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「リファラル採用」とは?メリットや注意点を分かりやすく解説

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リクルーティングの手法として近年注目されているリファラル採用について、国内の導入状況や既存のリクルーティング方法との比較を詳しく解説します。


リファラル採用とは

「リファラル採用(リファラルリクルーティング)」はダイレクトリクルーティングの一種で、社員が知人や友人を自社の採用担当者らに直接紹介し、採用を行う手法です。この言葉は、委託や紹介、推薦などを意味するリファラル(referral)と、採用(recruiting)を掛け合わせた言葉です。

リファラル採用は、社員が直接候補者を自社に紹介するため、さまざまなリクルーティングコストを削減することが可能です。また、紹介者を通じて候補者がリアルな企業情報などを知ることができるため、採用のミスマッチを防げるといったメリットもあります。


リファラル採用の導入背景や導入状況

リファラル採用が注目される理由

国内でリファラル採用の導入が進む背景の一つには、生産年齢人口の減少が挙げられます。経済産業省が発表した統計「2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について」では、2010年頃から生産年齢人口が減少に転じており、2050年まで減少し続けることが予想されています。限られた人材の中から自社にマッチする人材を見つけるのは非常に困難です。

そのため、人材を一人でも多く獲得する術の一つとしてリファラル採用が注目されています。

現在の導入状況とトレンド

リファラル採用を取り入れる国内企業の数は、現在過半数を超えています。2023年の採用結果と2024年の見通しを調査した「マイナビ中途採用状況調査2024年版(2023年度実績)」によると、リファラル採用を実施した企業は28.8%に達しました。

また、同データの「利用したサービス別の採用人数」において、2021年平均の採用人数は0.74人であったのに対し、2023年度の平均人数は1.55人と、増加傾向にあります。他の採用手法と比べても2年間における伸び率は高めで、採用手法として注目度が上がっていると考えられます。

2023年の中途採用において、正社員人材が余剰・不足ともに22年と同水準となり、不足感が強く感じられている傾向があります。こうした背景などを理由に、さまざまな手法を活用して人材を獲得しようとする企業の姿勢がみられます。

リファラル採用と縁故採用はどう違う?

リファラル採用と縁故採用には明確な定義はありませんが、縁故採用は企業と特別なつながりのある人を採用する手法として捉えられます。従来の縁故採用は、業務スキルよりも血縁や友人関係といった個人的なつながりを重視するため、最近のリファラル採用とはニュアンスが異なります。

リファラル採用は、現職の従業員や関係者が推薦する候補者を採用する手法で、推薦者の信頼性や候補者の業務適性が重要な基準となります。これに対し、縁故採用は個人的なつながりに基づくため、業務スキルが必ずしも考慮されるわけではありません。

リファラル採用の目的やメリット

  • 採用時に掛かるコストの削減
  • 採用ミスマッチの防止
  • 幅広い人材へのアプローチが可能

採用時に掛かるコストの削減

リファラル採用のメリットの一つは、採用時の広告宣伝などに掛かるコストを削減できることです。例えば、人材紹介サービスは効率的にリクルーティング活動を行える反面、紹介手数料が発生します。

しかし、リファラル採用では、自社の社員が直接人材を見つけるスカウトマンのような役割を担うため、企業は採用に関する費用や時間といったコストを大幅に削減することが可能です。ただし、人件費は発生するため、採用人数に対する労働分配率が適正であるかどうかを事前にシミュレーションすることをおすすめします。

採用ミスマッチの防止

二つ目のメリットは、採用のミスマッチを防げることです。リファラル採用では社員が人材を紹介するため、自社の価値観に適合しやすい人材に直接アプローチすることが可能です。また、社員を通じて、候補者の経歴やスキルなどを知ることができるため、採用の精度向上が期待できるでしょう。

幅広い人材へのアプローチが可能

三つ目は、転職潜在層に限らず現段階で転職を考えていない層に対しても企業が幅広くアプローチできることです。従来のリクルーティングでは、求職者から応募があって初めて企業が採用活動に乗り出すケースがほとんどでした。しかし、社員が人材紹介を行うリファラル採用では、転職の意欲に関わらず、さまざまな人を集めることが可能。その結果、企業の採用対象者が増えるということです。

また、リファラル採用は採用活動のみにメリットをもたらすわけではありません。紹介者がある種人事担当者の役割を担うため、企業理念や社風、会社の強み・弱みなどを再確認するきっかけにもなり、従業員のエンゲージメント向上が期待できます。


