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オンライン選考時代の採用広報を学ぶ~3回連載シリーズ1編目~

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新型コロナウイルスの流行によって、採用手法を見直した企業も多かったのではないでしょうか?

オンラインを活用した母集団形成や選考が主流となる中で、どうしたらターゲットからのエントリーを獲得できるのか、入社後のミスマッチが防げるのか、情報の精度が問われる時代となりました。

求職者がオンラインであらゆる情報を取得できる中、中途採用における「採用広報」は、いまや採用成功のための欠かせない戦略です。

今回は、「オンライン選考時代の採用広報を学ぶ」3回連載シリーズの第一弾として、「効果的な採用広報とは」をお届けします。

採用広報とは、企業や組織が採用を行う際に、自社がターゲットとする人材からの応募を促すために行う広報活動のことを示しています。

商品やサービスの購買活動や販売促進のためのPRではなく、採用広報は、その企業で働くイメージを持ってもらうための情報発信を行うのが特徴です。基本的な募集要項に加えて、具体的な仕事内容や働き方、職場の雰囲気、社員インタビューなどを通じて、企業の魅力を伝え、応募を促します。

しかし、ただ漠然と自社の情報を並べていても効果を発揮しません。採用広報で重要なのは、「いかに、“採用ターゲットにとって魅力的な情報”を提供するか」「入社後にギャップにならないような、等身大の情報を提供できるか」です。企業として採用したい、人物要件を明確にしないまま、やみくもに情報発信をしたところで、ターゲットに響かないなど、入社後のミスマッチにつながってしまいます。

以下の2点が背景として挙げられます。

  • 人材の獲得競争が激しくなっていること
  • オンラインでの採用が普及し、情報の開示がより必要なこと

現在、採用広報に成功している企業と、失敗している企業で2極化が進み、人材奪い合い時代が依然として続いています。

2009年のリーマンショックでは、0.45倍程度だった有効求人倍率は、2018年の平均値は、バブル期のピークを上回る1.62倍となり、コロナ禍を経た2020年度でも、1.18倍と、1倍を越える数値を保ち、企業の採用ニーズが高止まり傾向にあります。

マイナビが、2020年に転職した20代~50代の男女1,500名を対象に、転職者の傾向や変化を調査した『転職動向調査2021年版』によると、新型コロナウイルスの影響で、転職に積極的になった割合は36.9%(「転職に積極的になった」+「やや転職に積極的になった」)となり、転職に消極的になった割合19.0%(「転職に慎重になった」+「やや転職に慎重になった」)の約2倍となりました。特に、20代男性の51.2%が新型コロナウイルスをきっかけに転職活動に積極的になったと回答しています。

そんな中、企業としては、新型コロナウイルスの影響もあり、対面での採用活動が制限される中で、新しい手段を開拓せざるを得ない状況となりました。2020年では、オンラインを活用したイベントや選考が主流となり、同年にWEB面接を実施した企業の87%が、今後も利用すると答えています。

求職者側にとっても、オンラインを使った選考方法における満足度が高い中、採用のオンライン化は定着する方向性にあります。

従来の対面型で、求職者は企業の雰囲気や社員の様子を、身をもって体感することで、企業選定をしていました。しかしながら、オンラインを活用した採用手法が当たり前になる中で、企業は自社のPRの精度をより高くする必要性があり、求職者はWEB選考や自力の情報収集を通して、企業の良し悪しを判断する必要がでてきました。そんなオンライン採用時代に欠かせない役割を担うのが、採用広報です。

採用広報で扱う情報を選定する際の注意点は、自社の採用ターゲットが、“自社で働くこと”を魅力的に思えるかどうかです。経営層のメッセージ、職場風景、スタッフの様子、福利厚生、キャリア形成、働き方など、様々な要素がコンテンツになり得ます。

採用広報に成功している会社は、それらの情報を写真や映像、あるいは魅力的な文章で紹介することで、採用ブランディングを確立し、ターゲットからのエントリーに繋げています。

手始めに、最近入社した社員に、自社に入社した決め手は何だったか、動機付けが進んだ要素は何だったかをインタビューし、どんなメッセージが伝わったことで入社につながったのかをヒアリングするとよいでしょう。現時点でPRが出来ている情報と、PRが出来ていない情報を整理し、採用広報に使えそうな情報の棚卸しを進めてみましょう。

次章では、「社員の働き方」を採用広報に活かしたケースを紹介します。

例えば、働き方改革を実施した企業様であれば、次のような事例があります。

三重県の調剤薬局では、働き方改革の一環として業務の見える化を実施。業務の属人化排除に成功したことで、チームで成果を上げる働き方になり、予算比138%を達成しました。

その結果、誰かに仕事が偏ることがなく、安心して有給が取得できる環境となり、社員全員で有給消化100%を達成しました。働きやすさが向上したことで、社員の結婚数は2倍、出産数2.5倍と、ライフでの大きな変化が生まれました。

