経営と人材をつなげるビジネスメディア

MENU CLOSE
1 ty_romu_t20_okr_220222 roumu c_keywordc_management

OKRとは?人事業務での活用事例やメリットを紹介

/news/news_file/file/t-20220222125734_top.png 1

「人事は事業目標の達成において、極めて重要な役割を果たす」と考える先進企業が続々と導入しているのが「OKR(Objectives and Key Results)」です。OKRは、企業や、チームが達成すべき目標を定め、その目標に向かって進むための主要な活動結果を評価する人事戦略です。

本記事では、OKRに興味がある、導入してみたいと考えている方に向けて、OKRとは何か、OKRを設定するメリット、OKRの導入や運用方法、OKRの活用事例について解説します。


OKRとは

「目標とその活動結果を管理する」ことは、OKRを導入していない企業でも日常的に行われていることです。しかし、その取り組みが事業成長に確実に繋がっていると自信を持って言える企業は、果たしてどれほどあるでしょうか?

OKRは、その現状を打破するためのソリューションとなる可能性がありますが、企業によってその効果は異なります。それでも、業務評価制度を取り入れるきっかけにはなるはずです。

OKRは、米Intelが生み出した手法であり、GAFAの半数が導入していることでも知られています。日本企業ではメルカリが導入したことが話題となりました。ここでは、OKRの基本的な仕組みについて詳しく説明します。

O(Objectives)目標

OKRの「O」にあたるObjectivesは、定性的な目標を指します。目標管理指標では「Goal(ゴール)」と表現されるKGI(重要目標達成指標)を用いることが一般的ですが、OKRにおける目標の理解には、この違いに着目することが早道です。

KGIが定量的な目標を扱うのに対し、OKRでは「定性的な目標」を主として扱います。つまり、明確な数値目標を持たせられないということです。KGIなどの目標管理指標に慣れ親しんできた方にとっては、新たな視点となるかもしれません。定量的な目標はKRで設定するため、ここではチームとして達成すべき目標を決定することに重点をおきます。

例えば、「カスタマーサポートの中で顧客へのレスポンスが最も早いチームになり、お客様満足度を高める」といった定性的な目標で構いません。重要なのは、チーム全体がその目標に期待感を持ち、目標達成が事業成功に繋がると実感できることです。そのために、次の3点を意識しながらOとしての目標設定を行います。

  • チームの能力やリソースを考慮して実現可能であること
  • 達成期限が明確であること(目安は1~3ヶ月)
  • 100%の達成度に対し、60〜70%の達成が見込めるものであること

KR(Key Results)主要となる結果

設定した目標に対して、KRでは定量的に主要な結果を定めていきます。KRのポイントは「2〜5個と多すぎない設定」です。目標管理指標を運用する企業の中には、最終目標に対して無数の主要結果を設定するケースがあります。確かに、大きな目標を達成するにはいくつものタスクを遂行し、それぞれの結果を評価しながら運用を進める必要があります。

しかし、OKRでは「チームや個人のモチベーションを維持し、目標達成に向けて一丸となって進む」ことが非常に大切です。そのため、多すぎるKR設定は逆効果になることもあります。実際に、目標管理指標において100以上の主要結果から数個に絞ったことで、運用が成功したケースもあり、やはり適切なKR設定がポイントになります。

ただし、達成難易度が低すぎるKRを設定しても意味がありません。理想としては「個々人がベストを尽くせば達成できる」程度の難易度で設定し、なおかつ100%の達成を求めないことが重要です。

「Done is better than perfect」—完了は完璧に勝る。*


これはFacebookの創始者、マーク・ザッカーバーグの有名な言葉です。物事は100%を目指すよりも、早期段階での完了を目指す方が、結果的に良い方向へ進むという意味を含んでいます。OKRへ取り組む際は、ぜひこの言葉を念頭におきながら取り組んでみてください。Facebookの企業文化がこの考え方に根差しているからこそ、OKRを取り入れたのかもしれませんね。

その他の目標管理制度との違い

業績評価制度には、OKR以外にもKGI(重要目標達成指標)、KPI(重要業績評価指標)、MBO(目標管理制度)など、様々な手法が存在します。

KGIとKPIはセットで用いられ、KGIによって定量的な最終目標を定め、KPIによってその達成に必要かつ定量的な指標を決定します。OKRにおけるOとKRの関係性に似ていますが、KGIとOKRのOでは、定量的か定性的かという大きな違いがあります。

一方、MBOはマネジメントの父とも称されるピーター・F・ドラッガーが提唱した手法で、チームや個人ごとの目標を設定し、その達成度に基づいて業績評価を行う制度です。MBOという言葉には堅苦しさがありますが、実際には多くの企業が日常的に行なっている業績評価と大差ありません。ただし、MBOについて学ぶことで、そのシンプルさの中に奥深い内容があることに気づくでしょう。現状の業績評価制度を見つめ直す際には、ピーター・F・ドラッガーの著書を参考にすることをお勧めします。

