尖った企業理念を持つ会社|「ビジョンの強さ」で中途採用の好循環を生むSmartHR
企業理念やビジョンは、その会社の存在理由を表す言葉。それは求職者側から見たときには、自分がそこで全力を出せるかどうかを測るための大切な要素となります。
広く世の中に知れ渡る大企業であれば、理念やビジョンを見ることもなく応募する人がいるかもしれません。しかしベンチャーや中小企業は違います。多くの求職者は理念やビジョンを見て、「事業の方向性は自分がやりたいことと合致しているか」を考えます。あるいは「その言葉の響きに惹かれるかどうか」を感覚的に判断しています。
今回はその実例をご紹介したいと思います。「テクノロジーと創意工夫で社会構造をハックする」というビジョンを掲げ、「世の中を変えるようなサービスの開発に携わりたい」と考えるエンジニアを採用している株式会社SmartHRです。
ウェブサービスの世界では、優秀なエンジニアの獲得競争もまた、加熱しています。
企業が行う従業員の社会保険・労働保険の書類作成や役所への申請を自動化するクラウド労務ソフト「SmartHR」。このサービスを展開する同社は、2017年4月に旧社名の株式会社KUFUから現社名へと変更し、新たなスタートを切りました。
旧社名のKUFUとは「工夫」の意。もともと同社では「テクノロジーとKUFUで社会構造をハックする」というビジョンを掲げていました。より幅広くサービス認知を図るために社名を変更しましたが、ビジョンにあった「KUFU」は「創意工夫」として、変わらずビジョンに掲げられています。
テクノロジーと創意工夫。技術職の使命感に加え、テクノロジーの力で「ハックする」という挑戦は、この企業で働くことのワクワク感を伝えています。
創業メンバーを中心に時間をかけて議論し定められ、今につながっているというこのビジョン。現在ではこれがエンジンとなり、1週間あたり数十名の応募者から連絡があるといいます。また、社員の紹介によるリファラル採用においても大きな効果を発揮しています。
直近で採用されたエンジニア2名は、「SmartHRという会社が明確に社会課題を解決している」ことに惹かれて同社へ応募しました。
従来はさまざまな書類の作成が必要で、人事・労務担当者が対応に時間を割かれがちだった社会保険や労働保険の手続き。これを簡単に、スピーディーに行えるようにしたサービスの価値に魅力を感じたのです。ビジョンとプロダクトの整合性が取れていることが、採用市場の中で同社の存在感を際立たせることにつながりました。
また、代表の宮田氏をはじめとして、ビジョンを外部発信する際には言葉のチョイスにも徹底的にこだわっているといいます。「焼き増しされた表現」や「使い古された表現」は使わない。そんな信念でさまざまなメディアに登場してきたことも、同社に魅力を感じて多くの人材が集まる要因となっています。
同社では採用のみならず、長くともに働くための関係性構築の意味でもビジョンを重要視しています。特定の人物や制度など流動的な要素に惹かれて入社した人は、それらの変化とともに他社へ移ってしまうかもしれない。
しかし、理念やビジョンなど変わりにくいものに惹かれて入社した人は、会社を長く好きでいてくれる可能性が高い。流動的な要素ではなく、会社の根幹であるビジョンが入社のきっかけになっていれば、長く働く理由も必然的に生まれてくるという考え方です。
人材が流動化している時代にあって、「一生、1社に勤め上げるのが美徳」という考え方をする個人も少なくなっているでしょう。逆に「1社に勤めているだけでは視野が広がらない」と考える人も増えています。その潮流の中で、企業は柔軟な働き方に舵を切るべきだという働き方改革の議論も進んできました。同社でも、個人の利害と会社の利害を合致させる部分では考え方は同じです。
組織が急拡大する中でもコミュニケーションの場を設け、相互認識を図っている同社。「懇親しやすい環境作り」を徹底し、オフィス全体もオープンな空間になっています。
こうした体制で進められる同社の採用活動を通じて、SmartHRはビジョンに込めた思いを伝え、「カルチャーにフィットしている人」だけが入社してくれるように働きかけています。一見すると入社の間口が狭いようにも思えますが、採用後の定着と活躍、そして長期勤続にもつながる、「真に人を大切にする採用活動」であるとも言えるのではないでしょうか。
ビジョンによって明確に組織のあり方を示す。それに惹かれて参画した社員が、同社の魅力を自ら外部に向けて発信していく。そして次々と優秀な人材が集まっていく。この好循環が続く限り、同社は今後も採用市場で独自の立ち位置を確保し続けるでしょう。
株式会社SmartHR
企業が行う社会保険・雇用保険の手続きを自動化するクラウド人事労務ソフト「SmartHR」を開発。従業員情報を入力するだけで必要書類を自動作成し、総務省が提供するe-GovAPIと連携してWebから役所への申請も可能。煩雑で時間のかかる労務手続き・労務管理から経営者や人事担当者を解放する。5,000社以上が利用し(2017年6月現在)、ベンチャー企業から数千人規模の大企業までユーザー層も幅広い。
- 経営・組織づくり 更新日:2017/07/04
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