人事異動によるモチベーション低下の理由とは? 人事担当者ができる対策を解説
人事異動は、慎重に行わないと、異動する社員のモチベーション低下につながり、現場トラブルや退職に発展してしまうことがあります。人事異動を行う際、人事担当者はなにを注意すればいいのでしょうか。
本記事では、人事異動によってモチベーション低下が起こる理由と対策について解説していきます。
人事異動によってモチベーション低下が起こる理由
人事異動によってモチベーションが低下する社員がいるのはなぜでしょうか。その多くは、異動が本人の意向と合わず、不本意なものになっていることが要因です。
以下は具体的な理由の例です。
事前の相談なしに突然の異動を命じられる
ある日突然、異動を告げられると、社員は準備もできず、精神的な負担が大きくなります。異動が決まる前に本人の意向を確認する機会がない場合、納得感が得られず、モチベーションの低下につながります。
ライフイベントに配慮されない
「子どもが生まれたばかり」「新居を購入したばかり」といった状況で遠方への転勤を命じられると、仕事だけでなく家庭にも大きな影響を与えます。生活の変化に配慮しない異動は、社員の不満やストレスにつながります。
キャリアプランが考慮されない
これまで積み上げてきたスキルや経験を活かせず、本人が興味のない業務や部署へ異動させられると、能力を活かせないと感じてしまうでしょう。キャリアの方向性と異なる異動は、意欲の低下や離職の原因になりかねません。
業務の引き継ぎ負担が大きい
異動が決まると、社員は通常業務に加えて後任者への引き継ぎを行わなければなりません。異動までの期間が短かったり、引き継ぎのサポート体制が不十分だったりすると、負担が大きく、ストレスの要因になります。
新しい環境への適応ストレス
異動後は、新しい業務に慣れるだけでなく、人間関係を一から築く必要があります。特に、未経験の業務を担当する場合や、社風が異なる部署へ移る場合は、適応までのストレスが大きくなりがちです。
安易な異動の繰り返し(玉突き人事)
欠員が出るたびに異動を繰り返す、いわゆる「玉突き人事」は、本人の希望とは関係なく配置が決まるため、不安や不信感を生みやすいです。計画性のない異動が続くと、会社への信頼感が低下し、離職につながるリスクが高まります。
異動の目的が不明確
「なぜこの異動が必要なのか」という説明が不足していると、社員は納得しにくくなります。目的が不明確な異動は、単なる人員調整と見なされ、不公平感や不満が募る原因になります。
異動が適切に行われれば、社員の成長や組織の活性化につながります。しかし、本人の意向や状況を考慮しない異動は、モチベーション低下だけでなく、ストレス増大や離職につながるリスクといえるでしょう。そのため、人事異動には慎重な運用が求められます。
人事異動でモチベーションを低下させないための対策
円滑な人事異動を進めるために、人事担当ができることについて、「異動前の対策」「異動決定後の対応」「異動後のフォロー」の3つの視点で解説します。
異動前の対策
異動に伴う不安を軽減し、スムーズな異動につなげるには、事前の丁寧なコミュニケーションが欠かせません。社員には、それぞれの生活やキャリアの希望があり、異動が企業の戦略上の判断であるとしても、納得感を高めることが重要です。
特に、遠方への異動になるのであれば、十分な調整を行い、サポートすることが求められます。
また、近年は働き方の多様化が進み、異動を機に転職を選択するケースも少なくありません。
人材の流出を防ぐためにも、異動の背景や期待される役割を適切に伝え、社員との信頼関係を築くことが求められるでしょう。
事前に異動の可能性を理解してもらう
入社前後の段階で、企業のキャリアパスの中に人事異動が含まれることを伝えておくことが重要です。異動がキャリアパスの一環であることを明確にすることで、社員が自身の成長プロセスとして前向きに捉えやすくなります。
特に、異動の頻度や基準、キャリアとの関連について、採用面接や入社時研修の機会を活用して説明しましょう。こうした事前の理解があることで、異動が決まった際の抵抗感が和らぎ、スムーズな受け入れにつながります。
