富士通のキャリア採用 ~ダイレクトリクルーティング強化への取り組みについて~
富士通は、目指す姿として「IT企業からDX企業へ」という姿を掲げています。DXとは、デジタルデータを活用して、世界に色々な変革をもたらしていくことを指します。
そして、2020年の5月に社長の時田より発表されたのが「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」という富士通のパーパスです。
そして、「社内外の多彩な人材が俊敏に集い、社会のいたるところでイノベーションを創出する企業へ」。これが富士通のありたい姿です。
最近、富士通が発表した「ワークライフシフト」のコンセプトは、「リアルとバーチャルの双方で常に繋がっている多様な人材が、イノベーションを創出し続ける状態を作る」ということ。ニューノーマルな世界で、働くということだけではなく仕事・生活をトータルにシフトし、ウェルビーイングを実現していくことを目指しています。
この目標を達成するために、「固定的な場所や時間にとらわれないような仕組み」や「社員の高い自律性と信頼をベースにした制度」などの実現に向けて取り組んでおります。
スマートワーキングとは、時間や場所をフレキシブルに活用する働き方。
「時間」に関してはコアタイムを廃止し、原則フレックス勤務にすることで、社員が働きたい時間帯を選んで柔軟に働くことができるようにしています。「場所に関しては」オフィスにとらわれず自宅やほかの場所をうまく組み合わせて働いていく。また、単身赴任を解除し、テレワーク・出張で対応可能な場合は、随時自宅勤務に切り替えています。
また、通勤定期券を廃止し、移動は実費精算にしています。
さらに、環境整備・費用補助ということで、毎月5千円が「スマートワーキング手当」として支払われています。そのほかにも、全社員が社給のスマホ等を活用する働き方を目指しています。
そして「Culture Change」。「社員の高い自立性×ピープルマネジメント」を実現し、「セルフサービス化・就業状況の可視化」、「1on1ミーティング・コミュニケーションの支援」、「健康パルスチェック・ストレス診断」などを実施していこうとしています。
いわゆる「ジョブ型」が非常に注目されていますが、富士通もCulture Changeにあたって、このジョブ型人事制度を導入しました。
「果たすべき職責」を明確にしていく、そして評価していく。そういったジョブ型の人事制度の導入にあわせて、「上司・部下の1on1ミーティング」による課題の共有などをしっかりとやっていくこと。また、キャリアの選択肢としての「ポスティング制度」。これを富士通では国内のグループ会社全体でやっていこうとしています。
そして、成長を支える学びのプラットフォーム「富士通ラーニングエクスペリエンス(FLX)」といった環境整備を併せてやりながら、ジョブ型人事制度の実現を目指しています。
近年は、働き方や採用手法も多様に変化しています。様々な会社が「ジョブ型」にシフトしていることにも注目すべきでしょう。
また、若年層を中心にキャリア意識が変化し、「一社にとらわれずに様々なキャリアパスを選択肢として持ちつつ、キャリアを積むこと」が普通になってきています。
そういう中において、富士通も「企業成長のための採用戦略」を考える必要があると感じています。
IT企業からDX企業へ変わるためにどんな人材が必要になるのかを日々考え、ジョブ型人事制度に変わることを強く意識して採用活動を行っていく必要があります。そういったことを意識しながら、「富士通が成長していくために必要な人材を採用する方法」を考えてきました。
富士通は、他の大手企業と同様に「新卒一括採用」を続けてきました。一方で、近年はキャリア採用にも力を入れ、その数についても徐々に増やしており、今後も力を入れていきたいと考えています。
まず、キャリア採用について考える際は、「事業戦略に基づく適所適材をどう実現していくか」ということが重要です。ジョブ型という中においては、「事業戦略に基づいてどういった組織変更をしていこうか」というところからスタートし、それに基づいてポジションごとに「ジョブプロファイル」を定義していきます。
「ジョブプロファイル」というのは、「そのポジションの役割・ミッション」、「責任や権限」、「そのポジションを担うために必要なスキルや経験」などが定義されているものになります。このジョブプロファイルに基づいて最適な人材を探していくことが、今後の人事部門には非常に重要なミッションになります。
富士通の中から
富士通グループの人材から
富士通グループの価値観に近い人材(Fujitsu Fan)から
普段は社外にいるけれど富士通に近い存在、という人材をある程度集めていく必要があると感じています。
富士通グループ外から
富士通のキャリア採用というと、10年ほど前までは必要な人材をその都度とる程度で、積極的にキャリア採用を展開していたわけではありませんでした。しかし2015年頃からキャリア採用を本格的にスタートしました。
