採用担当者目線でみる採用DXの3STEP
昨今、目にする機会が増えた「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の2文字。その定義を要約すると「デジタル化によって社内の変革を牽引し、自社の競合優位性を高めること」だそうです。
そのために、社会の激しい変化に対応する力を養うことや、新しい価値を生み出せる企業に変革していくことがプロセスとして挙げられています。
前述の通り、DXの目的はデジタル化を実行することそのものにあるのではなく、組織に変革をもたらした結果、競合優位性を高めることにあります。
採用DXを実行するうえで、どのようなプロセスを経て進めることがDX成功に向けて適切なのか。経済産業省が2018年に発表している「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」を参考にしながら、採用DXに置き換えて考えていきたいと思います。
採用DXを実行するための3STEP
プロセスを大きく分けると3つの段階に分かれます。
初めに行うことは、採用DXの企画設計。その次に、立案したシステム化を実現するための体制や仕組みを整えます。そして最後にシステム化を実行する段階です。
この章では、3つの段階についてそれぞれ概要をお伝えし、DX化の全体像を掴んでいただこうと思います。
1stSTEP 企画構想、全体設計
まずはDX構想を企画することから始まります。DXに限った話ではありませんが、抜本的な改革を伴う企画を立ち上げる際、重要なのはガバナンスです。
誰がその改革にコミットしているのかによって、その企画の重要性や優先度が変化していきます。
勿論企画の中身も重要ではありますが、方向性を明確にし、なんのためにやるのか、社内のリソースをどの程度使うのかなど、ガバナンス部分の設計を丁寧に行い、会社としてコミットする状態を創り出すことが必要不可欠です。
次章では、この最も重要な1stSTEPについて詳細に説明していきたいと思います。
2ndSTEP システム構築のための体制、仕組みづくり
既存システムとの連携部分を検討するうえで、ガバナンスも重要になります。システム構築を専門の会社に丸投げするのではなく、自社の社員で要件定義などを行っていくなど、誰がオーナーシップを取って進めるかを決定していきます。
3rdSTEP システム導入の実行
既存IT資産の分析と評価が現状出来ているか確認し、不要なITシステムかどうか仕分けをして全体最適が図れるようプランニングを行います。刷新後は、当初DX化によって期待した“社内外の変化に迅速に追従できるシステム”になっているかどうかを評価することが必要です。
全体の流れとしては、上記の3つの検証を加えて進めていきます。企画構想、体制構築、実行、検証の流れで行うことは、その他の企画でも共通している流れなので、改めてどんなプロジェクトでも必要な手順なのだなと実感しました。
会社によっては、企画構想と体制構築を並行して行うことや、順番が前後する場合もあるかもしれませんが、行わなければいけない点として3つのSTEPを抑えておけば、皆さんの職場においても採用DXが進めていけると思います。
「採用DXの企画構想段階」1stSTEPを分解する
前述した1stSTEP企画構想部分の手順について、より詳細に紹介していきたいと思います。1stSTEPで何を作るかが決まれば、その後の2ndSTEP、3rdSTEPは方向性が定まっているので比較的工程が進めやすくなります。
どんな企画も立ち上げの初動が難しいと思いますので、この初めのSTEPを重点的にご説明していきたいと思います。
①はじめに、ビジョンを明確化する
組織として目指す方向性を明確化します。採用のあり方、自社の採用におけるビジョンを言語化し、どのような分野において、どんな競合優位性を確立するのかを検討していきます。
競合分析や自社分析が必要で、非常に難易度の高い問いになるため、ボードメンバーが主体性を持ち議論を行うことが重要になります。
②トップのコミットメント
採用のトップだけではなく、経営トップのコミットメントを得ることが求められます。
採用DXを推進するうえで、採用チームだけではなく、他部署を巻き込んだ動きが必要となるため、横断的な取り組みを行ううえで、経営トップのコミットメントを得られることは後々非常に重要な要素となります。
③採用DX推進のための組織づくり
自分のチームが、挑戦を積極的に行えるマインドセットになっているかどうかを確認します。
挑戦すること、変革することに抵抗感を示す勢力が強い場合、いくら実行しようとしてもDXが進まない可能性があります。日々、仮説検証のプロセスが確立出来ていて、挑戦に対するマインドが確立されていることが必要です。次に、採用にまつわるデータやデジタル技術活用を推進・サポートしてくれるDXチームの設置が必要になります。
