「健康経営」が“会社”と“社員”にもたらすメリット・デメリットとは?
ひとつ目は、労働人口の減少(参考:人口減少時代とその課題|総務省)です。
日本は2008年をピークに総人口が減少に転じており、人口減少時代を迎えようとしています。さらに国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によれば、2050年には日本の総人口が1億人を下回るとの予想もされています。
また、第1次ベビーブーム期(1947年〜1949年)には4.3だった合計特殊出生率(参考①:出生数・出生率の推移|内閣府/参考②:人口動態総覧|厚生労働省)が、2018年には1.42まで減少。
一方で2015年には3,387万人だった65歳以上人口が2042年には3,935万人にも達するだけでなく、2065年には約2.6人に1人が65歳以上になるともいわれています。
少子高齢化社会により、日本では今後著しい労働人口の減少が懸念されています。
生産性を維持しようと、従業員に長時間労働をさせてしまえば、健康を損なって仕事を続けられなくなる可能性も大いにあります。しかし労働者それぞれの労働生産性を高めなければいけない状況だからこそ、従業員が長期的に働ける環境が求められています。
高齢者の増加に伴って起こる医療費の増加も、健康経営が普及する要因です。
さらに高血圧や心筋梗塞、糖尿病やメタボリックシンドロームなど若い年代でも生活習慣病の患者が年々見られており、高価な薬を、長期的に投与する必要が生じています。
高齢者だけでなく、若い年代においても医療費の増加は避けられない状況といえます。
もしも従業員の健康が損なわれると、集中力の低下やモチベーションの喪失により業務効率が著しく低下します。それをカバーしようとさらに長時間労働をさせれば、従業員が不健康なまま業務を行う状態が慢性化し、悪循環に陥ってしまいます。
さらに離職率が大幅に高くなり、業績アップどころの話ではなくなってしまうでしょう。
先述の通り、健康経営に取り組んでいる企業のイメージは従業員だけでなく、社外からも好意的に捉えられています。
これは長時間労働が問題視されている昨今だからこそ、いち早く改善に向けて動いていることはプラスイメージにつながるからに他なりません。
また、経済産業省では、2017年度より健康経営に取り組んでいる企業(健康経営優良法人認定企業)を顕彰する「健康経営優良法人認定制度」を定めています。
健康経営優良法人は業種ごと、申請時の従業員数により「中小規模法人部門」と「大規模法人部門」の2種類にわけられます。
従来は大規模法人部門の企業すべてを「ホワイト500」と呼んでいましたが、認定の前提となる健康経営度調査への回答数が増加、寄せられた意見をもとに2020年度より健康経営度調査結果の上位500法人のみを「ホワイト500」として認定することとなりました。
健康経営優良法人の認定基準は、「定期検診受診率実質100%」、「ストレスチェックの実施」、「長時間労働者への対応に関する取り組み」といった評価項目を規定以上満たしていることが条件です。
これらの条件を満たし、もし健康経営優良法人として認定されれば、社会的な評価も獲得できるでしょう。
企業のイメージアップは、「新入社員の確保」「離職率の低下」の2点から人手不足を解消できます。
長く働ける企業を探している就活生にとって、健康経営は企業を選ぶ判断基準となります。
健康的に生き生きと働ける環境を提供する企業は、就活生の保護者にも安心感を与えます。健康経営に取り組めば、その他のメリットとともに多くの就活生からの応募を獲得できるのです。
健康経営によって生き生きと働いている従業員は企業を誇りに思い、周囲に良い評判を広めてくれる傾向にあります。
そこで興味を持った優秀な人材の採用が、従業員の紹介により実現できれば採用におけるコストの削減ができます。優秀な人材を求めて闇雲に採用サービスの登録や採用イベントの参加を検討している企業も多いかもしれませんが、コストだけかけて成果が得られない……なんてことも避けられるのは魅力的なはずです。
少子高齢化によって労働人口の減少が見込まれる以上、今後は数少ない労働者を確保できるかどうかが企業の未来を左右します。
健康経営への取り組みは、雇用して終わりではなく長く働いてもらうためには必須だといえます。
続いて、実際に健康経営を推進している企業の取り組みについて、経済産業省により「健康経営優良法人」と認定された企業を中心に注目してみましょう。
- 労務・制度 更新日:2020/04/21
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