リファラル採用のデメリット

  • 不採用時の人間関係に関するリスク
  • 採用基準に満たない人物の選定
  • 採用プロセスの状況把握が困難
  • 人材の画一化

リファラル採用は、一般的な公募とは異なり、候補者(応募側)が従業員の知り合いという点が特徴です。そのため、双方の人間関係や社内の他社員への影響が悪化するリスクも抱えています。ここでは、リファラル採用のデメリットについて説明します。

不採用時の人間関係に関するリスク

既存社員から紹介された候補者と面談を行った際、自社が求める採用基準に満たないケースもあります。その結果「不採用」となった場合、既存社員とその候補者との関係性にヒビが入ってしまうことも。事前に不採用となる可能性があることを了承したうえで進めるなど、ルールや進め方を明確にする必要があります。

採用基準に満たない人物の選定

リファラル採用の特性上、採用担当者ではなく既存社員が中心となって候補者とやり取りをするため、「仲がいい」「性格がいい」などの個人的な判断で選定してしまう可能性があります。その結果、企業が求める人物像とのミスマッチが生じ、時間や労力が無駄になってしまうことも。

リファラル採用を始める前に、こうした採用基準や求める人物像を社内に周知し、理解を得ることが重要です。

採用プロセスの状況把握が困難

人事担当者ではなく複数の社員が関与するリファラル採用では、採用活動の進捗把握が容易ではありません。部門ごとに人事とのリアルタイムな情報共有を実施するなどの方策が必要です。クラウドやチャットツールなどを活用して状況を可視化し、オンタイムでの情報共有や疑問点を早期解消に努めましょう。

人材の画一化

リファラル採用では、既存社員が知り合いを紹介するため、同じようなバックグラウンドや価値観を持つ人材が集まりやすくなります。これにより、組織内の多様性が損なわれ、創造性や革新性が低下するリスクがあるでしょう。特に、特定の文化や価値観が強い企業では、リファラル採用が進むことで同質性の高い人材が増え、異なる視点やアイデアが不足する可能も。そのため、リファラル採用を行う際には、多様性を意識した人材選定が重要です。

また、リファラル採用のプロセスにおいても、意図的に異なるバックグラウンドを持つ候補者を紹介する仕組みを導入することが求められます。

リファラル採用にかかるコスト

リファラル採用は、人材獲得のいち手法として、また採用コストの最適化を図る手法としても注目されていますが、実施に伴い一定のコストが発生します。まず、紹介者へのインセンティブとして5万円から30万円程度の報酬やボーナスを支払うことがあります。また、社内でのコミュニケーションを促進するためのツールやシステムの導入、さらに社内研修やセミナーの実施に伴う費用も考慮する必要があります。これらのツール導入には数十万円から数百万円の初期投資がかかる場合があります。

しかし、これらのコストはそのほかの採用方法に比べて相対的に低く抑えられることが多く、優秀な人材の質や定着率の向上を考慮すれば、長期的にはコストパフォーマンスが良いといえるでしょう。

リファラル採用を進める手法やコツ

リファラル採用を進めるための手法やポイントについて解説します。

採用制度の構築と状況把握

リファラル採用を円滑に行うためには、自社に最適な採用制度の構築が不可欠です。具体的には、面談の際に紹介者が同席するかどうか、面接の実施基準などを事前に定めておくことが重要です。また、採用活動の状況をどの程度周知するかは、企業と候補者にとってセンシティブな話題です。明確なレギュレーションを設け、制度を適切に運用するのがポイントです。

インセンティブ報酬の設定

多くの企業では、採用の決定に伴い、人材の紹介者に対してインセンティブ報酬を支給しています。これは、リファラル制度へ積極的に参加する社員を増やすことを目的としています。企業によっては、入社する部署や求められるスキルに応じて報酬額を細かく設定する事例もみられます。また、採用・不採用に関わらず、インセンティブ報酬を支給するケースもあります。

制度導入の社内告知

リファラル採用を導入しても、対象となる部署や人材像が社員に周知されなければ、紹介は進みません。積極的に社内で告知し、社員に対して制度の目的や内容を説明することが重要です。

採用ブランディングによる企業イメージの向上

採用ブランディングが成功すると、入社前の「この会社で働きたい」という想いが、やがて「この会社に勤めてよかった」「この会社を勧めたい」というポジティブな感情に変化します。こうした社員のエンゲージメントは、家族や知人の共感を呼び、最終的には企業のイメージアップにも寄与します。

リファラル採用に適した業界

ここからは、リファラル採用が比較的多く実施されている、また向いているとされる業界について解説していきます。

IT業界

急成長を遂げているIT業界は、個人のスキルが重視されるため、リファラル採用などのダイレクトリクルーティングに向いています。また、IT企業は数多くあるため、業界内での友人・知人が増えやすく、紹介型の採用方法が効果的です。大企業に勤めている人がベンチャー企業に紹介され転職するケースも多く見られます。