そして、次年度でその様子を採用広報に活かしたことで、マイナビのエントリー数が5倍となり、大阪や名古屋の企業の内定を辞退し入社した学生まで生まれました。

新潟の建築資材メーカーでは、残業ゼロ宣言をした上で、働き方改革に取り組んだ結果、社員一人当たりの月平均残業時間を1.1時間まで削減しました。なおかつ浮いた残業代を全額社員に還元したことや、男性育休100%取得であること等をアピールしたおかげで、優秀な人材が多方面から集まり、採用に全く困らなくなっています。

採用広報で扱う情報は、社外に向けて、自社が他社と比較し自慢できる情報でなければならないと思っている企業や人事担当がいますが、決してそうではありません。

働き方をこんな想いで改善している、社員が一生懸命取り組んでいる、そんな過程であっても赤裸々に広報のネタとして扱える企業こそ、採用広報に成功しているケースがあります。ここでの具体的な成功事例や扱う情報は、2回目で具体的に解説します。

上記のような、採用広報力を発揮する企業が享受できるメリットは、3点あります。

母集団形成力が向上する

一番効果を感じやすいポイントは、応募数が増加するということです。企業の情報をアウトプットすることで、興味喚起を促すことができます。

ミスマッチが減る

企業側は、選考過程の限られた情報の中で、求職者を次の選考に進めるかのジャッジをしていましたし、求職者は、選考の中で自身の転職軸に関わる質問をし、不安を解消したり、不明点を明らかにしていました。

採用広報は、企業として、「こんな人が欲しい、この情報を魅力に思う人に来て欲しい」のメッセージでもあります。理解して選考に臨む求職者とのコミュニケーションコストも削減することができ、入社後のミスマッチも減少します。

リファラル採用力が増す

採用広報における、最も重要なポイントです。採用広報の副次的な効果として、社員から友人知人を紹介してもらうリファラル採用数が増す、というメリットが出てきます。

採用広報は、直接ターゲットに訴求するために「社外」に向けて発信するものと、雇用している従業員向けである「社内」に向けて発信する、2つの側面があります。社内向けに発信する目的は、社員のエンゲージメントを向上させ、社外に向けて紹介したくなるような意欲を醸成することです。

社内向けの採用広報は、「社員が自分の会社を好きになる」効果を得られ、社員が口コミで社外に発信し、社員が広告の一翼を担うという好循環が生まれます。

採用広報を具体的に進める上での手段は3点あります。

オウンドメディアを活用する

まず1点目が、自社ホームページや採用ページなどの自社で保有しているWEBメディアを活用する方法です。流入を集めるのは難しいものの、一度作ってしまえば広告費や求人掲載にコストを使わなくなるため、長期的な視点で見ると有効な手段です。

ペイドメディアを活用する

こちらは企業がコストをかけて、広告をメディアや求人媒体などに掲載してもらう手法です。

テレビ・雑誌・ラジオ・新聞などの4媒体やWEBメディア、WEB広告、イベント出展などがここに分類されます。求職者に情報を迅速に届けやすいものの、費用がかかる、掲載期間が限られているということがデメリットとして挙げられます。

ペイドメディアを使った採用広報の中でも、「求人サイト」に掲載をしてもらうという手法は、転職を視野に入れている多くのユーザーに情報を届けられるので効果が高い分、競合も多いため、求人広告の作り方が効果に大きく影響します。

アーンドメディアを活用する

採用広報においても重要視されつつあるのが、ブログやSNSなどを利用する手段です。口コミで獲得したメディア露出のことで、企業のファンを作ったりなど、ユーザーとの接点を気軽に作り出せるのがこの手法のメリットです。

また、利用するのにコストが掛からないのも大きなメリットです。社員の情報や会社の雰囲気をリアルタイムで発信するなど、運用次第では大きな効果が期待できます。

ずばり、目標とするKPIを定めて、そのKPI達成のための採用広報をすることが基本です。

例えば、応募をする行動までのターゲットのステップを、「認知」「イベント参加」「採用情報の閲覧」「応募」のように細かい段階に分けます。そして、段階ごとに細かくKPIを設定していきます。

認知段階のようにまだ具体的な成果が見えづらい段階でも、WEBメディアのPV数や滞在時間などのKPIを設定しておくことで少しずつでも効果が出ていることを実感できるようになります。

採用広報の各段階はつながっているため、各段階でなすべきは「応募者を次の段階へ進めること」です。そのため、KPIは「どれだけの応募者を次の段階へ進めることができたか」を測れる数値にするべきです。

例えば、自社の存在を幅広い人に知ってもらうための活動の目的は、知ってくれた人を次の段階である企業や経営者のSNSフォローなどの「継続的な接触」へ進めることだとしましょう。その場合、SNSフォローを増やす活動は、フォロワーを増やすこと自体が目的なのではなく、その次の段階であるイベント参加へ応募者を進めるための布石です。そこからイベント参加への導線を作っていくとよいでしょう。

現段階で、選考フローにおいて離脱が多いステップに注目し、KPI設定をしてみて下さい。そのKPIを達成するために、前段階のステップで要因となっているものを改善し、数値改善につなげていきましょう。

