人材不足の対策8選|人材不足が与える影響や企業の取り組み事例を紹介
企業が安定して事業を継続していくには、人材の十分な確保が欠かせません。しかし、現代は人材不足がますます深刻化しており、さまざまな企業が人材不足解消に向けた対策に取り組んでいます。
本記事では、人材不足の主な原因や企業への影響、人材不足の対策8選、企業の取り組み事例について紹介します。
人材不足の主な原因
昨今における、企業の人材不足の主な原因としては、下記の理由があげられます。
- 少子高齢化の進行
- 働き方の多様化
- 労働者の価値観の変化
- 非正規雇用者の増加
- 中途採用市場の流動化(他社への人材の流出)
なかでも、少子高齢化は今後ますます加速する見通しであり、人材確保のさらなる難化が予想されます。
特に人材不足が顕著な業界では、採用の悪循環から抜け出すことが重要であり、そのためには、質・量ともに十分な母集団を確保できる採用手法の選択が重要となります。
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人材不足による企業への影響
人材不足によって引き起こされる、企業への影響を解説します。
労働環境の悪化
人材不足に陥ると、必然的に既存社員の業務負担が増加します。その結果、本来力を入れるべき業務に十分な時間が割けなくなったり、長時間労働による疲労やストレスが蓄積したりと、職場環境の悪化を招きます。こうした状態が続けば、社員のモチベーションや仕事への意欲も下がり、生産性も大きく減少してしまう恐れがあります。
人材の流出
社員の業務負担が大きい状態が続けば、社員は離職や転職を選択肢のひとつとして検討するでしょう。人材の流出が続けば、それだけ既存社員に対する負担も増えてしまい、さらなる退職を招くなど、「負の連鎖」に陥る可能性があります。
事業規模の縮小・倒産
人材が不足し、社内で業務を回せなくなると、やむを得ず事業規模の縮小を余儀なくされるケースも出てきます。さらに深刻な場合には、事業の継続そのものが難しくなり、倒産リスクが現実のものとなることも考えられます。
このように、人材不足は企業経営にとって極めて深刻な課題であり、早急に解決すべき問題といえるでしょう。
企業の人材不足対策8選
人材不足の解決に向けて、企業が取り組める対策8選を紹介します。
1.職場環境の改善
離職率が高い企業では、まず職場環境の見直しが有効です。職場環境を改善することは、人材定着の効果につながります。たとえば、「気軽に相談できる雰囲気がある」「社内コミュニケーションが活発」といった環境が整えば、社員は安心して働けるようになります。
具体的には、相談しやすい雰囲気づくりや1on1面談の導入など、小規模でも取り組みやすい施策から始めるとよいでしょう。
なお、改善点を把握するには、社員アンケートやエンゲージメント調査の活用が効果的です。職場環境を改善し、社員のエンゲージメントを高めるための具体的な施策は、以下からご覧ください。
2.福利厚生の充実
「求人を出しても応募がない」「他社に人材が流出している」というケースでは、福利厚生を見直すのもひとつの案です。たとえば、子育て・介護・病気や怪我の治療などに対応した特別休暇制度の導入は、社員の働きやすさに直結し、定着率の向上につながります。
株式会社マイナビが2025年卒業予定の全国の大学生・大学院生を対象に実施した「マイナビ 2025年卒 大学生活動実態調査(4月)」によると、大手企業の選考に参加する決め手として「福利厚生が手厚い」と回答した学生は51.5%で最多でした。また、具体的に求める福利厚生としては「休暇制度」(58.2%)が最も多く、次いで「諸手当」「フレックスタイム制」が挙げられています。さらに「定年まで働きたい」と考える学生も20.1%存在しており、長期的に働くことを見据えて働きやすさを重視している傾向がうかがえます。
上記は大学生・大学院生を対象とした調査ではありますが、中途採用においても福利厚生を検討する際の参考にできるでしょう。
3.社員教育制度の充実
特定のポジションを担える人材が不足し、人材育成が急務の場合には、社員教育制度を見直す必要があります。たとえば、OJTとOFF-JTを組み合わせた育成プログラムを構築することで、社員のスキルアップを促進できるでしょう。
あわせて、社内でのキャリアパスを明示することで、目標やゴールが明確になり、成長するためのモチベーション向上にもつながるといえます。
また、時代の変化やニーズに合わせて、社員が新たな能力・スキルを習得する「リスキリング」も有効です。新たなスキルの習得は、企業の人材不足解消につながるほか、社内のジョブローテーションにも活用できます。導入にあたっては、ITツール研修やeラーニングなど、取り組みやすいものから始めるのがおすすめです。
関連記事:OJTとは?Off-JTとの違いや目的、進め方についてわかりやすく解説
4.働き方の改善