飲食業界

飲食業界では、採用活動において多くの課題が発生しています。面接の無断キャンセルや、入社後の早期離職といった、さまざまな事例が報告されています。このため、採用活動の実施を担保するため、リファラル採用を導入する企業が昨今徐々に増えているといいます。正社員だけでなく、アルバイトの募集に対してもリファラル採用を積極的に実施する企業が多く、人材不足の解決などにも寄与しています。

製造(メーカー)業界

製造業界などの技術職は、ジャンルによって異なりますが製造に必要な設備や生産ラインには汎用性があるものが多く存在します。そのため、一定の経験と技術をもつ方は比較的どこのメーカーでも即戦力として働けるケースは珍しくありません。リファラル採用は既存社員のフィルターを通して紹介してもらえるので、戦力アップに繋がる人材の確保が期待でき、メーカーの生産技術向上にも繋がるでしょう。

具体的な導入事例

freee株式会社では、効果的にリファラル採用を運用すべく、「紹介したくなる」ために大切にしていることが3つあります。

1.社外の知人を社内に呼ぶハードルを下げる

会社の許可を得ることなく、自由に友人を社内へ招待できるようにしています。そうすることで、社員の「紹介」に対するハードルを下げ、候補者に対しても職場環境や雰囲気を伝えられます。

2.社内SNSなどを利用して採用の重要性を伝える

常に求める人物像を伝えながら、最新の採用情報をアップデート。代表からもリファラル採用の重要性や想いを発信することで全社員への周知・促進に努めています。

3.協力者に対する称賛の文化をつくる

リファラル採用に対して積極的に取り組んだ社員を協力者として称える「リクルーティングアワード」を開催。称賛されることでモチベーションも高まり、他の社員にも参加意識が芽生えます。

これらの取り組みにより、採用率が向上しただけではなく、社員一人ひとりが自社の魅力を語れるようになり組織全体の採用力アップに繋がっています。

リファラル採用でよくあるトラブルとその対策

退職による情報漏洩のリスクと既存社員のモチベーション低下

リファラル採用においては、さまざまなトラブルが発生することがあります。例えば、リファラル採用で入社した友人や紹介者が後に退職した場合、会社の情報が筒抜けになる可能性があります。このような状況では、一方が退職したことによって、残された社員のモチベーションが低下することも考えられます。

このリスクを軽減するためには、退職者に対して情報漏洩に関する誓約書を再確認し、機密情報の取り扱いについて明確に指導することが重要です。また、社員のエンゲージメントを向上させるために、定期的なフィードバックや評価制度を導入し、社員のモチベーションを維持する施策を講じることが求められます。

不採用による関係悪化

さらに不採用になった場合では、人材の紹介者と候補者、紹介者と企業の関係が悪化する可能性があります。

この問題を解決するためには、不採用の理由を丁寧に説明し、紹介者に対しても感謝の意を示すことで、関係を維持することが大切です。さらに、候補者には今後の改善点を具体的に伝えることで、次回の機会に向けたポジティブな関係を築くことができます。

コミュニティ形成と業務への影響

また、プライベートで付き合いのある人や、大学時代の同期などが数多く入社すると、社員の横のつながりやコミュニティーが築かれにくくなるでしょう。最悪、組織内に馴れ合いが生じ、業務に支障をきたす例も少なくありません。

このような状況を防ぐためには、リファラル採用だけでなく、他の採用手法を併用し、多様なバックグラウンドを持つ人材を採用することが効果的です。また、定期的にチームビルディングイベントや社内交流会を開催し、社員同士のつながりを促進することも重要です。


採用手法のニューノーマルになりつつあるリファラル採用

より優秀な人材を確保するために、待ちの採用ではなく攻めの採用であるダイレクトリクルーティングが注目される昨今。その中で、素性の知らない相手ではなく、自社で働く社員が「紹介したい」と思える人物をピックアップしてくれるリファラル採用は、HR領域のニューノーマルといえるでしょう。

リファラル採用の最大の魅力は、企業の規模や知名度に関係なく、求める人材と繋がるチャンスを得られる点です。これまで、あらゆる採用手法を試しても良い結果が得られずに悩んでいる方は、ぜひこの機会にリファラル採用を導入してみてはいかがでしょうか。


  • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

    HUMAN CAPITALサポネット編集部

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  • 人材採用・育成 更新日:2022/06/07
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