採用責任者の視点|株式会社ヤッホーブルーイング ヤッホー盛上げ隊 長岡知之
採用責任者が面接でチェックするポイントには、その人の経験則に基づく「優秀なビジネスマン像」が如実に表れるもの。そしてそれは、企業独特の風土を反映しているものでもあります。
本記事は、「企業の経営者やマネージャーが、採用面接においてチェックしている3つのポイントを知る」という趣旨の連載企画。第6回目となる今回は、Great Place to Work®による「働きがいのある会社」に2年連続(2017〜18年)で選ばれた人気クラフトビールメーカー、株式会社ヤッホーブルーイングの人事総務ユニット「ヤッホー盛上げ隊」のディレクターである長岡知之さんにスポットを当てます。
同社では「顧客は友人、社員は家族」という価値観のもと、社員同士がニックネームで呼び合うような企業文化が醸成されており、採用においても何十年も一緒に働いていける仲間を求めているとのこと。一丸となって日本のビール文化を変えていくために躍進を続けるヤッホーブルーイングの採用責任者を務める長岡さんは、いったい求職者のどんなポイントに注目しているのでしょうか。
▲ヤッホーブルーイングでは「よなよなエール」を始めとするクラフトビールによって、日本のビール市場にバラエティを提供している。
画像出典:ヤッホーブルーイング公式ページ(http://yohobrewing.com/)より
画像出典:ヤッホーブルーイング公式ページ(http://yohobrewing.com/)より
1つ目のポイントは「経営理念に共感できるか」ですか。
長岡:「ビールに味を!人生に幸せを!」というミッションのもと、「クラフトビール」を通じて日本のビール文化の多様性を広げ、ビールで人々を幸せにしていきたい、というのがヤッホーブルーイングの想いです。まずはそこに共感できることが第一ですね。
最近はクラフトビールのブームによって、当社の製品も少しずつ認知されるようになってきましたが、それでもクラフトビール市場は日本のビール市場の1%程度に過ぎません。私たちはこれを2倍に押し上げ、新たなビール文化を創出することを目標としています。
ですが、これまで画一的な味しかなかったビール文化を変えていくのは、決して容易なことではありません。まずは全社員が強い信念を持って同じ場所を目指す必要がありますから、採用の場面では根っこになる部分を妥協せずに見極めるようにしています。
単にビールが好きというだけではいけないのでしょうか?
長岡:それも大切な要素ではありますが、そもそも「どうしてヤッホーブルーイングなのか」というはっきりとした理由があり、それがミッションに基づくものでなければ、いずれ進むべき方向がずれてしまう可能性があると感じます。
大前提として、私たちは本気で何十年も一緒に仕事をしていける、まるで家族であるかのような心強い仲間を求めています。最近はクラフトビール市場が盛り上がっているのでむしろチャンスですが、かつて地ビールのブームが去ったときは苦しい時期も経験もしました。
そして今後も市場や外部環境は刻一刻と変化していくはず。どんな状況下でもみんなが同じ方向を見て力を発揮していくためには、やはりヤッホーブルーイングで働く明確な理由と「ビールに味を! 人生に幸せを!」という想いが噛み合っていることが重要になると思うんです。
2つ目のポイントは「成長の伸びしろと達成意欲があるか」。これはどうしてですか?
長岡:仕事を通じて貪欲に成長できるキャパシティを持ち、達成意欲を持って働ける人は、どんな仕事でも活躍していけるからです。
ヤッホーブルーイングはまだまだ規模が小さく、大手ビールメーカーさんに比べればちっぽけな存在です。ここから会社のミッションや目標に向かって進んでいくためには、いかにしてクラフトビール市場を盛り上げていくかが重要になります。
そのためには、働くスタッフも現状の仕事に満足することなく、自ら考えて新しい仕事にチャレンジしていかなければなりません。長く働いていくうえでも、いろいろな仕事をすることになりますよね。意欲的に成長していける人であれば、そういった場面でもプロセスを楽しみながら仕事をしていけるはずです。
現在働いている社員について、この特質があると感じる機会はありますか?
長岡:はい。そもそも自分から手を挙げて仕事をするような風土があるのですが、部長職に当たるポジションに立候補できる「ユニットディレクター立候補制度」についてはこの特質がよく表れています。
フラットな組織を作るための施策でもありますが、当社では部門の責任者をすべて立候補制で決めているんです。それぞれ全社員の前で経営戦略などをプレゼンし、その後のアンケートの結果をもとにディレクターを選出しています。
立候補者は若手からベテランまで幅広く、これは自ら成長して自己実現しようという人が多いことの証拠と言えるかもしれません。
採用の際はどのようなチェックを?
長岡:面接で「最も達成感を得られた仕事」について聞くようにしています。携わってきた仕事のうち、その人が中心となってやり遂げた実績には、そこに至るまでの成長や達成するためにしてきた努力が見えるものです。
何より、本気でその仕事に臨んでいた人は、そういったエピソードをとても嬉しそうに話してくれます。本当に目がキラキラしているんですよ。そういう人とは、ぜひ一緒に仕事をしたいと感じますね。
最後に、3つ目のポイントについて教えてください。
長岡:3つ目は「仕事を楽しめそうか」ということです。当然のことですが、人生の多くの時間を仕事に充てることになるため、楽しくなかったらもったいないですからね。
そして仕事を楽しむことは、業務に良い影響を与えます。私たちはクラフトビールという人々を楽しくさせる商材を扱っていますから、まずは作り手である私たちが楽しむことが大切です。
自由な発想でわくわくしながら仕事をしていると、奇抜なビールのネーミングやデザインが降りてきたり、イノベーション・ブレイクスルーのアイデアが生まれたりします。新たなビール文化を作っていくことを目標としている当社にとっては、楽しさも重要な原動力になっているんですよ。
たしかにヤッホーブルーイングの製品には楽しさが表れているように感じます。
長岡:仕事における楽しさはさまざまですが、最終的には、何十年と働いて退職したとき、「ヤッホーブルーイングで人生の時間を過ごせて本当に良かった」と感じてもらいたいですね。
実際、仕事を楽しめそうか事前に判断するのは難しいですが、先に挙げた2つのポイントが満たされていて、しっかりとした志を持っていれば、自ずと仕事は楽しくなるものではないかと私は思っています。
求職者に求めるものというよりは、一緒に長く働いていくパートナーを探すためのチェック項目なのですね。
- 人材採用・育成 更新日:2018/05/14
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