OKRを活用してダイレクトリクルーティングを成功に導く方法
こんにちは、若林です。今後の採用活動においてダイレクトリクルーティングの重要性が高まっていくのを、人事のみなさまもひしひしと実感されておられることと思います。多くの企業で、ダイレクトリクルーティングに対しての取り組みがスタートされていると思うのですが、多くの企業様がこの手法の難しさを感じておられるのではないでしょうか。
限られた人員体制で行う採用活動において、求人票を立ち上げ、スカウトメールを送りたい求職者を膨大なデータベース内のレジュメ1枚1枚を確認しながら探しあて、その人に刺さるようなスカウト文を作成し、求人を送るという工程を、週100件、月400件と、コンスタントに行うことに、そもそもの難しさがあります。
魅力的なスカウト文づくり・求める人材のペルソナを設定する、という仕事以上に“目標で定めたスカウトメール送信数を達成できない問題”が実は多くの採用現場で発生しているのではないでしょうか。母集団形成・書類選考・面接呼び込み・面接・合否連絡と、ただでさえ忙しい人事が、スカウトメールの最適な文面を考えて送るというだけでも気後れしてしまう現状が、弊社内だけでなく実は多くの企業で発生しているのではないかと感じました。
この、“人事あるある”を解決するにはどうしたらよいでしょうか。今回は、どうすれば採用担当者の人事あるあるに対してモチベーションを維持しながら高い成果をあげることができるかを、OKRの手法を用いて解決の糸口を作れないか、考えていきたいと思います。
そもそも、なぜダイレクトリクルーティングに取り組まなくてはいけないのでしょうか。やらないでいいなら、工数のかかる採用活動は優先順位を下げて最後の手段として取り組みたい、、、というのが人事担当者の本音だと思います。
現在の採用手法として、みなさんが主力で活用されているのは、ハローワークや大手求人サイトなど無料有料含め求人媒体への出稿・合同就職説明会などのイベント参画・有料職業紹介企業の活用・社員紹介などリファラル採用・応募者へ直接スカウトを行うダイレクトリクルーティングなどが挙げられると思います。最近注目を浴びるようになってきたのはリファラル採用とダイレクトリクルーティングですが、なぜ注目を浴びるようになったのでしょうか。
それは転職者の思考の変化にあります。これまでは「名誉」「仕事内容」「待遇」などを軸として転職することが一般的だったのに対し、「共感」を軸に転職を行う人材の増加が背景にあります。給与などの条件面を広告上に出さずに社員紹介や事業紹介をメインとした求人SNSが生まれたことや、オウンドメディアを基に企業の意思(ビジョン・バリュー・リアルな社員・事業活動)などを発信して採用活動に繋げる企業が採用強者と呼ばれるようになったことは、そういった応募者の思考の変化が背景の1つです。企業が自社の良い点だけでなくこれから改善する点などをさらけ出すことで、求職者が企業の目指す未来に共感して入社するという転職活動が増えてきました。
そんな共感を大事にする就職活動において、不特定多数に網を張る採用手法から、より「個」に重きを置いた採用手法が重要になると考えられています。そこで有効な採用手法として注目されているのが、リファラルやダイレクトリクルーティングになります。ただ、それに取り組む際のデメリットとしては、「個」の対応に力を入れた採用活動になるので、個の採用活動が軌道に乗るまでは今までの採用活動と並行して行うことが多く、人事担当者側の採用工数も増加することになります。その並行時期の工数捻出に耐えられない場合は、人事担当者も今までの手法を優先して行う傾向がみられ、どうしてもダイレクトリクルーティングの行動目標達成に至らないケースが発生してしまいます。
OKRとは、「Objective(目的)」と「Key Result(主要成果)」の頭文字をとった略語になります。こうありたいという目的となる姿を具体化し、どのようにその目的に近づいているかを主要成果の指標を基に計っていきます。目的とそれに対しての確認であれば、「いつもやってることと何が違うの?」と皆さんも思われるかもしれません。
OKRの最も大きな特徴のひとつが、目的を野心的に設定するということです。達成できる確率は100%ではないが、もしこれが達成できれば、会社として大きな成果となるというものを目標値として設定します。この設定方法をとることで、新しい手法・アイデアを検討する議論が生まれやすくなります。「Objective(目的)」の作り方を、チームメンバーが「達成したい」と心から願えるワクワクできる野心的なものに出来れば出来るほど、日々の行動目標についても意味のある仕事(行動)としてメンバーに受け止められるようになります。
OKRのObjectiveを設定する前段階として、チームのミッションをチームメンバー自身で設定するという重要な工程があります。リーダーが独自に決定して共有するという手法もありますが、リーダーが掲げたミッションに集まってきたチームでない限り、このやり方はおすすめできません。メンバーが思っているミッションや仕事を通じて達成したいことは、少しずつ違うことが多いため、みんなで時間を作ってすり合わせを行っていく必要があります。
