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歴史上の人物に学ぶ人材マネジメントPART3 猪山直之・成之 編

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「金沢藩士猪山家文書」なる武家階級の家計簿が、歴史上初めて、完全な姿で発見されました。この文書を元にした新書『武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新』が歴史学者の磯田道史氏により2003年(平成15年)に上梓され、これを原作とした映画が2010年(平成22年)に発表されています。
映画のキャッチコピーは「刀でなく、そろばんで、家族を守った侍がいた」これは、それまでの日本におけるサムライ像に一石を投じる、リアルなサムライを描いた斬新な作品となりました。そこには、現代のビジネスの世界にも参考になる人材と変革期に必要なマインドについてのヒントが多く見受けられるのです。

「武士の家計簿」とは

下級藩士で御算用者だった加賀藩の猪山直之は、家禄を100石から180石に増やす出世を遂げました。この史実を元にした物語では、直之・成之父子の数奇な運命を描きます。
藩内の政争や幕末維新の動乱にいやおうなく巻き込まれながらも、父・直之の綿密なそろばん勘定によりそれを乗り越え、子の成之は最終的に大日本帝国海軍の主計官となり、海軍主計大監にまで出世します。
御算用者から主計官という時代を越えた転身。時代が変化しても、彼の能力は常に求められ続けていました。まさに幕末の変革期に翻弄されながらも、持っていたスキルの意義が大きく変わることで立場も変わるという点で、現代に通じるものがあります。

刀(プライド)を捨て、そろばん(採算)を取ったサムライ

父子は動乱のなかで疎遠となるも、成之は父の病状が思わしくないと知ると加賀に里帰りをし、父との再会を果たします。刀を捨て、そろばんを持ちながらも『武士としての誇りを失うな」と武士の矜持を忘れず、更に「算盤は『猪山家の命』なのだ。これしか、生きる術がない。」というセリフからも、変革の多い現代においても、必要な心構えなのではないでしょうか。

「兵士はいっぱいいるけど、それの算段を付けられる人間はおまえしかいない」

これは、嶋田久作が演じる大村益次郎の、直之を主計官に採用する際のセリフです。戦から経済の時代へ。明治維新において最も重要なポストに直之を採用した理由が、このセリフに凝縮されています。刀に象徴されるプライドが全ての武士にとって、存在意義が根底から揺らぐような時代。そして、そろばんを生業としていた猪山家が必要とされる時代が来たのです。
現代においても、時代の流行に乗って表層的なキーワードで転職する人物よりも、本質的な能力と変化対応力が組織に必要とされる点で通底しています。

プライドを持ったまま変わること

変革の時代、人事において必要なのは、体制だけでなくマインドも変革することです。これまでのプライドをもて余した人材は、企業にとってもプラスになりません。特に、景気がよく予算も潤沢な時代を経験していると、現在の緊縮財政を受け入れられないケースが多いようです。また、エンジニアなど技術職も、自らの作る人としての職人のプライドから、その価値を活かして売る人としての商人の動きがとれないことも。とかく、厄介なのがプライドという存在といえるでしょう。
刀をそろばんに持ち替えた猪山父子のように、動乱の時代に対してプライドの置き場所を変え、生き延びるために柔軟になり、忍耐を受け入れることが望まれるタイミングもあります。採用においても、そのような人材が組織を救うことになるでしょう。企業を取り巻く時代情勢と採用現場を俯瞰して見るためにも、猪山父子の生き方を参考にしてみてはいかがでしょうか。

  • 労務・制度 更新日:2015/10/21
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