この頃は、「富士通のキャリア採用ホームページ」を大幅にリニューアルし、しっかりとキャリア採用を行っていくことをプランニングしたところからスタートしています。また、「カムバック制度」もこの頃から始めました。
キャリア採用者は、2015年頃に100人規模でしたが、そこから徐々に増え、昨年は300人規模となっています。
一方で、新卒採用も継続して行っています。学生から富士通に入り、富士通の中でキャリアパスを歩み、優秀な人材に育ってもらう。この人材がまだ富士通ではマジョリティです。職場のニーズも高く今後も必要な採用手法だと考えています。
ただ、富士通グループ外で経験を積んでいる多様な人材を集めていくことも併せて行う必要があると思っています。
キャリア採用では、全体の6割強がエージェントからの紹介です。
しかしながら、どうしても他社との獲得競争が起きるため、「富士通に紹介されてくるような人材」というだけでは、なかなか良い人材を確保できなくなってきました。その中で、転職潜在層(受動的候補者)に対して直接声をかけることができれば、他社と競合することなく採用できるということで、潜在層向けのアプローチも強化しています。
また元社員(富士通を一度退職した社員)であっても、また富士通に戻ってきてもらう「カムバック制度」を整備し、一度退職しても再度富士通で働くというキャリアパスを積極的に呼びかけています。
富士通グループ外から人材を採用するキャリア採用の前に、富士通グループ内の人材流動化についても取り組んでいます。
グループワイドポスティングとは、「自ら目指すキャリアを描いて魅力的な仕事に挑戦する社員」を支援していく仕組みです。従来の「ローテーション」という考え方は、人の育成を組織で考えるという意味では良い制度ですが、自ら自主性を持って「この仕事をやりたい」と手をあげ、能動的な意思を持ってやる仕事の方がモチベーション高く取り組むことができ、成長もできます。
そのために、国内80社以上の富士通グループ内で200~300ポジションの多様なジョブを公開し、そこに富士通グループ社員全員が手を挙げることができるような仕組みの導入を始めています。
富士通は、どうしても「新卒採用が中心」というイメージがまだまだあると思います。 そのため、キャリア採用市場でもっと認知を上げていく。そして、富士通のビジネスを知る機会を様々な人に提供していく、ということに取り組んでいます。
広告やウェビナー中心のイベントで少しでも富士通を認識してもらった人に対して、興味や関心を高めていく施策も重要です。少しでも興味を持ってもらった人にミートアップ等の、より少人数でのイベントの案内やカジュアル面談、リクルーター活動などをおこない、徐々に採用まで誘導していきます。
このように、社外のタレント人材をリードナーチャリングし、応募につなげていくような戦略を、積極的にやっていきたいと思っています。そのベースとして、ホームページ・オンラインメディアなどを活用しています。
リファラル採用は、社員がリクルーターとなり、一人ひとりの人脈を活かして人材を採用する手法です。富士通社員は32,000人います。また、一人ひとりが社外でいろんなつながりを持っているということで、この人脈をフルに活かすとかなりの採用力になるわけです。
リファラル採用を通じて今実現していきたいことというのは、そもそも会社の成長と働く魅力を向上させていくこと。すると、魅力的な会社・魅力的な働く場に変わっていくことで、富士通の中で働く社員のエンゲージメントが上がっていく。そして、その社員が知人に富士通で働いてもらいたいと思う。また、知人も富士通で働きたいと思う。そのような状況を自然と作っていくことが、とても大事だと思っています。
データの利活用
データを分析してみると、ちょうど今年の結果では、「キャリアを自ら勝ち取ってきた人」というのは、社内でのエンゲージメントが非常に高いということが分かっています。富士通の中でもポスティングやキャリア採用で動いている人は、やっぱりエンゲージメントがとても高いと感じています。
また、リファラル採用でリクルーターをしているような人も、やはりエンゲージメントが高いです。誇り・推薦・やりがい・成長実感・リソースなどの項目で、富士通社員全体の平均と比べても高いエンゲージメントが確認されています。社外に富士通をアピールすることで、より富士通を好きになっていき、そこで相関性が出ているのではと考えています。
このように、データをいろいろ分析していく中で、「やはりキャリア採用・ポスティングが重要だ」ということが分かりました。こういったデータを使って経営層に施策の重要性や効果をアピールしていくのも重要だと考えています。
選考プロセスのデジタル化
- 人材採用・育成 更新日:2021/03/03
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