内定クロージングのプロセスで大切にしたい5つの鉄則
こんにちは、アウトソーシングテクノロジーの若林聖子です。今回は採用におけるクロージングの鉄則についてお伝えしたいと思います。
母集団を形成し面接設定をし、呼び込んだ応募者に内定を出す。内定者が承諾して無事に入社となるわけですが、こんなにスムーズにいけば苦労はありません。しかし、内定を出したから必ず入社してもらえるとは限らず、内定承諾率を高めることは非常に難しいものです。
2018年3月に厚生労働省が発表したデータによると、全国の有効求人倍率は1.58倍。求職者1人に対して1.58社分の内定が出る状況です。求職者の数より多くの求人が世の中に溢れている状況なので、内定承諾までに“他社の内定を蹴ってもらい、自社を選んでもらう”という工程が一つ入ってきます。つまり、採用部隊のクロージング力を向上させることが必須となっているのです。
どの会社の面接ヒアリングシートにも、「他社状況」という項目があると思いますが、弊社のメンバーには、“選考状況は極力聞かないように”と伝えています。私自身も、採用活動を始めて最初の3年ほどは必ず他社の状況を聞いていましたので、聞きたい気持ちはよくわかります。
面接スケジュールの設定や、いつまでに内定を出すかどうかの判断をするため、受けている他社と比べて自社を選んだ方が良い理由を伝えるために聞きたくなりますよね。しかしある時、他社状況を聞くことでマイナスの影響があることに気がついたのです。
そもそも他社の内定を断り、自社に来てもらうには「入社したい、内定が欲しい」と思わせる必要があります。そんな憧れの存在にならなければいけないはずが「他はどこを受けてるの?」「その会社とは今どういう状況なの?」「その会社に行きたいの?」「弊社のことはどう思ってるの?」と聞いた場合、その時点での優位性は相手が上・自分が下になってしまいます。
どっしり構えて自社の魅力を伝えるだけで良いのです。まるで恋の駆け引きのようですが、まさにこれが面接の場でも大切な交渉術となります。
「他社状況を聞いてはいけない」とは言え、本当に自社に来てくれるかどうか不安であれば、自社に入社する意味を一緒に面接の場で創ってしまいましょう。
私は、他社の選考状況は聞きませんが、似たような項目で必ず確認することがあります。
それは“どの職種・どの業種”を受けているかです。
過去をヒアリングして、求職者の思いを聞かせてもらった後に、「今受けている会社はどんなところですか?」と聞きます。
例えば応募者が「不動産の営業」「塾講師」「本屋さん」「未経験OKのエンジニア」などの選考を同時に受けていたとします。職種・業界がバラバラの場合に考えられることは、
①勤務地
②職種のざっくりした性質(内勤or外勤程度のもの)
③高い年収
④手に職をつけられる安定性
などが想定されます。
その中で自社を選ぶ決断をしてもらわなければいけません。
「なんのために私たちの会社に入るのか。目的はなにか。」「私たちの会社に入ることでのメリットデメリット」を話してもらい、一緒に自社に入社することの意味を探っていく工程を行います。
この工程を行うことで、本人が会社に対して何を求めているか、何に不安を感じているか理解することができます。この対話が入社するイメージを具体的にし、懸念を払拭することに繋がるのです。
本人が受けている求人、必ずその選択には共通点があります。どのような共通点を持って受ける会社を選んでいるかにより、転職先に期待していること・望んでいる条件が見えてきます。
あまりにも受けている職種・業界が違う場合は、それぞれの会社で働く未来の自分をイメージさせてあげましょう。10年後、その会社にいたらどんな人生が待っているかを話しすなど。ここで重要なのは、誘導をかけないことです。あくまでアシストすることに留まり、相手の口から未来の自分がどんな状態かを話してもらいます。
アシストする際のポイントは、住んでいる場所、仕事内容、得られている裁量権、家族構成、年収、家・車の所有の有無、身につけた能力、社内外からの自分の評価などをイメージさせることです。
共通点を持って選んでいるはずの会社だけれど、10年後の自分をイメージすると違う未来が待っていることに気づきます。
その時、改めて本人に聞きます。「あなたが望む未来は?」と。
その答えを、応募者の頭の中に「この会社で未来を創りたい」とよぎらせたら、面接での目的は、ほぼ達成しています。
入社する意味を創ることに成功した後も、まだ気を抜いてはいけません。ヒアリングによって気持ちが高揚した状態も、家に帰ると少しずつ気が抜け、冷静になると不安が出始めるものです。
「ここで自分は頑張っていけるんだろうか」「本当にこれで合っているんだろうか」
そのような思考にさせないために、私は宿題を持ち帰ってもらうことが多いです。
「今日、大切なことを沢山お聞きしたので、私もあなたの望む未来が理解できました。会社も私も、あなたのその未来を叶えられるようにサポートしたいと思っています。」と伝え、一緒に併走するイメージを持ってもらいます。
その上で「改めて、この未来を叶えたいと思えるかどうか、家で考えてきてほしい」と宿題を出します。そして「私達も、最終的に決断を出します」と、選考が即刻合格でないことも伝えます。
さらに、もう一つ宿題を出します。「その未来を叶えたいと思えたら、あなたの大切な人に、それを“応援”してもらえるように、お話をしてください」と。ここで大切なのは「理解」するのでもなく「許可」を得るのでもなく、「応援」してもらうというワードです。応援という言葉の中には、その未来を本人が望んでいることが前提となります。本人の意思で、入社することを促していなければ、二つ目の宿題を達成することが出来ません。
宿題を二つ出し終えたら、スケジュールを決めます。次に話し合う期間は、なるべく早いほうが良いです。可能であれば翌日、難しければ2日後が理想ですが、土日を挟んだ次の月曜でも良いでしょう。
その時、他社の選考状況は全く聞きません。もう自社と本人との問題として話を進めていきます。なるべく早いタイミングにする意図としては、集中力の問題です。
結論は大体決まっていて、先延ばししてもあまり結果が変わりません。鉄は熱いうちに打てということわざの通り、本人の気持ちが高揚した状態で気持ちを固めさせ、周りに話すという行動まで起こさせる必要があります。1週間後に連絡するのでは、他の会社を受けていく過程の中で、一緒に考えた未来イメージが薄まります。採用はスピードが重要です。
電話または面談を打診することでコンタクトを取りますが、内定を出すタイミングは、本人の意思を聞いてからになります。対話の中で、宿題をどこまでやってきたかを確認し、相手の志望度がどう変化したかを確認します。
下がっているのか、上がっているのかは、本人の話し方・言い回し・声のトーン(表情)で汲み取ります。意思が固まっているようであれば、そのまま内定を出しても問題ないでしょう。この場合の承諾確度は、7-8割です。不安を感じているようであれば、内定を出しません。再度、ヒアリングのやり直しでタイミングを見計らいます。
その場は面談を行うだけにし、面談終了の翌日には1回目と2回目の面談で感じた所感を本人に伝え、こちらの印象がどう変化しているかもフィードバックしながら、“そんなあなたと働きたい”ということを伝えて内定を出すようにしています。
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