活動したのち、株式会社オープンハウス、ライフネット生命保険株式会社など多種の業界で人事を担当。「組織」や「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法を確立し、2011年に株式会社 人材研究所を設立、代表取締役社長に就任。企業の人事部へ指南すると同時に、これまで2万人を越える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開する。

  • 人材採用・育成 更新日:2022/11/08
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