転職条件緩和の交渉方法 -入社後も自社で長く活躍する社員になってもらうために-
給与と聞いた瞬間に、 「給与か…自社もそんなに高くないから、入社しても辞めちゃうのかな…」 「良い人だけど、最初の提示給与が高くないと入社承諾を得られなさそうだな」 と感じてしまい、こちら側の採用モチベーションもグッと下がってしまいがちです。
しかし、諦めるのはまだ早いです。多くの方は、
給与が低いから辞めているわけではありません!
多くの方の不満の根底には、
“給与の上がり幅に納得がいっていない”
ケースがあるように見受けられます。どのような軸で自分を評価されたかを理解し、その結果に納得がいけばまだ良いですが、良い評価をされた際に上がった金額が自身の期待値に届いていない場合、今後の給与の上がり幅に期待が持てず、転職を検討し始めます。つまり、給与に不満で転職される方には、「昇給がいくら発生したか」「スタートが同等ラインでも、毎年の昇給がこのような人事制度を用いて評価され、高額〇〇円以上の昇給者が〇%存在する(もしくは過去こういった高額昇給の実績事例がある)ような環境であれば、どう感じますか?」とヒアリングすると、多くの方は「それであれば頑張りたいです。」と答えてくれます。
人事制度の評価基準と、昇給の上がり幅をお伝えし、自分の努力次第で3年後5年後10年後にこれくらいの給与になれると理解して頂くことで、給与条件の不満を崩すことができます。
人間関係については、その方の前職での職場ごとで要因となるものが変わってきます。またこれは、職場の先輩上司の傾聴力が足りないと発生する課題とも言えます。
例えば。頭ごなしに指導を受けると新人は“風通しが悪い”“トップダウンの会社だ”と脳内で変換してしまいます。こうなってしまうと、どんどん話が本質から遠ざかり、相手の良いところも見えなくなってしまいます。
どんな人と一緒に仕事をしても自分で自分の居場所を作る力を持っていただくことが、入社前に導くゴールとなります。つまり、人間関係が悪かったことが要因なのではなく、人間関係が悪い場合に、改善ができなかった要因にフォーカスして話をしていくことが重要です。
多くの場合「相手を信じきることが出来なかったから。」という結論に至ることが多いように感じます。ビジネス上で共に働く人に対して最も重要なスタンスは“性善説”だと私は思っています。綺麗ごとかもしれませんが、どんな苦手な人でもまっすぐに相手を見つめるスタンスを取ることは、人間関係を構築する上で最も重要なファクターになると考えています。
言い換えると“好きになることを諦めない”、“相手が至らないことがあっても受け入れること”です。人間の不完全な部分を愛し、“いつかこの人とも信頼関係が築けるはず。必ず理解し合える。”という信念を持つことが大切です。
仕事内容を理由に転職活動をされる方でも、細かく背景を分けることができます。
「やりたいことと違う」「権限が委譲されない」「この仕事をずっと続けていった後に自分のキャリアに不安」など、様々な不満や不安が出てくると同時に、次の会社では絶対やりたいことをやらせて欲しいという要求が高い状況になります。
その人のやりたいことをそのまま任せられるのであれば、その時点で転職条件はマッチングとなり問題ないことが多いですが、マッチングさせられない場合は他の職種からチャレンジするかどうかをヒアリングする必要があります。
その場合は、本人の適性・適職についてしっかりと説明し、やりたい仕事を任されるまでにどんな能力を身に着ける必要があるかを理解してもらいます。
前職でやりたい仕事に就けなかった状況をヒアリングし、課題を抽出します。自身に何が足りないかを理解してもらう中で、それを次の会社でどうすれば任せてもらえるようになるかを答えてもらうのがベストです。ただし、退職を覚悟するくらいの方は「自分は出来る」という前提があって来られている方が多いので、課題抽出するマインドになっていないこともあります。その場合は、他の業務に適性があることを強く伝えることで、まずスタートをそこから入ってやりたいことに就くまでの道筋を組んでいくことで納得してもらえるケースは多いです。
応募者も「やったことない業務」よりも「適性のある業務から一歩一歩ステップアップ」する方が安心感を持てるようです。ただし、入社後はその組んだプロセスをその方の上長に共有し、それに対して足りているかどうかのフィードバックを随時入れることが必要となりますのでご注意ください。
「経営が不安で業績縮小を続けている」「将来的に期待の持てないサービスをしている」などの理由で退職された方については、自社の経営陣のスタンスなどを話し、安心感を持ってもらう必要があります。
業績拡大していること、中長期計画が期待の持てるものであること、株価の推移などでそれが示せれば問題ありませんが、そうでない場合は別の方法で崩す必要があります。
新サービスの開発や提案が欲しいことや、風通しの良さを伝え組織改革を担ってほしいこと、これから入る人財は将来の役員候補であるという路線が最も適していると思います。業績が悪ければ、そこで経営課題を解決するための原動力が必要となるため、金の卵を探しているという話をします。
現状、経営が万全に見える会社でも、入社時は安心ではあるが将来どうなるかはわからない。その際に、自分にとって必要なものは何か? その会社で3年、5年、10年いた期間以上のものが経験出来ているかどうか。社会的に市場価値のある人間になることではないか。ということを、本人の口から出てくるまでヒアリング(傾聴)していきます。それを握れたら「どうやって会社を創っていくか」にフォーカスして、本人のマインドセットを行っていきます。
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