なお、MBOについて、詳しくはこちらの記事でも紹介しています。
関連記事:目標管理制度(MBO)とは|評価制度を解説します


KGIとの違い

KGIは主に定量的な成果を指し、特定の期間内に達成すべき数値目標や成果を設定し、それに基づいて業績を評価します。例えば、売上高や利益率の達成がKGIの一例です。

一方、OKRのOは定性的な目標を設定することに重きを置いており、「顧客満足度の向上」や「革新的なプロダクトの開発」といった、数値で計りにくい重要な目標を設定します。このように、OKRでは挑戦的かつ実現可能な目標に向けて、組織全体が一丸となって取り組むことを重視しています。

したがって、KGIが数値ベースでの成果を重視するのに対し、OKRは定性的な側面を評価することで、組織の方向性を明確にし、柔軟なアプローチを促進する目的があります

KPIとの違い

KPIは、特定の期間内に達成すべき具体的な数値目標を定めるもので、販売数、顧客獲得数、サポートケースの解決数など、定量的な指標に焦点を当てます。これにより、進捗状況の把握と改善がしやすくなります。

一方、OKRのO(目標)は、より定性的な方向性やビジョンを設定します。KR(主要成果)は、その目標に対してどのような具体的な成果を達成すべきかを定量的に示しますが、数値だけでなく、プロジェクトの完了や重要なマイルストーンの達成なども含まれます。このため、OKRでは広範な視点で進捗を評価することが可能です。

つまり、KPIが明確で測定可能な数値を重視するのに対し、OKRはその数値に加えて、実現したい方向性やビジョンも重視する点で異なります。これにより、チームや個人の動機付けや方向性の共有が重視され、柔軟で統一された取り組みを実現します。

MBOとの違い

MBOは経営層がトップダウン形式で目標を設定し、各従業員に達成すべき目標を割り当てる手法です。個々の社員は自身の目標を達成することで、組織全体の目標達成へ貢献することを目的としています。

一方で、OKRはトップダウンとボトムアップの両方のアプローチを取り入れ、全体の目標を共有しつつ、個々の社員やチームが自発的に主要結果を設定します。これにより、従業員のモチベーションを高め、柔軟で創造的なアプローチを促進することができます。

例えば、MBOでは「今期の売上高に対して20%のアップを達成する」という定量的な目標が設定されるのに対し、OKRでは「顧客満足度の向上」といった定性的な目標が設定され、その達成へ向けて具体的な成果を主要結果として定めるのです。

このように、MBOが個人の目標達成に焦点を当てるのに対し、OKRは組織全体の目標達成を支援する包括的な取り組みとして機能します。これにより、組織全体が一丸となって大きなビジョンを追求する風土を育むことができるのです。


OKRを用いた人事評価の方法

OKR(Objectives and Key Results)は、目標とその達成指標を明確にすることで、人事評価に一貫性をもたらします。まず、各組織やチームの大きな目標(O)を共有し、その上で個人やチームごとに具体的な主要結果(KR)を設定します。この主要結果は定量的であり、例えば売上の増加や顧客満足度の向上といった明確な数値目標を指します。

これにより、上司や評価者は統一された基準で評価を行うことができ、公平性と透明性のある評価制度を構築できます。また、OKRの評価プロセスでは、定期的な進捗確認とフィードバックが欠かせません。週次のミーティングや四半期ごとのレビューを行い、達成状況をチェックし、必要に応じて目標や主要結果の修正を行うことで、リアルタイムな目標管理が実現します。

OKRを用いた評価プロセスの流れ

OKRを使って評価を行うには、以下のような流れが効果的です。

目標の共有

各組織やチームの大きな目標(O)を全員で共有します。

主要結果の設定

個人やチームごとに具体的な主要結果(KR)を設定します。これには、売上増加や顧客満足度向上といった定量的な数値目標が含まれます。

評価基準の統一

上司や評価者が統一された基準で評価を行うことで、公平性と透明性のある評価制度を構築します。

定期的な進捗確認

週次のミーティングや四半期ごとのレビューを行い、達成状況をチェックします。

フィードバックと修正

必要に応じて目標や主要結果の修正を行い、リアルタイムな目標管理を実現します。

このプロセスを通じ、OKRは柔軟性を持ちながらも一貫性のある人事評価を可能にし、組織全体の目標達成を後押しします。


OKRを設定するメリット

従来の業績評価制度と異なるOKRのメリットはいくつかあります。その主なメリットは以下の通りです。

1.目標管理が柔軟に行える

目標(O)達成に向けたサイクルを4〜12週間と短期間で設定するため、目標の調整・変更が柔軟に行え、素早い改善サイクルを実現できます。

2.目標設定のスピードが速い

これまでの目標設定には事前調査が必要でしたが、OKRでは定性的な目標を設定することで短時間で済み、取り組み開始までのスピードを迅速化できます。

3.社内の一体感を醸成する

企業全体でOKRを運用することで、全社的な共通認識を持ち、組織・チーム同士のコミュニケーションや情報共有が円滑になります。

4.事業への貢献度が高まる

チームや個人に明確な主要結果(KR)が設定されるため、事業成功に対して「貢献できている」という実感を持ちやすく、仕事へのモチベーションが高まります。

5.生産性が向上する

多すぎる主要結果(KR)を設定しないことで、個々のタスクに集中しながら業務遂行でき、生産性が向上し、成果物のクオリティが高まります。

6.攻めの組織へと変わる

直接的な人事評価制度とは異なるため、失敗を恐れずにチャレンジ精神旺盛で仕事に取り組むことができ、成功は組織全体で共有し、失敗は教訓として次のチャレンジに臨むことができます。