採用広報は、採用担当が一人で効果を出すことの難易度が高い手法です。また「自社はどう見えているか」が重要な視点ですので、社内のリソースを最大限活用しましょう。

お勧めは、以下の視点を持つ人達でチームを組み、進めることです。

自社の社員情報や企業沿革に詳しい人

自社に詳しい人が必ず一人いると、KPIの改善活動がスムーズに進みます。「このイベントをやるならば営業部の○○さんが適任だ」、「この福利厚生制度を作ったのは○○さんだから、確認してインタビューをしよう」など、アクションに繋がりやすくなります。人事や採用担当者がこの役割を担うことが多いパターンです。

自社について、未だ詳しくは知らない人

採用広報の成功の秘訣として、社内外から「自社はどう見えているのか」を、明らかにすることが必要です。社歴が浅く、中途採用で入社し、フラットに自社のことを見ることができる人や、社外のパートナー企業など、自社について未だ詳しくは知らない人の支援を募りましょう。

職種や役割の違うワーキンググループを作って採用広報をプロジェクトで実施している企業もあります。

コーポレートや商品の広報をしている人

自社の企業広報、もしくは商品のPRをする広報部隊ともタッグを組み、情報の整合性を図りましょう。採用広報だけ奇抜にした結果、自社のコーポレートブランディングとの乖離が出たり、BtoCの業態の会社は商材の信頼に影響したりなどを防ぐために、社内の広報部隊との擦り合わせは欠かせません。戦略立案時は特に、大きなビジョンを共有し進めていきましょう。

では、具体的に採用広報のコンテンツとして、ターゲットにとって魅力的になり得るものとして、何があるのでしょうか。

ここでは、組織変革の際に使うフレームワークをご紹介します。コンサルティング業界で有名なマッキンゼー・アンド・カンパニーが考案した事業戦略を考えるためのもので、企業には3つのハードな経営資源と4つのソフトな経営資源があると捉えています。それら7つの資源をもとに、個々の企業に最適な事業戦略を考えることができるとされています。

その企業が保有している経営資源を採用広報に応用したものが、以下の表です。

この各要素からあぶりだされた質問の解を突き詰めていった際に、採用広報として使える武器のヒントが手に入ります。

また、各要素において、社員にアンケート調査を実施し、自社のどんなところを友人に自慢できるのかを意見収集するのもお勧めです。

どのような経路から、どんな応募者が集まっているのか、現状を分析し、把握します。求職者と企業の接点は多様化しています。思わぬ経路から認知されていたり、逆に効果的だと思っていた施策が採用に貢献していないなどの可能性もあるため、現状の施策と数値を計測した上で、どのような状態を目指すべきなのかを考えましょう。

自社の採用における、あるべき姿を明確にすると、現状との課題が浮き彫りになります。選考フェーズのどの数字が足りていないのか明らかにし、KPI設定をします。

ここでは求職者の気持ちになり、競合分析をすることも大切です。他社と比較されたときに自社が見劣りしている点は、逆に優位に見られている点は何か、仮設立てをしつつ、競合との差別化をできる点を認識しましょう。

人材要件をペルソナレベルで具体化し、その人物像に響くメッセージは何かをコンセプトメイクします。

ここでは、現在活躍している社員の成功パターンを切り取り、活躍する人材要件を作るだけではなく、会社として中長期的に何を目指すのかを明確にした上でブレークダウンし、今採用したい人材はどんな人かを考えることをお勧めします。

そして、ターゲットに一番近そうな社員にインタビューし、読み手にとって「自分の少し先の未来像」として見せられると、採用広報としては効果的です。

何を打ち出すかが決まったら、手法を選定しましょう。

仮に自社のHPの作りこみをするならば、HPまでたどり着くための導線はどのようなものがあるのか、導線の目的はどんなものなのか、つながりを意識しましょう。単発の接点で応募獲得を狙うだけではなく、求職者が何度も接点を持てるような発信手段を組み合わせて応募獲得を狙いましょう。

自社のねらい通りのKPIは達成できたのか、振り返りを実施し、効果を検証しましょう。

その上で更なる課題を設定し、次のKPI設定をし、採用広報の精度を上げていきます。入社した人材がいるならば、応募前の自社のイメージ、選考中のイメージ、入社後のイメージなどをヒアリングし、ギャップを明らかにした上で、次のアクションに活かすのも効果的です。

人材奪い合い時代の昨今、効果的な採用広報を行い、求職者の目に留まる、魅力的な情報を発信していくことが採用戦略には欠かせません。自社の強みを理解し、社内外に発信できる企業は採用市場において勝ち続けています。

人を惹きつけることができる“自社にとっての武器”は、社内のリソースにこそあります。“こんな魅力的な社員がいる”、“いま自社はこんなことにチャレンジしている”など、アピールできる要素を探せば探すほど、自社の魅力に気づくことでしょう。

しかしながら、ただPRして、応募が一時的に増えたことで、採用広報は終了ではありません。「応募者の志望意欲は、高く醸成できているのか」や、「応募者はターゲットとした人材要件に当てはまっているのか」などを、設定したKPIに応じて細かく振り返りましょう。そこから改めて、採用広報の5つのステップのPDCAを回しながら、改善を繰り返し、採用広報の精度を上げていきましょう。

  • 人材採用・育成 更新日:2021/05/12
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