「仕事に対する姿勢を重視した採用活動」成功する人材を採用するには
マーク・マーフィー氏がCEOを務める、リーダーシップトレーニングとリサーチの専門会社Leadership IQでは、2万人の新入社員を3年間にわたって追跡調査しました。その結果、46%もの人が、勤務開始から18か月以内に、職場でうまくいかなくなっていたのです。その人達は、調査の時点ですでに解雇されたか、人事考課において上司や同僚から低い評価を受けていました。その理由の上位5つは次のとおりです。
①学ぶ姿勢の不足(26%)-上司や同僚、顧客からのフィードバックを受け止められない
②心の知能指数が低い(23%)-自分の気持ちをコントロールしたり、人の気持ちを汲み取ったりする能力が低い
③モチベーションが低い(17%)-潜在能力や、仕事への意欲を引き出せない
④気質や性格が合わない(15%)-職業や職場になじめない
⑤技術力不足(11%) -仕事に必要な技術力が足りていない
上の結果を見ると、技術力不足のために仕事がうまくいかなくなった人は11%だけです。入社から半年以内に職場で上手くいかなくなってしまった人の89%は、仕事に対する姿勢に問題があると、マーフィー氏は指摘しています。
また、46%の人が失敗したほかは、35%の人が中くらいのパフォーマンス、そして19%の人が本当に高いパフォーマンスを見せているという結果が出ました。これを10人の社員に当てはめれば、約5人が失敗、約3人が普通の社員、約2人が優秀な社員ということになります。
すなわち、失敗した5人を、採用試験のときに雇っていなければ、もっと高いパフォーマンスをする人を5人雇うことができたかもしれません。技術が不要なわけではありませんが、技術よりも大切なのは、企業文化に合っていて、良い姿勢で仕事に臨める人を探すことです。
企業文化に合っているかどうかを選考の最優先事項としている企業として、本書ではサウスウエスト航空を例にあげています。サウスウエスト航空は、フレンドリーでユーモアのある接客によって顧客からのロイヤリティーを獲得し、リピーターを増やしている航空会社です。当然ながら、この企業で働くにはユーモアのセンスが必要とされます。
アメリカでパイロットの採用試験に集まる候補者は、大抵が40代の軍隊経験者。とてもまじめで、きっちりと黒いスーツを着こなして試験に臨む人が多いのだそうです。しかし、サウスウエスト航空が過去に実施した採用試験では、候補者がリラックスできるようにと、会場で茶色の半ズボンに着替えるようすすめました。候補者の反応はさまざま。
おもしろがって着替える人もいれば断る人もいます。そして試験では、茶色の半ズボンに着替えたユーモアのセンスがあるパイロットが合格となりました。パイロットが顧客に直接ジョークを言う機会はないかもしれません。しかし、おもしろいことをしている仲間を冷めた目で見ているような人は、サウスウエスト航空にはふさわしくないのです。
サウスウエスト航空の元CEOであるジェームズ・パーカー氏は、同社の採用基準について、BusinessWeekのインタビューで次のように話しています。
「パイロットやメカニック、弁護士、会計士を雇う際には、スキルの高い人を望むでしょう。しかし、私たちが探しているのは、当社にふさわしい人材です。他人指向型(他の人に受け入れられたいと思う、他人とうまくやっていきたいと思う人)で、自己中心的でなく、誇りとなる仕事を達成したいと思っている人を探しています」
人材不足に悩んでいるときほど、即戦力になりそうな高スキルの候補者が魅力的に思えます。その候補者が企業文化に合っていれば、またとないチャンスですが、そうでない場合、その人を雇うことで組織がもっと混乱してしまうかもしれません。
採用試験では、仕事に前向きな姿勢で取り組むことができる、企業文化に合う人材を探すことにこだわるべきです。企業にふさわしい人材がどのような人物なのかをしっかりと把握し、その特性を見極めるための面接になるよう質問を吟味しましょう。
採用試験で、仕事に前向きな姿勢で取り組むことができる、企業文化に合う人材を探すことが、組織の成長には欠かせません。続いて、採用面接の質問を吟味することによって、高いパフォーマンスを発揮できる人材を見つける方法について、その概要をご紹介しましょう。
Leadership IQが採用担当者を対象に実施した調査では、これらの質問が採用面接の中で非常に多く使われていました。しかし、このような質問は、企業文化に合った人材を採用するには役立ちません。その理由は、まず候補者の空想だけで回答できる曖昧な質問であることです。
そして、採用試験で定番の質問であることもよくありません。候補者は、質問を予測して事前によく出来た答えを準備してしまいます。さらに、このような質問の回答には候補者のパフォーマンスを具体的に示すものがなにも出てきません。すべての候補者の回答を並べてみても、どの人が企業に合っているのか判断をすることは難しいでしょう。
ほかにも、採用面接で聞くべきではない質問として、つぎのような例があげられています。
質問の回答を聞いている間に、「そのとき、あなたはどうしましたか?」と追加の質問を続けたくなるかもしれませんが、焦らず候補者の回答を聞きましょう。パフォーマンスが高い人の回答と、パフォーマンスが低い人の回答には差があります。質問者が追加の質問をしなければならないと感じるのは、候補者のパフォーマンスが低く、回答が的確でないせいかもしれません。
Leadership IQが採用試験で出題された小論文の回答を調査した結果では、パフォーマンスが高い人は、パフォーマンスが低い人よりも、約60%多く「私、私達」という一人称を使って回答していました。パフォーマンスが高い人は、上手に自分の経験を語ることができます。作文と面接の違いはありますが、その傾向は似ていると考えていいでしょう。
4つのステップを何度か繰り返すことで、理想に近い候補者を見つけ出すことができます。面接終了後に、候補者の回答を振り返って、企業文化に合っている人の特性が表れていたかどうかを評価しましょう。
企業文化に合う人材を見つけるには、まず自社にどのような人材が合っているのかしっかりと知ることです。そして、その人物像に合った人を探すために、候補者の想像や理想ではなく、経験に基づく回答が得られるような質問を繰り返します。回答の中に候補者の経験がしっかりと述べられていれば、その候補者は、今までも高いパフォーマンスを発揮してきた人です。
また、企業文化に合った優れた人材を採用するためには、必要資格や条件を並べるだけの一般的な求人広告をやめて、製品を売り込むときの広告のように魅力的な内容のあるアピールをすると効果的です。そのポイントについては『企業文化に合う人材を雇うための「採用の公式」』も参考にしてみてください。
- 人材採用・育成 更新日:2018/05/01
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