よく聞く「優秀な人」とは一体どんな人!? 本当の“優秀な人材”とは
日本の採用選考は、ほとんどが「面接」で行われています。つまり、「優秀だと思う」というのは、ほぼ「面接で評価が高い」ということと言えます。実はこれについての研究があります。日本の採用面接研究の第一人者である今城志保氏の「採用面接評価の科学」(白桃書房)によれば、外向性が高く、情緒安定性が高い人は、一般的に面接評価が高くなる傾向があるとのこと。
「外向性」とは、社交的、話好きであり、活発な振る舞いをする傾向を指します。「情緒安定性」とは、どんな出来事が起こっても過剰に反応せず、不安に陥らない傾向を指します。つまり、日常的な言葉で言うならば、明るく楽観的な人が面接では優秀とされるということでしょうか。実際、外向性や情緒安定性は多くの職種でハイパフォーマンスの要素であることが多いと言われていますので、この点では、「優秀に見える人」は「実際に優秀」であると言ってもよいかもしれません。
ところがその一方、同書によれば「知的能力は、常に面接で評価されるわけではない」という事実も判明しました。優秀と聞くと、「頭の良い人」が真っ先に思い浮かびますが、面接場面においては、実際には「頭の良さ=知的能力」はそれほど評価につながらないということです。
しかしながら、様々な会社で人事コンサルティングをさせていただいている経験からみれば、多くの会社で数学や国語などの能力試験の結果が、仕事のパフォーマンスにつながっているケースが多いのも事実。そう考えると、知能という点においては、人が無意識のうちに考える優秀さと、実際に成果につながる特徴(ここでは「真の優秀さ」と呼ぶことにします)は異なっているとも言えます。客観テストなど、面接以外の評価方法がなければ、見過ごされてしまうのが意外にも知的能力なのです。
極端な言い方ですが、人間にはもともと「長所」や「短所」はありません。何かをすることによって持っている能力が発揮され、効果的に能力が働くと、その場合に限って「長所」と呼ばれるのです。
例えば、好奇心旺盛と飽き性は紙一重、裏腹です。他にも、信念の強さや継続力と頑固さ、受容性と優柔不断さなど、同じような概念でも良くも悪くも表現することができるのは、上述の通り、適応する領域によってその価値が変化するからではないでしょうか。それにも関わらず、先に述べた「明るく楽観的」など、無意識に「優秀に見えてしまう」要素があるため、注意が必要です。
それは必ずしも、皆さんの会社の特定の仕事に当てはまるわけではない。例えば、経理などのコツコツやる継続性と慎重さが求められる仕事の場合、活発な人だと内勤の仕事で息が詰まるかもしれません。また、楽観的過ぎては正確性を求められる仕事に対応できないかもしれないのです。
つまり、基本的には「優秀さは時と場合による」ということ。どんな仕事にも共通するような優秀さの要素はほとんどありません。対立する要素がともに、それぞれ優秀な成果を残している人の特徴だったりもします。
リーダーシップの研究などをみても、「俺について来い」というカリスマ型のリーダーもいれば、メンバーが能力を発揮しやすいように環境を整備したり、支援したりするサーバント型のリーダーもいる。論理的でクールなリーダーもいれば、エモーショナルでホットなリーダーもいるのです。
彼らはいずれも優秀な人。リーダーだけでなく、営業も、経理も、エンジニアも、人事も、いろいろな「優秀な人」がいます。人は誰でも「何かの天才」です。人生とは、自分が何の天才なのかを探し続ける旅なのです。
様々な特徴がそれぞれの場、仕事において優秀さの要素とされることを考えると、どんな人でも優秀な人になりうる。ただし、一つだけ必須事項があります。それは、自分を知るということ。自己認知の高さです。自分の能力や性格、志向などの特徴を知る。なぜなら、自分の持つ特徴をきちんと正確に認識していれば、どのような場で、どういう仕事で、どんな役割なら自分が活きるかわかるからです。
もちろん、偶然に適材適所を実現し、自己認知のないまま優秀さを発揮する人も稀にいます。ですが、基本的には”easy come, easy go”。知らぬ間に来たものは、知らぬ間に去っていくのです。しかし、自己認知ができている人は、今いる場が自分を活かす場ではないとわかるため、もう一度今いる場を自分に合うように変化させるか、もしくは、自分から自分の特徴が活かされる別の場に動くことができます。そうすることで、継続的に優秀であり続けることができるのです。ですから、自己認知の高さを採用選考では見極めるべきです。
さて、最後に、「自己認知」の高い人は何故その力を高めることができたのかについて述べます。実は、方法は一つしかありません。「自己認知を高める」とは「自分の知らない自分に気づく」ということです。字義から考えれば、自分の知らないことは他者から教えてもらう、フィードバックしてもらうしかありません。ですから、自己認知の高い優秀な人材は、好んで自分の身をさらし、他者からフィードバックを受け続けることができた人です。
良質なフィードバックを受けるためには、ポジティブなことでもネガティブなことでも、必ず受け止めなくてはならない。つまり、他者から「この人にならフィードバックをしてあげたい」と思われるような他者の意見に対する受容性や知的誠実性(不快な意見でも知的に考えて正しいと思うのであれば受け入れるかどうか)の高い人が、結果、自己認知が高まり、自分を活かす場を見つける力を得ることができ、真の優秀さを実現できる人なのです。
採用選考や人事評価等においては、結果としての優秀さだけではなく、ベースとなる自己認知、また自己認知を高めることができるようなフィードバックを受けやすい環境や性格を持っていたか、というような側面も注意して見ておくと、本当の“優秀な人材”に巡り会えるのではないでしょうか。
- 人材採用・育成 更新日:2019/04/09
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