今求められるファシリテーターの5つの役割
こんにちは、大日本住友製薬の田中です。人材育成を担当していると、時には自分自身が研修講師になることもあります。人事の仕事ではこの他にも、採用担当であれば学生とのコミュニケーションが必要であり、新しい人事制度を提案する際には管理職や経営層とのコミュニケーションが必要です。相手の意見やニーズを引き出したり理解を求めたりするこれらのコミュニケーションにはすべて、ファシリテーションスキルが求められます。
また、人事関連に限らず、どんどん複雑になるビジネスや組織、チームなど、うまく物事を進める“潤滑油”としてのファシリテーターの存在は重要性を増しているように思います。
ファシリテーションスキルに関する知見は多くのコラム、書籍が出ていますが、今回は私が研修を企画・運営する中で多くの講師やファシリテーターに接したり、自分自身がファシリテーターを務めたりする中で独自に整理した5つの役割、ABCDEを紹介します。
なお、ファシリテーションには本来、事前準備や事後の振り返りなども役割としてありますが、今回はあくまでも当日の役割に特化した考え方としてご紹介します。また、これらは語呂合わせですので、順番はこの通りではありません。
このように、一見すると関連性の低い、本来の話題から遠い話であっても、活用すれば、議論を広げるきっかけになります。人事では他にも、人材育成を植物を育てることに、昇格を階段を上ることにそれぞれ例えたり、組織の危険な状態に気づいていないことを「ゆでガエル」と表現したりします。
このように、例え話を用いることで話題のイメージが膨らみ、議論がしやすくなります。いきなりやるのは難しいと思いますが、日ごろから様々なものの共通性を見出すクセをつけておくと良いトレーニングになります。
上記で示した方法とは反対に、抽象的な話題に具体例を示すこともあります。具体例を出すことで地に足のついた議論ができるため、こちらも参加者の理解を促進するでしょう。
十分に議論を尽くすためにも、議論を特定の意見や主張に閉じず積極的に話を広げていく必要があります。話の広げ方には別の参加者に話を振る方法とファシリテーターが自ら論点を変える方法の2つがあります。
まず、別の参加者に話を振る方法は、意見はあるが発言意欲が低い方を巻き込むには良い方法です。参加者の思考のクセや興味関心などを把握しておくと、あたりをつけやすいです。話を振った相手に広げる方向を任せるため「○○さん、他の意見はありますか」とオープンな問いかけがよいでしょう。ただし、考えがまとまっていない参加者を指名した場合、議論が止まってしまうリスクもありますので注意が必要です。
ファシリテーターが自ら話題を変える方法は、参加者全員がまんべんなく話をしているものの、こちらが想定している論点が出てこないといった時に有効です。Broadenにはフレームワーク思考が役に立ちます。フレームワーク思考とは、例えば5W1H、3C(自社・競合・顧客)など、論点のセットで考える思考法のことを言います。フレームワーク思考を用いた話題の変え方として、例えば次のような話題の変え方が考えられます。いずれも、人事の話題でも十分に使えることばかりです。
- コストの話ばかりしているなら、クオリティの話をしてみる
- 特定のアイデアばかり話しているなら、別のアイデアがないかと聞いてみる
- 賛成意見ばかり出ているなら、反対意見を言ってみる(悪魔の代弁者、という手法です)
議論にはメリハリが必要です。広げた話も、キリのよいところで収束させないと次の話題に進むことができません。最後に全体を総括することも重要ですが、いくつもの大きな論点を話し合う場合には論点ごとに小活し、次に進みやすいように整理することがファシリテーターに求められます。
小活が必要となるサインは、例えば同じ話が繰り返されたり、全員の話す量が減ってきたりと一つの議論が十分に煮詰まり、次の論点に進もうとしている空気が感じられるか、反対に十分煮詰まっていないにも関わらず次の話題に移ってしまったことが感じられることです。後者の場合は、まとめることで抜け漏れがあることを理解してもらいます。
Concludeは議論の流れを切ってしまうリスクはありますが、議論を混乱させず、うまく交通整理するためにも勇気をもって実行しましょう。Concludeにはホワイトボードが活躍します。議論の最中に内容が可視化されていますので、ファシリテーターは小括しやすく、参加者側も理解しやすいでしょう。ぜひ普段からホワイトボードを利用するクセをつけてください。
「詳しく教えてください」と話の続きを促したり、「そもそもなぜその話が大事なのか」と話の源流を確認したりすることで、話題の本質を探ります。また、議論を進めるうえで、時に発言者のポリシーや哲学までさかのぼって理解を深める必要が生じることもあるかと思います。
その場合には、「なぜそう思うのか」と切り出し、相手の持っている思考の前提を明らかにします。この方法は、一人に対して突き詰めていくこともあれば、参加者全体を一つの論点に固定し、みんなで深く思考・議論する方法もあります。
議論の中にある、より重要な事実を見つけることを目指します。Broadenとは対になる考え方ではありますが、深めた先で広げたり、広げた先で別の話題を深めたり、BroadenとDigを状況に応じて使い分けます。
注意点は、Digの問いかけは詰問調になりがちということです。「なぜ、なぜ」と問い続けられることは、実はかなりストレスフルな状況です。その問いかけの意図や、その場に必要な質問であることを共有しながら使いましょう。
場に出ている事実や意見をより平易に言い換えることで、議論をしやすくします。Facilitateには「容易にする」という意味もありますので、本来の意味に最も近い考え方とも言えるでしょう。
大抵の議論では、参加者は丁寧に「主張」と「根拠」を分けて話してはくれません。発言者にも自覚なく、まったく別の話題が混じってしまうこともあります。また、日本語は欧米の言葉よりも主語が曖昧という特徴もあり、意識していないとなんとなくよくわからないまま進んでしまう、という事態に陥りかねません。
こういった事態を避けるために、4つの方法があります。
- 先に議論のフレームワークやアウトプットイメージを示しておく。
- 「つまり~ということですね」と相手の発言の意図や意味合いを確認しつつ、言い換えて言葉をわかりやすくする
- ファシリテーター自身がうまく理解できていないときは、「どういう意味ですか」「もう少し具体的に」などと素直に聞き返す
- ホワイトボードを活用し、図や絵にまとめる
- 労務・制度 更新日:2020/09/16
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