これらのメリットを最大限引き出すには、次項にてご説明するOKRの導入や運用方法について、基本ポイントを押さえながら独自の業務評価制度へと落とし込んでいく作業が肝要です。

OKRの導入から運用の流れ

設計の流れ

OKR導入の大まかな流れとしては、「組織>部門>チーム>個人」といった具合に落とし込み、さらに「個人>チーム>部門>組織」と逆の流れでフィードバックを行いながら、OKR全体の調整・変更を行います。

OKRの設定は1つのみ

ポイントは、セクションごとに「1つだけのOKRを設定する」ことです。多すぎる主要結果(KR)を設定するのは厳禁です。ミニマムでの運用を目指すことで、短い改善サイクルを可能にして継続的な運用を目指すのが大切です。

ボトムアップによる運用

もう1つ意識すべきポイントは、「トップダウンではなくボトムアップ中心にする」ことです。OKRではボトムアップ中心での目標・主要結果設定を心掛け、組織が従業員の意思や能力を大切にしていることを意識してもらいながら、全社的にOKRへ取り組む姿勢を作っていきましょう。

個人とチームの整合性を重視

個人のOKRを設定する際は、チームや部門のOKRとの整合性を重視してください。メンバー同士の話し合いを大切にし、整合性が取れていない、主要結果が重複しているなどの問題があればすぐに修正します。

定期的な進捗確認と修正を実施

OKR運用がスタートした場合、週に1回チームミーティングを行い進捗確認と修正の必要性について議論します。さらに、組織のOKRとして設定した期間の中間にあたるタイミングで全体としてのレビューを行い、ここでも進捗確認と修正の必要性を議論します。最終的には期間終了後にOKR全体の評価を行い、達成度に対する要因分析と次のOKRに向けた改善策立案を行います。

OKR自体を評価するには、目標(O)に対して設定した主要結果(KR)において、達成度をスコアリングします。一般的にはパーセンテージ(%)で各KRを評価し、それらの平均値をOKRの達成度合いとします。

OKRの活用事例

OKRの活用事例としては、GoogleやFacebook、メルカリなどのビッグカンパニーが先行していますが、身近な事例を求める方も多いでしょう。そこで、ウェブコンサルティングを中心に事業展開している株式会社グレート・ビーンズ(以下、グレート・ビーンズ)の事例をご紹介します。

グレート・ビーンズのOKR活用

グレート・ビーンズでは、3つのサービスを並行開発しているため、OKRも事業ごとに設定しています。基本的に組織に1つのOKRを設定することが推奨されていますが、事業ごとに設定することも問題ありません。この場合、運用は難しくなりますが、細かい調整ができるという利点もあります。

グレート・ビーンズでは1回の会議で3つのOKRを決定し、それからチームや個人のOKRに落とし込んでいます。OKRは「勢い」も非常に大切なので、会議を行う際は実施時間を設定し、その時間内で確実に設定することを目指しています。

OKR導入の成果

グレート・ビーンズがOKRに取り組んだ結果、以下のような成果があったと伝えています。

  • 明確な目標設定
    何をいつまでにやるべきかが明確になり、優先順位をつけられるようになった
  • 進捗の共有
    サービス開発の進捗度合いをメンバー全員で共有できるようになった
  • 団結力の向上
    OKRをスタートしたことでチーム全体の団結力がアップした
  • 社外へのアピール
    OKRの取り組みを社外に報告したことで、興味を持ってもらいやすくなった
  • 個々の意欲向上
    OKRを進めるにつれて個々人が意欲的に取り組むようになった
  • 成長の可視化
    個人OKRを設定することでチームとメンバーの成長がハッキリ見えるようになった
  • モチベーションとデータドリブン
    高いモチベーション維持とデータドリブンアプローチが可能になった

新しい人事戦略としてのOKR

OKR(Objectives and Key Results)は、従来の業績評価制度に代わる新しい人事戦略として注目されています。組織や個人のモチベーションを高めるために論理的かつ心理学的に設計されたこの制度は、明確な目標設定と柔軟な運用を可能にし、透明性を確保します。

特に、国内での実施事例がまだ少ない中で、自社独自のOKRを導入することは、先行事例としての注目を集める大きなチャンスです。今後、OKRを通じて新しい人事戦略を実現し、持続的な成長を目指すことが、企業にとって重要な課題となるでしょう。自社の特性に合ったOKRの導入を進め、未来の成功に向けた一歩を踏み出しましょう。

※ The Hacker Way’より抜粋


  • 労務・制度 更新日:2022/03/16
  • いま注目のテーマ

  • ログイン

    ログインすると、採用に便利な資料をご覧いただけます。

    ログイン
  • 新規会員登録

    会員登録がまだの方はこちら。

    新規会員登録

関連記事