そのチームを設置するために、人材が不足している場合は育成・確保に向けて動き出すことも視野にいれましょう。
④採用DXにおける投資効果の確認
採用は販管部門になるため、いかにコストカットして、いかに自社に利益をもたらす人材を採用するかが重要なミッションになると思います。
コスト面、ビジネスにおけるインパクトも含めて投資判断を行います。ただ、リターンを求めすぎて挑戦を阻害していないかなど、意思決定のあり方を明確にすることも忘れずに考えていきましょう。
⑤採用DXによって、実現できることを構想する
将来的に、経営方針転換で組織自体の方向性を変化させたくなったときや、グローバル展開のように仕組みを横展開させたいタイミングが発生することもあるかと思います。
そのような場合に、スピーディな対応を可能とするかも視野にいれて企画設計していきましょう。社内外の激しい変化に対応出来得るデジタル化かどうかは、DXの前提条件になります。
採用DXの成功事例
企画構想段階の紹介をしましたが、とはいえ「採用DXがどんなものなのかのイメージが湧かない」「アイデアが思い浮かばない!」など、その価値を感じにくく、初めの一歩が踏み出せない採用担当者も多いのではないでしょうか。
具体的にイメージしやすくするために、いくつか採用DXの成功事例を紹介したいと思います。
採用マッチング率を上げる動画面接の導入
一次面接を全て動画面接に切り替えるDXを行う企業も出てきています。企業側があらかじめ用意した設問2-3個に対し、回答を録画撮影してもらい、動画を送っていただくという形式になります。
そうすることで現職中の応募者も時間の制約なく動画撮影をすることができ、今まで取りこぼしていた応募者層の選考参加率が上がるケースも出ています。
最近では、TikTokやYouTubeへの投稿をする世代が幅広くなってきているので、動画を撮って自己表現するということに抵抗の少ない方が増えてきているのかもしれません。
双方向からではなく、あえて一方向からのコミュニケーションだからこそ、より応募者の普段のコンディションに近い状態が確認することができ、採用マッチング率も向上した実績が出た企業もあるようです。
また、書類選考でお見送りとしていた層に対して動画を送信してもらい、自社にマッチする人材をピックアップして二次選考へ誘導できるようになった事例もあります。
せっかく自社に興味を持ってくださっていても、全ての方と対面でお会いすることは工数上不可能なので、会わずしてお見送りとなるケースも多いと思います。
そういった層に対し、自己PR動画で選考に進んでいただける方を確認するという方法も、採用マッチング度を上げる1つの方法として活用されています。
面接呼込や面接フローのデジタル化による工数削減
採用部門は利益を生み出すことが直接的に出来ないので、工数をいかに削減して自分たちの人件費を削減していくかは非常に重要な視点になります。
競合他社の採用工数より、80%でも60%でも少ない工数で採用活動ができていけば、自社にとってそれは競合優位性の一つになります。
先ほどお伝えした動画面接の導入を一部分だけでなくフローの一部として代替してしまうことや、書類選考フローにRPAを導入し、基準に副って面接確約出来る人材へと絞り込むことで、大幅な工数削減を行うことが可能です。
勿論、導入リスクとして「最終的な入社者数や入社者の質の面は担保出来るのか」ということが浮上しますので、そうしたリスク面の細かいシミュレーションは並行して行っていきましょう。
選考フローにデジタル化を導入し、自社ブランディングを強化
ファンづくりを行う採用活動というコンセプトを掲げて、自社独自性を出す採用活動を行う企業もあります。
動画選考の設問の提示方法を社員の寸劇動画にするなど、デジタルを用いた選考フロー・選考手法にしてしまうことが企業の個性表現の場にもなり、自社ブランディングを強化することにつなげようとする企業も現れてきています。
自社らしさ・独自性を採用のプロセスで表現することで、自社ブランディングが強化され、結果魅力づけを強めて承諾率を高めたり、マッチング度を上げたりすることが可能な良い事例だと思います。
まとめ
変化の激しい時代、かつ少子化も見据えると、競合優位性が高められるような採用活動を企画立案することが、私たち採用チームに求められていきます。
会社の大きなビジョンや理念から、採用チームの目指す採用活動を企画設計し、そこからどのような競合優位性を図っていくかをチーム内でディスカッション頂くなどして検討いただければと思います。
- 人材採用・育成 更新日:2022/07/28
-
いま注目のテーマ
-
-
タグ
-