昨今の社員の多様な働き方へのニーズが高まるなか、柔軟な勤務形態の導入は、長く働き続けてもらうために重要です。リモートワーク、フレックス勤務、半日勤務といった制度は、働きやすさの向上につながります。
こうした制度を導入する場合は、試験運用からスタートして、段階的に全社へ展開することで、現場の混乱や不安を防ぎやすくなります。
5.多様な人材の採用
少子高齢化による若年層の減少が進むなか、年齢・性別・国籍を問わず多様な人材を受け入れる「ダイバーシティ採用」の推進が求められます。たとえば、定年退職者や高齢者の再雇用、外国人労働者の積極的な採用に加えて、子育て世代や介護中の人、LGBTQ+の方など、幅広い層が活躍できる環境整備が、持続可能な組織づくりにつながります。
一例として、定年退職者の再雇用であれば、その仕事に関する経験や技術を有していることに加えて、若手から中堅層の社員への指導役も期待でき、人材育成の面でも効果があります。
ダイバーシティの考え方を採用やマネジメントに取り入れるメリットや事例はこちらから。
6.IT化の推進
人材不足により社員の負担が大きくなっている場合は、ITツールの導入による業務の効率化が有効です。業務の自動化やフロー改善により、限られた人員でコア業務に集中できる体制が整います。これにより、生産性向上や労働時間の削減が実現でき、結果として人材定着にも効果が得られるといえます。まずは、RPAやワークフロー改善などのような単純作業から自動化すると、スムーズな導入が期待できます。
7.アウトソーシングの利用
一時的な人材不足の場合には、業務委託、フリーランスなどを活用してアウトソーシングすることもひとつの方法です。特定のスキルや能力を持った外部人材を適切に活用することで、社内人材はコア業務に集中でき、生産性の向上が図れます。
繁忙期や専門業務に限って導入することで、コストを抑えつつ、業務のボトルネックを解消できることも魅力です。
8.ミスマッチの防止
新たな人材を採用できても、社内の環境や業務内容に合わなかったり、入社後のギャップを感じてしまったりすると、早期離職につながる恐れがあります。早期離職を避けるには、採用選考の段階で、求職者のミスマッチを防ぐことが求められます。
ミスマッチの防止策としては、採用時のペルソナ設計とともに、社風・仕事内容を明確に伝える資料や動画の活用が効果的といえます。また「ターゲット層に合わせた訴求」を行うことで、エントリー時点における、人材の質の向上を図るとよいでしょう。
企業の人材不足対策の事例
企業が人材不足の対策に取り組んだ事例を紹介します。
有限会社 WILLPLANT
有限会社 WILLPLANTは、北海道札幌市にある映像制作会社です。映像制作の特性上、勤務時間が不規則になりやすく、計画的な休暇取得が難しいという課題を抱えていました。
この問題に対応するため、同社では社員ごとに柔軟な勤務時間を設定可能な制度を導入しています。基本は11時〜19時の7時間勤務としつつ、朝型勤務を希望する社員や個別のスケジュールに応じて、始業・終業時間を前後に調整できる仕組みを整備しました。
さらに、「その日の業務が終われば定時前でも退勤を推奨する」「偶数月に特別休暇を1日付与する」「副業を解禁する」「ITツールを導入する」など、勤務時間だけでなく休日制度や働き方全体を見直し、社員の働きやすい職場環境の構築に取り組みました。
こうした取り組みの結果、人材の定着率が向上し、副業を通じたスキルアップも促進され、社員の成長を後押しする効果も見られました。
出典:中小企業庁|中小企業・小規模事業者の人手不足への対応事例
社会福祉法人あいの土山福祉会
滋賀県甲賀市で特別養護老人ホームなどを運営する社会福祉法人あいの土山福祉会では、2000年代に退職者が相次ぐ事態が発生しました。原因を分析した結果、「腰痛(介護職員)」「長時間労働」「メンタル不調」の3つが主な要因であることが判明しました。
この課題に対し、まず身体的負担を軽減するため、リフトなどの機械を施設内に導入しています。加えて、業務のマニュアル化により作業効率を高め、スタッフの業務負荷を軽減しました。メンタル不調については、毎月1回、管理者とスタッフが10分間の面談を行うことで、悩みや困りごとを気軽に相談できる体制を整えています。
これらの対策により、離職率は3〜5%となり、スタッフの約2割が60歳以上という多様な人材が活躍する職場環境が実現しました。
出典:厚生労働省|地域で活躍する中小企業の採用と定着 成功事例集
人材不足解消に向けて早期の対策を
人材不足は、社員への過度な負担や人材流出を招くだけでなく、企業の存続にも関わる深刻な問題です。早期の解決が求められ、今回紹介したように、働きやすい職場環境の整備や福利厚生の充実、多様な人材の活用といった対策が有効です。
企業ごとに抱える課題や業種は異なりますが、柔軟な制度設計やスタッフとの対話を通じて、少しずつでも改善に向けた一歩を踏み出すことが重要です。
- 人材採用・育成 更新日:2025/06/30
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