ミッションを考える取っ掛かりのひとつとして、チームの存在意義を考えることから始めて頂ければと思います。我々チームが存在していることでどのようなメリットを周りに提供できるのか、我々チームが消滅する(機能しない)ことで、どのようなデメリットが周りに及ぶのか、などについて考えれば、チームの存在意義が明らかになってくるでしょう。その過程でステークホルダーの確認を行い、ステークホルダーからチームが求められていることをブレインストーミングし、我々がステークホルダーに提供することを挙げていきます。最後に、ここまで検討してきたキーワードを繋げてミッションとなる文章を創り上げていきます。
「我々チームが、誰に対して、どんなことを提供し、チーム外に対してどんな価値を生み出すことができるのか」という内容を、ステークホルダーごとに設定したものがミッションになります。
次に、前段で設定したミッションを達成するためのマイルストーンを検討していきます。例えば、最終的にミッションを達成する日を1年後と置いた場合なら、3か月ごとを目安にマイルストーンを設定してみてください。
オブジェクティブは、数値目標だけだと無機質なものになってしまうので、定性的な表現が適しています。数値的な設定はKey Resultで行いますので、オブジェクティブは「業界No1の採用チームとなる!」などの野心的でやる気を鼓舞するような内容にするようにしていきましょう。
OKRの大きな特徴として、オブジェクティブは計画時点でその達成率が60-70%になるように設定します。達成することが前提であるということは、野心的になっているとは言えません。逆に、野心的だと判断して設定したオブジェクティブを3か月ごとに達成しているという状況にも問題があります。リーダーがチームの能力を低く評価しすぎている(見誤っている)ことの表れになりますので、オブジェクティブの設定を見直す必要があります。達成が難しいと思える目標(ムーンショット)を設定すること自体は出来ますが、チームメンバーを鼓舞できる表現に仕上げられるかは、リーダーの腕の見せ所です! メンバーが「おお!それが出来たら面白い!!」とワクワクできるオブジェクティブの設定にぜひ取り組んでみてください。
オブジェクティブを設定し、それに向けた指標設定を行い、運用設計をして行動目標へと落とし込んでいきます。その「行動目標」のなかには、ダイレクトリクルーティングのスカウトメール送信数も含まれるでしょう。今までは、「採用〇人するために、〇人の面接を行って、〇人の面接設定を行い、〇人の母集団を集めるために、〇人にスカウトメールを送る!」といったような、採用人数から逆算した際に必要なスカウト通数を設定してメンバーに「毎日・毎週、この通数を打つようにしていきましょう」と共有していたと思います。
ですが、それだけではなかなかメンバーのモチベーションがあがらず、目標設定を一方的にされたメンバーの立場からすると、効果がそこまで出ないもの(業界にもよりますがスカウト返信率は2%ほど)・工数がかかり面倒だと感じている業務に対して、やらなければいけない数を上司から言われてやっている(ないしは、無視してやらない)ということになってしまいます。上司の発信するものに徹底的に協力して業務を遂行してくれる社員ももちろんいると思いますが、そうではないメンバーもおられると思います。
もしやらなければいけないことに対してメンバーがなかなか実働出来ないと困った状況になった際は、一度時間をかけて何のためにやっているのかをみんなで創り出してみる、つまりOKRの設定を行ってみて頂きたいと思います。
OKRを用いることで、スカウトメールを送る必要性や、スカウトメールによってどんな人が採用出来て、その人がどう会社に貢献してくれるのか、それを通じて自社がどう変化していくのかなども含めてオブジェクティブ・ミッションを作りこむことが出来るので、その行動目標の価値が理解でき、重要性(優先順位)を明確にチームで共有することが出来ている状態になります。
OKRを設定する場合は、行動目標にまで落とし込むことに時間を要す可能性が高いです。メンバーとのすり合わせや議論も重ねてミッションやオブジェクティブを設定していきますので、その工程にかかる工数は大きいです。しかし、チームのビジョンや目指す姿・あり方を設定することで、日々の採用業務の意味や価値がメンバー間で強く認識され、メンバーの業務に対する取り組む姿勢が変わっていきます。ミッションを共有することで、何をすれば自分が評価を受けるか、全員の共通認識になるということもOKRの大きなメリットのひとつです。
どんな行動が評価に値することなのかがわかることで、目標達成に向けた仕事の優先順位が明確となり、不要な業務が削減されることによって、結果的に最短最速で目標を達成することができれば、OKRがしっかりと機能したといえます。
ただ、理論上そうはいっても、結局何を目指していてなんのためにやるかを考えるプロセスを加えるだけなので、実際に行動量として担保していくことには変わりありません。ですが、行動の源泉となるのはモチベーションであり、モチベーションを上げる・維持するためのサポートを行うことが、リーダーのみなさまに求められていることだと思います。
ぜひ、みなさんも採用チームの運営において、ビジョンとオブジェクティブを設定していただき、日々の大変な業務に向けてのメンバーの士気を高める取り組みを行って頂ければと思います。
- 人材採用・育成 更新日:2020/07/23
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