スカウトメールの書き方を文章のプロに聞く!【改善の具体例つき】
より精度の高い採用を目指し、気になる人材に直接アプローチするスカウトメールを活用する企業も多いはず。しかし、いざスカウトメールを送ってみても、思うように返信率が上がらず途方に暮れている人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、文章表現指導のエキスパートであり『伝わる・揺さぶる!文章を書く』(PHP新書)の著者である山田ズーニー先生に、人の心を動かす文章の書き方について伺いました。前半では、自社のメディア力を高める重要性、さりげなく自社をアピールする方法、スカウトメールを作成するときのポイントについて伺いました。後半では、実際に先生のアドバイスに沿って作成したスカウトメールを送信し、通常のスカウトメールとの反響の違いを比較します。
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ポイント1:自社のメディア力を高める
早速なのですが、伝わるスカウトメールをつくるにはどうしたらいいでしょうか?
まずは、自社のメディア力を高めることが大切です。例えば、「宇宙人発見」というニュースがあった場合、これをNHKのニュースが報じるのと、東京スポーツが報じるのでは、ずいぶん印象が違いますよね。伝えている情報は全く同じにも関わらず、どのメディアが伝えるかで信じてもらえるかどうかまで違ってくる。
たしかに。
つまり「何を」言うかより「だれが」言うかで、情報の信頼性が変わってくるんです。超人気企業であれば、少々乱暴なスカウトメールを送っても、多くの人が食いついてくれます。逆に世間から悪い評判の企業がどんなにいいことをスカウトメールに書いても、バイアスがかかっているのでだれも読んでくれない。その場合はスカウトメールの内容を工夫するよりも、まずは世間に対する信頼を回復する必要があります。
知名度が低い会社はメディア力を高めることが課題になりそうですね。
ただ、「人気のない企業が何を言ってもだめ」とか、「人気企業があぐらをかいていい」とか、そういったことを言いたいわけではありません。私が言いたいのは、「自社が相手からどう見られているか知っていますか」ということなんです。
メディア力を高める採用ブランディングについては、こちらもお読みください。
ポイント2:過去、現在、未来の主旋律で相手を理解する
なぜ相手からどう思われているか知ることが大事なのでしょうか?
例えばある企業が求職者から、「あの会社は社会的信頼があって給与は高そうだけど、小難しいことばかり言っていて、硬いイメージが嫌だ」と思われていたとします。それを知らずに、人事担当者が求職者に威厳を示そうと硬い文章でスカウトメールを送ってしまったら逆効果です。
でも、求職者からみた自社のイメージを理解していれば、やわらかい文体で書いたりユーモアを盛り込んだりして、「硬いと思っていたけど意外に面白そうな会社だな」と親しみをもってもらえる。つまり、対策をたてることができます。
どんな企業でも着実にメディア力(=相手から見た自社の信頼性)を高める方法は、適確な「相手理解」を伝えることです。「私のことをちゃんと理解してくれている」と思えるメールをもらったら、だれでも嬉しいし、書き手を信頼しますよね。
どうやって相手の心をつかめばいいのでしょうか?
ポイントは「つながり」です。例えば、「昨日のあなたは今日のあなたじゃない。今日あなたが頑張っていることは未来にはつながらない」と言われたら、不安になりませんか。人って、過去、現在、未来がつながっていないとすごく不安になるんです。
だから、「あなたは学生時代に国際関係を研究しておられましたね。今は広告会社で頑張っているんですね。ところで弊社はライターのプロ集団です」では、相手は一見してつながりがないので不安になってしまいます。
そこで、「あなたは学生時代に国際関係を研究しておられましたね。国と国の関係も情報をどう伝えるかで紛争が起きたり友好が生まれたりする。学生時代に学ばれた情報をどう相手に伝え、どう相互理解に持っていくか、ということが今の広告の仕事に活かされていることと思います。弊社はライターのプロ集団です。将来ますます多様化する社会の中で、多様な人々に届く情報発信を志しています。あなたが大学時代の研究と現在の広告の仕事で培った“異文化に情報を通じさせるスキル”が弊社には必要です。ぜひ一度お話しませんか」
という「つながり」を持ったメッセージを受け取ったら「よし、頑張ろう」と言う気持ちになると思います。「こんな賞をとってコンクールに行ったんですね」という断片的なことを褒めても、それが将来につながっていなかったら相手は不安になってしまう。ですから、過去、現在、未来の主旋律で「相手理解」をしてあげることがすごく重要です。
どうしても相手の「つながり」が見出せない場合はどうしたらいいでしょうか?
