増加するミドルエイジ転職者!心を掴んでうまくマッチングするコツ
転職は、「若いほうが有利」というイメージが強い。
今は変わりつつあるとはいえ、日本には年功序列の意識が根強く、社内教育をして長く働いてもらうことを前提としていたから、当然といえば当然かもしれない。
しかし若い人口がどんどん減っているこのご時世、年齢は本当に「優先的な条件」なんだろうか?
34歳以下より、35歳以上の転職者のほうが多い現実
2007年、雇用対策法が改正され、「事業主は労働者の募集及び採用について、年齢に関わりなく均等な機会を与えなければならない」と定められた。*1
つまり、性別や容姿と同じように、「年齢で雇用機会に差をつけるのはよくないことだからやめよう」というわけだ。
では実際、「年齢の壁」はもう存在しないのだろうか?
残念ながら、現実は少しちがうようだ。
転職活動者に「年齢の壁」を感じたかアンケートをとってみると、20~34歳までの転職者は「年齢の壁を感じた」のが2割程度なのに対し、35歳~39歳では3割を超え、40~44歳では4割、45~49歳になると5割にまで増えている。*2
少なくとも、転職活動者の年齢が高くなればなるほど、年齢の壁を感じているようだ。
とはいえこれはあくまで本人が年齢の壁を「感じた」だけで、「年齢を理由に採用の合否が決まった」かは採用担当者のみぞ知るわけだが……。
さて、ではこのアンケートのとおり、35歳以上の転職者は圧倒的に不利で、転職先を見つけるのが困難なのだろうか?
いや、そんなことはない。
2023年の総務省による統計を見ると、25~34歳の転職者は74万人。それに対し35~44歳は55万人、45~54歳は52万人。そう、人数でいうなら、35歳以上の転職者のほうが多いのだ。*3
年齢の壁の話をしたあとにこの統計を見ると驚くかもしれないが、よく考えてみれば当たり前かもしれない。日本は、どんどん若者が減っているのだから。
そんな状況で「若い人」に限定して採用していたら、いつまで経っても人材確保ができない。
「転職は若者がすること」というのはただのイメージで、実際ミドルエイジ以上の転職者はとても多いし、その転職者たちを受け入れている企業はたくさんあるのだ。
そう考えると、今後は人材確保のために、さまざまな年齢の転職希望者に対応していく必要がある、ともいえる。
働きやすさを求める20代、会社の将来が不安な30代
では「さまざまな年齢の転職希望者に対応する」とは、具体的にどういうことなのだろう。
それは、各年齢の傾向を知って、需要を汲み取っていくことだと思う。
転職先になにを求めるかは人によってちがうが、それでも年齢層によってある程度の傾向は存在する。転職希望者が面接対応するように、企業側も、さまざまな年齢の転職希望者に対応することが求められるのだ。
というわけで、年齢別の転職理由や新しい職場に求めるものを見ていこう。*4
20代は、休日や残業時間といった待遇への不満が高く、ワーク・ライフ・バランスを重視していることがわかる。だから20代の転職者に対しては、「働きやすさ」アピールが有効だ。
しかし30代になると給料への不満がぐっと高まり、同時に会社の将来性に対する不安もかなり高くなる。20代とは明らかに傾向がちがう。
わたし自身現在32歳で、30代になって自分の人生を考えなおし、転職を考える友人たちをたくさん見てきた。
ある程度社会経験を積んで自分の将来を考えた結果、「この給料では不安」と心配したり、「この会社に勤め続けてもいいんだろうか」と自問自答したりするのだ。
そして「転職するなら若いうちに」と、転職サイトを眺め始める。
こういう背景を考えると、20代の転職者相手と同じように「弊社は残業が少ないです」とアピールしても、30代の転職者には同じようには響かないだろう。
昇給の見込みや企業の明確なビジョンなどを提示したほうが、「それならやっていける」という気持ちになってもらえるはずだ。
スキルを活かしたい40代と、マイペースに働きたい50代
では、40代はどうか。
40代になると仕事内容への不満が大きくなり、スキルを活かす仕事の需要が高くなる。
責任あるポジションにつくことが増える年齢になり、これまで培ってきたスキルを活かしてもっと活躍したい、となるのだろう。
それならば採用側は、転職希望者の今までの経験と現在のスキルを丁寧にヒアリングし、実際に働くならどういった仕事を任せる予定かをしっかり伝えれば、がっちり心をつかめるかもしれない。
さて、では50代も似たような感じなのだろうか?
いや、そうではない。
仕事内容への不満も依然として高いが、50代になると人間関係の不満がトップになる。それと同時に、自分のペースに合った仕事がしたい、という希望も高まる。
40代は働き盛りで「活躍したい」欲が強い一方、50代になると、人間関係に煩わされずに自分のペースで働きたい、という考えに落ち着いていくようだ。
そういえば少し前に還暦を迎えた父も、50代になってから「老後のことを考えて働き方を調整しはじめている」なんて言っていた。
それならば50代の転職希望者には、将来の職場を見学してもらったり、フレックス制を推したりするといいんじゃないだろうか。
もちろん、年齢だけで「この人はこう」と決めつけることはできない。
しかし「年齢のせいで採用機会が不平等になってはいけない」一方で、「年齢によって転職先に求めるものの傾向が異なる」のもまた、事実なのだ。
「絶対条件」を持つ転職希望者は交渉の余地アリ
そしてもうひとつ、留意しておきたいことがある。
それは、ミドルエイジ以上になると、「やむを得ない事情での転職者」も増えてくるということだ。
たとえば体力の衰えを感じたり人間ドックでの数値が悪かったりして体調を優先したい人や子どもの受験のために大都市に転居する人、親の介護のために久しぶりに地元に帰る人……。
そういう事情がある人たちの多くは、「譲れない条件」を抱えている。
「通院を踏まえて時間に融通が利く職場がいい」「塾の送り迎えがあるから残業なしか、早出早帰りが可能なところで働きたい」「ヘルパーさんが来ない日は在宅勤務にしないと」などなど。
いくらほかの条件が良くとも、譲れない絶対条件が満たされない限り、その人たちはその会社を選ばない。選べない。
一方で、その条件が満たされるのならば、ほかの条件が多少合わなくとも働いてくれる可能性は高い。つまり、交渉の余地アリだ。
「さまざまな年齢の人に門戸を開く」というのは、こういった「やむを得ない事情での転職者」を含め、転職者たちの多種多様な需要に対応する、ということでもある。
幅広い年齢の転職者への対応力が求められる
もちろんこれは理想論であり、すべての需要に対して完璧な供給をできる企業なんて存在しない。
とはいえ若者の人口が減っていくことが確定している日本で、「若い人」を前提に中途採用をするのでは、どうしても限界が見えてしまう。もうすでに、35歳以上の転職者のほうが多い状況なのだから。
そうなると幅広い年齢層に向けた中途採用活動が必要になるが、年齢がちがえば職場に期待することもちがってくるため、企業はより柔軟な対応が求められる。
対応……といっても実際に実行するのはかんたんなことではないが、労働人口のボリューム層が高齢化する現状に適応していくことは、人材確保のためにはもはや「必須」になってくるのだ。
- 人材採用・育成 更新日:2024/12/03
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