7つの退職理由からさぐる定着率改善プラン。離職防止のために企業ができること
組織の力をあげるには、企業文化にあう優秀な人材を採用することとあわせて、離職率を下げることが大切です。しかし現実には、退職しそうな人を引きとめることは容易でなく、対策が難しい分野でもあります。
従業員エンゲージメントと人材の定着を専門とするコンサルタント、レイ・ブランハム氏の著書『The 7 Hidden Reasons Employees Leave』には、退職を決めた人達への聞き取り調査やアンケート調査の結果から、社員が退職を決意した原因を追究し、退職を防ぐための対策が提案されています。
本書のなかで紹介されている調査結果によれば、平均的な社員が1人退職したときのコストは、その人の1年分の年収に相当するといいます。このコストを考えても、不必要な退職を防ぐことの大切さがお分かりいただけるでしょう。離職率を下げるために、本書からどのようなことが学べるのかご紹介します。
- 熱意を持って新しい仕事を始める
- 仕事を続けるかどうか悩むようになる
- 退職を真剣に考えるようになる
- 状況を変えようとする
- 退職しようと決心する
- 退職のリスクを考える
- なんとなく仕事を探し始める
- 積極的に仕事を探す準備をする
- 本格的に仕事を探す
- 新しい仕事のオファーを受ける
- 新しい仕事を決めて退職 / または、仕事が決まらないまま退職 / または、やる気がないまま仕事を続ける
退職までの思考プロセスには、2つの区切りがあります。最初の区切りは、仕事を続けるかどうか悩むようになるところから状況を変えようとするところまでです。
そこで状況が変わらないとき、社員は退職を決心して2つ目の区切りに入り、それ以降は、説得しても効果があまりありません。管理職は、社員が状況を変えたいと悩んでいる段階で気づかなければなりません。そこで助け舟を出せれば、退職を防げる可能性があります。
社員の心の動きに注意しなければならない管理職は大変ですが、例えば、社員の欠勤や遅刻、否定的な態度が増えたときに注意するといいでしょう。
これらは仕事に悩みを持っているときのサインとして本書に取りあげられています。また、本人が昇進のチャンスを逃したり、その人が信頼していた上司が異動になったりという、ショックな出来事が退職を考え出すきっかけになることもあります。そのような出来事があったときには上手なフォローが大切です。
そして最も大切なのは、管理職が部下と定期的に面接を行うこと。直接本人に「調子はどう?」と聞き、職場で困っていることがないか確認します。この簡単そうに思えるコミュニケーションが職場でできていないために、退職を決める人が多いのです。
本書に掲載されている退職者への聞き取り調査の結果では、職場内の信頼不足が原因で退職した人が31%を占めました。
なかでも「管理職からの気づかいやサポートの不足」を退職理由としてあげた人は13%で、第一位の「キャリアアップや昇進の機会が限られている」の16%に次いで第二位になっています。日頃から社員と話し合うことがいかに重要か、お分かりいただけるでしょう。
7つの退職理由に適切な対策をし、職場に絶対必要な4つのことを満たすことができれば、不必要な退職を防ぐことができます。
- 仕事と職場が思っていたものと違う
- 仕事と人のミスマッチ
- コーチングやフィードバックがない
- 成長や昇進の機会がない
- 価値がない、気にとめてもらえてないと感じる
- 長時間労働のストレスとワークライフバランスの難しさ
- 企業のリーダーに対する信用や信頼がなくなる
7つの退職理由への対策方法は、のちほど詳しくご紹介します。
例えば、採用面接で説明された条件と現場の仕事の条件が違っていたときに、この問題が起こります。社員の期待する条件に企業が応えられないことが分かると、その人は裏切られたような気持ちになり退職を決心します。
この退職理由への対策
採用面接で仕事内容や条件を説明するときには、候補者に気に入られようとせず、事実だけを話すようにします。
また、実務にそった職務内容リストを作ることや、一緒に働くことになる同僚が面接に参加することで、職務のニーズと適性をお互いに確認できます。企業と社員、相互に期待することを採用前に合わせておくことが重要です。
また、社内公募を増やしたり、社員に人材の紹介を頼んだりすることで、実際の仕事と候補者のイメージのずれを防ぐことができます。同様に、パートタイム社員や契約社員、インターンなど、すでに働いている人を正社員として採用することも、誤解を防ぐことにつながります。
本書によれば、過去25年間の調査において、80%の労働者が日常的に力を発揮できていないと感じています。力を発揮できない職場で社員はやる気をなくし、退職を考え始めます。スキルと知識をもとに仕事を割り当てるよりも、その人の持つ才能にあった仕事をしたほうが、長期的に見れば成功に結びつきます。
この退職理由への対策
適材適所にこだわること。成功している社員をモデルにしてそのポジションに必要な才能を見いだし、面接で同じような才能を持っている人を探します。採用試験のプロセスを厳格にし、望む人材に妥協してはいけません。
職場では社員に仕事を任せ、改善案やアイデアを取り入れます。新入社員が配属されたら最初の週に入社面談をおこない、その人の強みと才能を見つけましょう。ここでも適材適所を確認します。
仕事の割り当てかたを変えてみるのもひとつです。例えばある清掃会社の場合、案件ごとにスタッフが担当する業務を交代できるようにしたところ、同じことばかり任されるよりも生産性があがり、社員の定着率もあがりました。
入社してから何年経っても昇進できない、人事異動に不公平を感じるといったことが退職の原因になります。反対に、社員が自らのキャリアアップについて主導権を握るべきだと明確にしている企業は求職者から人気を得ています。
この退職理由への対策
セルフアセスメントツールを使って、社員が自分のキャリアプランをつくれるようなトレーニングを提供しましょう。管理職は、キャリアコーチを育成するトレーニングを受け、部下のキャリアプランにアドバイスをします。
社員にむけて、企業の戦略や方針、必要な人材について伝え続けます。そして、社内のキャリアパスや必要な適性基準を、誰でも見ることができるように公開します。
外部から採用された人が勤続年数の長い人よりも上のポジションにつくという状況をできるだけ避け、内部にいる人にチャンスが巡るような採用システムを作ることが理想的です。そのためには、キャリアアップのための内部異動が簡単にできるよう規則を変える必要があるかもしれません。
残業が多い、昼食を取る暇もない、仕事を家に持ち帰らないと間に合わない、本人や家族が病気でも休めないなど、不健康な状況が続くと誰でも仕事を続ける意味を考えてしまいます。また、いじめや偏見などが野放しにされている職場も、社員の退職を促します。管理職は不健全な職場環境を改善する努力をしなければなりません。
この退職理由への対策
まずは、残業やストレスを減らす努力をしましょう。そして、コミュニケーションに、もっと重点を置きます。社員から忠誠を得るためには上司のほうから親切にすることを心がけること。
みんなでピザを食べる日を作ったり、誕生日にギフトカードを送ったりと職場に楽しさを取り入れましょう。相手を思いやる職場づくりのために、福利厚生を充実させることも大切です。
- 労務・制度 更新日:2022/12/12
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