例えば、かつてバリバリのスポーツマンだった人が、ある日突然事故で半身不随になって全然違う分野に転身したとします。そうすると、過去、現在、未来の一貫性をつかむことは難しい。その場合は、その人のターニングポイントとその際の大きな変化に着目して相手理解を図るといいと思います。それ以前と以後とで相手がどう変化したか。その変化によって培ったスキルや対応力、ふり幅が、結果的に会社が求めているものかもしれません。
ポイント3:自社と相手と社会的背景を「関係づけ」ながら志を語る
「つながり」を意識しながら、さりげなく「自社のアピール」をするにはどうしたらいいのでしょうか?
ポイントは「関係づけ」です。文章を書くうえで大切なことは知識量よりも、いかに「関係づけ」ながら物事を語れるかどうかです。具体的には、「相手・自社・業界を巡る社会背景」の3つを関係づけながら、「志」を伝えるのです。
なるほど。詳しく教えてください。
1.相手理解まず、先ほど説明した相手理解ですよね。相手が過去、現在までどんな経験をして、何を目指しているのか。自社が求めているその人のかけがえのない長所はなんなのか。これらを自分の中で消化した言葉でまとめます。
2.社会背景の理解次に社会背景の理解。自社を取り巻く業界にどのような波が押し寄せているのか。今業界にこういった形で生き残りをかけた変化が望まれている。顧客からはこのような根源的な要求があります。ということをまとめます。
3.自己理解そして、自己理解。自社はだれに対してどんな貢献をする会社なのか。よその会社にはないどんな長所があるのか。自社はいつ、どんな動機で創業したか。など自社への理解を自分の言葉で適確にまとめます。(さらに、書き手である「私」は、どんな動機で自社に入社し、現在自社のどんな持ち場を担い、どんな働き甲斐を感じているか、と自分自身の理解もまとめておくとベター)
4.志(将来のビジョン)最後は肝心の志を伝えます。まず、相手と自社と業界を巡る社会背景の関係をよく考えて、「つながり」を持たせたせます。そのうえで、「仕事を通じて1ミリでも2ミリでも社会や人をよくしていけるとしたら。あなたが加わることで当社は、社会や人をこんな風によくしていきたいんです」というようにまとめます。そうすれば、自慢になりませんし、さりげなく自社のことをPRすることもできます。
何を目指してスカウトメールを書くか
他にスカウトメールを打つ際のポイントがあれば教えてください。
スカウトメールで目指す結果を決めることです。失敗している企業の多くが、目指す結果を明確にしないままメールを送ってしまっていると思うんです。
と、さまざまちがうゴールがある中で、まずはメールで目指す結果を明確にすることが大切です。
目標の敷居は低くてもいいので、まずはその目的を達成するメールを書くことを心がけること。最初からメールで採用まで決めようとすると、途端に文章表現はおかしくなってしまいます。いきなり採用につなげるメールを書くのではなく、自分の力量に応じて少しずつ目標を引き上げていくといいでしょう。
たしかに。あまり接したことがない人に、いきなり「付き合ってください」と手紙を送るようなものですよね。
これは私自身が学生から教えられたことですが、「文章で何もかもやってしまおう」と思わないことです。ある学生が何年も会っていない友達に「会いたい」と思いました。でも、何年も連絡をとっていない人から急に「会おう」と言われたら、相手は「何かの勧誘かな」と疑ったり、素直に喜べない恐れがありますよね。
だからその学生は、「文章では、懐かしい思い出を伝えるのみ」に切り替えたんですね。昔一緒に遊んだ懐かしい想い出を活き活きと手紙に書いて、「ふいに想い出して、ただ、懐かしくてたまらなくてこの手紙を書いたんだ」とそれだけ伝える。受け取った相手もそれなら素直に読める。1週間もすると相手もふつふつと思い出が蘇ってきて、「懐かしいな、会いたいな」となる。
そのタイミングで、「友達からLINE聞いたんだけど、今度みんなで会わない」と送れば、手紙だけでアポイントまで取り付けるより、よっぽど会える確率が上がりますよね。だから、スカウトメールを送るときも、「このメールでどこまで目指すか」を明確にした方がいいと思うんです。
正直な言葉こそ、相手の心を打つ
先生の本に出てくる「根本思想」もスカウトメールを打つ際にやはり重要ですか?