また、異動に関するルールを明文化しておくことも重要です。就業規則などの書面に人事異動の範囲を明記し、事前に共有することで、異動が決まった際の不安を軽減しやすくなります。
社員のスキルや志向を把握する
異動によるミスマッチを防ぐためにも、社員のスキルや志向を把握しておくことが重要です。
人事面談やキャリア相談の機会を設けることで、個々の希望や適性を理解することにつながります。そうした理解を踏まえ、社員のキャリア志向に応じた異動方針を設定することを心がけましょう。
異動決定後の対応
異動が決まった後の対応次第で、社員の受け止め方やその後の適応度が大きく変わります。円滑に異動を進めるためには、理由や背景を丁寧に伝え、生活面も含めたサポートを行うことが重要です。
異動の理由・経緯を十分に説明し、納得感を高める
なぜその社員が異動候補となったのかを、会社の事業戦略や育成プラン、異動のメリット・デメリット、キャリアプランとの整合性など、幅広い面から説明しましょう。
社員の納得度を高めるためには、透明性を持った説明と対話が必要です。異動に対する不安や疑問にしっかり向き合い、一方的な通達にならないようにしましょう。
遠隔地への異動では可能な限り配慮する
転居を伴う異動は、職場環境だけでなく、その社員の生活にも大きな影響を与えます。そのため、異動の対象となる社員には事前に異動の可能性を伝え、意向を確認することが重要です。無理に異動を進めると、モチベーションの低下だけでなく、退職につながることもあります。
異動を受け入れた社員に対しては、住居や引っ越しの補助、生活環境の整備などのサポートを検討しましょう。転居を伴う異動を円滑に進めるためには、単なる説得ではなく、現実的な支援を提供することが求められます。
また、異動に対する不安を軽減する方法の一つとして、公募や立候補制を活用するのも有効です。希望者を募ることで、異動の納得感が高まりやすく、スムーズな受け入れにつながります。
異動後のフォロー
異動後のフォローが不十分だと、新しい環境への適応が遅れ、モチベーションの低下につながることがあります。そのため、異動後のフォローも大切にし、キャリアの成長につながる仕組みを整えることが重要です。
新環境への適応をサポートする
異動後の社員は、新しい環境や業務に慣れるまで不安を感じることがあります。特に、転居を伴う異動や職種の大幅な変更があった場合、適応には時間がかかるため、フォローアップが欠かせません。
異動後の状況を把握し、必要に応じて定期的なフォローアップ面談を実施しましょう。面談では業務の進捗だけでなく、環境の変化による負担や悩みについても話しやすい雰囲気を作り、対話を通じて不安を軽減することが大切です。
異動がキャリアアップにつながる仕組みを作る
異動を成長の機会として前向きに受け止めてもらうためには、キャリアアップにつながる仕組みを示すことが重要です。そのためには、異動がどのように評価され、昇進・昇給に結びつくのかを示す制度を整える必要があります。
評価基準を明確にし、異動による成果が適切に反映される仕組みを作ることで、社員が異動を単なる配置転換ではなく、自身のキャリア形成の一環として捉えやすくなります。また、異動後の成長を支援する研修やフィードバックの機会を設けることで、長期的なキャリア形成をサポートしましょう。
人事異動には事前準備と適切なサポートが不可欠
人事異動は企業の成長や組織の活性化に欠かせない施策のひとつです。しかし、異動する社員にとっては環境の変化が伴い、不安や戸惑いを感じることも少なくありません。そのため、スムーズに適応できるよう、異動前からの丁寧な準備と適切なサポートが求められます。
本記事で紹介したように、異動の背景を伝え納得感を高めること、異動後のフォローを充実させることが、社員のモチベーション維持につながります。自社に合った仕組みを整え、社員が前向きに異動を受け入れられる環境を作っていきましょう。
- 労務・制度 更新日:2022/11/21
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