生産性の高い人材育成に効果的!ワーキングメモリを鍛えるといい理由
作業記憶としての上限はあります。例えば、今すぐ100桁の数字を覚えてくださいと言われても、ほとんどの方が覚えられないと思います。短期的に記憶できる数字は、せいぜい5桁から9桁が一般的ではないでしょうか。ワーキングメモリは、一時的に記憶を留めて処理をする能力であるため、個人差は多少ありますが大容量の情報は記憶できません。
よくメディアなどに登場する記憶力が異常に高い方は、ワーキングメモリというよりも“覚え方”が大きく関与しています。具体的には、記憶できる容量が膨大にある右脳を利用した記憶術にあたり、文字ではなく画像や映像としてイメージしたり、ストーリーにして覚えたり、頭の中に「記憶の場」をつくって覚えたい事柄を配置するといったテクニックのこと。
つまり、瞬時に情報をインプットして、考えながら行動する際に使われるワーキングメモリとは、プロセスが異なるのです。
ワーキングメモリが現代社会に必要とされているのは、考える力が弱くなってきているという危機感からだと考えています。社会人として働く方たちの中で、指示された通りに物事を進めるような受け身タイプが増えてしまうと、自ら考えて発言する機会も減少して企業の成長にも悪影響を与えてしまいます。
こうした受け身の状態を招いてしまっているのは、日本の「正解はひとつと決められている教育」が影響していると私は思っています。大事なのは、正解や不正解という結果ではなく、そこに辿りつくまでのプロセスを自分で導き出しながら、自身の傾向を知ること。
何の工夫もなく仕事をしているという常態化から脱するためにも、あらゆる情報の中から創意工夫をして物事を進められる、ワーキングメモリの向上が重要なのです。
一番の原因は脳の疲労です。例えば、「ニュースを毎日見ている」という方は、ピンポイントでひとつのニュースを見るのではなく、沢山ある中から気になる内容を複数見るというケースが多いと思います。そうすると、脳内に情報が滝のように流れ込んできてしまい、処理をしているワーキングメモリの作業工数が膨大になり、疲労が蓄積してしまうのです。
ただでさえ、スマホひとつであらゆる情報を得られる時代なので、ワーキングメモリが低下するリスクは非常に高い。情報を得るために足を運んだり、様々な人に会って話を聞いたりしなくても、簡単に情報をキャッチできてしまうので、行動のマンネリ化にも繋がります。こうした同じことの繰り返しが脳に悪影響を及ぼします。
ひとつは、パズルを解くこと。特に、種類の違うパズルを解く方法が有効です。演算子が空欄になっている数学パズルや、ルールに縛りがあるナンバープレイス(ナンプレ)などは、普段の生活や仕事とは違った脳の回路を使います。
ワーキングメモリを鍛えるうえでは、規則性より柔軟性がポイントになります。仕事の場面でも、会議の場で思い切って意見を言ってみたり、議事録を勝手にとってみたり、通勤経路を変えてみたりと、普段とは違う行動を起こすといいでしょう。
私が、事務作業をしていた時は、ショートカットキーを勝手に覚えて仕事に取り入れたりしていました。それだけでも、普段とは違う行動になるので効果的です。
※パズルの答えは最後にあります
ワーキングメモリが鍛えられると、脳内の作業スペースも広がるので、同じ時間で生み出す生産性が向上します。ワーキングメモリはマルチタスク(複数並行作業)に必須の能力なので、この能力が低いと複数の業務を効率的にこなせません。
例えば、時間がかかる業務A、期限が短い作業B、アイデアが肝心な企画Cを同時期にこなす時、どこから手を付けていいのかわからなくなりがちです。こういった計画を立てていくのもワーキングメモリの仕事。イメージとしては、状況に応じて脳に付箋を貼っている状態です。
また、短時間での集中力が高まれば作業効率も上がります。ネットなどで調べ物をしている時に、長時間かけて膨大な情報に触れていると本来の内容から脱線してしまったり、結局まとまらなかったりというケースがあると思います。
ワーキングメモリを鍛えると、頭の中で常に整理整頓ができている状態になるので、何を調べているのかに注意を向けながら、最短ルートで目的を果たせるようになります。
私がおすすめしている育成方法は「思考実験」を取り入れることです。この思考実験とは、正解や不正解がないものが多く、学校で学ぶ知識とは違って自分本来の頭の力(地頭)を使って考える実験のこと。
普段対面しないようなお題に対して、答えがどうこうではなく自分はどう思うかを考えて自己を知ることが目的です。育成シーンで取り入れるとワーキングメモリの向上だけではなく、発想力や多角的な視点から物事を見る力、論理的に考える力などを鍛えられます。
また、いくつかの国では、教育の中にパズルや遊びを取り入れており、答えを導き出すプロセスを評価しています。こうした自由度の高い考え方を企業に取り入れることで、目標達成や成果に対してひとつではなく複数のプロセスが生まれ、ひとりひとりにあった育成方法を見出せるようになります。
- 人材採用・育成 更新日:2020/06/10
-
いま注目のテーマ
-
-
タグ
-