そうですね。「根本思想」とは筆者の根にある想いです。心根に愛がある人の文章は、厳しいことを書いていても読み手に温もりが伝わります。スカウトメールも、書き手が自社の仕事に情熱を持っていれば、たとえたどたどしい文章でも読み手に熱い想いが響きます。書いている人自身が「こんなの綺麗ごとじゃん」と思って書いていると、どんなに綺麗な言葉を並べても、読む人に「なんか空々しいな」と悟られてしまう。
「根本思想=書き手の根っこにある想い・価値観・動機」はごまかしようなくにじみ出て、読む人に伝わってしまいます。だから、嘘は相手の気持ちを絶対に動かしません。根本思想と一致した正直な言葉こそ、相手の心を打つのです。だから実感の持てる正直な言葉以外は書かないように訓練した方がいいと思います。特に今の若者たちは、たくさんの情報を浴びています。魂胆が透けて見える盛った言葉や、心にもない言葉はすぐに嗅ぎつけるでしょう。
貴重なお話ありがとうございます。伺った内容をもとにスカウトメールを作成してみたいと思います!
実際にスカウトメールを改善してみよう
ここからは山田先生に伺ったポイントに沿って実際にスカウトメールを書いていきたいと思います。今回は某企業の人事担当者にご協力いただき、普段のスカウトメールに今回伺ったポイントを盛り込み改善していきます。改善後は実際にスカウトメールを送信して、反響の違いについて検証してみたいと思います。
【before】XX様
はじめまして!
xxxx株式会社にて採用担当を務めておりますxxと申します。
突然のご連絡失礼します。
プロフィールを拝見し、これまでの客室乗務員、秘書でのご活躍ぶりがとても興味深く、ホスピタリティに溢れたお人柄の方だと感じ、また人事労務でのお仕事から慎重さも兼ね備えた方だと感じております。つきましては、ぜひ一度お会いして色々なお話をさせていただきたくご連絡しました!
弊社は、xxxx年x月に設立x年目を迎えるベンチャー企業です。「xxxxxxxx」という企業理念のもと、「xxxx」×「xxxx」を駆使し、メディア運営やコンテンツ制作をはじめ新しいビジネスモデル、新しいコンテンツフォーマットへのチャレンジに取り組んでいます。
新たな事業や領域へのチャレンジが増えていくことに伴い、バックオフィスの業務も増えている為、人手が足りておりません。そこで、一緒にバックオフィスから事業を支えてくださる、新しいメンバーを探しております!コーポレート部門は、採用担当の私をはじめ、総務と人事労務を担当している女性メンバーと、経理担当の男性メンバーと部長のx名で構成されております。
メッセージだけでは伝わらないこともございますので、 まずは、フランクに情報交換などができれば、何よりです。 なお、弊社に少しでもご興味をお持ち頂けましたらこちらをご覧頂けますと幸いです。
https://xxxxxxxxxx
どうぞ宜しくお願い致します!
