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広がる「AI面接」での採用活動 その実態やメリット・デメリットは?

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AIの情報処理能力の向上、またコロナを機にしたオフラインでの採用活動が広がる中で、AIを使って面接を実施する企業が出始めています。

「AI面接」とは文字通り、面接にAIを導入することで候補者の傾向や属性を判断し、結果を採用の過程に情報として活用するというものです。

採用という場所でAIという機械的なものを導入するのはいかがなものか?
そう疑問に思う方も多いことでしょう。

そこで今回は、AI面接の導入事例やメリット・デメリットなどについてご紹介したいと思います。

AI面接を受けた人の割合

マイナビの「転職動向調査 2023年版」によると、新しい面接・選考手法の受験経験は以下のようになっています(図1)。

この表を細かくみていきましょう。
まず、WEB面接、動画選考、AI面接の3つについて、AI面接を「受けたことがある」としている人は2022年の転職者全体で19.3%にのぼっています。

そして、そのなかで「受験意識が高まる」という人は全体で見ると

  • WEB面接:61.2%
  • 動画選考:44.7%
  • AI面接:36.9%

となっています。

逆に、「受験意識が下がる」という人は

  • WEB面接:61.2%
  • 動画選考:55.3%
  • AI面接:63.1%

でした。

他に比べればAI面接に対する好感度はあまり高くないように見えますが、20代〜40代の男性に関しては、AI面接で受験意欲が高まるという人は4割を超えており、一定の世代には受け入れられている模様です。

そして、AI面接で受験意欲が高まる理由として挙げられているのは以下のような点です(図2)。


  • 気楽に受けられそうだから
  • 感情ではなく公平に評価してくれそうだから
  • 緊張しなさそうだから
  • 新しいものを導入している会社だと好感が持てるから
  • 面白そうだから
  • 興味があるから

といった項目が挙げられています。

AI面接の体験はどのようなもの?

さて、日本経済新聞にAI面接の体験談が紹介されています*1。5年ほど前の2018年3月、かつモニター体験時のものですが興味深い内容です。

スマホを固定し、いざAI面接の始まりです。

「ゼミや部活、サークル活動、アルバイトなどで、とても苦労したことや困難な状況を乗り越えたという経験はありますか? 「はい」か「いいえ」でお答えください」。

女性AI面接官の質問でいよいよ面接スタートです。


そして質問を重ね、受験者の回答によって得られた過去の行動データから「バイタリティ」「イニシアティブ」「対人影響力」「柔軟性」「感受性」「自主独立性」「計画力」の7つの要素を計測し、面接中の表情、質問に対する回答の適切さなどから「インパクト」「理解力」「表現力」「ストレス耐性」の4要素を計測しているといいます。

そしてこれら11要素の高低と各要素に該当する経験が示され、その結果を採用担当者が確認・評価して合否を決めるという形です。

そして、それらの回答について「もう少し詳しく」「具体的に」といった質問が続いたといいます。
面接時間は60〜90分くらいで、200前後の質問がなされます。この事例では、AI面接官は回答だけでなく表情や仕草などもみているといいます。

質問の多さや「具体的に」という言葉の繰り返しはAI独特のもので、人間では若干漠然とした答えも意図を理解できますが、AIは忖度しないので、わからなければ徹底的に質問するという具合です。人間の場合、60〜90分の時間で200もの質問をするのは難しいでしょう。
よって得られるデータは人間よりもはるかに多いものです。

AI面接の可能性はどこまで広がるのか?

こうしたAI独特のクセはあるものの、AI面接の導入によって受験意識が上がるという転職者が一定の割合でいるのは調査から明らかです。また採用活動の効率を大幅に向上させられるという点では、AI面接は注目すべきものであると筆者は考えます。

まず、採用にかかる手間とコストの面です。

これは新卒の話ではありますが、筆者の聞いたところでは、1万人近くのエントリーシートが寄せられるある企業では、それらを精査した上で実際に1次面接に呼ばれるのはその10分の1ほどです。2次面接に呼ばれる候補者はそこからさらに10分の1ほどです。

中には遠隔地から交通費や宿泊費をかけて面接に来ている候補者もいますから、プロセスを合理化することで学生の負担を減らすこともできます。かつ、膨大なエントリーシートのチェック作業に終われ、結果としては1割しかその先の採用活動の役に立たない。この繰り返しは人事担当には大きすぎる負担です。この作業を、AIの手を借りることで大幅に時間短縮でき、かつスキルや傾向についてのデータまでもがついてくるというメリットはあります。

さらに人間のみで面接活動を実施すると、どうしても様々なバイアスがかかってしまいます。それを除去するためにも、AIでの分析結果を採用することでミスマッチを防げる可能性があると筆者は考えます。人材の「見える化」はここでも重要な役割を果たすことでしょう。

そして、これは学生を対象にした調査ですが、AI面接と人間による面接を希望する学生がおり、その理由を問うたところ、下のような回答がありました。

AI 面接を希望
  • AI 面接のほうが緊張せずに面接を受けることができる
  • 面接時間に融通が効く
  • 評価基準が統一されている
人間による面接を希望
  • 個人情報の利用や漏洩に対する不安
  • 面接する企業やそこで働く人を見る・話をすることも企業研究の 1 つだから
  • 人柄,雰囲気といった人の本質や人間性を AI は評価できない

(引用元:村上祐子ほか「AI面接を題材としたデータサイエンス導入教育の実践報告」情報教育シンポジウム)p192

特に「評価基準の統一」は大切な要素であると筆者は考えます。

Amazonから学ぶ、AI面接の落とし穴

ただ、AIが機械的なシステムである以上、落とし穴がないわけではありません。

米アマゾンは早い段階からAIを用いた人材採用システムを活用してきましたが、それをとりやめたという経緯があります。使用していたシステムが、女性を差別するという欠陥を持っていたことが判明したためです*2。

ただこれはひとえに、データに十分な規模と多様性がなかったためという見方もあります。採用したい人材像を学ぶためにAIは過去10年分の履歴書を分析したが、過去の履歴書の大半は男性からのもので、テック業界が男性優位であるという現実を反映したものだったというのです。

男性をメインとしてしまった、という学習データに偏りがあったための出来事です。そのような事態さえ避け、欲しい人材の特徴を反映したデータを高い精度で付与できればこのような事態は防ぐことが可能です。

中途採用は戦略上になければならない

ここまで、AI面接の概要についてみてきましたが、最も大切なのは「戦略的な中途採用」を実施するということです。欲しい人材の傾向は、この激しく変化するビジネスシーンでは毎年異なる、ということは珍しくありません。

去年は技術的な即戦力、今年は少し時間をかけて教育する価値のある性格や志向の持ち主、といったように、中途採用といえど計画的なものでなければすぐに辞められてしまう、あるいは本人の特徴をフル活用できずにコストがかかるだけです。

よって、AIに学習させるように「合理的に」「データ的に」どのような人物が欲しいかをAIに説明できるくらいの粒度で人材戦略を持たなければ、いつまでたっても中途採用への満足度は向上することはないでしょう。

実際にAIを導入するかはさておき、求める人材をAIレベルで緻密にブラッシュアップしていく工程は、絶対に欠かしてはならない時代にきています。

  • Person 清水 沙矢香

    清水 沙矢香 -

    2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。
    取材経験や各種統計の分析を元に多数メディアに寄稿中。

  • 人材採用・育成 更新日:2023/07/20
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