結果:返信なし。
改善ポイント1:自社メディア力を高める(「何を」言うかより「だれが」言うか)
ここについては「だれが」言うかを工夫したいと思います。これまで同社では採用担当者からのメッセージとしてスカウトメールを送信していましたが、ここでは同社代表取締役からのメッセージとして送信します。
<改善前>xxxx株式会社にて採用担当を務めておりますxxと申します。
↓
<改善後>xxxx株式会社代表取締役社長のxxと申します。
改善ポイント2:過去、現在、未来の主旋律で相手を理解する
ここについては既存のスカウトでも過去、現在に触れていますので大きな変更はありません。
改善ポイント3:自社と相手と社会的背景を「関係づけ」ながら志を語る
ここにつきましては山田先生からいただいた以下シートにそって文章化して行きます。
設立x年目のスタートアップですが、大手企業を含むxxx社を超えるオウンドメディアの立ち上げ実績を誇っています。現在は新たな領域や事業の立ち上げなどに挑戦する機会が増えていることに伴い、バックオフィスの業務が増加しています。そこでxx様の力をぜひお借りしたいのです。
コンテンツ・メディアの周辺領域において、新しいサービスを生み出し続け、次の時代のコンテンツとメディアビジネスを切り開く。そして、これからの時代に生き続ける、新しいマーケティングの歴史や新たな広告のカタチを創るために、これからも邁進していく所存です。
最後になりますが、メールだけでは伝わらないこともございますので、まずはフランクに情報交換ができればと思います。少しでも弊社にご興味をお持ちいただけましたら、弊社ホームページをご覧いただけますと幸いです。
https://xxxxxxxxxx
何卒よろしくお願いいたします。
改善ポイント4:スカウトメールで目指す結果を明確にする
前回同様に、まずは会ってもらうことを目指しました。
改善ポイント5:自分の根にある想いと一致した正直な言葉を書く
前回も正直に書いているとは思いますが、今回も正直に書きました。
【after】上記5つの改善ポイントを盛り込み全体の文章構成を整えて完成したスカウトがこちら。
はじめまして。突然のメールで失礼いたします。
xxxx株式会社代表取締役社長のxxと申します。
現在、弊社ではバックオフィスのメンバーを募集しています。今回、xx様のレジュメを拝見させていただいたところ、客室乗務員、秘書、人事労務といったキャリアが大変興味深いと感じました。お客様や経営層に対するホスピタリティ、そして、経営に関わるバックオフィス業務で培われた慎重さなどは、弊社のバックオフィス業務でも活かせるスキルであると確信しています。
弊社は「xxxxx」という想いから、「xxxx」「xxxxxxx」をミッションに掲げ、コンテンツとテクノロジーの力であらゆる企業のマーケティングビジネスを支援しています。オウンドメディア支援やWebマーケティングを中心に、課題設定から提案、クリエイティブ制作、広告運用支援まで、一気通貫でサービスを提供しています。設立x年目のスタートアップですが、大手企業を含むxxx社を超えるオウンドメディアの立ち上げ実績を誇っています。
変化の速いインターネットの世界を駆けるためには、自ら考え、仕事を創造し、主体的に行動することが欠かせません。日々スピーディー、かつドラスティックに事業環境が変わる中で、常に新しいメディアやコンテンツの形を模索しなければ、変化のスピードについていくことは難しいでしょう。
そんな中、弊社では現在新たな領域や事業の立ち上げなどに積極的に挑戦しています。それに伴い、バックオフィスも忙しくなっています。xx様が培ってきた経験を活かせる業務も多く、xx様の力をぜひお借りしたいと考えています。
弊社にxx様が加わることで私たちのミッションである「xxxx」「xxxxxxx」がいっそう加速し、多くの顧客ニーズに応えられると考えています。
コンテンツ・メディアの周辺領域において、新しいサービスを生み出し続け、次の時代のコンテンツとメディアビジネスを切り開く。そして、これからの時代に生き続ける、新しいマーケティングの歴史や新たな広告のカタチを創るために、これからも邁進していく所存です。
最後になりますが、メールだけでは伝わらないこともございますので、まずはフランクに情報交換ができればと思います。少しでも弊社にご興味をお持ちいただけましたら、弊社ホームページをご覧いただけますと幸いです。
https://xxxxxxxxxx
何卒よろしくお願いいたします。
結果:返信あり。面接調整中。
実際に返信いただいたメールがこちらです。
xxxxx株式会社
xxxx株式会社代表取締役社長xx様
はじめてご連絡させていただきます。xxxxxと申します。 今回、貴社の求人内容を拝見し、興味を持っていたところ、オファーをいただきました。貴社で私のこれまでの経験が活かせると思い応募させていただきました。
就業中かつ小学生の子供がおり、時間を取るのは少し難しいのですが ぜひ一度、お話を伺える機会をいただきたく思います。よろしくお願いいたします。
伝わるスカウトメールの書き方
いかがでしたでしょうか。これまで文章を書いたことがない方もここでご紹介したポイントを意識してスカウトメールを打てば、返信率が上がるかもしれません。いきなり自社のメディア力を高めることは難しいかもしれませんが、相手を理解し、「関係づけ」を意識する。そして、目指す結果を明確にしたうえで、正直な言葉を綴れば、きっと素敵な出会いにつながるはずです。
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- 人材採用・育成 更新日:2018/10/21
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